電車から,多くの乗客が降りた。しばらくしても,
電車が出発しない。「電車から離れてください。」
駅員がマイクで叫んでいる。見ると,
若いサラリーマン風の男が,ふらふらとこちらにホームの端を歩いてくる。
所掌もその男を凝視している。
近づいてくる男に,危ないよと声をかけると。
「俺に,いちゃもんを付けるのかと」こちらをにらんだ。
両耳にはイヤホンを付けている。おそらく,アナウンスは聞こえていないのだろう。
直ぐに,ホームの若い駅員さんが,その男を引き離してくれた。
五感の一つを塞いで,雑踏を生きていけるほど,都会は甘くはないよ。
長生きできるかしら。