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2021年10月25日

君のような勘のいいガキは嫌いだよ(鋼の錬金術師) 2



資料室を自由に使って良い許可を得たエドワード一行は、調べものをする最中、母が居なくなり、父が遊んでくれなくなった境遇を淋しがる発言をする。
エドらはニーナの寂しさを満足させるためか、アレキサンダーと共に庭などで何度も遊んでいるかのような描写があるのだが、自らの研究室に閉じこもるタッカー氏は騒音から逃れるように人知れず、両手で頭を押さえている。どう見ても、追い込まれた人間の様子であることは確か。


そんなある日、いつも通り資料室を使わせてもらうためタッカー氏の家に赴くのだが、チャイムを鳴らしても誰も来ない。
タッカー氏はともかくニーナとアレキサンダーが出迎えに来ないのは初めてのことであり不思議がりながらも家の中に入ると、そこには人語を喋るキメラの錬成に成功したタッカー氏がそこにいた。

「人語を理解するキメラ」としてタッカー氏は、「いいかいこの人はエドワードだよ」と紹介させキメラはおぼつかないながらも、「えどわーど」と述べている。その名前がキメラの何かに触れたのか、数度「えどわーど」の名前を連呼して、

「えど わーど
 えどわーど

 お にいちゃ」


EYjHaRBUEAAuzWw (2).jpg



ここで真相に気付いたエドワードはタッカー氏にある質問を行うのだが、



「タッカーさん。人語を理解するキメラの研究が認められて資格取ったのいつだっけ?」


「ええと…二年前だね」


「奥さんがいなくなったのは?」


「……二年前だね」


「もひとつ質問いいかな」



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とここで、問題の発言が出て来るのである。

真相を明かせば、二年前は妻を犠牲に人語を理解するキメラを造り上げ、国家錬金術師の資格を得、今度は年に一度の「査定」のためだけに自分の娘と犬を使い、同じことを二度繰り返したのである。国側は目的のためなら何でもやるというタッカー氏の本質を踏まえた上で、錬金術師の資格を与えたのかもしれない。

タッカー氏はエドワードに殴られながらも笑い、「科学の進歩には人間の犠牲が必要」と説くが、更にエドを激高させる結果にしかならなかった。命を弄ぶ非道だと訴えるのだが、かつてエルリック兄弟が行った母の蘇生も命を弄ぶその一部に過ぎないのではないかと、反撃を食らっている。

アルフォンスはアレキサンダーの大型犬と一体化したニーナに元に戻してあげられないと述べ、その場を去り、事情を知った大佐が通報し、今後軍義にかけられる予定であった。

大佐は、

「我々国家錬金術師は軍属の人間兵器だ。一度事が起これば召集され、命令があれば手を汚すことも辞さず、人の命をどうこうするという点ではタッカー氏の行為も、我々の立場もたいした差はないということだ」

と述べている。
イシュヴァール戦の人体実験や皆殺しにした過去から照らし合わせると、かなり重みが増す言葉である。

物語冒頭、列車のハイジャックで「人間じゃない」と言われていた自分自身が兵器そのものの国家錬金術師だが、エドとしては「一人の女の子一人救えないちっぽけな人間」と述べている。


タッカー氏は処罰が降りるまで自宅待機していたのだが、ここで初登場となるスカーにより殺され、二人と一匹はここで幕を引くことになる。
ニーナの件はその後、最終回まで尾を引くことになるのだが、エドワードがニーナが殺された事実を知った際、スカーに詰め寄ると「事実から目を逸らしていただけに過ぎない。本当は研究所でモルモット扱いを受けた挙句死ぬ事実を無意識に頭から追い払っていただけだ」と反論され、何も言い返せないでいた。


ちなみに軍における人間と動物の錬成は、イシュヴァール戦争時に負傷した自軍を実験にかけ(同時進行で賢者の石も造られていた)ており、その後、正確な時期こそは不明だが、終戦後、強欲のホムンクルスであるグリードと共に脱走している。
タッカー氏と同様の錬成は程度の差こそあれども、完成体として動物の身体的能力を持ったハイブリットな人間が作られていた。

タッカー氏は、錬金術師としての実力の方は不明だが、人と獣を合成するにあたって一度も失敗していないことから、ある一定数の実力はあった模様。

しかもキメラとなったニーナは流暢に言葉を喋ることはできないものの、スカーに殺された父親の死体に寄り添い、涙を流すなどといった行動をしたことから(動物は痛み以外では泣かない)、軍の高度な施設もなく、単独かつ独学でこれだけ完成度は半端であっても、高度な実験の副産物であったことは確かであろう。

スカーの言った通り、「実験施設を盥回しにされてヒト扱いされない未来」が待っていたかもしれない。

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