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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2022年06月26日

LOVE SONG


玉置浩二『LOVE SONG BLUE』九曲目、「LOVE SONG」です。先行シングルで、カップリングは「星になりたい」でした。

わたくしシングルって買わないことがけっこうあって(ビンボーでしたからアルバム出るまで我慢せざるを得ないことがしばしば)、この曲もこのアルバムで聴いたのが初聴でした。とはいえ、シングルだからさぞかしパンチある超絶哀愁バラードが来るに違いないと期待していたのです。そして、なんじゃこのアダルティーな感じ!ムード歌謡か!と驚きました。

曲はシングルですからってのも変ですが、コマーシャルです。一番売れそうです。ですが、売る気はなさそうです(笑)。というのは、お聴きになられた方はわかると思いますけども、当時一番のボリューム層であった若者向けではないのです。「DAYONE〜」とかいって若者にウケればミリオン連発の時代に玉置さんはそんなことをまったく考えず、ひたすら自分の中から出てくる音楽を形にしていたかのようです。これは若者が背伸びできる限界を軽々と超えていました。当時の若者がなんとか届くのは、この数年前に流行ったブラコン(ブラザーのほうではなく)くらいが限界でしょう。四小節ごとの大仰なキメ、艶やかなアルトサックス(Bob Zung)、悲しげに響くガットギターのアルペジオ、エレピの音……これは若者に経験のないレベルの哀愁と激情以外の何も感じられません。わたくし、この曲とDAYONEだったら、下手するとDAYONEのほうに近いメンタリティーだったんじゃないか……そんなの誇りに賭けてもイヤというか切腹しても認める気はないんですが(笑)、そのくらいこの曲は大人向けに感じられたのです。

「抱きしめたかった」という歌詞は簡単な感情を表しているように見えて、その実重かった……だってお子ちゃまはそこで止まりませんもん。そこで「何も言わずに」という心境になる相手もいません。「あー、あるある!せつないよねー」という感想が出てくるはずがなかったのです。正直、この曲の哀愁を直撃されるようになったのは、奇しくもというべきか自然の理としてそうだというべきか、このときの玉置さんの年齢(30代前半)に達したころでした。ぬおー!そうだそうだ!「両手いっぱいに抱えたガレキを川に流」す気分だ!とか、傍からは決して理解できない何かが通じてしまったのです。それ以来、この曲はわたくし的玉置ベストの常に一角を為すようになります。

エレピのアルペジオをバックにサックスソロのイントロ、ひたすら重いベースとエレキギター、鋭いドラム(THE SQUAREの長谷部さん)、これはムード歌謡などではありません。このズシーン!ズシーン!と堂に入った曲の構えはまるでヘビーメタル的ですがメタルではもちろんありません。メタルが若者のシリアスな怒りを込めた音楽だとするなら、この「LOVE SONG」はひたすらな大人の男の愛を込めた音楽だといえるでしょう。覚えておくんだ、ホンモノの男が女を愛するってのはこういうことなんだ……!とガツンと示してくる……やっぱりムード歌謡かも!(笑)。演奏を聴くとすべてにわたってロックの香りがしてきますので、どんな曲でも作れる玉置さんがムード歌謡的なものをつくって、それを精鋭のミュージシャンたちがピカイチの腕で支えロック風味に作り上げたモノといえばいくぶん正確かもしれません。

さて玉置さんのボーカルが始まり、ベースとエレピ、そして小さな音でガットギターが響く中、「カシュ!カシュ!」とパーカッションでリズムを取っています。二回目のAメロ(A’)でガットギターのアルペジオが目立ち始め、長田さんのクランチトーンが響き始め、曲は一気サビに入ります。

サビは「ほらあんなに」「まだどんなに」「いまこんなに」とリズムとメロディが完全に一体となった強力な音・声の塊を連続でぶつけてきます。これが記憶回路に直接叩き込むなみの威力をもって脳髄に迫ってくるのです。この異常なまでの威力をもってシングル曲として選ばれたといっても過言ではないでしょう。戦艦大和の主砲など撃ったら甲板にいる乗員が衝撃波で死んでしまうから全員室内に退避してから撃たなくてはならなかったから実は実戦であんまり撃てなかったという逸話を思いだすほどの破壊力です。「LOVE SONG」という歌詞はそれら一斉射撃のあとに放たれており、この破壊力抜群のサビの中にあってけっして主役とは言えない位置にいますが、いやいやどうして、主砲ではなく、対空砲としても使えた副砲なみのニクさです(笑)。

さて、曲は二番に入りまして、A’メロを一回だけ(オブリのガットギターが効く!)、そして曲はすぐにサビの繰り返し、間奏、サビ、アウトロへと向かっていきます。

「両手いっぱいに抱えたガレキ」とは、今ふたりを苦しめるもの、それなのに抱えていなくてはならないものすべてなのでしょう。ありていにいうと仕事とか家族とかなんだと思うんですが(笑)、さすがにそこまでは当時のわたくし想像が及んでおりませんで、オトナは大変なんだなーくらいに思っておりました。いやー、若いうちはいいんですよ、体力勝負だから体を動かしてりゃいいんです、少なくとも当時はそれでよかったんです。ですが、年齢を重ねますと、出るわ出るわ、いろんな体面とか体裁とかアリバイとかを揃えなくてはならないというまことに非生産的な仕事の山が!どの組織もクレーム恐怖症ですから仕方ないといや仕方ないんですが、もうちょっとなんとかならねえのこのガレキ!あんたらが腹切る覚悟あればぜんぶ要らないんだよこんなの!この腰抜け!と思うようなどうでもいい仕事が雪崩をうって迫ってきます。まさにガレキ、まさに自由になりたい、ぜんぶ川に流してしまおうか、まああいつらは腹切ることになるかもだけどそんなの知らんわ!って重荷がこのヤワな両肩にのしかかってくるのです。玉置さんが歌ってる「ガレキ」はもうちょっとロマンチックなやつのことだと思うんですけど、それはそれで非常にまずい修羅場が待ってますので、ここは比喩で説明したってことにさせていただきたいところです。ああおそろしい。

「夢」は小さく、それなのにかなわぬ遠いもの、「傷」も小さく、それなのに癒しきれない痛みを保ちつづけるもの、それらに比べてこの「愛」は大きく、どんなつらさからも寒さからも君を守るもの、この「LOVE SONG」は迷いなく君に贈る、いちばんやさしかった日々にいつだって君をすぐに戻すもの……といったように、関連あるんだかないんだか自分でも判然としない「小さい」に対する「大きい」、「つらい」に対する「やさしい」のように、行ったり来たりしながら愛を語るという仕掛けになっています。うーむ、この理路整然としていないのに愛だけは確信をもっていそうなところがリアルです。

さて間奏、これまでもサビを盛り上げてきたサックスですが(なんか、同じフレーズを全然吹いていない気がします、もしかしてぜんぶアドリブ一発で録ったんじゃないのかってくらいライブ感あります)、セオリーどおりというかなんというか、ほぼサビの歌メロと同じメロディーを情感たっぷりに吹きます。これが、アウトロのアドリブ感あるゴージャスなサックスソロと見事な対比を為していて、なんともいえない寂しさを感じさせます。あくまでわたくしの感覚なんですが、異様なくらいサックスの音がいいです。アルトサックスというのは人間の歌に近い表現力をもつ楽器だとわたくしは認識しておりますが、この両サックスソロは玉置さんの歌にぜんぜん負けていないくらいの超絶演奏であるように思えてなりません。サックス吹く人からすればえ?こんなの普通じゃん、ってくらいなのかもわかりませんけども……。

さてそんな超絶悲哀を演出する歌とサックスをたっぷり聴くことのできるこの曲なんですが、わたくしのクレーム予防仕事ごときではとうてい比喩にならぬほどのエレジー、ギリシャ語でいうところのエレゲイア、哀悼歌、挽歌、いやそれじゃ人が死んでるな(笑)、相聞っていうんですかね、このアルバムでいうと「SACRED LOVE」、のちの歌でいうと「出逢い」のような、愛しくてたまんないんだけど決して報われない愛を歌っているように思われます。「正義の味方」や「田園」のような、人生を歌った歌、応援歌的な歌が目立っていて、そう言及されるようになってきた玉置さんですけども、どうしてどうして、ラブソングというか恋愛系の歌も大進化して、このようなロマンチックで繊細なばかりでない歌を歌うようになっていたことを如実に示す傑作ラブソングであるといえるでしょう。

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2022年06月18日

愛してんじゃない


玉置浩二『LOVE SONG BLUE』八曲目、「愛してんじゃない」です。

この曲を含むいくつかの曲にピアノに中西さんが参加されてます。安全地帯時代のミュージシャンはほとんど排してこのアルバムは作られているわけですが(星さんは除く)、中西さんは例外的な立ち位置にあるようです。

さて、この曲「愛してんじゃない」を何度も連呼しますね。その割に意味がよくわからないのです。愛しているわけじゃない(愛していない)、ほらやっぱり愛しているじゃない(愛している)、反語、疑問、いずれともいいがたいわけですから、文脈によって決まるわけですが、まわりの言葉をよく読んでも判別がつきません。後ろに「忘れる」がつく場合は「愛していない、だから忘れる」で、後ろに「会いたい」が続く場合は「愛している、だから会いたい」なんじゃないかなー、とは思いますが、そのいずれともつかぬ混乱し整理のつかない感情を吐き出しているというのが一番似つかわしいように思われます。

エレピと、なにやら笛のような……まあ、笛関連のクレジットはないのでシンセだと思いますが、サスペンス劇場の気まずい結末からエンディングロールに向かうときのようなイントロが始まります。まあ、ドロドロの失恋直後を描いた歌のようですから当然ですが。しかし、かつての「1/2 la moitie」とはかなり異なり、曲がポップでロックです。

ドッドドッドドッドドッド……と骨太なリズム、キレッキレのドラム、ボッキボッキのベース、歪んだギターはリズムを合わせつつ小節ごとに気の利いたフレーズを混ぜ、歌に裏メロを入れます。途中からエレピが高音に入り、ホーンセクション(おそらくシンセ)が合いの手を入れます。うーむ見事!歌謡ショーのようなアレンジなんですが、ロック魂満点のズシズシ感でかなりハードに聴こえます。

「もう……会〜わない〜」と玉置さんが思いつめた声で吐き出します。歌う、でなくて吐き出すといったほうがいいくらいの切実な歌声です。玉置さんはいつだって歌で語るのです。もう会わない、何も言わない、絶望的な決心をして街をどこまでも歩き回り、冬の夜の雨に濡れてゆきます。

もしかしてまだ「愛してんじゃない」?いやそれは忘れる、忘れるんだ。やっぱりまだ「愛してるんじゃない」いや、「愛してなんかいない、いないんだ」「愛してなんかいるものか」……でもまだ「愛しているんじゃない」?……「会いたい」んだ!

なんと壮絶な……愛しているんですね、どうにもこうにも。ドッドドッドドッドドッド……と歩みを進めつつ、思考がグルングルンと同じところを行ったりきたり。愛していない、愛している、愛していない、愛している……もう愛しているんだかいないんだかわかりません。でも最後に「会いたい」と叫ぶのですから、それだけは確かなのです。愛憎の念入り混じるとはまさにこんな感じの心境なのでしょう。おそらくは、ひと冬だけの短いお付き合いだったのでしょうけども(だから花火のようにポーンと打ちあがり、シュワワと落ちていったわけです)、深い深い傷跡を残すほどに愛していたのでしょう。

エコーを交えて愛してんじゃない……ア〜アア〜愛してんじゃない……と叫ぶように絞り出すように繰り返すアウトロ、演奏もここで最高潮に達します。ドッドドッド……ドードードードードードーと、歩み続けていた脚がよろめくようにリズムを変え、また歩み始めます。「1/2 la moitie」がシン!と張り詰めた静けさの中に狂気を秘めた失恋ソングだとすれば、「愛してんじゃない」はひたすらにラウドでアクティブな男の彷徨を描く失恋ソングです。『All I Do』時代のおすましさんはもういないのです。体全体から、心全体の波動を表現しつくすような歌詞とアレンジで、新しい時代の玉置浩二ここにあり、を示す新しい失恋ソングであるといえるでしょう。

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2022年06月12日

最高でしょ?


玉置浩二『LOVE SONG BLUE』七曲目「最高でしょ?」です。

「さ〜いこ〜うで〜しょ〜」と多重コーラスの玉置さんボーカルに始まり、裏に鬼のギタートリル!クレジットをみますと玉置さん鈴木さんと……山岸潤史さん?全然存じ上げなかったのですが、YouTUBEでちょっと音を聴いただけでとんでもない人だとわかります。よくこんな人連れてきましたね……鈴木さんとのパート分けは全然わかりませんが……音が最高すぎます。しいていえば、一番AメロBメロの裏は鈴木さん、二番になって山岸さんがカッティングで絡んできているんじゃないかな……ぜんぜん自信ありませんが。ストラトキャスターのフロントピックアップでトーンを絞り、チューブスクリーマーを噛ませたフェンダーツインで鳴らせばこんな音になるんじゃないかな……とは思うんですが、自分でやったら絶対違うんです。というかいまやってみました(笑)。やっぱそもそものレベルが違いすぎです。そんなわけでスーパーいい音のギターを楽しむことができます。そして序盤をボムン……ボムムン……とムードたっぷりにリードし続けるベースは美久月千晴さんです。拓郎やみゆき、明菜ちゃん、このころだと柳ジョージさんや久松史奈さんのベースをお弾きになってた方ですね。玄人好きするベースというか……こんなムーディーなベース弾かれたらボーカル食われちゃいますんで、歌によほど自信がないと呼んじゃダメなベーシストです。

さて歌がいきなり始まってまして、ジャジーでムードたっぷりな演奏に玉置さんがSUNDAY〜と憂鬱な週の前半を歌います。ロシア民謡「一週間」はなんでも二日かけて行いますが(月曜日に蒸し風呂を焚いて火曜に入るとか)、玉置さんは日曜から火曜まで三日も悩んでいます。水曜に一念発起して痴情のもつれを解く決心をして仲直りするのです。そうしたら木曜日は最高でしょ!とルンルン気分になって、金曜夜から土曜はウキウキの逢瀬を思い切り楽しみ、そして週が明けまた日曜(いわゆる「サザエさん症候群」の日)、そして憂鬱な月曜がやってくる、だけど週末たっぷり愛し愛されたから月曜から頑張るさ!というストーリーです。

ものすごいのは、水曜のごめんなさいから始まる怒涛の展開、キーボードが入り、ホーンが入り、とみるみる気分が修復されてゆき、ギターの超ゴキゲンなカッティングが入り、ドラムがハイハット連打から16ビート全開のストローク、その間ずっとホアチョさんのパーカッションが血管の沸き立ちを描き出しと、あっというまに気だるいムーディージャズがビッグバンドによるソウル&ファンクの大合奏に変わってゆくこの曲全体の展開です。なんだこりゃ、こんなの初めて聴いたぞ!もちろん初聴のときなんてわけわからんうちに終わりますから(いま思えば恋愛もそうですねえ)、こんなふうに曲全体をことばで説明できるような冷静さがあるわけもなく、何だいまの!よくわかんないけど一気に盛り上がってササっと引いていったぞ!なんだったんだいまのは……と呆然とするだけでした。

「わがままばかりで本当にごめんなさい」って、玉置さんなら本当にいっちゃいそうですけども、わたしたちは日常生活でここまで簡潔な謝罪の言葉を口にすることがあるでしょうか。いろんな状況説明とか心情の変化とかそういう回りくどい枕を置いてから、だから、申し訳なかった!すまない!って切り札のようにゴテゴテと装飾をつけた謝罪の仕方をするのが通例でしょう。だって謝罪って気まずいじゃないですか(笑)。It's Hard to Say I'm Sorry(シカゴ)です。そんなHardさを克服するのに三日しか要しない玉置さんだからこそ、週単位で恋愛超盛り上がりロードに復活できるわけです。

THURSDAYからキュッキュッキュッキュッ!キュキュキュキュ!と気持ちよすぎるスーパートーンのカッティングが「最高でしょ?」「あーいされてーええ!」のリフレインを下支えして、この何ともいえない気分の高まり、うーむ、まるで恋人に逢うため繁華街に向かうタクシーがネオンの中に入ってきたあたりの気分といいますか、地下鉄駅のトイレで鏡に向かって小さなスプレーボトルの香水を振りかけてよし行くぞと階段を登る気分と言いますか、そういった気分の浮き立ち、ざわめきを搔き立てます。わたくしお金がなかったのでバイクで向かってしまい、ゴメン今日は飲めないわ、さ、乗んなよとかいってしばしば「真夜中すぎの恋」PVでヘルメットを投げ返されるお兄ちゃんみたいになってました(笑)。もちろん80年代じゃありませんでしたから恋人はピンボールなんかやってたわけではありませんでしたけども。90年代半ば、街にはカラオケボックス、ファッションビル、そしてドトールがたくさん出来てきていたのを思いだします。吉野家、立ち食いそば、ゲームセンター、カラオケ、ドトール、マック、たまに地下鉄入口、の永遠繰り返しみたいになっていました。斉藤、桑田、槇原、宮本、香田、たまに木田って感じです。こんなもののどこが面白かったのかよく覚えてませんが、LINEのなかった当時、若者たちはひたすら街で逢い、そして街で遊んで飲み喰い、そして遊び、愛の言葉を交わしたのです。だから街もそれに応えるような施設をひたすら繰り返しで用意していてくれたのでしょう。それにしても、いま思うとなんか安いところばかりだな(笑)。元祖デフレ世代ですから。バブル世代とはふところ事情が違っていたわけです。ですから、元祖バブル世代の玉置さんがこの時代にこういう邂逅をなさっているエリアとはおそらく全然違う場所なんですね、時代だけ一緒です。

さて、デフレエリアで好きともいわれず素直にもなれず、ただただ安いものを消費するわたしら(非モテ)をよそに、「好きなんだよっていわれたら素直に喜んでみせ」るピュアでエネルギッシュな玉置さんのいるバブルエリアでは、裸になったりキスしたりと「最高でしょ?」なワンシーンが起こっていたわけです。当時はこんな混沌とした時代だったといえます。

「ダイヤモンドの気分」という、硬度100のピカピカ、誰にも負ける気のしない最強・有能感で目も手も顔もみんな輝いて力がどんどん湧いてくる状態で、ゴージャスな車でみたバックミラーにはネオンの街、月の砂漠のように静かなオフィスエリアを抜け、海岸通りの街道へ。あたりは暗いですから夜の果てまでふたりきり(な気分)!こうなったらもう止まりません。「ダイヤモンドの気分〜」からはじまる長大なサビは、さらにここで展開を見せて、終わらないサビを続けます。「亜熱帯」「とまんない」「愛したい」「感じたい」「たまんない」と〜「い」を強引に連呼し「世界はパラダイス!」とブレイクしたかと思いきや、またまた「終わんない(ウィスパー)」「愛したい」「ホーリーナイ(ト)」「世界はパラダイス!」と一気に繰り返します。その間ずっとゴキゲンなカッティングと合いの手、パーカッションのアオリが続きます。テンション高すぎ!

息もつかせず間奏、「最高でしょ」「最高でしょ」とリフレイン、まだテンションを落とさず「マリオネットを〜」とBメロを挟み、気分が最高潮に達したことを示唆させます。そして一気にスローな「最高でしょ」にたどり着きます。ああ、こりゃ、気を失ったな(笑)。気がつくとすでにSUNDAY、でも気分は充実感でいっぱい!MONDAYからはまたお別れ、それぞれのウィークデイを過ごすことになりますが、もう一人じゃないから頑張れる、週末これだけ愛を確かめ合ったんだからという気持ちにもなれるってもんです。毎日こんなことやってたら死にますんで、そのくらいのペースでよろしいのではないでしょうか。

しかしまあ、ものすごいテンションで、全力で一気に六分近くを駆け抜ける大曲です。これは演奏する人にもかなりの緊張を強いる曲です。なにしろ単純な繰り返しがほとんどないのに長いのです。達人たちによるジャズのジャムセッションにも似た緊張感が全体を貫いています。この当時の玉置さんがたどり着いた境地をもっともよく表す曲といえるのではないでしょうか。

さて、以前コメント欄にも書いたことがあるのですが、この当時玉置さんはHEY! HEY! HEY!とミュージックフェアに立て続けに出演し、どっちがどっちだったか記憶は確かではありませんがこの「最高でしょ」を「すごくいい曲ができたんです」といって歌ってらっしゃいます。わたくし脳のアップデートが追いついていませんでしたので「えー、これがすごくいい曲?」と思ったのですが、いま聴くとたしかにとんでもない曲です。どうも『夢の都』あたりから、わたくし玉置さんに引っ張ってもらっていた感覚があります。よさのまだわからない曲を次々に出して、ほら早く追いついてこいとおっしゃってくれていたような……もちろんそんなわけあるかって話なんですけど、一回聴いてこれは!とすぐに思えたのは次の『CAFE JAPAN』からでした。そしてまんまとヒットしましたから、この『LOVE SONG BLUE』までは嚙み合わせの悪さというか、リスナーとのズレがこの時期には生じていたのだと思います。ですが、使い捨てのシングルと違ってアルバムってのは残るものですから、こういうふうにだいぶ後から再評価することができます。この曲はこのアルバムを象徴するものであって、参りました玉置さん、当時はぜんぜんわかりませんでした、引っ張ってくれてありがとうございます!と感謝したくなるくらい凄まじい曲だといえるでしょう。

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2022年06月05日

ROOTS


玉置浩二『LOVE SONG BLUE』六曲目「ROOTS」です。

これはいうまでもなく、歌詞だけみるとわけのわからん歌です。それゆえに大傑作です。何が凄いって、リズムと歌の浸透力です。何言ってるのかわからないのに、覚えちゃうんですよ!これはのちの『JUNK LAND』で大成といえる境地にたどり着いたわけなんですけど、『JUNK LAND』にはメッセージ性が強く感じられるのにこの「ROOTS」にはなんのメッセージ性も感じられません。なんだかわかんないけど凄いな!としか言いようのないこのエネルギー!「休む間もなくものすごい勢いで走り続けているが、どこに向かっているのかは誰も分かっていない」とは志田歩さんが『月に濡れたふたり』時代の安全地帯を評したことばですが、この「ROOTS」の玉置さんは、バンドがではなく曲がまさにそんな感じです。エネルギーの無茶苦茶さが何を目指しているのかわからない!わたしたちはアリストテレス以来の目的論にハマりすぎて、もの・ことには、なにか目的がないと落ち着かない、説明をつけたくて仕方ないのかもしれません。このエネルギーは目的などない!あったとしてもそれは神(玉置さん)にしかわかりようがない!今後、今年いっぱい〜来年前半くらいはそういうレビューが増えていくことが予想されます。ですから、わたしたちからすれば、500馬力オーバーのスーパーフォーミュラ・ローラFN06くらいのとんでもない車が子どもの送り迎えをやってるような、釈然としないエネルギーを感じてゆくことになるのです。

カツカツと刻まれるリズム、フェードインしてくるキーボードとアコギ、ローファイ加工された玉置さんのカタカナ歌詞の歌……「キヲツケテ」とか、まったく気をつけてほしい気持ちの感じられない不穏な囁きです。なんだこの不均衡!といきなり度肝を抜かれます。「気をつけてくれぐれも」なんてセリフが歌になるという時点でもう驚きですが、こんな胸のざわめく、いかにも事故に遭いそうな音楽にカタカナ歌詞をつけてローファイで囁くなんてありえん!治安の思い切り悪い地区に借金回収に行った帰りかなんかなんじゃないかと思わされます。とても無事に帰れそうにない……。

ドラムのフィルイン、ベース、マラカスのようなパーカッション、そしてのちに湊さんの鋭いドラム、ベース(岡沢さん、なんといういい音!)鈴木さんのギターがドカンと入ってからもあまり事情は変わりません。「野バラや……きれいな花が咲いてた」いやぜんぜんきれいな花って感じじゃないですから!マカロニ刑事を刺す刃がその辺から飛び出してきそうですよ!(「母ちゃん、熱いなぁ……」)「浜辺で愛をかわした」「バナナが大好きだった」と歌詞はめ一杯平和で日常的なんですが、曲だけがとんでもないレベルで不穏です。どうしてくれよう、このアンバランスさ!そして「プロペラ回してブルブルブルブルブルブルブルブル!」のあたりでハタと気がつくのです。あっ!もう歌える!初めて聴いたのに!なぜ?なんだよこれ!全然いい歌だと思わないのに!と。このくらい浸透力が強いのです。

そう、何を隠そうわたくし全然いい歌だと思っておりませんでした。愛の物語を描く歌詞の世界も心をわしづかみにする美麗な旋律もありません。それしか期待してなかった……評価基準がなかったのです。いやもちろん、『太陽』や『カリント工場の煙突の上に』で別の評価軸を育てていたんですけども、それらはいわば従来の応用であって、全く別の評価軸が必要になるなんて、予想もしていなかったのです。ですが、この歌をここまで聞いた時点ですでに心身に叩き込まれていました。五寸釘を頭にガツンと!もうこうなったら玉置さんのノリの虜です。「パラララッパッパパー」です。ノリノリで楽しくて仕方ありません。

「もう傘も用意したのに なかなか雨が降ってこない」って、歌の力で強引に覚えさせられた感がありますが、ガッカリ感が強いですね。世の中には台風が来るとワクワクする人種というのがいるのですが(あちき)、せっかく用意したいろいろなグッズが役立つことなく台風が明後日の方向に進んでいったような感覚です。Singin in the Rain!雨に唄って踊って、最後に緞帳をめくってキャシーが出てくる瞬間を待ちに待って……でも降ってこない……。事情はいろいろでしょうけども、ここでは雨がなんだか楽しいものであるかのような扱いです。

ここで曲は一気にスローになり、「ここへおいで なかよく並んで」というなんだかよくわからない勧誘が歌われます。次いで、「パラララッパッパパー」「進め!」と最高にノリノリなんですが、何をやっているのかはわからない(笑)局面が描かれます。意味や目的なんてなくていい、そんな呪縛はいらない、君と僕、僕と君がずっとふたりで歩んでいけるのなら、それだけで十分だろ?足並み揃えて楽しいじゃんか、それ以上になにがあるっていうのさ!もはや冒頭の「キヲツケテ」は何だったのかさっぱりわかりません。「バナナが大好きだった」少年時代に、君は何をしてたの?なんて、なんで訊いたのかもわかりません。わからなくていいのです。わかろうとするということは、この世界のストーリーを求めるということなのですが、そんなストーリーははじめからなくて、ただ君と僕がいるだけなのです。

ここでブレイク、鈴木さんのやや深めな歪みのすばらしい音色が響き、一気に曲は最後の局面へと進みます。「君に乗りたくなったら」というややきわどい表現もなんのその、ひたすら楽し気なのに気だるそうに、それでいてノリノリというカオスな曲は安全地帯・玉置浩二にありがちな長いアウトロへとなだれ込んでいきます。このアウトロは絶品です。玉置さんのシャウト、楽器陣の鬼気迫る演奏といったら!『JUNK LAND』はほとんど外部ミュージシャンを使わないで作られた世界だったわけですが、この「ROOTS」は一流ミュージシャンたちが渾身の力をこめて作った信じがたい音の津波です。玉置さんがやりたかったことってこれなんじゃないか、それがこの「ROOTS」で実現されていたのを、のちに自分だけでやってみようと思って90年代後半の玉置ソロが作られていったんじゃないか、などと思うわけです。

ところで曲名のROOTSって何のことだろう?と不思議になります。草の根?いやいや自分の音楽ルーツ?それとも……手元のリーダーズ英和辞典にはこうあります。

 b.[〈a.〉]ルーツ的な、民族的な〈音楽など〉

音楽ルーツとして玉置さんが自分の中に求めたものが形をとったのがこの曲なんじゃないのか……そういう曲を作りたいという願いをこめて、あるいはそういう曲を作ることができた記念として、この題名を用いたんじゃないか、と思わされるのです。

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