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2022年07月21日

不思議な場所から帰れなかったかもしれない 3


持ってきた自転車に乗ったら3分くらいでトンネルには到達するだろうが、まったく先の見えない闇。
これは…行ったら多分帰れない。
俺の本能がそう言ってた。

仕方ないので、駅の方向へ戻った。
そして、ふと駅の入口に小さな表札があるのに気づいた。
そこには確かに「軍事工場跡」と書かれていた。
ひょっとすると、軍事工場跡駅でこのまま戻りの電車を待って、それに乗れば戻れるんじゃね?
その時、初めてそれに気付いた。

そう思った俺は、チャーハン屋のオッチャンの所まで戻って、次の電車は何時だと聞いたんだ。
そしたらオッチャンはぶっきらぼうに

「まだ来ねえよ。」

そん時にオッチャンの顔を見たんだが、俺、この人知ってる。
サラリーマン時代に一緒に働いていた野中さん(仮名)だ。

「あ‥あれ?野中さんですよね?」

そう訊ねると、オッチャンは

「野中?あー。俺の叔父は野中っていう名前だったな。随分前に死んでしまったけどな。」

じゃあ、親戚なのかよ。と思ったが、もう死んでしまったというのはどういう意味なのか。

そんな事よりもここからどうやってT社に行くんだよ。
俺はフラフラと1番ホームに向かいながら、そんな事で頭が一杯になった。
戻って、それから車ぶっ飛ばしても着くのは夜10時か?
そんな時間帯に会社開いてねえ…。明日行くってのもバツが悪い。

あっ!
今のウチに携帯で会長に言い訳電話しておけばいいんじゃね?
俺天才!とか思いながら携帯を出したが‥。
当然の事ながら圏外。あああああああ。オワタ

そうこうしているウチに4番ホームに帰り方向に進む電車が来た。
電車。という表現は違うかもしれない。
列車の戦闘にはピンク色の大きなトラックだった。そのトラックに、6両ぐらい列車が牽引されてた。
そのトラックが4番ホームに停車した瞬間に、俺の横からヒュッとすごい勢いで人は走って行った。

チャーハン屋の野中オッチャンだった。

手にチャーハンの乗った皿を持って、人とは思えないスピードでトラックの運転席へ走って行く。
そして、皿を渡して何かを受け取ると、普通に歩いて1番ホームに戻って来た。

あまりにも呆気に取られて、しばらく動けなかったが、

あっ!しまった!!あれに乗らなきゃ!!!!

そう思った時には遅かった。
もうトラックはエンジンを吹かして行ってしまった。
乗りそこねたが、どうやら帰る列車が4番ホームから出る事だけは分かった。
後は待っているだけだが、またどうせしばらく来ないと思ったので、チャーハン屋のオッチャンの所へ戻った。

野中オッチャンは相変わらず鍋を振るっていた。
ふとチャーハン屋の受け渡し口を見ると、そこにはチャーハンカレーが置いてあった。
チャーハンカレーというか、チャーハンにカレーのルーがそのまま掛かっている食い物が。
しかも、その中には紫色のウズラぐらいの大きさのふっさふさの鳥が座っていた。

「それは新製品のサンプルだよ」

野中のオッチャンは鍋を振るいながらそう言っていたが、俺はその鳥が気になってしょうがなかった。
何処までが新製品なんだよ。とツッコミそうになってたら

「ああ、ピーちゃんはペットだよ。」

と先に野中オッチャンに先に言われてしまった。


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