2018年08月14日
子どもの睡眠時間で頭の良さが変わる!? こんなに違う海馬の大きさ
「寝る子は育つ」という言葉があるが、これは身体の発達だけではなく、脳の発達、さらには学習能力の高さに関係するかもしれない。それは近年の研究から「子どもの睡眠時間」と「脳内の記憶をつかさどる海馬の成長」に相関関係があることが明らかとなったからだ。
今回は熊本県が報告している、睡眠時間と学習に関する調査データと合わせてこの内容について考えていこう。
□子どもの睡眠時間と脳内の海馬の大きさに相関関係
東北大学の瀧教授らのグループが行った「健常小児における海馬体積と睡眠時間の相関」という研究の中で、子どもの睡眠時間と海馬の体積に相関関係があることが明らかにされた 。
この研究では5〜18歳の男女290人を対象に、頭部のMRIを撮影することで海馬の体積を測定し、また、生活習慣に対するアンケートから睡眠時間やその状況を把握した。
その結果、平日の子どもたちの睡眠時間と海馬の大きさに正の相関が見られたのだ。実際に9〜10時間睡眠の子どもの方が、5〜6時間睡眠の子どもよりも海馬の大きさが1割ほど大きかったと報告されている(※1)。
□子どもの睡眠時間の差が学力調査の結果に影響
では子どもたちの学習能力と睡眠時間には、どのような関係があるのだろうか。
少し古いデータにはなるが、熊本県が平成17年度に行った「基礎調査と学力調査の相関」について、小・中学生の睡眠時間と学力調査との相関がまとめられていたので紹介する。
小学生の学力調査については、8時間睡眠の生徒の平均点が254.0点と一番高く、次に7時間睡眠の247.1点、9時間睡眠の246.6点の順番であった。5時間睡眠の210.3点と6時間睡眠の237.0点の間には、約27点も平均点に差が見られた。
中学生の場合には、6時間睡眠の生徒の平均点が272.0点と一番高く、次に7時間睡眠の267.5点、5時間睡眠の265.9点の順番であった。しかし、9時間睡眠や10時間睡眠となってくると、6時間睡眠の場合にくらべて50点近く低かった。
ここからも分かるように、睡眠時間の長さが学習能力に影響を与えている可能性は十分にあると言えるのではないだろうか。
また注目してほしいのは、小学生と中学生で平均点のピークとなる睡眠時間に差が生じる点だ。
適切な睡眠時間は年齢が上がってくるにつれて、少しずつ短くなってくる。そのため、その世代に合わせた「適切な睡眠時間」を確保することが学習能力を向上させる上で大切なのではないかと筆者は考える。
□成長に合わせて勉強と睡眠のバランスを変化させていこう!
子どもの年齢にあった睡眠時間を確保することで、海馬の成長そして学力向上につながる可能性がこれらのデータから示唆された。
瀧教授によれば「子どもの脳の発達は10歳前後がピーク」だという。そのため小学生の高学年ぐらいまでは、特に周りの大人が子どもたちの睡眠を意識する必要があるのではないだろうか。
勉強を頑張るあまり睡眠時間を削り過ぎるのは良くないが、必要以上に寝すぎるのも良くない。今後は子どもの成長段階に合わせて、勉強と睡眠のバランスを子どもと一緒に模索していく必要があるだろう。子どもの変化に合わせた対応が、家族に求められるのは言うまでもない。
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