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2012年02月14日

霊使い達の宿題その4・水霊使いの場合(中編@)(遊戯王OCG・二次創作作品)









 
 火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
 前回同様、貴方の思い描くエリアとは性格が”かなり”違うと思われますので、前回拒否反応及びアレルギー反応なぞ出た方は、無理をせずリターン推奨。
 詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
 


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                          ―3―

 「えー、それでエリアさんはどの様な御用でこちらに?」
 「へ?あ〜それは、その〜・・・」
 風水師の問いに言葉を濁すエリアを見て、ギゴバイトが怪訝そうに声をかける。
 『何困った様な顔してんの?ボクらはこの辺りに住んでるドラゴンを・・・んが、ぐぐ!?』
 口を踏まれた。
 「・・・ドラゴン?」
 「あ、いや、この辺りにはどんなドラゴンがいるのかな〜なんて・・・」
 あからさまに挙動不審なエリア。しかし、その言葉を訊いた風水師の目が鋭く輝いた、様な気がした(顔は例の如く、鏡の陰に隠れて見えない)。
 「つまり貴女はこの氷結界の地に、ドラゴンを求めて来たと・・・?」
 「え、あ、いや、それはその・・・」
 「と言う事は・・・」
 「う、あ・・・」
 二人の間の空気が張り詰める。その緊迫した空気に、第三者であるギゴバイトも言葉が出ない(今だ口を踏まれたままであるせいもあるが)。
 と、風水師がピクリと動いた。手にぶら下げた鏡が不気味に揺れる。
 息を呑むエリア。
 そして―

 「御観光が目的ですね♪」

 ズシャァアアッ
 
 何の音か。
 エリア達が盛大にずっこけた音である。
 「ああ、大丈夫ですか?」
 そういう風水師の顔を隠す鏡はいつの間にか裏返り、そこには「おいでませ」の文字。筆と墨で書かれ、実に風流である。
 「この辺りの地面は滑りが良いですから。気をつけてくださいね。」
 そう言いながらも、風水師は何処からか三角旗の着いた某を取り出し、それに墨と筆でスラスラと字を書いていく。(ちなみに顔を隠していた鏡は頭にぶら下げられ、相変わらず顔を隠している。)

 (エリア御一行様)

 歳に似合わず、なかなか達筆である。

 「いやー、助かります。戦争が始まってからこっち、とんと観光客が減ってしまって困ってたんですよ。」
 「ま・・・まぁ、そうでしょうね・・・。」
 「それでは。」
 そんな言葉とともについと出された手。
 「・・・は?」
 何の事か分からないといった態のエリアに、風水師はニコニコと笑いながら(の様な気がする)こう告げた。
 「名所・名物のご案内及び一泊二日二食付でお一人様1万5千ゴブリン(注1)、お二人でちょうど3万ゴブリンになります。」
 それを聞いたエリアの顔が一気に青ざめる。
 「お、お金とるの!?」
 「はい。本来でもお一人様で3万ゴブリンととてもお安いんですが、今は戦時中キャンペーンという事で、さらに50%オフになっています。どうです?お得でしょう。」
 「そ・・・そんな事言われたって・・・。」
 財布の中を確認するエリア。そして風水師に向かって困った様な笑みを向ける。
 「あの、ね、もし・・・お金が・・・」
 「・・・お金が、ない・・・?」
 途端に風水師の声にドスが篭る。 
 「・・・貴女、そんな理屈が通るもんか通らんもんか・・・」
 風水師の身体からユラリと“何か”が立ち昇る。気のせいか、バックに「ゴゴゴゴゴ」という擬音が見える様な気がした。
 「――っう、うそうそ!!ある!!ちゃんとあるから!!」
 エリアが慌ててそう訂正すると、風水師の身体から立ち昇っていた”何か”がプシュ〜と消えていった。
 「ですよね〜。もしお金がないなんて言ったら、身包みはいでブリューナクの餌になってもらう所でしたよ(ニッコリ)。」
 「あ、あはは。ちょっと待っててね。」
 そう言うとエリアは傍らのギゴバイトの頭を掴み、少し離れた岩の裏に走っていくとそこにしゃがみ込んだ。
 そして声を潜めてギゴバイトに言う。
 「ちょっと、お金足んないのよ。あんたも出しなさい!!」
 『ええ、ボクも出すの!?』
 「当たり前でしょ!?へそくり、結構ためてんの知ってるんだからね!!」
 『そ、そんなぁ。あれはいざって時の為に・・・』
 「今がそのいざって時でしょ!?それとも何?あんた化け物の餌になりたい訳!?」
 『大体、何で観光なんて話になってんのさ!?ボク達は宿題の為に・・・』
 「その宿題の為なのよ!!丁度良いの!!いいから黙って出しなさい!!」
 『丁度良い?』
 その言葉に、ギゴバイトは露骨に嫌そうな顔をする。
 『・・・エリア、何か変な事考えてない?』
 「・・・何も考えてないわよ!!ほら、早く!!」
 
 ―結局、ギゴバイトは総額の八割を払う事になった。

 「すいませんねー。戦(いくさ)を続けるのもお金がかかりまして・・・。はい、毎度ありー♪」
 エリアから代金を受け取った風水師は、ホクホクとした声でそう言うと「エリア一行様」と書かれた旗を掲げた。
 「さぁ、それでは出発しましょう。氷結界ツアーを始めまーす。」
 こうして釈然としない思いを抱えたまま(主にギゴバイト)、地獄の氷結界ツアーは始まったのだった。


                           ―4―

 ―そこは、非常に騒然としていた。 

 ドガガガガガッ
 ゴォオオオオオッ
 ギェエエエエエッ
 バリバリバリッ
 キシュアァアアアアアッ
 
 飛び交う炎弾、氷弾、雷撃弾。
 それに混じって響く奇声、雄叫び、断末魔。
 そう。そこは戦場。容赦なき命のやり取りの場。
 その真っ只中に、彼女達はいた。
 「はーい、それでは右手を御覧くださーい。」
 ほふく前進をしながら、風水師が右方向を示す。
 「あ、くれぐれも頭は上げないようにー。流れ弾に当りますからー。」
 「上げようたって上げらんないわよ!!何よこれー!?」
 『ひぃいいいっ、神様仏様ホルアクティ様ーっ!!』
 「ちょっと、どこ見てんのよ!?エッチ!!」
 『グヘァッ!?』
 「おいっ!頭上げんなっつってんだろゴルァ!!」
 飛び交う弾幕の嵐の中、這いつくばって悲鳴と悪態を上げながら、それでもエリアとギゴバイトは示された通り右手を見る。
 そこにいたのは、蛇の様に長大な身体を氷の様な輝く鱗に包み、空を覆わんばかりの翼をはためかせる一頭の巨龍。その猛々しい顔は四方にのびた角に飾られ、まるで巨大な雪の結晶の様だ。
 と、その巨体に奇怪な姿をしたモンスター達がゾロゾロと群がっていく。
 「うぇっ、何あのモンスター達。ヌルヌルテカテカして気持ち悪い〜!!」
 そんなエリアの声を聞いた風水師が、声を張り上げて説明する。
 「はい!!彼奴らがこの戦の発端、異端にして邪悪なる異星の使途、忌むべきして無慈悲に殲滅すべき侵略者、「ワーム」どもなのであります!!」
 風水師が喋る間にも、ワーム達はどんどん竜の身体に群がっていく。
 群がっている所から、バリバリと電撃が竜の身体に走っていくのが見える。
 『あ、あ!!あの龍、やられちゃうんじゃ・・・』
 慌てるギゴバイトに、しかし余裕たっぷりに風水師は答える。
 「大丈夫、御覧ください!!」
 その言葉通り、龍は身体に走る電撃を意に介する様子もなく、ただ鬱陶しそうにその身を震わせた。 次の瞬間、その身体を包む氷の鱗が無数の氷弾となって四方に飛び散る。
 その氷弾に貫かれたワーム達は瞬く間に凍りつき、粉々になって風に散っていった。
 「わお!!」
 『凄い・・・!!』
 エリア達の感嘆の声に、風水師は得意そうに説明する。
 「はい、御覧になりましたね!?彼の龍こそ、我ら氷結界が封印、守護してきた三頭の龍が一、「氷結界の龍・ブリューナク」なのでございます!!」
 『うへぇ、凄いなあ・・・。』
 「・・・でも駄目ね。ありゃ確か龍は龍でも海竜族だった筈だわ・・・」
 『・・・は?』
 何か不穏な言葉を聴いた様な気がする。
 ギゴバイトが見つめると、エリアは慌てて明後日の方向を見て口笛なぞ吹いている。
 何か怪しい。
 しかし、そんなギゴバイトの勘繰りも、風水師の次の言葉に遮られる。
 「はい、それでは今度は左手を御覧くださーい!!」
 言われて見て見ると、そこにはまた別の龍の姿。
 先のブリューナクとは違い、今度の龍は虎の様ながっしりとした体躯を持っている。
 鋭く強靭な爪は凍てつく大地をしかと掴み、氷の外殻から覗く身体と翼はまるでオーロラの様に七色に輝いていた。
 「どうです?美しいでしょう。彼の龍は三頭の龍が二、「氷結界の龍・グングニール」であります!!」
 そのグングニールを取り囲んでいるのは、今度はワームではなく一様に黒装束に身を包んだ軍団。
 「あいつらは?」
 「よくぞ聞いてくれました!!彼奴らこそこの戦乱に乗じ、この地を征服せんと攻めてきた狡猾にて無法な蛮族、「魔轟神」なのです!!」
 グングニールを取り囲んだ魔轟神達が何やら呪文を唱える。途端、空間のあちこちに緑色の魔方陣が浮かび、そこから無数の雷撃や火炎弾が彼の龍に向かって放たれる。
 しかしそれらが着弾する瞬間、龍の七色の翼が輝きを増し、そこから幾条もの閃光が放たれた。七色の閃光は迫っていた雷撃や火炎をかき消し、その勢いのまま周囲の魔轟神達に雨の様に降り注ぐ。巻き起こる爆発。立ち込める黒煙。
 そしてその爆炎が消えた後には、ただ平坦な荒野と化した大地だけが残っていた。
 『ふぇえ、あっちも凄いなぁ・・・』
 「ふーん。なかなかね。・・・だけどもうちょい・・・」
 『あのさ、さっきから何ブツブツ言ってるわけ?』
 「何でもないわよ。それよか、前見るなって言ってるでしょ!!また蹴られたいの!?」
 『はいはい・・・』
 そんなやり取りをしながら、風水師の案内に従ってほふく前進すること数時間。一向はやっと嵐の戦場を抜ける事が出来た。
 「はーい。ここまで来たら、立ち上がってオッケーでーす。」
 指示に従って立ち上がる。
 『ひぇ〜、死ぬかと思った・・・。』
 「あ〜もう!!服、土だらけじゃない!!最悪!!」
 ブツブツ言う二人をよそに、風水師は目の前を指し示す。そこには、氷に覆われた大きな洞窟が口を開けていた。
 「ここが彼の龍達が封印されていた場所。その名も「氷結界の封印宮」(注2)です。」
 「「『氷結界の封印宮』?」」
 「はい。ここに氷結界が最後の龍、「トリシューラ」が封印されているのです!」
 それを聞き、エリアとギゴバイトはその洞窟をまじまじと見つめる。

 ―薄明るく光る洞窟の奥から、何者かの鼓動が聞こえた様な気がした。


                                                 続く

(注1) この世界の通貨。何でゴブリンかは言わずもがな。ちなみに1ゴブリン=1円。べ、別に細かい設定するのが面倒だった訳じゃないんだからね!!

(注2) うp主が勝手に考えたもの。カードにはないんで探さない様に。
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