月曜日。半分の月がのぼる空二次創作の日です。
今回の話は今日で終りですが、次回から新しい話にならなきゃならん訳ですが・・・
すいません。
弾が切れました・・・orz
よって少しの間充電期間をいただく事になるかもしれません。
読んでくださってる方、誠に申し訳ありません。
来週、新しい話の掲載がなければ、まだ充電が終わってないものと思ってください。
・・・しかし、この頃だんだんボロがでてきたなぁ・・・(汗)
じゃ、コメントレス
wwwwww
動画制作のためなら仕方ないwww
ご理解の程、感謝する。
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8
―♪あなたと出会えたことに
感謝したい
誰よりたいせつな
大好きなあなたへ♪―
休み明けの月曜日。
あたしにとっては、重大な責任から開放された安堵の日。
そして、先輩にとっては運命(?)の日だ。
正直、結果が気にならなくもなかったが、その場にのこのこ覗きに行くほど無粋でもない。
まあ、後日首尾を確認するくらいは許されるだろう。
放課後の教室でそんな事を考えながら、あたしは椅子に座ってパックのジュースなど啜っていた。
傍らでは、同じ様に椅子に座った綾子がいつもの様に絵を描いている。
「それで、“それ”にしたの?プレゼント。」
教室の窓から校庭に生えているプラタナスの木を写生しながら、綾子がそんな事を訊いてくる。
「うん。結局、それが一番かなって。」
そう言いながら、パックの底に残ったジュースをズズッとすする。
「納得したの?先輩。」
「まぁ、大分不安そうではあったけどね。」
空になったジュースのパックを、ポーンと放る。クルクルと舞ったパックは綺麗な放物線を描いて、ポスッとゴミ箱の中に入った。
「あ、あれ!」
綾子が校門の方を指差して言った。
見てみると、件の二人が一緒に下校する所だった。
相変わらず、距離が近い。
先輩の話を聞いた今では、その近さが決して見た目だけではない事も分かる。
二人を繋ぐ紅い糸が、遠目にも見える様な気がした。
「もう、渡したのかな?プレゼント。」
「さぁ。人目もあるし、流石に学校じゃ渡さないんじゃない?どうせ、ああやってずっと一緒にいるんだし。帰り道で渡すか、じゃなけりゃ、どっちかの家で渡すか。」
「ふ〜ん。」
人の話を聞いているのかいないのか、綾子はそんな気の無い返事を返しながら、紙の上に鉛筆を走らせる。
ポツンと立っていたプラタナスの下に、見る見る二人の姿が写し出されていく。
「・・・あんた、ホント、上手いよね。」
何気なく呟いたその一言に、綾子の手が止まった。
何か驚いた様な顔をして、あたしの方を見る。
「何?」
「ううん。何か、初めてだから。吉崎さんにそんな風に言われたの。」
「そうだっけ?」
「うん。」
綾子は少し、嬉しそうだった。
確かに、そうだったかもしれない。上手いとは前から思っていたけど、口に出したのは初めて。
何故か、自然に声が出た。綾子の絵からは、あの二人の絆の強さがしっかりと伝わってくる。その雰囲気が、そうさせたのかもしれない。
昨日、先輩からあの話を聞いてから、何だか自分がおかしい気がする。何かが、胸の内で疼いている。それはそわそわとくすぐったい様で、それでいて少し暖かい。今までに感じた事のない感覚だ。眼下の校庭へ視線を戻す。校門に、もう二人の姿はない。もう一度、綾子の絵へと視線を戻す。そこにはあの二人の姿が、切り取られた時の中に留められている。それを見た時、思った。
ああ、あたしは魅せられてしまったのかもしれない。
秋庭里香にではない。
むろん、戎崎裕一にでもない。
あたしが魅せられたのは、物語。その二人が紡いできた、そしてこれから紡いでいく物語に、あたしは魅せられたのだ。
・・・何だ、それ。
自分で気付いて、自分で呆れた。
フィクションの世界に想いをはせる、文学少女じゃあるまいし。
全くもって、柄じゃない。
と、傍らで綾子がクスリと笑った。
何か自分の想いを見透かされた様な気がして、あたしは少し語気を強めて「何?」と訊いた。
そんなあたしの態度に気付いているのかいないのか、綾子は「思い出しちゃった。」とクスクス笑いながら言った。
「何を?」
「さっき、吉崎さんが先輩にプレゼント渡す時に言う様に言った言葉。」
ああ。綾子の笑ってる理由を察して、あたしは苦笑いをした。
「あれって、戎崎先輩、変な意味にとっちゃったりしないかな。」
綾子の言わんとするところは分かる。
だけど、あたしは絶対の自信を持って言った。
「ないよ。」
「え?」
「あの二人に限って、それはない。」
そう。あの戎崎裕一が、秋庭里香を傷付ける様な真似をする筈がない。
そして、秋庭里香もそんな事思いもしない。
だからこそ、簡単にあたしの提案を受け入れたのだ。
「・・・そうだね。」
あたしの言葉に込められた意味を察したのか、綾子はにっこりと微笑んでそう言うと、再び紙に鉛筆を走らせ始めた。
その横で、二人が去った校門を眺めながら、あたしは思う。
あの二人の物語がいつまで続くのか、今のままで続くのか、あたしには分からない。これは、フィクションじゃない。きっとこれから、たくさんの困難や理不尽な事があるだろうし、その結末がハッピーエンドになる補償だって、ありゃしない。
だけど。
それでも。
あの二人は、今を歩き続ける。不安定で細い道を、ふらつきながら、だけどしっかりと踏み締めて。しっかりと手を繋いで。“今”という物語を紡ぎ続ける。
あたしは所詮、ただの観客。物語に干渉するわけではないし、出来るわけでもない。この物語の果てに、何が待っていようとも、それをどうこうする事は出来ない。
けど、それならせめて今、拍手を贈ろう。
彼女達の現在(いま)に。日々紡がれ、生まれていく物語の誕生日に。祝福と言う名の、拍手を贈ろう。
「・・・ハッピー・バースディ。」
二人が去った後の校門に向かって、あたしはそう呟いた。
9
―♪おめでとう
おめでとう
Happy Happy Birthday
I wish あなたに
もっともっと 幸せが増えますように
Happy Happy Birthday
どんな時も 笑顔で♪―
昨日、吉崎多香子が起死回生の一手として秋葉里香に示したのは、一軒のカメラ屋だった。
「先輩、戎崎先輩カメラに凝ってるって言いましたよね!?」
「え?うん。前にあたしが写真撮ってって言ってから・・・」
「それです!!」
「ええ?でもあたしのお金じゃ、カメラなんて買えないよ。」
「いいですから!!」
珍しくうろたえる秋葉里香の手を引いて、吉崎多香子は店の中へと入っていった。
入ったカメラ屋で、吉崎多香子は店主に向かって開口一番、こう言った。
「おじさん、置いてあるフィルムで一番いいやつ、どれですか!?三千円未満で!!」
客の要望に応えて店主が示したフィルムの値段は、税込み2630円。秋葉里香が出せる金額、ギリギリの値段だった。
そのフィルムは今、綺麗なラッピングをされて秋葉里香の手の中にあった。
ここは、戎崎裕一の部屋。彼は今、お茶を取りに階下に行っている。
何枚もの乾燥中の写真がぶら下がるその部屋で、秋葉里香は不安げな顔をして手にした小箱をいじっていた。確かに、彼へのプレゼントとしては流行りのCDや服よりもしっくりときた。実際、彼もフィルムや備品の資金運用には苦労している様なので、喜んではくれるだろう。しかし、別に奇をてらったものを狙っていた訳ではないが、月並みと言えばあまりにも月並みな気がしないでもない。
考えれば考えるほど、不安になってくる。このラッピングも、少し派手過ぎるような気もする。彼に余計な期待を抱かせて、ガッカリさせる様な事はないだろうか。いっそ、この場でラッピングをとってしまおうかとも思ったが、それはそれであんまりな気がする。
一人でうんうん唸っていると、昨日、これを握らせながら吉崎多香子が言った言葉がよみがえってきた。
(いいですか。これを渡す時、いっしょにこう言うんです。)
その言葉は、秋庭里香にとって実に意外なものだった。というか、その言葉が示す行為が、彼女にとってはあまりに日常的に“されている”事なので、全く頭に浮かばなかったのだ。要は、受動的か能動的か。それだけである。
正直、いまさらそんな事で彼が喜ぶとは思えないのだが・・・
等々、悶々と考えていると、襖の向こうから階段を上がってくる音が聞こえた。
彼が来る。もはや、退路はない。秋庭里香は腹を決めた。深呼吸をして、ギュッと小箱を握りしめる。 足音が近づいて来る。あと5歩、あと3歩、そして―。
ガラッ
戸が開くと同時に、秋庭里香は彼に向かって箱を突き出し、その“言葉”を言った。
「好きな写真、撮らせてあげる!!」
10
―♪おめでとう
Happy Happy Birthday
I wish あなたが
もっともっと 幸せになれますように
Happy Happy Birthday
今日の日に 乾杯 Song for You
乾杯 Song for You♪―
「吉崎さん、どうもありがとう。」
火曜日、顔を合わせるなり、そう言って頭を下げられた。
「上手くいったみたいですね。」
あたしがそう言うと、先輩は「うん。」と頷いて微笑んだ。
「でも、裕一って変なの。あたしの写真なんて、いくらでも持ってるのに。」
そう言いながら、首を傾げる。
「分かってないですね。」
「何が?」
「いいえ。何でもないです。」
そう適当に煙に巻くと、今度はあたしから質問した。
「それで、どんな写真、撮らせてあげたんですか?」
あたしの質問に先輩は「ないしょ。」と答えて舌を出した。
「でしょうね。」
そう言って、あたしも微笑む。
それもやっぱり、二人だけの秘密なのだろう。
まぁ、こっちも根掘り穴掘り聞くつもりはない。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。
朝のHR開始の合図だ。程なく先生がくる。自分の席に戻ろうとすると、先輩がこう言った。
「日曜日、楽しかった。また、遊ぼうね。」
あたしが「考えておきます。」と答えると、先輩はまたにっこりと微笑んだ。
とても、とても綺麗な微笑みだった。
―穏やかな日差しが、戎崎裕一の部屋に差し込んでいた。
平日の昼間。当然、主はいない。
暖かい光が照らす机の上に、一つの写真立てが置かれていた。
高校生の男子にありがちな、何処か雑然とした雰囲気が漂うその部屋の中で、その写真立ての周りだけは綺麗に片付けられていた。
ポッカリと空いた空間の中で、写真立ては大事に、大事に、置かれていた。
その中に飾られた写真がどんなものか。
その中に刻まれた幸せがどんなものか。
知るのはたった、二人だけ。
世界でたった、二人だけ―
―♪おめでとう
Happy Happy Birthday
I wish あなたに
もっともっと 幸せが増えますように
Happy Happy Birthday
どんな時も 笑顔で
おめでとう
Happy Happy Birthday
I wish あなたが
もっともっと 幸せになれますように
Happy Happy Birthday
今日の日に 乾杯
おめでとう
Happy Happy Birthday
I wish あなたが
もっともっと 幸せになれますように
Happy Happy Birthday
今日の日に 乾杯 Song for You♪―
終り
作中歌 「ハピハピ バースディ」
作詞 岡本真夜
作曲 岡本真夜
唄 岡本真夜
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