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2020年12月22日

魍魎の匣 A


陽子の提案で加奈子を名医の元へ生き永らえさせる治療を行うべく、箱のような外見をした施設へ向かうが、そこは基本的に立ち入り禁止の場所でいわくつきの場所であった。箱の治療場の名前は美馬坂近代医学研究所といったもので、戦時中は不老不死の研究に明け暮れていた。よく野良犬などの野生動物を買い取っているとの証言がある。基本的に施設に入った人間は、戻ったことがない。

陰陽師かつ骨董本屋の主人である京極堂は美馬坂の部下であり実質彼の事はそれほど嫌いではなかったが、あまり人間らしさを感じなかったと物語終盤で述べている。書痴で、関口君を猿だの何だの貶す一方、事件の内容を聞いても積極的に解決に向けて動くことのない姿勢をとる典型的な安楽型椅子探偵。
楽観視している……というわけではないのだが、自分の成すことが黒幕の手の平の内(堂島静軒)に浅からず関係していることを薄々ながら察知してか、基本的には乗り気ではない。
なお、京極と堂島の関係はかつての上司と部下といったものであり、戦時中、京極堂が占領国の洗脳の仕事を担当し、「楽しくはない仕事だった」と述べる中で、未登場でありながらにも示唆的に存在が仄めかせられている。
堂島における暗躍は頼子にある種の因縁じみた糸を結び、生まれ変わりだの、関口が執筆した羽化登仙だのに、現実離れしつつも思想を関連付けるなど度し難い扇動を行っていた。幻想小説家・久保にまで悪影響が及んでおり、もはや京極堂シリーズにおいては彼に無関係な事件はないといって良いかもしれない。


本編に戻って「魍魎の匣」について語るならば、洗脳実験を行っていた京極堂のかつての上司である軍医の美馬坂の元へ加奈子が搬送され一命を取り留めるも、肉体が生きる限りにおいて不必要な臓器と肉体を切り捨てて、ようやくやっと加奈子は生き永らえることができるというものであった。

加奈子と親しかった彼女の保護者である雨宮は珍しくも激高するものの、命を落とすよりはマシだと判断してか渋々ながら承諾している。

加奈子が命を狙われる理由が明かされないままストーリーが進行していくのだが、頼子や木場が施設内にいる中で加奈子は忽然と姿を消し、その後施設の出入り口に加奈子を誘拐したとの脅迫状が張り出されている。そうして雨宮もいなくなった。

その後、頼子と加奈子の肉体の一部である箱詰めになった腕と、湖においてその他肉体の一部が県警により発見されている。
これを皮切りにおんばこ様の教徒であった女子バラバラ殺人及び死体遺棄が連鎖的に発生していくのだが、市井の人々は火車(亡骸を奪う妖怪)の仕業と騒ぎ立てようになった。

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