2019年05月08日
鼻血がサイン?上咽頭がん
咽頭がんにも種類があるようですが、上咽頭がんとはどのようなものなのでしょうか。
今回は、上咽頭がんの症状や治療法について医師に詳しく解説していただきました。
咽頭と上咽頭がん
咽頭(いんとう)とは?
咽頭とはのどの奥のことで、鼻の奥から食道の入り口までのスペースです。
上咽頭は鼻の奥、中咽頭は口の奥、下咽頭は食道の入り口あたりと考えるとイメージがわきやすいかもしれません。空気や飲食物が通るスペースであり、扁桃腺など免疫器官もあります。
上咽頭がんとは
上咽頭に発生するがんのうち、悪性リンパ腫を除いたものです。上咽頭の表面を覆っている扁平上皮という細胞から発生します。
中高年の男性に多いですが、10代や20代でも発症することがあります。日本では珍しいがんですが、中国南部や台湾から東南アジアの中国人に多いと言われています。
上咽頭がんの原因
EBウイルス
EBウイルスというヘルペスウイルスの一種が発症に関係していると言われています。
EBウイルスは9割の人が幼少期に唾液などを介して感染しており、リンパ球に一生潜伏し、通常は悪さをすることはありませんが、何らかのきっかけで免疫系の防御をすり抜けて増殖し、がんを引き起こします。
塩漬けの魚
東南アジアの伝統的な食材である塩漬けの魚を食べるとリスクが高くなると言われています。
タバコ・アルコールなど
上咽頭は空気や飲食物に触れる場所であり、タバコ・アルコール・やけどするほどの熱い飲食物を習慣的に食べることもリスクになります。
化学物質
ホルムアルデヒドなどの化学物質を日常的に扱うこともリスクになります。
上咽頭がんの症状
鼻の症状
がんの表面から出血するので、鼻血が頻繁に出ます。鼻づまりも起こります。
耳の症状
がんが耳管(耳と鼻をつなぐ管)の出口をふさぐと、耳が詰まったような感じがし、中耳の水はけが悪くなって滲出性中耳炎を起こします。
神経の症状
がんが神経を圧迫すると、顔面の痛みや目の動かしづらさが起こることもあります。
上咽頭がんの転移の可能性
がんが進行すると、骨や肺、肝臓に転移することがあります。
外界から入ってくる病原体に対応するために、咽頭にはリンパ組織が多く、がんがこのリンパ液の流れに沿って首のリンパ節に転移しやすいという特徴があります。首のリンパ節の腫れが初発症状(初めて気づく症状)であることもあります。
上咽頭がんのステージ
I期
がんが上咽頭に限られ、リンパ節転移も他の臓器への転移もない場合
U期、V期
がんがどこに広がっているか(中咽頭、鼻、副鼻腔、脳神経など)、どこのリンパ節に転移しているかによって決定
W期
他の臓器に転移がある場合
上咽頭がんの検査
耳鼻科で行うファイバースコープや鼻鏡による視診、CTやMRIといった画像診断が重要です。確定診断のためには病変を一部取って顕微鏡で観察する生検・病理検査が必要です。
上咽頭がんの治療内容
放射線治療を行い、状態によって化学療法(抗がん剤治療)を行います。
がんの部位が頭の中心であり、周囲の重要な構造を壊さずにがんだけ取るというのは非常に難しいので、通常は手術は行わず、転移しやすいリンパ節のみ手術で取ることがあります。
上咽頭がんの生存率
病変が小さく転移もしていないI期では5年後の生存率は90%近く、転移があるW期では50%を切っています。
(参考:国立がんセンター)
上咽頭がんのセルフチェック項目
□ 鼻血が繰り返し出る
□ 舌の奥の方で血の味がする
□ 耳の詰まった感じや聞こえにくさがある
□ 首に痛みのないしこりがあり、大きくなっている
□ 仕事でホルムアルデヒドを日常的に扱う
□ タバコ、アルコール、熱い飲食物をよく摂る
□ 野菜や果物をあまり食べない
上咽頭がんは日本では珍しいがんですが、誰もがかかる可能性はあります。気になる症状があれば耳鼻科や耳鼻咽喉科を受診してください。
タグ:健康
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