2019年03月23日
バーチャルな味や匂いもおいしい? 脳は匂いにだまされる
食べ物のおいしさは、味だけではなく匂いでも変わる。味には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味があるが、鼻をつまんで匂いなしで食べるとリンゴとタマネギの区別も分かりにくくなく。その逆に、食べなくても匂いだけで味を感じられることもある。ウナギ屋のおいしそうなかば焼きの匂いは、それだけでご飯が食べられそうだ。香りは、食品の価値を高めるものなのだ。
しかし、おいしそうな匂いは、本物とは限らない。人工的に食品に香りを付ける合成香料は、組み合わせ次第でどんな香りも作り出せるからだ。
□メープル風味の香料の原料は何?
ホットケーキなどにかけるメープルシロップは、カエデの樹液を濃縮したもので、独特な豊かな香りが特徴だ。だが純粋なものは希少なため高価だ。そのため、価格が安いメープル風味のお菓子やシロップには、本物のメープルシロップは入っておらず、ガムシロップに合成香料などで香りを付けている。
メープルの香り付けには、芳香族アルデヒド類、プロピレングリコール、エタノールなどの合成香料や地中海地方原産のマメ科の一年草植物フェヌグリークなどが使われている。
その食品が本物のメープルシロップ100%か、合成香料でメープルの香りだけ付けたものかは、食品の成分表示を見れば知ることができる。
□本物よりも、本物らしい香り
脳は匂いや色合い、イメージにだまされやすい。イチゴのあまーい味や香りが付いていると、歯磨き粉すらもおいしそうに感じてしまう。合成香料のイチゴの香りは、もはや本物のイチゴよりもイチゴらしいイメージを私たちの脳の中に作っている。
日本で使われている人工香料の成分は、エーテル類、ケトン類、芳香族アルデヒド類、エステル類、フェノール類など、3000種類ほどある。その中から10種類くらいの成分を調合することで、複雑で多種多様な香りを作り出すことができるのだ。
□合成香料は体に悪いのか?
さまざまな加工食品に含まれている聞き慣れない合成香料の成分だが、食べても体に害はないのだろうか。
合成香料の原料については、厚生労働省に食品添加物として認可されているものしか使用することができない。また、合成香料は微量で香りを付けることができるため、食べたときの香料の摂取量は少ない。そのため、食べて直ちに害になるという心配はないようだ。
ただし、単独では害がないが、さまざまな種類の合成香料を複合的に、毎日摂取し続けても安全かどうかは、なんとも言えない。しかし、合成香料の害よりも、むしろ栄養の不足の方を心配するべきかもしれない。天然の食品であれば含まれていたであろう栄養が、合成香料の食品では摂取できないからだ。
□合成香料の食品ばかりではだめ?
現代は香りの時代だ。コーヒーの良い香りを強調するために、コーヒー風味の合成香料を追加している缶コーヒーもある。合成香料は、食品を魅力的で楽しいものにするのに一役買い、今や新製品開発の要にもなっている。
しかし、栄養を取るための食品が合成香料をメインに据えた方向へ進んでいってしまったら、将来の食卓はどんなことになるのだろう。栄養が豊かな食品よりも、豚骨の入っていない豚骨ラーメンや、チーズの入っていないチーズケーキなど、脳を引き付ける見た目や香りを重視した食品ばかりが増えていくと、栄養はどんどん減るばかりだ。
□パッケージのイメージだけではなく、成分表示も確認しよう
高度な加工食品技術が向上した現代では、消費者にとっては食品表示が食品を判断するために重要な役割を果たす。新鮮なオレンジを強調したパッケージデザインのオレンジジュースでも、果汁は1%以下で糖類と香料でできているものもある。商品を購入する際にはイメージで選ばずに、成分表示をよく確認するようにしよう。
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