火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
今日からは地霊使い、アウスの出番です。ですが・・・はい、全国のアウススキーの皆様。本作品に登場するアウスは、貴方が妄想するアウスとは確実に、そして壮絶に違うと思われます。危険を感じた方はすぐ逃げてください。さらに読んでいる間に悪寒、動悸、発汗、吐き気等の症状が現れた場合も、即座に退避してください。読む方は、以上の事を”ようく”承知した上でお読みください(このくらい言っときゃいいだろ。)。
それでは、詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
というわけでコメントレス。
また読ませていただきました。
季節が変わり少しの肌寒さが残る春から、爽やかさが印象的な夏への季節の変化が手にとって分かるようでした。
後半の2人の会話が暖かい感じの雰囲気が出ていました。
また、がんばってください
はい。頑張りますよー(喜)
遊戯王カード 【 地霊使いアウス 】 DT09-JP010-N 《デュエルターミナル−ヴァイロン降臨》 新品価格 |
霊使い達の宿題・その5(地霊使いの場合)
―1―
「ドラゴンかぁ・・・。」
ここは魔法族の里、魔法専門学校の寮の一室。
そこのベッドに、一人の少女が仰向けに寝っ転がっていた。
茶色のショートヘアに、眼鏡がワンポイントの少女。地霊使いのアウスである。
彼女は気だるげにベッドの上で転がると、手にしたプリントをピンと指で弾く。
「相変わらず面倒な宿題を出すね。先生は。」
『・・・あんなぁ、マスター・・・』
と、ベッドの上でゴロゴロするばかりのアウスに向かって、声をかける者がいる。大きなモルモットの様な姿に、蝙蝠の羽と一本の角。アウスの使い魔、「デーモン・ビーバー」である。
「何だい?デヴィ。」
『いいんでっか?こげにのんびりしとって。他の皆さんはとっくに出かけられたとですよ?』
「皆は皆。ボクはボク。」
使い魔の問いに対して、アウスはそう答えながらプリントを放ると、代わりに枕元の本を手に取る。
そのまま読書を始めてしまう主人を前に、デーモン・ビーバーは大きく溜息をつく。
この娘と主従の契りを結んでから随分経つが、その考えの不可解さにはなかなか慣れる事が出来ない。
まぁ、いつもの事と言えばいつもの事ではある。今回も、何か考えがあっての事だろう。詮索した所で、自分の考えが及ばないのもいつもの事だ。デーモン・ビーバーはまた溜息を一つつくと、アウスの横で自分も丸くなった。
それから数時間。夜が更け、月が空の頂にかかる頃―
「デヴィ、起きな。出かけるよ。」
『ふ、ふぇ?こげな時間にでっか?』
「こんな時間だからだよ。」
そう言うと、アウスはデーモン・ビーバーを伴って寮を出た。
『こげな急に出かけるなんて、ターゲットが決まったとですか?』
「ターゲット?とっくに決めてたよ。」
『はぁ?』
その言葉に、デーモン・ビーバーは呆気にとられる。
『ほなら何で、あんなにのんびりしてたとですか?相手はドラゴンでっせ。時間は幾らでもあった方が・・・』
訝しむ相方に、アウスは笑って答えない。
「急がば回れ。急いては事を仕損じるってね。」
『?』
釈然としない思いを抱いたまま、ただ主に従うデーモン・ビーバーであった。
それから数十分後、アウスとデーモン・ビーバーは里の外れにある一軒の建物の前に来ていた。
その建物には、この夜更けにも関わらず煌々と灯りが点り、中からは大勢の笑い声や怒声が響いていた。
そこが何かを察したデーモン・ビーバーが、驚きの声を上げる。
『ちょ、ここって賭博酒場じゃないでっか!!』
そう。ここは魔法族の里で唯一つ、週末に開かれる賭博酒場である。
当然、倫理的観点から学校では生徒の出入りは禁止されている。
「そうだよ。来る道で気付かなかったの?」
何でも無い事の様に答えるアウスを、デーモン・ビーバーは慌てながら静止する。
『あ、あきまへんって!!学校にばれたら、停学じゃすみませんがな!!』
しかし、アウスはあくまで涼しい顔。
「ばれるって、学校の関係者がこんな所にいると思う?」
『んなわけありませんがな。』
「じゃあ、君が告げ口する?」
『いやいや!?』
「じゃあ、ばれる訳ないね。」
そう言って、スタスタと入り口に向かうアウス。
無駄と知りつつ、デーモン・ビーバーは食い下がる。
『ちょっ、待ちなはれ!!大体、こんな所に何の用があるんでっか!?』
「君は実に馬鹿だなぁ。賭博場に用っていったら、“これ”に決まってるだろ?」
そう言って、アウスは右手の親指と人差し指で輪を作る。
『そんなん、先生はんから小遣いもろうとるやん。手持ちで済みますやろ!?』
「んー、そうでもないんだよね。目当ての場所は、ちょっと遠いんだ。」
『・・・一体何処に行く気ですのや?』
「古の森。」
『い、古の森ぃ!?』
魔法族の里から、南へざっと1000キロくらい離れている場所である。
「だからねー、今の手持ちじゃちょっと心許ないんだ。どうせ行くなら、観光もしてきたいだろ?」
『そ、そんな所まで何を探しに行きますのや!?』
「それは行ってのお楽しみ。」
そしてアウスは、賭博酒場の扉を開けた。
―2―
そこは、アルコールの香りとタバコの煙、そして人々の喧騒に溢れていた。
部屋のあちらこちらでコインの跳ねる音がし、その度に歓声や怒号が飛び交う。
カタン
そんな中に、アウスが扉を閉める音が大きく響いた。
途端、周囲の視線がアウスに集中する。
そして入って来たのが場にそぐわない可憐な少女だと知れると、その視線は直ぐに好奇と色欲の混じったものへと変わる。
「ヘイ、お嬢さん。」
人込みを潜り抜け、アウスの前に進み出たのは、バーテンダーの格好をした若い男性。この酒場の管理人である、サンド・ギャンブラーである。
「いけないね。ここはキミの様な子供が来る所じゃないよ。」
「ここに年齢制限はなかったと思うけど?」
「それはそうだけどね。大体、キミは魔法学校の生徒だろ?これが学校に知れたら・・・」
サンド・ギャンブラーの言葉が終わらない内に、アウスは袖の中から数枚の紙切れを取り出した。
「これで、どうかな?」
そう言って、サンド・ギャンブラーに渡す。
「何だい?こんな物で僕が・・・ぬぅわにぃいいいっ!?」
突然大声を上げて固まるサンド・ギャンブラー。渡された物は、数枚の写真だった。
「おぅ・・うぉおおおおお・・・こ、これは、ドリアードさんのこんなあられもない・・・!!?」
鼻息も荒く、わなわなと震えるサンド・ギャンブラー。目は、もう写真に釘付けである。そんな彼に向かって、アウスはニコリと微笑む。
「他にもあるけど?もっと“凄い”のが。」
「な・・・なん、だと・・・!?」
「入っても、いいよね?」
もはや、サンド・ギャンブラーに選択の余地はなかった。
『・・・あんな写真、いつ撮っとったんでっか?』
呆れた様に尋ねるデーモン・ビーバーに、アウスはしゃあしゃあと答える。
「備えあれば憂いなしってね・・・。彼が先生に首っ丈って情報は入ってたから。」
『先生はんにばれたらえらいこってっせ?』
「君、ばらす?」
『いやいや!!』
「なら、大丈夫。」
どこまでも手玉に取られるデーモン・ビーバーなのだった。
「よう、ねーちゃん、一緒に飲まねーか?」
「ラム酒は嫌いなんだ。遠慮しとくよ。」
「嬢ちゃん、ちょいと付き合えよ。遊ぼうぜ。」
「おじさんがあと、10年ばかり男を磨いたらね。」
絡んでくる男達を軽くあしらいながら、アウスは店の客達を物色していく。
やがて、その目が店の中心の席に座っている男に止まった。
筋骨隆々とした身体に青銅色の鎧をつけた、大柄な男である。傍らに大降りの剣が置いてある辺りを見ると、流れの戦士だろうか。
男はもう一人の傭兵風の男とテーブルを挟んで向かい合い、カードゲームに興じていた。見れば、 男の席には金貨が山と積まれている。大分勝っているらしい。
「おら、どうした?早く次の手を出しな!?」
鎧の男が相手を威嚇する様に大声を出す。
大して、相手の傭兵風の男の手は完全に止まっている。周りで観戦していた男の仲間らしい傭兵達が「どうした!?」とか「気張れや!!」などと激を飛ばしているが、そんな事でどうにかなるものでもない。
傭兵の男は悔しそうに歯噛みすると、自分の席に置いてあったカードの束に手を置いた。
“降参”のサインである。
周りの男達が「あ〜」と声を上げる。
鎧の男は大笑いすると、相手の席に積まれていた金貨をかき寄せる。
「ガハハハハ、何だたわいもねぇ!!さぁ次はどいつが相手だ!?」
男はそう言って周りを見回すが、誰も進み出る者はいない。
「何だ何だ、この腰抜けども!!誰もいねぇのか!?この、ダイ・グレファー様の相手をする奴はよ!!」
黙りこくる男達。と、その時―
「ボクがするよ。」
そんな声が響き、男達の隙間を抜けて一人の少女が進み出た。
「あぁん?お前がぁ?」
自分の前に進み出た少女―アウスを嘗め回す様に見た後、ダイ・グレファーはふんと鼻を鳴らした。
「止めとけ止めとけ!!オメェみたいな小便臭ぇ小娘、相手に出来るかよ!!」
「“この手”のゲームには自信があるんだけど?」
そう言って、アウスは袖の中からカードの束を出す。
「大体、オメェ賭け金なんざ持ってんのかよ?」
「う〜ん。お金は、持ってないなぁ。」
その言葉に、周囲からどっと笑い声が起こる。
「はっ!!話にならねぇな。帰れ帰れ。オメェなんぞの相手をしてる暇は・・・!!?」
ダイ・グレファーの言葉がそこで途切れた。
彼の膝の上に、アウスがチョンと腰を下ろしたのだ。
「ボクは、小娘じゃないよ?」
そう言って、ダイ・グレファーの耳に唇を寄せる。
「お金はないけど、代わりに賭けるものはある・・・。」
息のかかる距離で囁かれ、ダイ・グレファーの背筋にゾクゾクした感覚が走る。
「もし、ボクが負けたら、今夜一晩、相手をしてあげるよ・・・。」
そして襟に指をかけると、クイッと前に引いて見せる。
タートルネックの奥に、形の良い膨らみがチラリと見えた。
「・・・どう?」
「謹んで、お相手しよう(キリッ)。」
急に紳士的な振る舞いになるダイ・グレファーに、アウスはクスリと小悪魔の様な笑みを浮かべた。(なお、この時点でデーモン・ビーバーはひきつけを起こして引っくり返っていた。)
それから数刻後―
「毎度ありー♪」
金貨やその他諸々が入った布袋を背負い、アウスはほくほくと店を出て行った。
その後姿を見送った傭兵達が、口々に言う。
「恐ろしい娘だ・・・。」
「こいつは敵わねぇ・・・。」
「鬼だな、ありゃあ・・・。」
「相手しなくて良かったぜ・・・。」
言いながら、全員が傍らに目を落とす。
そこには、金貨どころか身包み剥がされたダイ・グレファーが身を小さくして椅子に座っていた。
傭兵の一人が、その肩にポンと手を置く。
「アンタも災難だったな・・・。」
「今夜は飲もうや。」
「俺達の奢りだ。」
次々とかけられる心からの労わりの言葉に、ダイ・グレファーはワッとテーブルに泣き伏すのだった。
―その頃―
『いやぁ、正直肝冷えましたで。ホンマ。』
夜更けの道をアウスと歩きながら、デーモン・ビーバーはやれやれと額の汗を拭う素振りをする。
『勝てたから良い様なもんですけどな、あきまへんて。あんな危ない橋渡り。自分の身は、もっと大事にせぇへんと。』
そんな相方の言葉に、アウスは平然と答える。
「別に渡ってないよ。危ない橋なんか。」
『へ?』
アウスは背負っていた袋をポスンと地面に下ろすと、両手を前に出し、フルフルと振った。
パラ パラ パラ
それに合わせて袖の中から振ってくる、無数のカード。
『・・・・・・。』
「・・・・・・。」
二人の間を、ピユーと涼しい風が通り抜けていく。
『イカサマかい!!』
思わず大声で突っ込むデーモン・ビーバー。
『あ、あんたなぁ、こんなんしてバレたらどないしますのや!!下手したら生贄用にリチュアに売り飛ばされまっせ!?』
「君は本当に馬鹿だなぁ。ボクがばれるイカサマなんか仕組むと思うかい。」
そう言って、アウスはケタケタと笑う。
・・・どうやら今度の旅にも、胃薬の用意は必須らしい。
デーモン・ビーバーは胃をさすりながらそう思った。
続く
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image