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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2022年11月23日

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玉置浩二『EARLY TIMES〜KOJI TAMAKI IN KITTY RECORDS』、十曲目「スケジュール」です。「行かないで」カップリングで、当ブログ指定変な曲三部作のラストを飾る変な曲です。「ホヘホヘホヘホヘ〜ヒホヒホヒホヒホ〜」と、およそシリアスとは縁遠い不思議なノリで、一週間、いや二週間ですかね、思惟の移り変わりというか、命令調の言葉で何者かが迫ってくる様子が淡々と歌われるという奇妙極まりない歌です。

オリジナルサウンドトラック プルシアンブルーの肖像』でよく聴いたようなシンセの音でホヘホヘと裏をなぞられながら玉置さんが美しくも弱々しいファルセットで歌い始めます。花を植えるのは日曜日〜からはじまり、月曜火曜と続いていくのです。これだけきくとロシア民謡の「一週間」みたいです。ですが、この歌は曜日によってかなり重要度というか歌詞の分量が違います。

花を植えた翌日、月曜日はかなり陰鬱な様子がつづられます。コントラバス的なベースが「ボン・ボ・ボンボン・ボイヨ〜ン」と短い音でリズムを取ります。カツカツとパーカッションもアクセントを入れてきます。ホワンホワンとした鍵盤が薄くバックに流れています。総じて憂鬱です。仕事で人の心を捨てて笑顔で嘘をつく(セールストーク)ように命じてきます。イヤな命令だな!でも仕方ありません。わたしたちはこの命令にあらがうには立場が弱すぎるのです。思わず空をみあげて星になりたいと願ってしまうような月曜日でした。

ズチャ・チャチャチャ・ズチャッチャーとあまり三度とか五度とかのキレイ系でないジャジーな和音をピアノが奏でます。火曜日もまた長いです。まだ憂鬱なのです。夢とか恋なんかやめてしまって金だけに集中しなさいと命じてきます。この命令にもわたしたちは逆らうことができません。夢とか恋とかのことを考えていてはまだまだこの先長い一週間を乗り切るにはわたしたちの心は弱すぎるのです。勢いつけて「仕事だ!金だ!」と気合を入れる必要があります。その気合のおかげでKissの感触も忘れ仕事に全力投球できそうです。

ここから先、サビというかホヘホヘというか、怒涛の水曜木曜を一気に短く通過していきます。水曜日は忙しくて疲れて電話どころじゃなく、電話しそびれていると見ようと話していた映画も終わったことを木曜日に気づいてしまいます。ふんだりけったりですが、金とか仕事の前には大したことじゃありません。まだ週の半ばなのです。

木曜のことか金曜のことか……いよいよ気分は限界に近づきます。もうすぐ週末だガンバレ!悪魔になる、野蛮になる、自分は苦労を避けて相手にショックをプレゼントする……もう玉置さんのボーカルも苦しそうに叫んでいます。ほぼバブル全開のこの時期、職業生活ってこんなに苦しかったのか?もっとこう、植木等の映画みたいに歌ったり踊ったりしているうちにぜんぶうまくいくような感じじゃなかったの?(ちなみに高度成長期の映画で、バブル期ではありません)いやいや、当時中学生だったわたくしが言うのもなんですが、そこまで底抜けにお気楽な感じではなかった気がしますよ。高度成長期のことは知りませんがきっと高度成長期だって楽ではなかったと思います。いつだって仕事そのものは大変でそれは変わりがなく、ただ給料が増えるとか増えないとかの部分が違ったのだと思われます。

ここにピョー!ピョピョー!というハープシコードをムリヤリ伸ばしたような奇妙な音で間奏が入ります。なんか、いかにも無秩序!といった旋律で、心が疲弊し千々に乱れていることがしのばれます。

そしてここからホヘホヘで金曜土曜、そして日月火水木金土さらにまた日と、一週間強が一気に流れていきます。なぜかというと、これはおそらくフラれたのでしょう(笑)。フラれたのは、よくよく考えると最初の花を植えた日曜日だったんじゃないかと思われます。フラれたからきみに花をあげる当てがなかった、そして月曜火曜が陰鬱にスローに過ぎてゆき……水曜はもしかしていつもは電話のできる日だったのにフラれたから「電話もできない」だったのかもしれません。そんなわけで花金(花の金曜日、バブル用語)ですが踊りに行けません。半ドンの楽しい土曜日も遊びに行かずテレビなんか見ています。そして日曜には、忙殺されていた間に枯れていた花を見つけてしまいます。

「軒下にでも置いとけば吹き込んだ雨で勝手に育つよ!」と薬屋のオヤジにいわれてパンジーの苗をいくつか買ったことがありまして、言われた通り軒下(アパート窓の、落下防止手すり枠)に置いておいたのですが、忙しくて気にしないでいるうちに雨が全然降らない日々が続き、すっかり枯らしてしまいました。男の一人暮らしと花の相性は悪い……というか単にわたくしがずぼらなんですけども。お花の可愛らしい姿で癒してもらおうとか恋人に喜んでもらおうなどと、図々しいにもほどがあったのです。

そんなわけで恋人のためにと一種の願掛けを兼ねていた花は枯れてゆき、手紙をみて涙やら想いやらがあふれ、火曜日は思い出しては泣き、水曜日はとうとう心がダウン。ちなみに当時、太田裕美さんのアルバムにそういうタイトルもありましたけども、うつのことを「心の風邪」と呼ぶ言いかたはまだありませんでした。そして寝込んでしまい、木曜日はひたすら寝ます。金曜日は金魚と遊ぶという、ダジャレかほんとうに寝床から金魚鉢を眺めてエサをやるくらいが限界だったのか、よくわからないともかく非活動的な一日を過ごします。土曜日もサボテンと話すという、まだ寝込んでいるんじゃないかという描写が続きます。サボテンなんておいてあるんですねえ。たしかに80年代はよくサボテンとかアロエとか鉢植えでおいている家が結構あった気がします。そのサボテンの花なのか、二週間前に植えて枯れかけた花なのか、ともかく日曜になっても花は咲きません。曲はフェードアウトしていきます……。

言ってみれば、フラれたあとに仕事してて寝込んじゃった、というだけの歌なんですが、それを「スケジュール」と命名するセンスが一種残酷で、おそろしく鋭いです。フラれても仕事には行かなくてはならない、それはたしかにスケジュールです。ですが、そのあと恋人の感触を恋しがる、喪失感に苦しむといったことをスケジュール帳に入れる人はいません。いたら危ない人です。ですが、その苦しみは必ずやってきます。まるでスケジュールのように……スケジュールなのに曜日ごとに濃淡があったり過ぎるのが早い遅いがあったりと、人間の営みが時計の進み通りにいかないことすらもスケジュールされていたことのように起こる……現代社会の営みと個人の心的営みをリンクさせて生きなくてはならないわたしたちの悲しき運命を「スケジュール」という問答無用の定めに喩えるという、松井さんの洞察力にもう脱帽するしかありません……。

ですが、いうまでもありませんがこれはとても変な曲なので、わたくし「またか……」と、「行かないで」との落差にがっかりしたものです。なんで玉置さんはB面こんなに変なの!と、憤りにも近い感覚を覚えていました。ですが、この曲は強烈にわたしの心に残りました。ここまで変、というかこれまでにないフックで心を打たれまくると、この曲でなければ感じることのできない何かがあることに気がつきます。ですから、「行かないで」のシングルを再生するときはいつでもこの「スケジュール」まで再生しました。変なのに猛烈にさみしいこの曲を、何度も聴きました。このとき、玉置さんの精神状態がこの歌のように追い詰められつつあったということは当時気がつきませんでした。この数年後、『LOVE SONG BLUE』中「最高でしょ?」でウッキウキの一週間を描く歌が出て、ようやく玉置さんの一週間がまた始まったんだな、思い至り、この曲のことは忘れていったのです。忘れるなんて不届きな!と思わなくもないのですが、もしかしてそれがきっとこの曲の正しい位置づけだったんじゃないのか……と思われるくらい、玉置さん復活ストーリーの狭間にうまくハマっているように思われます。

さて!ようやくこのアルバムも語るべき曲はこれでおしまいです!思ったより長かった……いよいよ『JUNK LAND』だ!と思っていたのですが、よくよく考えたらその前にライブアルバムの『T』が先ですね。なかなか入れないな『JUNK LAND』……でも、ホントにもうすぐです。

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posted by toba2016 at 12:31| Comment(4) | TrackBack(0) | EARLY TIMES