2022年08月05日
行方不明になった友達 3
タクシーが着いたのは老人ホームの前でした。
例の老人は、カメラに映った日に無断で抜け出していたそうで、職員の人が見る限りたぶん本人だろうと。
探偵さんとふたりでその老人のいる部屋(と言ってもたくさん人がいる相部屋なのですが)に行ってみました。
ベッドの一角にそいつがいました。
なんか呟いていましたけど、目の焦点が合ってなくて、痴呆症って感じでした。
5mぐらい手前でそいつがこっち向いて、僕しばらくわからなかったんですけど、「あっ…」て気付いちゃって。
それに気付いちゃったら、もう怖くて緊張で筋肉がギューって抑縮して、探偵さんに「え?この人なの?」て聞いて、そしたら探偵さんが、あーやっぱりかみたいななんとっも言えない顔して、
「えー、すみません。えーと要するに、僕知ってますよね、この人。前に会ってますよね。そいつ用務員なんですよ。小学校のときの。あのウジが湧いていたときに言いに行って、「は?」って顔した用務員なんですよ。最初歳取ってるからわかんなかったけど、ぜったあいつなんですよ」
たんていさんもこいつの経歴調べて、用務員だって知ったときに、「あ、これはヤバイかも」ってすぐ直感したらしいんですが、そいつが勤めてた小学校が変わるのと、行方不明の子がいなくなる場所がちゃんと符号するらしくて、しかも何年か前、老人ホームに入れられてから、この辺で猫の死体が出したのもちゃんと辻褄があってたりして、これはあたりかもって。
でも、もうそいつ完全にボケてて、会話もほとんど成立しません。
自分の好き勝手なことばかり喋ってて、内容も意味不明なんです。
もとからちょっと知的障害だったらしいです。子供の頃は全然知りませんでしたけど。
結婚もしてないし、子供もいません。完全に独り者のボケ老人です。
「〇〇さん」って老人に予備かけても「私は×××××です。(何言ってるかわかたな)とか言うし、子供を誘拐したことはあるかとかストレートに聞いても、ごにょごにょなんか呪文みたいなことを言うし、すごい不気味です。
一番怖かった彼の言葉があります。
「鶏が死んだ事件を覚えていますか」
「知らんよ、わたし。××うじが×××××、二回やぞ、二回。あー、捨てておけばよかった」
ここから先は完全に僕の妄想です。
まず、用務員は鶏をわざと飢え死にさせたんだと思います。
で、F君は何かの拍子にそれに気付いて、用務員に口封じされたのかもしれません。
僕はあいつの「二回やぞ、二回」という言葉がすごく気になってます。
何が二回だったのでしょうか。
絶対に僕の妄想なのでしょうが、用務員は僕とF君がそれぞれ苦情を言いに行ったのを、同じ子供が2回来たのだと思ったのではないでしょうか。
僕とF君は背格好はわりと似てましたから、もしかしたらありえたかもしれません。
それで、用務員はウジに関係する『何か』をあまり知られたくなくて、F君を襲う決意をしてしまったのかもしれないんです。
もしそうだったとしたら、F君は僕の身代わりになってくれたのかもしれないんです。
そんな考えたが頭から離れず、最近本当に体調を崩します。本当にツライです。
老人に会ったのはその一度っきりでした。
もう会うことはないと思います。
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