2018年06月09日
助けて
ある少年が近所の池に友人と遊びに行った。二人はしばらく池のほとりでふざけあっていたのだが、何かの拍子で少年は友人を突き飛ばし、池に突き落としてしまう。
「助けてー、助けてー」
泳げない友人は必死になって助けを求めたが、怖くなった少年はそのまま友人を見捨て、逃げ出してしまった。翌日、捜索に出た大人たちによって、友人の死体が引き上げられた。その日以来、少年はその池の近くを通らなくなった。
それから長い月日が流れた。少年は立派に成長し、一児の父となっていた。ある日のこと、帰りが遅くなった彼は近道をするためにそれまで避けていた例の池の側を通って家路につくことにした。ところが、彼が池の近くを歩いていると、池の中から小さな子供の声が響いてくる。
「助けてー、助けてー」
聞き間違いではない。きっとあの時の友人がの霊がさまよい出てきたのだ。
「助けてー、助けてー」
声は未だやむことなく聞こえてくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
彼はそうつぶやくと耳を押さえてその場から駆け出し、家まで逃げ帰った。
「ただいま。今帰ったよ」
彼は呼吸を落ち着けると、出来るだけ平静を装いながら玄関をくぐる。すると、彼を迎えた妻が一言、心配そうな顔でこう言ってきた。
「あなた、うちの子を見ませんでした?近所の池まで遊びに行ったきり、まだ帰ってきてないのよ」
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