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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2022年03月27日

きっかけのWink


安全地帯アナザー・コレクション』十二曲目、「きっかけのWink」です。「Juliet」のカップリングでした。

「Friend」の絶望感をスカッと帳消しにする「恋はDANCEではじめよう」、「じれったい」の焦燥感はどこへやらの「ひとりぼっちの虹」に続くこの曲「きっかけのWink」は、「Juliet」の一途さを見事に吹っ飛ばすアップビートな曲です。これをもちまして、背徳のカップリング三連弾がここに完成するわけです(笑)。

なにやらエフェクトをかけてスネアの音色ふたつを打ち分けるドラム、チャカポコのパーカッション、玉置さんのウィスパー(これも一種のパーカッション?)でゴキゲンに曲ははじまります。クリーンのギターによるアクセント、そしてボキボキのベース、キーボードに続けてホーンセクション、おおこれは15人体制の安全地帯で演奏すると非常に映えそうです。「じれったい」「No Problem」あたりに近いですね。こういうかなり作り込んだ曲はもったいないしアルバムに入れようよと思うのですが、『月に濡れたふたり』の過度なシリアスさがこういう軽薄路線の曲との共存を拒んだのかもしれません。わたくしどっちも好きですので二枚組にすればいいのにとか無責任なことを考えてしまいます。実際、前作は三枚組だったわけですし、カップリングの曲も「ひとりぼっちの虹」「きっかけのWink」「時計」とあったわけですから、できなくはなかったのだと思います。ですが、この当時の安全地帯はシリアス路線で一枚だけ出す、という選択をしました。毎回二枚三枚出していられないですしそれが正解だとは思うのですが……そういや当時はCDは64分だか74分が限界だとか言われていましたね。その意味ではじゅうぶん一枚で出せるのですが、こんどは当時まだ存在していたアナログ盤が出せなくなるおそれがあります。どこかで線を引けないといけなかったのでしょう。そんな、路線にはずれたもったいない曲です。だからこそ、『安全地帯アナザー・コレクション』のプロモーションにこの「きっかけのWink」が用いられたのかもしれません(わたくし、ローソンで当時聴いたとすでに書きました)。

歌が入りまして、意味深だけれども事実は単純、という松井さんの詞物語を色気たっぷりの玉置さんが歌いあげるという十八番が炸裂します。そうそう、安全地帯ってこうだよな!と思わされるんですが、この曲に似てる曲がほかにあるかといわれるとそうでもありません。従来の安全地帯がもっていたどこか深刻な雰囲気が感じられず、曲調がじつに軽くてオシャレなのです。

することがなくても、若者は街に出たのです。だってLINEないし(いい加減飽きてきたな)。コンビニコーヒーもありませんから、住宅街はヒマそのものでした。逆に何か特別感を出すためには一緒に街をぶらつくだけで十分だったのです。ですが、繰り返すとそれも飽きます。毎回映画観るほどの金はないしそんなに観たい映画があるわけでもありません。Netflixないし(笑)。ですから、飽きてきたな、退屈だなという表情がついついウインドーには映ってしまっているのです。それをみた主人公、なんともいえないさみしさに襲われます。「ひとりよりうまくふたりでいられない」的な辛さです。

この沈滞ムードを一気に振り払いたい!何かきっかけが欲しい!たとえばいきなりWinkするとか……甘えるな!自分できっかけを作れ!と思わなくもないのですが(笑)、そんな些細なことでも気分が晴れやかに変わるんだ、だって愛しいきみがWinkするんだろ?とまあ、きわめて大したことのないちょっとした不幸をライトに嘆く歌です。平和だなあ。そんなに退屈だったら帰ればいいのにと思うのは、家にも娯楽があふれる現代人の感覚です。演奏は鋭いシンセの音で短くアオリを入れる以外はそんなに変化ないんですが、コーラスが効いていますね。これはAmazonsのみなさんなんじゃないかと思うんですが、手元にクレジットがなくわかりません。サビ前に入った鋭いブレイクと、サビに入れられたこのコーラスによって、Winkのおかげで何かが変わって気分的に仕切り直したぞ!さあ楽しく街をぶらぶらするぞ!二人で歩けばそれだけでハッピー!さすがきみのWink!的な、かなりムリヤリ感のある盛り上がりなんですが、曲を聴いているとそんなムリヤリ感が感じられません。さすがの玉置松井コンビです。

歌は二番に入りまして、「ハイヒール」という色気ある言葉を持ってきます。その色気に誰もが(誰もが〜とコーラス)ふりむくほどのパワーある足元です。ハイヒールなんてみんな履いてるだろ自意識過剰なんだよと思わなくもありませんが、その視野と想像の狭さこそが若者のキラキラ感を支えているのであって、そのキラキラ感以外は問題じゃないのです。

試される気がかりなことというのは何なのか、これがさっぱりわかりません。きみの魅力ならほかの男をあっさり落とせるかどうか?いやダメだそんなの試さなくていい、やめてくれ(笑)。そこまでいかなくても、自分の恋人がどのくらい魅力的かというのは多少気がかりなことかもしれません。人によっては大いに気がかり、それどころか、それが全てかもしれません(笑)。べつにいいじゃんほかの人がどう思おうが!とはすっぱり割り切れない気持ちを抱えつつ、それがなくなってゆく過程をともに生きて成長してゆけばいいんじゃないですかね(謎の上から目線)。

曲はサビ、大サビ、サビと繰り返してほぼ間奏なく盛り上げます。「はっきりとMelody」の意味がマジでわかりません(笑)。「Melody」として形をとるようなちゃんとそれとわかるトキメキがほしいという、ないものねだりな心境なんじゃないかと思いますが……おそらくは距離を詰め切れていない感覚があってもどかしい状態なんじゃないでしょうか。だからこそ、この印象的な大サビが、曲の構成のうえだけでなく歌詞の物語としてもイキイキとしているのだと思います。夢中になる瞳をぼくはまだみていない、だから夢中になるきみが見たい、そんなきみと一緒にいたいんだ、それこそ一片のやましさを感じてしまうくらい近くで!という、オシャレな曲の中に隠されたドロドロの情念に似たものが垣間見えて、わたしたちはそのギャップをそれとわからないまま味わうことになるのです。

ドロドロでおおらかに歌われるこの大サビに挟まれた軽快なサビのリズムがまたニクいくらいギャップあります。つまり「きみの輝きをみせて」「思いがけないまま」と畳みかけるように歌うこのリズムの良さと、「きっかけのWinkで」「はっ…じけたWinkで」と促音撥音の組み合わせによるリズム、実に見事です。これは玉置さん松井さんにより生み出された至高のキャッチーさです。だって一発で覚えますよこんなの。印象的すぎます。それなのにローソンを拠点にこの曲がバカ売れしたという話はついぞ聞きません。誰もコンビニで音楽など聴いていなかった?(笑)。翌年ロッド・スチュアートの「さよならバージニア」もローソンで流れていたんですが、これもたいして話題になりませんでしたねえ。当時イートインがあればあるいは!

さて、曲は長めのアウトロがフェードアウトしていきます。玉置さんと誰か女性コーラスがいわゆる玉語で掛け合いをして消えてゆきます。これはあと一分くらい聴いていてもいいなと思わされます。うーん惜しい……実に惜しい……繰り返しになりますが、この曲の入ったアルバムをリリースしていれば……と思わされます。ただ、このような路線の曲は、言ってみれば『安全地帯V』の延長上にあり、『安全地帯VI月に濡れたふたり』との狭間にあったのであって、新しい表現を求めるニューアルバムからは弾かれてゆく運命だったのだと思います。そんな隠れた名曲であるといえるでしょう。
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2022年03月17日

ひとりぼっちの虹


安全地帯アナザー・コレクション』十二曲目、「ひとりぼっちの虹」です。「じれったい」のカップリングでした。

「じれったい」の焦燥感はどこへやら、すでに穏やかなのかいまだ穏やかならずなのか、ちょっと不明瞭な心境で失われた恋人を思う歌です。演奏は基本シンセサイザーだけ、アコギも入ってますけど、これ玉置さん弾いたんじゃないですかね、たぶん玉置さんとBAnaNAだけでやってます。そんなわけでA面の「じれったい」でのフルバンドからは一転、とてもシンプルな演奏になっています。

ポポポポポッポ……と可愛らしい音で短い前奏があったあと、すぐに歌が始まります。何やらうすーく鍵盤が入っていますが、ポポポの存在感が強くてよく聴こえません。「古い住所へ〜」とAメロ二回目から美しいストリングスが入り、曲を盛り上げて一気にサビに行きます。サビからは何やらシンセがアオリに入ってストリングスときれいな絡みを聴かせてくれます。ここに、おそらくは玉置さんのアコギが一瞬打楽器かと思えるほど澄んだ音色でストロークを続け、演奏は最高潮に達します。最高潮ったってシンプルな美しさを保ったままですから、すこしもうるさく感じません。このアレンジセンスはほんとにどのJ-POPアーティストにも見習ってほしいと願ってやみません。せっかくの昆布出汁に固形ブイヨン入れやがって!みたいなのが多すぎましたし、今なんて昆布出汁の取り方すら知らないんじゃないかと思わされるものだらけです。

曲はもう一度Aメロを繰り返し、間奏へと続いてゆきます。この曲も安全地帯や玉置さんの曲によくある、AとかBとかサビとかそういうありきたりな構成思想で語るのが無粋に思われるような、説得力ある構成です。「Aメロとサビしかないじゃん」とか、控えめに言って追放刑です(笑)。

曲はトイピアノのような音色でAメロをなぞる間奏があって、大きくストリングスで最後のサビへとリードされてゆきます。「ポンワー・ポンワー」と跳ね上がるシンセをバックに、玉置さんが空にかかる虹を歌い上げます。低音を多めに含んだストリングスが一瞬だけ挿入され、いくぶん落ち着いていた気分を一気にスーパーブルーに急降下させます。その後、何事もなかったかのように落ち着いた気分の伴奏に戻るのがまた、癒しきれていない猛烈な悲しさを抱えたままの、かりそめの落ち着きであることを演出します。これは切ない……。

何事もなかったようで実はあったことがプンプンと臭う伴奏であることがわかります。これはBAnaNAのバラエティーあふれる音色を組み合わせたシンセと、それにズシーンと絡んでゆく星さんのストリングスの組み合わせによるものでしょう。『All I Do』で堪能できるパターンでもありますが、玉置さんソロだけでなく、安全地帯にとっても『安全地帯V』を経て生み出された重要なオプションとなっていたことが推察されます。

さて歌詞ですが……これは辛すぎます。どういう事情かは分かりませんが(安全地帯のことだから死別とかでなくて失恋だろうと思うのが自然といや自然ですが)、もう手紙を出しても宛先不明で帰ってくるであろうことが容易に予想される関係に陥っています。

彼女のいた街で朝を迎え、みるものきくものすべてが彼女を思い出させます。とりわけ「頬にかかる涙」が思いだされて、ひとりのときの心が千々に乱れます。それを思いだして胸が痛むうちはまだ彼女を忘れていないわけですから、いますぐに逢いたい、逢って涙の記憶を上書き保存したい、でもできない。まあ、できませんよね。大人たるもの、それはやっちゃいけないとわかっています。だってそれは自分の都合じゃないですか。たまたまうっかり向こうも同じ気持であった場合にだけ逢ってもいいとは思うんですが、そこは昭和末期、LINEで腹の探り合いなどできない時代なのです。なんとか連絡先を人づてに入手してイエデンにかける以外ありません。だから、あて先不明になることが濃厚な「手紙」でさえも、まだまだ重要な連絡手段候補となりえたのです。いまだったらそもそも検討すらしませんよね。

そんなことを考えているうちに眠り込んでしまいます。うん、寝たほうがいいですね。こういうときにはスマートフォンなどいじらずに頭をリセットしないといけません。当時はそんなものありませんから、悶々と眠るしかありませんでした。そんなとき、わたくし夜中に突然コンビニに散歩してカップ焼きそばを食べるという暴挙がマイブームになったことがありまして、すっかり体の具合が悪くなったことがあります。若い皆さんはくれぐれもマネをなさらぬよう。そんなことするならスマートフォンいじってるほうがいいかもしれません(笑)。

そして夢のような夢を見ます。夢のようにステキでうれしい夢です。なんと!「ほほえむ君」が「空にかかる虹」のたもとにいるんです。つまり、いないんです(笑)。君のいる虹のたもとに行こうとしたら当然辿りつきません。虹というのはみなさんご存じのとおり近くでは見ることができません。庭に水蒔いてるときにうまく角度を調節して虹ができているときにバシャバシャ手を触れて「虹にさわった」と思えるような気がするだけです。ああ夢か……夢の中に君がいたのに、夢の中でも君に追いつかないのか……と一層気分が暗くなります。さみしいからみてしまった夢なのに、いっそうさみしい気分にさせられるんですから、たまったものではありません。

そんなわけでこの曲は、一見かわいらしい、美しい曲の装いをもってはいるのですが、実は凶悪なくらいダウナー系の失恋ソングであるわけです。心の弱ったときにはあまり聴き入りたくない、けどいい曲だから聴きたくなっちゃう、そんな失恋モードの安全地帯ファンを虜にするいつものパターンといやいつものパターンではあります。ただ、これが「いつもの」である時代は間もなく終わりを告げようとしていたと、当時のわたしたちは知らずにいたのでした……と、こういう振り返りがピッタリはまる曲だなあ、と思います。

「安全地帯のシングルB面だと何が一番好き?」
「ひとりぼっちの虹」
「そうなんだ、よくわかるよ。じゃあ置き手紙も好きなんじゃないかな」
「ぜんぶ好き」
「そりゃそうだね」

安全地帯のことを話せる相手を求めて今はなきICQで、こんな会話をしたことが思いだされます。この『安全地帯アナザー・コレクション』がリリースされてからまだわずか数年のことでした。逢うひとなんかとっくにみんな街を去っていて、孤独な冬の寒さを一緒に耐えてくれる相手をネット回線の向こうに探すことのできる時代の、ごくごく初期のことでした。
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2022年03月12日

恋はDANCEではじめよう


安全地帯アナザー・コレクション』十曲目「恋はDANCEではじめよう」です。「Friend」カップリングでした。

わたくし、とりわけリズムに関しては非常に弱く、すこしも説得力のない話を最初にしてしまって恐縮なのですが、こういう跳ねるリズムのことをシャッフルというんだと思います。ズッタ・ズッタ・ッタツ・ツッタ……ともの凄い速さで曲が跳び跳ねていきます。A面のどんよりしんみり感が見事に吹き飛ぶカップリングになっています。林家ペーの相方が&ロ愛子だったなみのビックリな組み合わせといえるでしょう。

いきなり歌で「Come on......」と入り、ズッタンズッタン!とスピード感満点なリズムが炸裂、「Danceがいいな」などと、通常の趣味嗜好をしていたら決して言わないであろうセリフをサラッと吐きます。ふう夜か、星がきれいだな、こんな夜は……DANCEがいいな……なにいってやがんだ頭が壊れる!(笑)恋はDANCEではじめようって、中国時代劇か!くるくる回って恋が芽生えるやつ(すぐ同じネタを使う)。とかなんとか思っているうちにレモンとかたぶんKissしてそうとかわけのわからないスウィートなセリフを一気に歌い、ギターのアオリで一番を終えます。ダンスの途中でうまく波長が合って、あっこいつら絶対Kissとかしてるぜ感のある雰囲気でビシッと抱きかかえる感じのポーズが決まったときにみんなが手を叩く……うーむ、わけわかんなくなかったすみません松井さん!でもわかんないです!気持ちが!

さていきなりサビっぽかった箇所を越えて、Aメロらしき箇所に入ります。ドラム、ベースの調子はそのまま、短音フレーズによるギターの掛け合いをバックに、韻を踏んだ(それゆえに意味はややイマイチ)玉置さんのボーカルが冴えます。クールとフール、嵐とジェラシー、といったところですね。「心はフール」ってもしかして悪口いってるのかと一瞬思いますが、たぶんそんな噂をしている人を内心バカにしているくらいの意味でしょう。玉置さんとDANCEなんかしてたらそりゃー噂とジェラシーで潰されそうになりますから、そういう腹の座った女性でなければならないわけです。

歌は短いBメロ(めちゃめちゃな可愛さ)のあとすぐサビに戻ります。「気分しだい」「疑問だらけ」とリズムの似通った言葉を用いてスピード感を落とさず突っ走ります。ここはリズムのためだけでなく、意味深さも抜群です。そう、疑問だらけなことがあるんですよ、気になる策を弄してくる女性というのがいたとして。慣れてるとかじゃないんでしょうね、たぶん自分を守るためにナチュラルにそうなんだと思います。

次のAメロも、思わせぶりワードの連発です。これはキレキレです。松井さんだいぶ調子が上がってきています!(笑)。「腰に」と「意固地に」なんて思いつくほうがどうかしています。そこに誘惑がはみ出してきて手がやけるなんて、すごく久しぶりな気のするスケコマシダンディー感満載です。わたくし、「ふたりで踊ろう」とかの頃に戻ったのかと一瞬思いました。実際その頃の曲なんで当たり前なんですけど、わたくしからすると五年くらい前のことのように思えます。

そして、何やら不思議な音色のメロディーがリードする間奏に入ります。間に入る玉置さんの「あれ?」は、レコーディング中に歌詞が見つからなかったから「あれ?歌詞がないよ?」と思った時の「あれ?」だと読んだ記憶があります(ソースはN.NOGUCHIさん、安全地帯レビューの大先輩というか、わたしがネットに接続したときにはもうあったと思いますこのサイト、一体いつから……と思ったらなんと開設は96年!ははー(平伏))。まだGoogleなかったんで、Lycos とかInfoseekとかで探したんだと思います。そのころから「安全地帯」で検索すると上位に表示されてた老舗中の老舗です。

そしてこの前後から歪んだギターの単音がキュイーン!とアオリを入れてきます。すっごい目立ちますよね、こんだけいろいろな音や声が入っているのに。安全地帯の音作りがいかに優れたものであるのか、こういう小技にいちいち唸らされます。

曲は最後のサビを駆け抜けて終わります。もともと二分くらいしかない曲なんであっという間なんですけど、それにしてもあっという間感が高いスピーディーさです。歌詞カードには自分勝手だって「なんたって」と書いてあるんですが、わたくし自分勝手だって「なんてったって」だと思います。私の耳が悪いか玉置さんの活舌が悪いか(それはない)、誤植か、もしくは、歌ってみたら「なんてったって」のほうがよいことが分かったからそう歌った、ということでしょう。うん、最後のケースが一番納得できます。歌い始めてから途中で「歌詞がないよ?」とか言ってるような慌てぶりのスケジュールでレコーディングしてますから、その場のノリで決まっていく、変わっていくようなスピード感が求められるというのが一番ありそうな話です。

アルバムに収録されないままだった二分程度の小曲ですし、おそらくシングルのカップリングとして急いで作ったんだとは思いますけど、急いだなりに新しいこと(シャッフルとか)をやってみよう!と楽しんでお作りになったのではと思います。この時期でなければこんなに急がされることはなく、こんなに急がされなければこのような試みをすることはなく、このような試みをしなければ生まれなかったような曲なのです。皮肉なことではあるのですが、だからこそ、わたしたちは安全地帯の様々な一面をみることができるわけです。
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2022年03月06日

俺はシャウト!


安全地帯アナザー・コレクション』九曲目「俺はシャウト!」です。「夏の終りのハーモニー」カップリングでした。陽水さんも参加してのハチャメチャロックンロールです。「夏の終りのハーモニー」が荘厳なバラードで感動的に終わった後、B面にひっくり返すとレコードと一緒に自分もひっくり返るという粋な組み合わせでした。

陽水さんのゆっくりしたカウント「ワン……ツー……スリー……パッ!」から始まります。パッ!ってなんだよパッ!って!とまず頭が追い付きません。そして田中さんの非常に生ドラムっぽい音でドドドドダッタン!ドドドドダッタン!が始まりまして、単純なギターのリフが繰り返され、おそらくBANANAによるシンセが高音を響かせつつ玉置さんによる謎の「デュデュデュデュデュ」、とすでにかなりカオスです。そしてベースが入って流麗なサックスでサビのメロディー……これがカッコいいですね。

歌に入りまして、「夏の終りのハーモニー」とは異なり陽水さんと玉置さんが短く交代しながら歌います。出てくることばがいきなりフィードバック、えーとたぶんですがディレイのヤマビコ回数じゃないですかね。あ、いや、わたくしもディレイ使うんですが、いつも必要な時だけツマミさわって、ああそうかと思いながら調整するもので、ちゃんと覚えてないんですよ。基本ディレイとかリバーブには興味がないんですね。興味がないで済ませちゃいけないんですけど。マイクにノルまでフェダーあげるというのは、ちょっと遠めのマイクで拾っているけどそのボリュームをメチャクチャに上がるとその音がモニターから聴こえるようになるくらい大きくなるってことなんですが、これをやると高確率でハウリングが起こります。ミキサーの前にいる音響さんがハイを下げたりとなりのマイクを小さくしてみたりして何とか対処するんですけど、基本顔は真っ青です (笑)。ですから指が腰抜け、なんでしょう。そんなこと気にしないぜ!というくらいノリノリであることを示しているわけです。なんて迷惑なバンドだ、音響やりたくねえ〜。フェードインもアウトもなく、同じことを延々と繰り返すデジタルドラムに合わせて気の向くままセッション、気の向くままシャウトするんだ!ガラス窓のむこうのディレクターも耳がグシャグシャ、ヘッドホンを外して眺めているしかありません。

とまあ、ハチャメチャなセッションであることを示唆する歌詞なんですが、これがまた音がいいんですね。ちゃんとミキシングできてます。当たり前といや当たり前なんですが。

俺はシャウト……シャウ!シャウ!シャウ!っと二人が叫んでいる間に、何やらガサガサガサ……と耳障りと心地よいの中間みたいな音が流れてきますね。ギターで高速ピッキングした可能性もありますが、おそらくはBANANAの仕業だと思います。キーボードに多くの打楽器をアサインしておいて、打ちまくっているんだと思います。さすがBANANA、もともと陽水さんのバックバンドやってただけのことはあって、下手すると陽水さんや安全地帯よりもノリノリです(笑)。

そしてサビ、目立つサックス、それに負けない声質の陽水さん、玉置さんはやや押され気味に聴こえますが、これは陽水さんに遠慮してるんじゃないかなと思えてきます。だって陽水さんとBANANAがノリノリなんですから(笑)。

「声までシャウト」って当たり前じゃんと思うんですが、本当にシャウトなのは「俺」なのです。だって「俺はシャウトする!」とか言ってませんから。「俺(という存在)はシャウト(である)!」なんです。ですから、俺はシャウト、いやむしろシャウトが俺なんだけど、そんな俺が声を出したらどんな声だと思う?フフフ……シャウトに決まってるだろ?的な、腹の立つ表現が成立するわけです。いやー、陽水さんの詞ですから、これもわたくしの妄想とばかりは言えない気がしますよ。あの娘とももちろん……シャウトだぜ、つまりこわれたままひどく愛することなんだぜ!いや、まったくもって壊れていますが、もう陽水さんだから何でも許せちゃうっていうか、ちゃんとわかりますよね。初聴時は「なんじゃあこりゃあ」でしたが、今になって見事な歌詞に思えてきました。

ブレイクを入れて、ダダダダ……とBANANAが大活躍の小節を経て間奏に入りますが、基本は繰り返しです。そして歌は二番に入ります。

はて、「トークバック」ってなんだろう?と思いました。ディレイもよくわかってないわたくし、こんなことではいけないので調べてみますと、はーなるほど、レコーディング中にガラスの向こうのミキサーとやり取りする連絡回路ですね。中学校の放送室でみました(笑)。わたくしレコーディングのときもスタジオ入ったことあんまりなくて、ミキサーの横にアンプ置いてやっちゃうことが多かったですし、いまはもう自宅とかで自分でやりますからあんまりお目にかからない回路です。これでいろいろしゃべりすぎるとサイドギターの気が散る……わたくしサイドギターってのがそもそもいないバンドばかりでしたからそれはわかりません。だいたい、それだとボーカリストと、最低サイドギターが同時にスタジオ入ってますよね。たぶん一発録音で全員一緒にやっているんでしょう。さすがハチャメチャセッション!中島みゆきさんはレコーディングのとき、リズム録音のときに一緒に歌っちゃう、そのあと一切歌い直さないという話をラジオで聴いたことがあって仰天しましたが、それはもうバンドのやり方それぞれだとは思います。

そして、ピアノもシンセも(中西さんとBANANAですね)ハンマーのようにあの娘のハートをガッツンガッツン叩き、もうメロメロにしちゃうんだぜ!そしてとどめに俺たちがシャウトだ!これはたまらないぜ〜。いや、大丈夫ですか、ちょっとノリノリすぎて思考がヤバくなってませんか(笑)。陽水さん、安全地帯、中西さんにBANANAくらいの凄腕が揃うとそこまでノレるような気がしなくもないんですが……ロックンロールの麻薬的な表現を、このアダルティーなメンツで行うとはちょっと意外にもほどがあります。でも、きっとうれしかった、楽しかったんでしょうね、玉置さんも、メンバーも……。普通に考えたらもう実現するはずがない組み合わせであるくらいに安全地帯はビッグになり、忙しくなりすぎていますから。金子さんの粋な計らいに感謝しつつ、最高にノリノリになろうぜ!「ロックンロールは恋狂い」にも負けないぜ!という気分だったのではないかと愚考する次第です。

曲はサビを繰り返し、そして陽水さん玉置さんが(おもに陽水さん)獣のように吠えるアウトロを長めに演奏して、唐突に終わります。おお、フェードアウトはないぜ!(笑)。

こんな楽し気な音源を製作すること、そして発表してしまうことが許されるくらいにビッグになった安全地帯の、下積み時代を思いだしてそれを吹き飛ばすような軽快ロックンロールであったということができるでしょう。また、このアルバムそんなのばっかりですが、この曲も安全地帯のイメージからかけ離れていて、わたしたちに面白い一面を提供してくれているということもできるでしょう。
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