火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
前回同様、貴方の思い描くエリアとは性格が”かなり”違うと思われますので、前回拒否反応及びアレルギー反応なぞ出た方は、無理をせずリターン推奨。
詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
【遊戯王シングルカード】 《エキスパート・エディション4》 憑依装着−エリア ノーマル ee04-jp087 新品価格 |
―3―
「えー、それでエリアさんはどの様な御用でこちらに?」
「へ?あ〜それは、その〜・・・」
風水師の問いに言葉を濁すエリアを見て、ギゴバイトが怪訝そうに声をかける。
『何困った様な顔してんの?ボクらはこの辺りに住んでるドラゴンを・・・んが、ぐぐ!?』
口を踏まれた。
「・・・ドラゴン?」
「あ、いや、この辺りにはどんなドラゴンがいるのかな〜なんて・・・」
あからさまに挙動不審なエリア。しかし、その言葉を訊いた風水師の目が鋭く輝いた、様な気がした(顔は例の如く、鏡の陰に隠れて見えない)。
「つまり貴女はこの氷結界の地に、ドラゴンを求めて来たと・・・?」
「え、あ、いや、それはその・・・」
「と言う事は・・・」
「う、あ・・・」
二人の間の空気が張り詰める。その緊迫した空気に、第三者であるギゴバイトも言葉が出ない(今だ口を踏まれたままであるせいもあるが)。
と、風水師がピクリと動いた。手にぶら下げた鏡が不気味に揺れる。
息を呑むエリア。
そして―
「御観光が目的ですね♪」
ズシャァアアッ
何の音か。
エリア達が盛大にずっこけた音である。
「ああ、大丈夫ですか?」
そういう風水師の顔を隠す鏡はいつの間にか裏返り、そこには「おいでませ」の文字。筆と墨で書かれ、実に風流である。
「この辺りの地面は滑りが良いですから。気をつけてくださいね。」
そう言いながらも、風水師は何処からか三角旗の着いた某を取り出し、それに墨と筆でスラスラと字を書いていく。(ちなみに顔を隠していた鏡は頭にぶら下げられ、相変わらず顔を隠している。)
(エリア御一行様)
歳に似合わず、なかなか達筆である。
「いやー、助かります。戦争が始まってからこっち、とんと観光客が減ってしまって困ってたんですよ。」
「ま・・・まぁ、そうでしょうね・・・。」
「それでは。」
そんな言葉とともについと出された手。
「・・・は?」
何の事か分からないといった態のエリアに、風水師はニコニコと笑いながら(の様な気がする)こう告げた。
「名所・名物のご案内及び一泊二日二食付でお一人様1万5千ゴブリン(注1)、お二人でちょうど3万ゴブリンになります。」
それを聞いたエリアの顔が一気に青ざめる。
「お、お金とるの!?」
「はい。本来でもお一人様で3万ゴブリンととてもお安いんですが、今は戦時中キャンペーンという事で、さらに50%オフになっています。どうです?お得でしょう。」
「そ・・・そんな事言われたって・・・。」
財布の中を確認するエリア。そして風水師に向かって困った様な笑みを向ける。
「あの、ね、もし・・・お金が・・・」
「・・・お金が、ない・・・?」
途端に風水師の声にドスが篭る。
「・・・貴女、そんな理屈が通るもんか通らんもんか・・・」
風水師の身体からユラリと“何か”が立ち昇る。気のせいか、バックに「ゴゴゴゴゴ」という擬音が見える様な気がした。
「――っう、うそうそ!!ある!!ちゃんとあるから!!」
エリアが慌ててそう訂正すると、風水師の身体から立ち昇っていた”何か”がプシュ〜と消えていった。
「ですよね〜。もしお金がないなんて言ったら、身包みはいでブリューナクの餌になってもらう所でしたよ(ニッコリ)。」
「あ、あはは。ちょっと待っててね。」
そう言うとエリアは傍らのギゴバイトの頭を掴み、少し離れた岩の裏に走っていくとそこにしゃがみ込んだ。
そして声を潜めてギゴバイトに言う。
「ちょっと、お金足んないのよ。あんたも出しなさい!!」
『ええ、ボクも出すの!?』
「当たり前でしょ!?へそくり、結構ためてんの知ってるんだからね!!」
『そ、そんなぁ。あれはいざって時の為に・・・』
「今がそのいざって時でしょ!?それとも何?あんた化け物の餌になりたい訳!?」
『大体、何で観光なんて話になってんのさ!?ボク達は宿題の為に・・・』
「その宿題の為なのよ!!丁度良いの!!いいから黙って出しなさい!!」
『丁度良い?』
その言葉に、ギゴバイトは露骨に嫌そうな顔をする。
『・・・エリア、何か変な事考えてない?』
「・・・何も考えてないわよ!!ほら、早く!!」
―結局、ギゴバイトは総額の八割を払う事になった。
「すいませんねー。戦(いくさ)を続けるのもお金がかかりまして・・・。はい、毎度ありー♪」
エリアから代金を受け取った風水師は、ホクホクとした声でそう言うと「エリア一行様」と書かれた旗を掲げた。
「さぁ、それでは出発しましょう。氷結界ツアーを始めまーす。」
こうして釈然としない思いを抱えたまま(主にギゴバイト)、地獄の氷結界ツアーは始まったのだった。
―4―
―そこは、非常に騒然としていた。
ドガガガガガッ
ゴォオオオオオッ
ギェエエエエエッ
バリバリバリッ
キシュアァアアアアアッ
飛び交う炎弾、氷弾、雷撃弾。
それに混じって響く奇声、雄叫び、断末魔。
そう。そこは戦場。容赦なき命のやり取りの場。
その真っ只中に、彼女達はいた。
「はーい、それでは右手を御覧くださーい。」
ほふく前進をしながら、風水師が右方向を示す。
「あ、くれぐれも頭は上げないようにー。流れ弾に当りますからー。」
「上げようたって上げらんないわよ!!何よこれー!?」
『ひぃいいいっ、神様仏様ホルアクティ様ーっ!!』
「ちょっと、どこ見てんのよ!?エッチ!!」
『グヘァッ!?』
「おいっ!頭上げんなっつってんだろゴルァ!!」
飛び交う弾幕の嵐の中、這いつくばって悲鳴と悪態を上げながら、それでもエリアとギゴバイトは示された通り右手を見る。
そこにいたのは、蛇の様に長大な身体を氷の様な輝く鱗に包み、空を覆わんばかりの翼をはためかせる一頭の巨龍。その猛々しい顔は四方にのびた角に飾られ、まるで巨大な雪の結晶の様だ。
と、その巨体に奇怪な姿をしたモンスター達がゾロゾロと群がっていく。
「うぇっ、何あのモンスター達。ヌルヌルテカテカして気持ち悪い〜!!」
そんなエリアの声を聞いた風水師が、声を張り上げて説明する。
「はい!!彼奴らがこの戦の発端、異端にして邪悪なる異星の使途、忌むべきして無慈悲に殲滅すべき侵略者、「ワーム」どもなのであります!!」
風水師が喋る間にも、ワーム達はどんどん竜の身体に群がっていく。
群がっている所から、バリバリと電撃が竜の身体に走っていくのが見える。
『あ、あ!!あの龍、やられちゃうんじゃ・・・』
慌てるギゴバイトに、しかし余裕たっぷりに風水師は答える。
「大丈夫、御覧ください!!」
その言葉通り、龍は身体に走る電撃を意に介する様子もなく、ただ鬱陶しそうにその身を震わせた。 次の瞬間、その身体を包む氷の鱗が無数の氷弾となって四方に飛び散る。
その氷弾に貫かれたワーム達は瞬く間に凍りつき、粉々になって風に散っていった。
「わお!!」
『凄い・・・!!』
エリア達の感嘆の声に、風水師は得意そうに説明する。
「はい、御覧になりましたね!?彼の龍こそ、我ら氷結界が封印、守護してきた三頭の龍が一、「氷結界の龍・ブリューナク」なのでございます!!」
『うへぇ、凄いなあ・・・。』
「・・・でも駄目ね。ありゃ確か龍は龍でも海竜族だった筈だわ・・・」
『・・・は?』
何か不穏な言葉を聴いた様な気がする。
ギゴバイトが見つめると、エリアは慌てて明後日の方向を見て口笛なぞ吹いている。
何か怪しい。
しかし、そんなギゴバイトの勘繰りも、風水師の次の言葉に遮られる。
「はい、それでは今度は左手を御覧くださーい!!」
言われて見て見ると、そこにはまた別の龍の姿。
先のブリューナクとは違い、今度の龍は虎の様ながっしりとした体躯を持っている。
鋭く強靭な爪は凍てつく大地をしかと掴み、氷の外殻から覗く身体と翼はまるでオーロラの様に七色に輝いていた。
「どうです?美しいでしょう。彼の龍は三頭の龍が二、「氷結界の龍・グングニール」であります!!」
そのグングニールを取り囲んでいるのは、今度はワームではなく一様に黒装束に身を包んだ軍団。
「あいつらは?」
「よくぞ聞いてくれました!!彼奴らこそこの戦乱に乗じ、この地を征服せんと攻めてきた狡猾にて無法な蛮族、「魔轟神」なのです!!」
グングニールを取り囲んだ魔轟神達が何やら呪文を唱える。途端、空間のあちこちに緑色の魔方陣が浮かび、そこから無数の雷撃や火炎弾が彼の龍に向かって放たれる。
しかしそれらが着弾する瞬間、龍の七色の翼が輝きを増し、そこから幾条もの閃光が放たれた。七色の閃光は迫っていた雷撃や火炎をかき消し、その勢いのまま周囲の魔轟神達に雨の様に降り注ぐ。巻き起こる爆発。立ち込める黒煙。
そしてその爆炎が消えた後には、ただ平坦な荒野と化した大地だけが残っていた。
『ふぇえ、あっちも凄いなぁ・・・』
「ふーん。なかなかね。・・・だけどもうちょい・・・」
『あのさ、さっきから何ブツブツ言ってるわけ?』
「何でもないわよ。それよか、前見るなって言ってるでしょ!!また蹴られたいの!?」
『はいはい・・・』
そんなやり取りをしながら、風水師の案内に従ってほふく前進すること数時間。一向はやっと嵐の戦場を抜ける事が出来た。
「はーい。ここまで来たら、立ち上がってオッケーでーす。」
指示に従って立ち上がる。
『ひぇ〜、死ぬかと思った・・・。』
「あ〜もう!!服、土だらけじゃない!!最悪!!」
ブツブツ言う二人をよそに、風水師は目の前を指し示す。そこには、氷に覆われた大きな洞窟が口を開けていた。
「ここが彼の龍達が封印されていた場所。その名も「氷結界の封印宮」(注2)です。」
「「『氷結界の封印宮』?」」
「はい。ここに氷結界が最後の龍、「トリシューラ」が封印されているのです!」
それを聞き、エリアとギゴバイトはその洞窟をまじまじと見つめる。
―薄明るく光る洞窟の奥から、何者かの鼓動が聞こえた様な気がした。
続く
(注1) この世界の通貨。何でゴブリンかは言わずもがな。ちなみに1ゴブリン=1円。べ、別に細かい設定するのが面倒だった訳じゃないんだからね!!
(注2) うp主が勝手に考えたもの。カードにはないんで探さない様に。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image