火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
地霊使い、アウスの出番です。ですが・・・はい、全国のアウススキーの皆様。本作品に登場するアウスは、貴方が妄想するアウスとは確実に、そして壮絶に違うと思われます。危険を感じた方はすぐ逃げてください。さらに読んでいる間に悪寒、動悸、発汗、吐き気等の症状が現れた場合も、即座に退避してください。読む方は、以上の事を”ようく”承知した上でお読みください(このくらい言っときゃいいだろ。)。
それでは、詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
というわけでコメントレス。
秋かなさん
まずは、お疲れ様と。完結おめでとうございます。
桜を中心としたストーリーで春らしさが出ていて暖かいものと感じました。
前作の寒さと変わり暖かさがいろいろなところにあり、少し違った雰囲気がでていました。
次回作に期待しています。
がんばってください
ありがとうございます。期待に沿える様、今後もがんばります。
zaru-guさん
お気に入りから来てます。トップページだけでかい表示で、まず読めたものじゃあり ません。個々のページは普通かな。
あ〜やっぱりそうですか。ちなみに小生はお気に入りから入ると普通に表示されます。一体なんだっちゅうねん?とりあえずサイトの提供元に改善方法聞いてみたけど、返事くるのは早くて3日後だそうです。つーか、それで改善するかも分からないし。とりあえず待っていてみてください(期待しないで)。
アウスやるのかよ!こりゃ待つしかないな!
はい、やりますよー。
完成予定日の延期は何回までですか?
・・・・・・・・・黙秘します。
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―3―
ピリリリリリリリ
駅のホームに発車を知らせるシグナルが響く。
それが鳴り終わると同時に、白い車体がガタンゴトンと重い音を立てて動き出した。
「うん。まずまずな旅だったね。」
たった今、降りたばかりのエクスプレスロイドが走り出すのを横目で見ながら、アウスはそう言って伸びをした。
『いやー、流石に都会は違いますなぁ。わて、こないにギョーサン人がおる駅なんて初めて見ましたわ。』
ここは魔法都市エンディミオン。魔法族の里から南に約900キロの位置にあるデュエルモンスターズ界有数の大都市である。
神聖魔導王エンディミオンによって統治されるこの都市は、治安も良く、大手テーマパーク「トゥーンワールド」がある事も手伝って観光地としても人気があった。ちなみに、名物は老舗名店「モウヤン」のカレー(※1)である。
『さ、次の乗り継ぎはどの列車でっしゃろ?』
そう言って時刻表を探すデーモン・ビーバー。
彼らの目的地は南の果て、「古の森」である。
世界で最も古いと認定されている樹、「世界樹」が座する森であると同時に、地脈の関係から「ガイアパワー」が集中している土地でもあり、パワースポットとしても有名である。
その管理はここ、エンディミオンが管轄しており、件の土地へと向かう鉄道も唯一ここからのみ発着していた。
『おっ!ありましたで。何々、次の古の森行きの列車は12:30発の4番線・・・。もう5分くらいしかありまへんな。急ぎまへんと・・・。って、主(マスター)?』
向いた先には、肝心のアウスの姿がない。
「おーい、何してるんだい?早く来ないと置いてくよ。」
声のする方を見てみると、アウスは駅の出口に向かっていた。
『ちょっ、何処行きまんのや!?はよせんと間に合わんのでっせ!!』
「君は実に馬鹿だなぁ。せっかくここまで来て、モウヤンのカレーも食べていかない気かい?」
慌てて飛び寄ってくる相方を笑い飛ばしながら、アウスはしゃあしゃあとそんな事を言う。
『な、何言うてまんねん!?宿題はどうしますのや!?』
「宿題の提出日はいつだっけ?」
『3日後ですけど・・・?』
「じゃあ今日と明日、充分時間はあるね。」
そう言って、スタスタと出口に向かうアウス。
『ちょっ、それじゃドラゴン探す時間、半日しかありませんやん!!里に帰るまでで半日かかるんでっせ!?』
「半日あれば充分だよ。」
取り付く島もないとはこの事だ。
「明日はトゥーン・ワールドに行こうか?前にウィンがデートで来た時の話を聞いて、一度行って見たいと思ってたんだ。」
『マ、主ァ〜。』
「大丈夫。入場料はちゃんと君の分も用意してあるから。」
『そ、そうじゃなくてですなぁ〜・・・』
デーモン・ビーバーの情けない声は、都会の人混みの中に空しく消えていった。
―4―
「う〜ん、時間か・・・。」
ホテルのベッドで身を起こしたアウスは、そう言って欠伸をした。
枕元で丸くなっている相方を起こさない様にベッドを降りると、寝癖でボサボサになった頭をポリポリかきながらその足でバスルームに向かう。パタンと戸を閉め、スルスルと寝間着を脱ぐ。一糸纏わない姿になると、シャワーの栓を開く。冷たい水が、シャワーから迸る。それを浴びながら大きく一息つくと、アウスは「よしっ」と拳を握った。
『う〜ん、ムニャムニャ。御主人、美味いでんなー、このカレー・・・。』
そんな寝言を言っているデーモン・ビーバー。幸せそうである。
『そうでっか・・・そこまで言うんなら、もう一杯・・・』
その鼻先に、スーッと手が伸びる。
ピンッ
『アヒャアッ!?』
鼻先を指で弾かれ、デーモン・ビーバーは思わず飛び上がった。
『な、何しますんのや!?せっかく今から三杯目を・・・って、ありゃ?』
見れば、そこには霊使いのローブを羽織ったアウスが杖を片手に立っていた。
昨日までと違い、完全に戦闘態勢である。
「デヴィ、寝ぼけてないで。出かけるよ。」
『へ・・・何処へでっか?』
ピンッ
『ヒギィッ!?』
再び鼻先を弾かれ、デーモン・ビーバーはまた飛び上がる。
「宿題。」
『そ、そうでした・・・。』
涙目で頷くデーモン・ビーバーなのだった。
それから数時間後―
ガタンゴトンガタンゴトン・・・
アウス達は、エンディミオンから古の森に向かうデコイチの中にいた。
『あー、やっぱりエクスプレスロイド(こないだのヤツ)に比べっと、乗り心地は今一つでんなー。』
ガタゴトと揺れる座席にチョコンと座りながら、デーモン・ビーバーは誰ともなく呟いた。
「料金が違うからね。比べる方が酷ってもんだよ。」
手にした本に目を落としたまま、アウスはそう答える。
『そうですな。』
しばしの間。
やがてその沈黙に耐えかねた様に、デーモンビーバーがおずおずと話しかける。
『あのですな、主(マスター)・・・。』
「何?」
本のページをめくりながらアウスは答える。
『そろそろ教えてもらえまへんか?いったいターゲットは何です?』
その問いに、アウスは読んでいた本のページを相方に向けた。
それを見たデーモン・ビーバーは、目を丸くする。
『ち・・・地を這うドラゴン〜!?』
「そうだよ。何驚いてるの?」
『何って・・・これ、絶滅危惧種やないですか!?』
「知ってるよ。だからほら、捕獲許可証。」
そう言って、アウスは荷物の中から引っ張り出した紙切れをピラリと見せる。
『い・・・いつの間に・・・ってそうやなくて、こんなん、半日やそこらで見つかるわけあらへんやろ!?』
―「地を這うドラゴン」―
デーモン・ビーバーの言うとおり、古の森固有の種で、その希少性から絶滅危惧種に指定されているドラゴンである。
翼を持ちながらあえてそれを退化させ、地上生活への道を選んだ特異なドラゴンであり、その性質から翼を持つ飛翔性ドラゴンと翼を持たない地這性ドラゴンとの間を繋ぐミッシングリンクとして研究者達の注目を浴びている貴重なドラゴンでもある。(※2)
「レベルもそれなりに高いし、先生もこれなら文句ないと思うよ。」
そう言いながら許可証をクルクルと丸めて片付けるアウスに、デーモン・ビーバーはブンブンと首を振る。
『いやいやいや!!見つからへん、見つかる訳あらへん!!』
その危惧は当たり前で、そもそもが個体数の少ない希少種である上に、隠棲の強い性質であるため、専門家であっても発見は困難を極めるという。
『だから言いましたやろ!?こんなんしてる場合あらへん、時間あらへんって!!それなのにあんたときたら・・・』
「モウヤンのカレー、美味しかったよね?」
『う・・・!?』
アウスの放った一言に、デーモン・ビーバーが固まる。
「君、おかわりしてたよね?それも5杯も。」
『う、うぅ・・・』
だらだらと脂汗を流しながら、デーモン・ビーバーはアウスの顔を見る。
・・笑っていた。それも、賭博酒場でダイ・グレファーを嵌めた時の、あの小悪魔の笑みである。
「トゥーン・ワールドも面白かったよね。君、遊び疲れて寝ちゃったけど。おんぶしてくるの、結構大変だったんだけどなー?」
『う、うぅううう・・・』
ぐうの音もでない。
アウスはますます、笑みを深める。
『は・・・嵌めおったな・・・!?』
「ん?何の事?」
そして―
『え、えーい!!もう勝手にせんかーいっ!!』
「うん。勝手にする。」
満面の笑みでそう答えると、アウスは本をパタンと閉じて身体を背もたれに委ねる。
「今朝、早起きしたから少し眠いんだ。着いたら、起こしてね。」
言うが早いか、スウスウと寝息を立て始める主を前に、デーモン・ビーバーはガサゴソと荷物をあさると、そこから持ってきた胃薬を取り出した。
『ほんま、大丈夫なんかなぁ・・・?』
そう一人ごちながら、苦い錠剤を飲み下すデーモン・ビーバーだった。
―5―
ピリリリリリリ
駅に響き渡る、発車のシグナル。
自分達を下ろしたデコイチが走り去るのを見送ってから、アウス達は駅の外へと出た。
古の森の入り口に作られた無人駅。
降りたのはアウスとデーモン・ビーバーだけ。
当たり前かもしれない。
この駅と路線は、基本的にこの森を研究する者達のために作られたものであり、一般人の利用はほとんどない。
駅の窓から外を見てみると、そこはもう鬱蒼とした森だった。
『なんや、気味の悪い森でんなぁ・・・。』
ひっそりと静まり返って薄暗い。そんな周囲を見回したデーモン・ビーバーがそう感想を洩らす。
「この森に住む生き物は、隠棲が強いのが多いんだよ。昼間は大体、こんなもんだろうね。」
そう言いながら駅のホームから地面に降りると、地面から何やらフワッとした温もりが立ち上る。
『おお、何ですか?この感じ。』
「この森は「ガイアパワー」が集中してるからね。世界有数のパワースポットと言われる所以だよ。」
一歩足を踏み出すと、それが落ち葉の厚く積もった地面にザクリ、と思いの外深く埋まる。
『それにしても、何ぞあてはあるんでっか?ただ闇雲に歩きまわっとっても、見つかるとは思えまへんけど。』
デーモン・ビーバーは、キョロキョロ周りを見渡しながらそう問う。
「それなら心配しなくていいよ。ちゃんと考えてるから。それより・・・」
アウスが自分の足元を見る。一歩踏み出す度に、落ち葉の積もった地面がサクサクと鳴る。静まり返った森の中には、それが思いの外大きく響いていた。
「ちょっと、面倒な事になりそうだ。」
『何がでっか?』
「これ。」
そう言って、自分の足元を指差す。
「この足音、森の動物達にボク達が“ここに居る”って宣伝してる様なもんだよ。小動物なら逃げちゃうだろうけど、大型の肉食動物なんかだと逆に・・・」
アウスがその言葉を結ぼうとしたその途端―
バキバキッメキッ
アウス達の横に生えていた大木が、まるで薙ぎ倒されたかの様に倒れてきた。
ズズーン
重い音を立てて、大木が地面に横たわる。
『主(マスター)、大丈夫でっか!?』
辛うじてかわしたデーモン・ビーバーが叫ぶ。
「大丈夫。でも・・・」
こちらも直前でかわしたアウスがそう返すが、その瞳はもう自分を労わる相方を見てはいない。
その視線が向けられるのは、大木が倒れてきた方向。
そこを埋めていた大木が無くなった後には、ただ薄闇だけが広がっていた。
―と、その薄闇の向こうから、
コフー、コフー・・・
響いてくる、何者かの息遣い。
それと同時にムッと漂ってくる、生臭い臭気。
『・・・主(マスター)・・・』
「うん・・・。」
デーモン・ビーバーが全身の毛を逆立てて臨戦態勢をとる。
アウスが見つめる薄闇のその奥で、何かの影がユラリと蠢く。
ザスゥッ
響く、重い足音。
足元に転がる大木を踏み潰し、薄闇を裂いて現れた者。
見上げる程に巨大なそれは、青灰色の肌を持った巨人だった。
続く
※1:ジェノサイドキングサーモンやデビル・クラーケン、オイスターマイスター等の暗黒海の幸をふんだんに使ったシーフード・カレーが名物。特にマッド・ロブスターの甲羅で出汁をとり、その味噌を溶かし込んだルーは絶品である。
※2:カードと設定が違う?気にすんな。
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