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タグ / 片手剣

記事
愚者の抱擁 [2017/01/14 00:00]
あの囚われし絶望から救われた。 あの呪われた運命を捨てられた。 あの怒りにまみれた炎を鎮められた。 あの出会った日が我を変えた。 我の火で地を焼き尽くそう。 我の牙で血を啜ろう。 我の爪で敵を引き裂こう。 我の翼で空を駈けよう。 その目から光が奪われるのなら。 その肌が血に染まるのなら。 その剣が重いのなら。 その口が物言えぬのなら。 この身体が燃え尽きようとも。 この言葉が奪われようとも。 この契約が果てるまで。 この暖かさが失われるその刻まで。
迷宮の声 [2017/01/13 00:00]
その女の子には2本のおおきなツノが生えていたんだよ。耳のちょっと上のあたりから、牛みたいな立派なツノが。ツノの根本を見た事があるんだが、完全に頭の骨から生えてるみたいだったな。もちろんそんな子はその子だけだよ。他の子は普通の子だった。ツノの子も、生まれた時は小さかったらしいよ。あ、いやツノがね。そりゃあそうだ。あんなバカデカイツノがあったら、かあちゃんの腹から出てこれやしねえからな。 イジメられていたかと思うだろ?それが全然違うんだな。その子は村の誰よりも強かった。村であの..
不死鳥の短剣 [2017/01/12 00:00]
戦地に赴いた男と結婚の約束をしていた娘がいた。娘は信心深く、朝に昼に夜に祈りを捧げ、ただただその男の無事を願い続けた。娘の一途な祈りが通じたのか、ある夜、娘の夢に光り輝く小鳥が現れ言葉を託した。 「男は無事戻るでしょう。」小鳥が囀ったその言葉に、信心深い女は泣きながら喜んだ。「けれど、」光り輝く小鳥は美しい声で続けた。「心は戻らないでしょう。」 やがて小鳥の言う通り、男は生きて戻った。その逞しい体に無数の傷跡を残して。やがて小鳥の言う通り、男は確かに生きて戻った。その傍ら..
古の覇王 [2017/01/11 00:00]
何世紀にも渡って繁栄した巨大王国に受け継がれていた王族の剣。剣の水晶には魔力があり一万人の血を吸うことで真っ赤に輝き、使っている者を不老不死にするという言い伝えがあった。しかし覇王と呼ばれた最後の王は、不死の身体よりも先代から受け継いだ王国の繁栄を何よりも大事にした。 ある日、最愛の后が不慮の事故により死んでしまう。王の子を宿しており、出産間近の悲劇だった。王は国を継ぐ息子が亡くなったと聞くと、絶望と悲しみに打ちひしがれ、既に高齢となった自分で王家の血が断絶する運命を受け入..
信義 [2017/01/10 00:00]
東の果ての都に高名な歌人がいた。けれど歌人の才は、晩年には一首の歌すら詠めぬ程に枯れ果ててしまう。落ちぶれて嘆く歌人に、いつの間にやら傍に佇んでいた僧がそっと一振りの刀を握らせ語りかけた。 「この刀で一人殺せば一首、二人殺せば二首、この世に二つとあらぬ程素晴らしい歌が詠めましょう」僧の言葉に縋りつくようにして、歌人は夜の闇に紛れ路傍の男を斬り捨てた。すると翌日歌人は素晴らしい歌を詠み、再び名声と栄華を手に入れた。 それからも歌人は一人殺して一首詠み、二人殺して二首詠んでは..
百獣の剣 [2017/01/09 00:00]
むかしむかしある王国に3人の兄弟がいました。3兄弟の次男は軍隊をひきいる将軍様でした。軍隊はとても暴力的でみんなおびえていました。 将軍は戦争が好きでした。もえた街や転がる死体を見ることが好きでした。将軍は征服することではなく、滅ぼす事だけを命じました。機械のように調教された兵隊達は将軍様のために村や街や国をぜーんぶ滅ぼしていきました。将軍様はそれを見ながらグフグフグフと下品な声で笑いました。 軍隊はひたすらに進軍しました。海の国も、山の国も、夏の国も、冬の国も、東の国も..
背信の刃 [2017/01/08 00:00]
その姉妹は機械仕掛けの人形だった。しかし誰が見ても人間にしか見えない精巧な造りだった。人間が成し得る技術の粋を用いて作られた二体の人形は、人間のように歩き、人間のように食べ、人間のように笑った。ただ一点、涙を流す事だけは出来なかった。そういう風には作られていなかったのだ。 姉妹は人形だったから何も感じなかった。人と同じように悲しんだりするが、本当は悲しくなんかなかった。悲しいという事が何か判らなかった。友達が事故で死んだ時も、人形を作った製作者が病で死んだ時も、何も感じなか..
地竜の鉤爪 [2017/01/07 00:00]
カビ臭い博物館の奥深く、薄暗い資料室の中で、一人の老学者が座っている。老学者の前には厳重に封印された箱が一つ。先代の館長から「開けてはならない」と厳しく言いつけられていた品だ。 何でもその中には人の生き血を吸う化石が入っているらしい。馬鹿な話だ。狭くて時代遅れにも程がある。本に囲まれた学問の世界で暮らしているから、そんな迷信を信じるのだ。 箱を開ける。埃が舞い上がる。中には奇妙な形の石が一つ。柄が付いているところを見ると儀礼用の装備だろうか……もしくは武器のようにも見える..
輪廻転生 [2017/01/06 00:00]
そうさ、これは君の命を絶つ為の武器だ。なあに心配は要らない。今まで感じた事のないような苦痛を与えてやろう。最初は痛みなど感じない。まるで水が肌の上をスッと流れたように思うだけだ。痛みを感じる前に流れ出る血で叫び出す奴が多いんだがな。 ああ、そんな簡単には終わりはしないさ。刃のこの部分を使うともの凄く痛いんだ。だからここを使うときはなるべく後の楽しみに取っておくんだ。声が枯れちゃってからだと何言ってるか判らなくなるからね……うるさいなあ。もう少し静かにしてくれないか? 手..
月光と闇 [2017/01/05 00:00]
遥か昔に大火事に襲われた国を、全てを凍らせてしまう剣が救ったという伝説がある。永遠に続く業火の苦しみから人々を救ったとされていた。その剣の周りには何千もの人型の氷像が佇んでいた。 世界中の武器を探し求める男が、剣の前に現れた。男は剣に幾重にも布を巻いて、剣を持ち出した。しかし、背中の荷物に入れて運んでいると、知らず知らずの間に布もろとも男は凍ってしまった。 旅の巫女が剣の前に現れた。巫女は神に祈りを捧げた後に剣を取ったが、指先からみるみる身体が冷えていく。巫女は神への冒涜..
涅槃の短剣 [2017/01/04 00:00]
少女は生まれた時から婚約者がいると聞かされて育てられました。家の中で日々花嫁修業に励み、夜は窓から見える景色に向かって婚約者へ祈りを捧げました。「●●様、早く迎えに来てくれる日をお待ちしています。」 少女が暮らす家には、同じ年頃の少女が何人も暮らしておりました。少女たちは全員が同じ婚約者の為に、日々花嫁修業に励み、夜は祈りを捧げました。「●●様、早く迎えに来てくれる日をお待ちしています。」 ある日、婚約者として選ばれるのは、最も優れた一人ではないのかと少女たちが喧..
ゆりの葉の剣 [2017/01/03 00:00]
アイシテル。私は彼を心から愛していました。彼も私を愛していました。外で目が合えば私にだけ分かる合図を送り、私の贈るものはなんでも喜んで、「勿体無いから金庫にしまっておく」と言うくらい大事にしてくれました。自慢の恋人でした。 シンジナイ。私の親友が彼をたぶらかし、私から彼を奪ってしまいました。忽然と私の前から消えてしまった彼。残ったのは、私と、部屋に錯乱した私の贈り物の数々。金目のものは、村の市場で売られていました。 ユルサナイ。彼は私を棄てたんじゃないわあの女に騙されてる..
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