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2020年06月25日

ヴィレッジ


映画『ヴィレッジ』とは、2004年に放映された映画。一見、ホラー的な要素が感じられるが、中身としてはどちらかというとミステリーに近い作品。
『ミスト』、『縞模様のパジャマの少年』ほどではないが、すべてを鑑賞したあとで色々考えると、少し鬱映画。
かなり有名なので、この作品を知っている人は多いかもしれない。何せシックスセンスを作った監督の映画だからである。

【内容】


舞台は1800年代、アメリカの奥深い森にある、小さな村。
その村では怪物の存在が『信じられており』、花や衣服など例外なく赤いものが村の中にあると怪物が襲ってくる。怪物は赤色の衣服を身に纏い、好んでいる。そのため、村の中にあらゆる赤いものを持ち込んではいけないという掟が作られ、村人はその決まり事を厳重に従っている。村の中に赤い花が生えていれば、すぐさま摘み取り地面に埋め、証拠隠滅するほどである。

村での暮らしは妙な物寂しさが感じられるものの、放牧とした自給自足の生活。娯楽は非常に少なく、推測するところ作物の収穫期の歌などしかないものだと思われる。

そんな貧しいながらもどこか満たされた生活の中、生まれつき盲目の少女であるアイヴィーの友人であるルシウスは、ノアが森の中に頻繁に出入りしているのに何の処罰もなく過ごしていることを知る。元から村から出たい願望があるのか、町に出ることを年長者に許可を願うも、首を縦に動かされることはなかった。

我慢の限界を迎えたのか、ルシウスは自ら森の中に入り意図的に赤い物を持ち出して、意図的に『掟破り』を行った。

そして夜、『掟』通り複数の怪物が村を襲った。
怪物の襲撃から逃れるため、各々が各々隠れることになるのだが、怪我人を出すこともなく、夜間の襲撃は終わるも、後に不自然な出来事が発生し、ルシウスは掟を破った自分自身を精神的に責めるようになった。結婚式を妨害されたことも追い打ちをかけている。

精神的に参っているルシウスだが、アイヴィーは彼に告白を行う(キティという女性に告白されていることから、モテているのかもしれない)。しかしその場面は、アイヴィーのもう一人の友人であるノアに目撃されていた。ノアの方もアイヴィーに横恋慕しており、衝動的にルシウスをナイフで刺す。
ルシウスは絶命に至らなかったものの、これまでの病気や怪我とは比べ物にならない大怪我に「薬品は絶対に必要だ」と愛する人を救うため、アイヴィーは村長に直談判に出ることになる。

どうにか村の外に出る許可を得たアイヴィーは、ルシウスを救うために必要な薬品リストのメモをもらい受け、村から森の中へ入る。

対してルシウスを刺したノアは監禁された状態であったが、その場で何故か禁忌そのものである怪物の赤い衣服を発見し、抜け穴を通じてアイヴィーを追いかけることになる。
早速ネタバレになるのだが、赤い物――そうして怪物が村の内部に隠されたようにあるのは、大人たちがとある事情で子供達が村の外に出て欲しくないために、意図的に怪物の襲撃を文字通り装った抑止力。
ルシウスの掟破りで対して怪我人がでなかったのは、村人に怪我をさせたくないという単純な思いがあるが、裏側にある事情はかなり複雑である。

森の中で怪物(ノア)に襲われていると思った彼女は盲目ながら、何とか逃げ切ることに成功した。真相としては、逃亡というよりも追いかけっこの最中、アイヴィーが突き飛ばされた近くに穴があり、誘い込む形でノアが足を滑らせて落とし穴に落下させ、死亡させたのである。
やがて彼女は森の端である壁に到達し、警備員に薬品のリストが書かれたメモを渡し、村に帰還したアイヴィーは「怪物は倒した」と村長に報告する。
その後、ノアは大人たちに遺体が回収され、「外には怪物がいる」信憑性を高めるために、死後利用されることになった。


実はこの村は、現代社会で殺人事件の被害者(年長者)たる遺族の集まりであり、莫大な資産を投じて、時代遅れなかつ小規模ながらの村社会を形成していたのである。隔絶された村の時代は1800年代だが、実際の西暦は2000年。
大人たちが子供を作らず思うままに過ごしていれば多少理解はあるものの、次世代たる何も知らない存在を生むだけではなく、「町は悪」などといった洗脳的な教育を行っているのは、個人的に理解の範疇を超えている。

『全てを知っている大人』と、『何も知らない子供』の双方からすればこの村は多少の諍いやトラブルはあるだろうが、封鎖された理想郷ともいえるものである。
現に、始皇帝の焚書にも似た甘美な地獄のような楽園だが、『ノアのルシウスへの殺人未遂』、正体は知らなかったとは言え、『アイヴィーがノアを殺した殺人行為』は、知る大人と知らない子供の相関図の如く、彼と彼女の間で既知や無知といった要素が入り混じる、相反する事象が発生しているのである。

最悪……いや、最善かもしれないが、年長者が最も望まず拒絶し憎んでいる事態が、隔離された区域の村で発生していることから、次世代である子供達がこれ以上誕生しなくても数年足らずで、作られた楽園は機能停止することが予想される。

私はこの映画を視聴当時、衝撃的なオチに驚くばかりであったが大人になって見返すと、「面白い」、「設定がよく作られている」と思うと同時に、村内の大人たちのエゴが目立つ作品のように感じられ、時代遅れの村と現代社会の街のどちらが人にとって幸せなのか、非常に考えさせられた。

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