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タグ / 鉄塊

記事
鉄塊 [2019/03/06 00:00]
とある荒野より発掘されたその剣は、 剣と呼ぶには余りに大きい代物だった。 戦闘に使うには重く、儀礼用にしては武骨過ぎる。 考古学者たちは、この剣の意義が分からなかった。 その剣が出土した地層と、同じ時代の文献を調べると、 この剣に関する逸話が見付かった。 どうやうこの剣の持ち主であった騎士は、 たった一人で、争う二国を二つとも滅ぼしたと言う。 この剣の材質を調べてみると、驚くことに、 鉄以外に、人間の骨や血の成分が含まれていた。 考古学者たちは..
鉄塊 [2018/02/01 00:00]
長きに渡る惰眠により鈍らと化した刀身は、その名の通りただの鉄の塊だ。血に彩られし過去は全て赤錆び、ざりざりと音を立てて剥がれていく。 不快な重みしか与えないこの塊を、誰が振るおうか。斬るのではなく肉を叩き潰すだけのその塊を、誰が好もうか。振るうほどに狂気に駆りたてるその武器を、誰が愛そうか。 眠り続ける平穏に安堵する。戦わなければ血でこの身が砥がれる事もない。このまま崩れて滅びる事も出来よう……だが、力を求める愚か者達はその安らぎを許しはしなかった。 剥がれ落ちる赤錆は..
鉄塊 [2017/02/06 00:00]
我は産声を上げる。熱く熱せられた鉄がその身を形作る時。鋼の槌が我が身を打ち叩く時。薄闇の中に燃えさかる深紅と、鋼の火花の照り返す白光が見守る中。約束された業苦を与える為に。我は鉄塊と呼ばれし武器。轟音から生まれ落ちる刃。 我は死を与える。敵の畏怖と悲鳴を喜びに変え、その鉄の肌に臓物を飾り付けて。人の命を奪う時、暗い喜びが我を満たした。人の身を押しつぶす時、自らの生まれた意味を知った。その歓喜を伝える為に、人を殺し続けた。われは鉄塊と呼ばれし武器。我は殺す。殺す。殺す。殺す。..
折れた鉄塊 [2016/01/10 00:00]
鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄 鉄の塊は鍛え上げられる。堅さこそ戦場での強さだったから。 鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄鉄 殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺 鉄の塊は殺しまくる。それが彼の存在する意味だったから。 殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 鉄の塊は命を奪う。そうすれば願いが叶うと思っていたから。 肉肉肉肉肉肉肉..
折れた鉄塊 [2015/05/03 00:00]
かつて世界で最も大きな剣と称され見る者をその迫力で圧倒していた雄姿は見る影もなく、剣というにはあまりにも惨めな塊に変わり果てていた。 剣が健在でいた時代。以前の持ち主は、この剣をとても人の力では扱えない代物までに鍛え上げ、それでもまだ何かに取り憑かれるように、刀身に使える素材を探し集めた。躯から鎧を剥ぎ取り、武器を奪い骨をも抜き出しては、打ち合せ剣の一部としていた。 次第に剣は斑に色を変え、剣先に行くほど赤黒く伸びていく。その相反する色は、まるで隠り世と現世の境にも見えた..
鉄塊 [2014/02/02 00:00]
この世界で最も大きな剣。普通の人間では振るうどころか動かすことすらできず、今までこの剣を使おうと思う人間はいなかった。 この大剣を所持していた「バッカス将軍」は、弱者の命でさえも容赦なく奪う冷血漢で、自分の力を誇示するために殺した敵の鎧を溶かし作り上げた。 命を奪う度に重くなる大剣。次第に持ち運ぶのさえも困難になり、誰にも、当の本人さえも扱えなくなっていった。 ある朝、バッカス将軍の惨殺死体が見つかる。屍の傍らには血に染まり肉片の付いたこの鉄塊。いったい誰がこの剣を振る..
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