木曜日。2001年・2003年製作アニメ、「天使のしっぽ」の二次創作掲載の日です。(当作品の事を良く知りたい方はリンクのWikiへ)。
ヤンデレ、厨二病、メアリー・スー注意
PS
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イラスト提供=M/Y/D/S動物のイラスト集。転載不可。
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―後濁―
「き――っ!!何よ、あのガキンチョ!!!ムカつくったらありゃしない!!今度会ったら、速攻で「必殺・120連ミカちゃんコンボ」かましてやるわっ!!」
そう言って地団駄を踏むミカに、テーブルに突っ伏したままのアユミが声をかける。
「・・・ミカちゃん、その意見そのものに異論はありませんが、っていうか、その時にはぜひともお手伝いさせて頂きたいというのが正直な所ですが・・・、とりあえず今はもう少し、静かにしていただけませんか・・・?」
その声には、疲労の色が濃い。
当然だろう。
”あれ”と面と向かって対峙していたのだ。精神的緊張はかなりのものだった筈である。
そんなアユミを、アカネは心からの敬意をもって見つめる。心底、凄いと思った。
それに比べて、自分は―
うつむく様に落とした視界に、白磁のティーカップが入った。途端、脳裏に甦る、先程の少女の言葉。
『この中にあるもの、そしてさっきわたしが話した事、それが全部、ヒント。』
『当ててごらん。自分達の頭で考えて。ヒントはあげたんだから。当ててごらん。当てられなきゃ、あなた達は、ご主人様がわたしのものになるのを、ただ指を咥えたまま見る事になる。』
そう。事は終わったわけではない。むしろ、本当の勝負はこれから。
アカネは手を伸ばし、カップを手に取る。
「「!」」
気づいたアユミが、伏せていた顔を上げた。ミカも地団駄を踏むのを止め、アカネの手中のカップを見つめる。
アカネがゆっくりとカップの口を逆さに返す。
サララ・・・
そんな軽い音とともに、カップの中から白いものがこぼれ、アカネの手の内に納まった。
「「「・・・?」」」
皆の視線が、”それ”に集中する。
出てきたのは、雪の様に”真っ白い”砂糖。
「・・・何よこれ?これがヒント?ただの砂糖じゃん?」
ミカの言葉にしかし、アユミが「あら?」と言って首を傾げる。
「でも、この中に入っていたのは、確か紅茶で溶けかけた砂糖の筈ですが・・・?」
「・・・あれ?そう言えば・・・」
その指摘に、ミカはカップの中を覗き込む。
カップの中は、まるで食器棚から出したばかりのそれの様に、一点の曇りもなくピカピカに乾いていた。
十分足らず前、確かにこの中には琥珀色の液体が揺れ、その底には溶けきれない砂糖がうず高く積もっていた筈なのに。
飲み干したにしたって、中に水滴くらい残るだろう。底に積もった溶け残りの砂糖も、スプーンですくって舐めてはいたものの、一さじ二さじで片付けられる量ではなかった筈である。
なのに、今はその痕跡もない。
あるのは、まるで使用前も同然といった体裁のカップと、その中の、これまた紅茶の染みすらない、未使用の砂糖。
「・・・あいつ、手品でもやったんじゃないの?ミカ達が気づかないとこで、パパッと別のカップとすり替えたとか?」
「でも、このカップ、間違いなくわたくしがあの娘に渡した物ですわ。ほら、ここの所の模様が、少し欠けてますでしょう?」
「ああ、なるほど・・・って、あんたいちいちそんな細かい所まで覚えてるわけ?」
そんなやり取りをしながらも、少女の真意を図りかね、アユミとミカは訳が分からないといった様子で頭を捻る。
「「・・・・・・。」」
二人とも、しばしそうやって考え込んでいたが、不意にミカが頭を掻きむしりながら大声を上げた。
「うきゃ―っ!!もう、訳わかんないっ!!考えてみりゃあ、何でミカ達があんなガキンチョの言う通りに頭悩ませなきゃなんないのよっ!!!」
溜まっていた鬱憤を吐き出す様にそう言うと、ミカはその勢いのまま玄関に向かって歩き出す。
「ちょっと、ミカちゃん!?何処へ!?」
慌てて追いかけてきたアユミに、「今ならまだその辺にいるでしょ!!」とミカは言う。
「あのガキ追っかけてとっ捕まえて、何企んでんだか聞き出してやるのよ!!」
そんなミカの言葉に、アユミが思わず呆れ顔になる。
「そんな・・・。それで教えてくれる様な相手なら、さっきの時点でとっくに・・・」
「もとから、素直に教えてくれるなんて思っちゃいないわよ!!嫌だと言ったら力づくで・・・」
先の少女のそれもかくやと言わんばかりの凶悪な笑みをその顔に浮かべ、パキポキと拳を鳴らしながらミカは玄関のドアノブに手を伸ばした。
その瞬間、
バタンッ
「ふぇえ〜〜、やっと帰れたのれす〜〜。」
「つかれたぉ〜〜。」
「お腹空いたの〜〜!!」
「ふにゃあぁあ・・・一体ぜんたい、何だったんですか〜〜!??」
などと口々に言いながら、今だ未帰宅だった面々が開いた戸から一斉に雪崩れ込んできた。皆一様に、ゲンナリとした顔をしている。
「あ、アユミさん。すいません、遅くなっちゃって・・・。」
目の前で固まっていたアユミに向かって、ランが申し訳なさそうに頭を下げる。
「いやぁ、それがなんか、おかしくって・・・。家はすぐそこに見えてて、いつもの道を通ってる筈なのに、全然たどり着けなくってさぁ・・・。皆して、ずっとグルグル回ってたんだよね・・・。」
そう言いながら、ツバサが全くもって腑に落ちないといった顔で首を傾げる。
―結界のせいである。
「モモ、もう一生お家に帰れないかと思いました・・・。」
モモが、心底ほっとした様子で床にへたり込んだ。
「本当にすいません。今すぐ、お夕食の用意始めますね。」
と、気の急いている様子のランに向かってアユミは、
「いえ・・・。それはよろしいんですが・・・その・・・」
そう言って、開いたままの戸の裏側を指差した。
「 ? 」(×7)
皆の目が、一斉にそこを見て―
「・・・?、ミカねえたん、なんでドアのうしろでひらべったくなってるぉ?」
「・・・・・・。」
不思議そうなルルの言葉に答えることもなく、半ば壁にめり込んだ状態のミカはそのままペラペラと床に落ちた。
「・・・何やってんだか・・・。」
睦家から少し離れた所に建てられた電信柱。そのてっぺんに立ちながら、件の少女は再び呆れた様に呟いた。
細められた両眼の視界は、その距離も、いつしか黄昏を越え、周囲を満たしていた夜の闇も全く無視して、睦家の窓からその中の様子を明確に捉えている。
「・・・あの娘達、今の事態ちゃんと理解してんのかしら?お気楽極楽にも程があるっつーの。ご主人様も、よく付き合ってられるなぁ・・・。」
などとブツブツ呟きながら、視線を泳がす。
「この調子じゃあ、ヒントも無駄だったかな・・・、ん?」
その視線がピタと止まる。
「へぇ・・・。」
その琥珀の瞳に映るのは、皆の喧騒から外れる様に佇む、一人の少女の姿。
その深い緑の瞳がじっと、手の平の上の砂糖を見つめている。
「・・・へえ。狐さんか・・・。」
何処か嬉しそうな呟きとともに、その顔に例の三日月の様な笑みがクニャリと浮かぶ。
「また、一緒に遊べそうだねぇ?楽しみだよ・・・。」
言いながら、その目をもう一度、睦家の光景へと向けようとした刹那。
「・・・・・・?」
ちょっとした気配を感じ、少女はその視線の行き先を薄暗い眼下へと変更した。
その見下ろした先。暗い路地にポツンと落ちた外灯の光の中で、見覚えのある藍色の小さなツインテールが、フルフルと悲しげに揺れていた。
「・・・まぁ、ミカちゃんのことはいいとして・・・」
アユミの言葉に、鼻っ面を赤くしたミカが「全然、いくない!!」などとブツブツ言ってくるが、取りあえず、無視する。
「皆さん、大丈夫でしたか?何事もありませんでしたか?」
「どういう事ですか?」
アユミの問いに、ランが怪訝そうな表情を浮かべる。
「ええ、実は・・・」
まずその事に気づいたのは、一人考え込んでいたアカネだった。
皆の喧騒の輪から一歩離れた場所にいたので、かえって気づきやすかったのかもしれない。
とにかく、それまで自分の手の中の砂糖に集中していた視線を、ふと皆の方に向けた時、彼女はその事に気づいたのである。
「・・・・・・?」
戸惑った様に皆を見まわし、一拍の間の後、アユミの説明に驚いている皆をもう一度ゆっくり、一人づつ、確認していく。
「ええ!?じゃあ、ついさっきまでここにいたの!?悪魔が!?」
と、仰け反りながら驚くのはツバサ。
「それで、さっぱりお家に入れなかったの?ひどいの!!お陰でご飯、遅れまくりなの!!」
憤慨するクルミに、
「モモ・・怖いです・・・。」
怯えるモモ。
「う〜〜。アユミねえたんたちばっかり、ずるいぉ!!ルルたんもあくま、みたかったぉ!!」
どうも悪魔をパンダやコアラの様な珍獣の類と勘違いしているらしいルルに、
「そ、それで、アユミさん達は大丈夫だったんですか!?」
真っ先に当事者だったアユミ等の身を気づかっているラン。そして、
「うわわ、タマミさん、大変なのれす!!」
「そ、そうですね!!ミドリお姉ちゃん!!」
「ミドリさん、まだご挨拶の果物、用意してないのれす!!」
「・・・それはもういいです・・・。」
何だかよく分からないが、何故か漫才をかましているミドリとタマミ。
そして・・・
そして・・・
「・・・・・・!!」
事情説明を続けていたアユミの肩を、近づいたアカネの指がチョンチョンと突つく。
「?、どうしました?アカネちゃん。」
「あ、あのさ・・・」
「?」
「その・・・ナナは?」
「・・・・・・・え?」(×9)
アカネの言葉に、皆の目がそれぞれに回りを見回す。
・・・足りない。
・・・いない。
何度見ても。
誰が見ても。
「・・・・・・・・・・。」
皆の顔から、見る見るうちに血の気が引いていく。
それこそ、擬音効果が視認出来るとしたら、背景に大きく「サ―ッ」という字が見て取れるであろうほどに。
「あ・・あんた達、一緒じゃ・・・なかったの・・・?」
上ずりながらかけられたミカの言葉に、モモがオロオロしながら答える。
「は、はい。それが、今日はナナちゃん、放課後に用があるから、先に帰っててって・・・。それで、別々に・・・。」
「おともだちに、てつぼうのコーチたのまれたって、いってたぉ。」
そう言って、モモとルルが顔を見合わせる。
「・・・あっちゃ〜〜。」
額に手を当て、宙を仰ぐミカ。
「で、でもいくらナナだって、いつもの帰り道で迷子になるなんて・・・」
ツバサのその言葉を、アカネの「・・・”いつもの”じゃないよ。」という言葉が遮った。
「・・・「結界」が張られてた・・・。」
「あ・・・!!」
アカネの指摘に、ツバサは思わず口元を押さえた。
「あんのガキンチョ、一体何処まで面倒かける気なのよ〜〜!!」
ミカの怒りの叫びが、部屋の中に空しく響いた。
続く
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