2019年03月14日
スポーツにおいて勝負の決め手になる?「瞬発力」徹底解析!
どんなスポーツにおいても、勝負が決まる一瞬があります。その勝負の決め手になる一瞬を制するのが「瞬発力」と言えるでしょう。その特性と鍛え方を認識すれば、自分の身体と目的に合ったトレーニング法が見えてきます。瞬発力を鍛えて勝負を制するためにもきちんと学んでいきましょう。
瞬発力とは?
【瞬発力】と聞いてどんなことを思い浮かべますか? 「敏捷性」や「素早さ」など似たような言葉もありますが、それぞれ思い浮かべるのは同じものでしょうか?
実はこの3つの言葉、それぞれ違う意味を持っています。「敏捷性」は動作方向を正確に変更する速さを指し、「素早さ」は動作そのものの速さを指します。
そして今回のテーマである【瞬発力】。運動生理学やスポーツ指導に知見のある人でなければ「素早く動ける感じ」程度のイメージかもしれません。瞬発力というのは、「瞬間的に発揮できる爆発的な力」のことです。
スタートポジションからのダッシュや競技中のジャンプ等「0コンマ数秒」の瞬間に爆発的な力を発揮する動作、それが「瞬発力」です。
瞬発力を鍛えるメリット
ここぞ、という瞬間に必要な瞬発力。日常生活を送る上では高い瞬発力は必要ありませんので、健康やダイエットを意識した方にとってはあまり意識的に鍛える必要もないと言えます。しかし、やはりスポーツをする方にとっては、瞬発力は勝負を決める重要な要素と言っても過言ではないでしょう。
重量挙げで持ち上げる瞬間、柔道で相手のスキを狙って技をかける瞬間、サッカーでのドリブルで相手を抜き去る瞬間など、挙げだしたらキリがないほど、それぞれの競技の中で瞬発力は勝負の決め手になります。
瞬発力を鍛えるために知っておくべきこと
・瞬発力が発揮される仕組み
瞬発力がどういった仕組みで発揮されるか解説していきましょう。実はこの瞬発力、「神経の伝達速度における瞬発力」と「筋力における瞬発力」との二種類あります。
脳から命令が出され、それが動き出す部位に届くまでが「神経の伝達速度における瞬発力」、動き出す部位に命令が届き、実際に動くまでが「筋力における瞬発力」、これらを合わせることで「瞬間的に発揮できる爆発的な力」と言えます。
「神経の伝達速度における瞬発力」と「筋力における瞬発力」はそれぞれ鍛える対象が異なるため、特性をきちんと理解し、適切なトレーニングを積みましょう。
・神経の伝達速度における瞬発力
筋肉を動かし、瞬間的な爆発力を出すにはまず脳からの命令が必要です。脳からの命令が筋肉に伝わるまでの時間が短ければ短いほど筋肉は速く動けます。
つまり伝達速度を速めるためには神経を鍛える必要があります。速くしたい動作を全身全力で何度も繰り返すことで神経は発達し、太くなっていきます。
神経は太ければ太いほど伝達速度が速くなるという特徴があるため、シンプルではありますが、速くしたい動作を全力で繰り返すことが神経の伝達速度を上げるトレーニングになります。
・筋力における瞬発力
脳からの命令が届き、筋肉を動かす際、瞬間的に爆発的な力を出し、かつそれをキープするには白筋(はっきん)と赤筋(せっきん)をバランスよく鍛える必要があります。それぞれ特性が異なるため、しっかりと認識し、目的に合ったトレーニングを行いましょう。
・白筋と赤筋の違いと特性
スピードに優れた筋肉、白筋
白筋とは別名「速筋」とも言われ、筋肉の収縮が速いのが特徴です。そのため、瞬発性の運動に優れており、短距離走や跳躍のトップアスリートなどはこの白筋の割合が多いと言われています。
持久力に優れた筋肉、赤筋
赤筋は別名「遅筋」と言われ、瞬間的に大きな力を発揮するのを苦手としているものの、持久力に優れているため、長時間の運動に適しています。マラソンやクロスカントリースキーなどのアスリートは赤筋の割合が多いと言われております。
・白筋と赤筋の割合は変わらない
白筋と赤筋の割合は遺伝的なものとされており、トレーニングによって割合を変化させるのは難しいとされています。とはいえ、アスリートに求められるのは、スポーツに適した白筋・赤筋のバランスだけではなく、精神力・テクニック・身体づくりが重要なため遺伝的にスポーツに合っていないと諦めるほどの大きな要素でもありません。 それに、筋肉の繊維の数は変わらずとも、割合の低い方を重点的にトレーニングすることで面積比を変えることは出来ます。
自分で出来る瞬発力向上フィジカルトレーニング
・フィジカルトレーニングとは?
身体能力の強化や健康維持などを目的とした肉体的な運動の総称。目的に合ったトレーニングでなければ身体が重くなったり不必要な筋肉がついてしまい本来得られるはずの効果を実感できなくなってしまいます。それぞれの効果をきちんと理解した上でトレーニングを進めましょう。
ここから瞬発力を上げるためのフィジカルトレーニングをご紹介していきます。
・バーベルトレーニング
バーベルトレーニングでは、瞬発力向上を目的とした場合と筋肉肥大を目的とした場合とでやり方が大きく変わってきますのでご注意ください。瞬発力向上の場合、ポイントとなるのは、
上下する際はどちらも素早く行う
筋肉が縮みながら力を発揮する「求心性収縮」が重要 2〜3回で限界を迎えるもの
筋肉に強い負荷をかけるために、数回で限界=ほぼ100%の力が必要 しっかり休息時間を取りながら行う
毎回ほぼ100%の力を出すことが重要なため 筋肉肥大を目的とした場合、これらとは全く逆のやり方になります。
・パワークリーン
パワークリーンは決められた動作がありますので一つ一つしっかり確認しながら進めましょう。
スタートポジション
床にバーベルを置き、背筋を伸ばしたまましゃがみ肩幅よりも少し広めにバーを持ちます デッドリフト
立ち上がる反動を使いバーベルを身体沿わせて持ち上げます ハイプル
2の状態からバーベルを胸まで引き上げます キャッチ
胸までバーベルを引き上げたら素早く手首を返し、鎖骨と肩でキャッチするイメージで支えます ※2回×5セットを目安にしてください
※怪我のリスクも大きいトレーニングですがその分効果も大きいです。危険に感じたら無理せず進めましょう。
・家でもできるバーベルトレーニング
「ダンベルならいいけど家でバーベルはちょっと、、」という方も多いかもしれません。しかし、特に初心者の方にはバーベルがおすすめです。バーベルは場所を取りがちとイメージがあるかもしれませんが、長さや重りのサイズもそれぞれで、重りを取ってしまえばワンルームでも大して邪魔にはなりません。
ダンベルに比べ利点も多くあります。バーベルは両腕で行うため、バランスよく鍛えられ、かつ時間短縮も出来るため効率も良いと言えます。ダンベルは片腕ずつしかできないのでむしろ上級者向きと言っていいでしょう。
・アメリカで大人気! バービージャンプ
フィットネス王国アメリカより瞬発力向上にうってつけのトレーニング法のご紹介です。その名も「バービージャンプ」。英語ではBurpee Jumpのため、「バーピージャンプ」が正式名称になります。瞬発力もですが、ジャンプ力の向上も望めるため、バスケットボールやバレーボールなどのプレーヤーの練習にも取り入られているようです。
ほかにも下半身や腹筋、体幹を含め全身に効果の期待が出来ます。やり方は以下の通り。
はじめは直立の状態 その場にしゃがみ、地面に手を付ける 重心を手に持っていき、両足をはねるように出来る限り後方に出す 足をすぐに戻し、再び2の状態に戻る しゃがんだ状態から可能な限り高くジャンプする 着地後そのまま2.に繋げて続ける ※目安は10回×3セットですが、無理せず進めましょう。
※身体が左右にブレないよう常に一本線を意識して行う。
・ジャンピングスクワット
下半身の筋トレとして太もも〜お尻にかけて効果の高いスクワットですが、ジャンプを加えることによってその効果をさらに大きくすることが出来ます。全身に負荷がかかるため、腹筋や体幹などにも効果が期待されます。
両手を後頭部に添え、両足を肩幅くらいに広げる 背筋を伸ばし、胸を張る 通常のスクワットと同じ要領で膝を曲げ腰を落とす 太ももと床が平行になるまで腰を落としたら、床を蹴り上げジャンプする 着地したらそのまま3.に戻り腰を落とす→ジャンプするを繰り返す ※10回×3セットを目安にしてください。
※着地した後、すぐにジャンプするのではなく、しっかり腰を落とすことが重要です。
※終始腹筋に力を入れて行うとより効果が期待出来ます。
・立幅跳び
スポーツテストなどのイメージが強いかもしれませんが、立ち幅跳びは瞬発力を鍛えるのにうってつけのトレーニング法です。これを機会に正しいやり方を覚えましょう。
初めの姿勢はパワーポジション(★)、もしくはスクワットのフォームにしましょう。 両手を前後に大きく振る 反動をつけ前上方へ跳ぶ
★パワーポジションとは、股関節、膝を曲げ、背筋をまっすぐのまま、横から見たとき、肩・膝・つま先が一直線で結ばれる、最も力が入りやすいと言われる姿勢です。立ち幅跳びのみならず、様々な運動、スポーツにも流用できる姿勢です。
※あくまでも瞬発力を鍛えるためのトレーニングなのでいわゆる「バネ」で跳ぼうとせず、スクワット同様股関節を使って跳ぶこと。
※跳んだ後、空中では背中の筋肉を使い背をなるべく反らし、その反動を利用し、次は身体の前面の筋肉を使い、身体をくの字に曲げる。
・スラムトレーニング
主に前面の筋肉を刺激し、屈曲動作と伸展でバランス力を鍛えるのと同時に、肩の瞬発力を鍛えることが出来ます。肩を大きく使う動作のため、他にも懸垂力や腕を頭の上にあげて行うオーバーヘッドの動作などにも効果的です。
このトレーニングはメディシンボールやケトルベルで行うことが出来ます。ケトルベルの場合は危険ですので砂や芝生の上で行うようにしましょう。
しゃがんだ状態でメディシンボールを持ちます 股関節と股関節、足関節を一挙に伸展し、同時にメディシンボールも頭の上にあげます 腕だけでなく、上半身ごと前方に曲げながらメディシンボールを地面に投げます。このとき両手の親指が自分の後ろを指すよう腕は内側に回転させてください。
・ケトルベルクイックステップ
このトレーニングではケトルベルを用いることで瞬発的なステップはもちろんのこと、パンチ力やキック力など、格闘技に有効的な効果が期待できます。
足を肩幅ほどに広げ、ケトルベルを上半身と膝を軽く曲げた状態で掴みます 勢いよく前方に振り上げ、その瞬間に片足を一歩前に出します ケトルベルが胸の位置の高さまで来て、重さを感じない瞬間にもう片方の足を一歩出し、両足を揃えます ケトルベルを振り下ろし、2に戻り繰り返します ※踏み出す足を交互に変えることでスプリント向きの動作に、踏み出す足を毎回同じにすることで格闘技に効果が期待できます。
・ブルガリアンスクワット
別名片足スクワットとも言われますが、厳密には他のやり方が含まれる「こともありますので、片足スクワットとは違うと認識しておきましょう。このトレーニングがスクワットを片足で行うことで鍛えたい脚に集中的に負荷をかけることが出来るトレーニングです。
ベンチやいすなど膝ほどの高さの物を後方に置き、立った状態から片足のつま先か甲を乗せる 前方に残した足の膝が90度になるまで腰を落とし膝を曲げる 腰を上げ、膝を伸ばす ※10〜15回×3セットを目安に行うこと
※3の腰を上げる瞬間にジャンプすることでさらに負荷をかけることが出来ます(ブルガリアンジャンピングスクワット)
瞬発力を鍛えるトレーニングをする上で抑えておくべきこと
瞬発力は先述の通り「神経の伝達速度における瞬発力」と「筋力における瞬発力」の二種類があるため、それぞれの目的に合ったトレーニングをしなくてはなりません。動作に不必要な筋肉がついてしまうと、動作領域が筋肉により阻害されたりしてしまうなど、手段が目的をないがしろにしてしまいます。
「筋力における瞬発力」に関しては特に白筋と赤筋のバランスが重要になりますのできちんと目的に沿ってトレーニングを積みましょう。
いかがでしたでしょうか。「瞬発力」について少しは理解が深まったかと思います。自分の身体を知り、目的に合ったトレーニングを積み重ねることで周りに一歩差をつけることが出来るようになります。どんなスポーツでも勝負の決め手になる「瞬発力」。これを機に鍛えてみてはいかがでしょうか。
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