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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2022年11月19日

行かないで


玉置浩二『EARLY TIMES〜KOJI TAMAKI IN KITTY RECORDS』九曲目、「行かないで」です。5thシングルで、カップリングは「スケジュール」でした。

最近とみに人気があるというか、一度は完全に忘れられていたのに大復活を遂げた曲です。へたするとなかったことにされてるんじゃないかってくらい存在感の薄い曲だったんですが、YouTUBEによって発掘された時期と、玉置さんがオーケストレーションコンサートで歌う時期がたまたま一致したのか、多くの人の胸をうちまくり、今日では玉置ソロ随一の大号泣必至超壮絶バラードとして知られます。

89年の、ちょうど今頃(記事執筆は2022年11/18)の晩秋に発売されました。事前情報なしに日課のレコード屋巡りをしている最中に発見し、「おっ!出てんじゃん!」と喜んだわたくし、速攻で買い求め家までダッシュ、光の速さでコンポに挿入、再生ゴー!なにやら寂しげで憂鬱なコードを重ねてゆくホワホワ系のシンセ、堅めの音でアルペジオを奏でるピアノをバックに「パーララー」と流れるオーボエ、むむ!これは久しぶりの大バラードの予感がするぞ!と喜んだわたくし、歌詞カードとジャケットが一緒になったケースを眺めて期待感に胸を躍らせます。

いかにも玉置さんらしいことにAメロとかBメロとかそういうセオリーなどどこ吹く風、早々にいきなりサビに突入します。行かないで……行かないで……ちょっと待て!卑怯すぎるぞなんだその切ないファルセットは!ピアノもストリングスも装飾音のシンセもぜんぶ切ないパラメータに全振りだ!「悲しいんじゃない」「あなたにふれたのがうれしくて」って喜んでるじゃん!なんでこんなに切ないんだよ!わかってるよ、会えたってことはいつか別れるってことだなんて。ふれたってことは、いつか離れるんだ。当たり前じゃんか当たり前だよ……だからわかっているのに願うんだ、行かないで、はなさないでって、切実に。切ないトルネードにすっかり巻き込まれはるか遠くに吹っ飛ばされたわたくし、何が起こったのかわからずしばらく呆然でした。

思考を取り戻したわたくし、「好きさ」「じれったい」と同じく一つの感情のみを切々と繰り返す曲だと気がつきます。同時に、威力はそれらの曲を上回っていることにも気がつきます。「あなたの肌に夜が訪れる」とか「やっかいな目が揺れてる」とか、視点や視座があちこちに移動していた(だからこそリアルで鮮やかだった)安全地帯時代の曲とは違い、あなたがそばにいる、くっついているこの瞬間、はなれたくない!いま、これがおれの本拠地であり、いま以外ここ以外はすべてウソなんだ!とでも思わされるあの幸福感と、その幸福感を失わなくてはならない運命にたいする絶望感とだけを切々と繰り返すという、前代未聞のとんでもない曲を、玉置・松井・星・BAnaNAチームは作り上げて叩き込んできました。この渾身の一球は糸をひくようにキャッチャーミットに吸い込まれ、スパアン!と軽やかかつ力強い音を立てた切れ味最高の、誰も打てないストレートだったのです。これはさすがの打撃の天才川上哲治も打てなかったものと思われます。塀の穴から突如飛び出してきた剛速球が電柱にあたり、また出てきた穴に吸い込まれてゆくのを呆然と眺めるだけだったことでしょう(現代ではわかる人少なそうなネタ)。

で、当時中学生だったわたくし、当然そんな「行かないで」という幸福感・絶望感などわかるはずがありません(笑)。いや、わかっているつもりなんですよ?クラス替えや席替えで知り合ったかわいいあの娘といろいろ可愛らしい交流を重ね始めるようなお年頃ですから!もう名前も忘れたけど!貸してくれたカルロストシキ&オメガトライブのアルバムを(あんま興味ないのに)一生懸命聴いて君は1000%!ほしいよ〜とか音楽室のギターで弾き語りして喜んでもらおうなどとよこしまなことを企むなど、順調に大人の階段を上っておりましたから!授業中は隣の席にいてはなれないで!掃除当番に行かないで!うん、やっぱわかってないですね。

つまり、その真価は当時わかってたつもりで呆然としつつも、まるで分かりようがなかったのです。そんなことを言ったら安全地帯時代から真価がわかっていた曲なんてひとつもないですが、この「行かないで」はとりわけワンスポット感が高かった、結局この曲が収録されたオリジナルアルバムは出ずにこのときだけポンとこの路線で出てきたものですから、そのうちになんとなく忘れていたのです。『夢の都』『太陽』を経て三年強経って『あこがれ』を聴いてようやくハッと気がついたような体たらくでした。この経緯は「コール」の記事に書いておきましたが、ああ、こういう路線をやろうとしていたんだ!と気がつかされました。最初に佐渡ヶ島が出てきて、美しい島だけどなんだこれなんのつもり?と思っていたところにしばらくたって水平線の向こうに新潟県が現れたので、なるほどこうだったのか!と……意味が分からなさすぎるたとえですが、欠かせないワンピースが先に出ていたんだ!と、あとから玉置アコースティック・シンセ超怒涛切ない悲しい愛しいバラード群の全体像が見えたわけです。それから何年も経って『あこがれ』が「長年録りためていたバラード集」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)だと知り、この「行かないで」の位置づけを確信するに至りました。つまり、というか結果的に、この「行かないで」はそのバラード群の中で松井さんが参加している唯一の曲なのだということです。

玉置さんが松井さんの詞を歌います。あたたかいあなたにやっと触れることができ、うれしさに泣く、でもこのうれしさもいずれは過去になり、思い出になってしまう、それがわかってしまっていて辛い、悲しい、そんなこと知らなくてよかった……歌は信じられないほどのあたたかさ、愛しさ、悲しさ……用いられる言葉の種類が絞られているぶん、シン!と澄み切った切なさが何度も胸に迫り、貫いてきます。これは須藤さんにはできない、安全地帯の世界をともに作り上げたこの二人だからこそできた唯一無二の曲だと言えるでしょう。だからこそ、ポツンとひとつだけ、その輝きを保って現代によみがえった、いや生き続けていたのではないでしょうか。

すでに中学生どころか学生でなく、独身でなく、若者でもなくなったわたくし、玉置さんのこの歌が再び脚光を浴びているこの時代にあって、別の意味を読み取るようになってきました。当たり前ですけども、べつに抱きあってなくてもいいというか、抱きあいなんかしたら暑苦しいし動きづらいですからそれは是非とも遠慮したいのですが(笑)、嫁さん子どもたちとの日々はいつまでもは続かないということを受け入れたくない気持ちを投影するようになってきました。こんな切ない歌声やアレンジの似つかわしくない気持ちではあるのですが。子どもたちはいずれ自分の足で立って私のもとを去ります。順当な順番でいうと親は先に死ぬんですからそうでないと困りますが、でも寂しいですね。嫁さんとは、たぶんわたしとどっちかが先に死にますから、どっちにしてもいずれお別れです。その前に別の原因でお別れにならなければですが。そう考えると、いまは大変だけど愛おしむべき楽しき日々なんじゃないか、行かないで、行かないで、この日々よどこかへ行ってしまわないで、と思えてきます。

当時はまだ30やそこらだった玉置さん松井さんにはきっとそのような気持ちはなかったことでしょう。ですから、完全な曲解であるわけなんですが、名曲はこのようにして長く生き残るものであるのかもしれません。

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posted by toba2016 at 00:00| Comment(13) | TrackBack(0) | EARLY TIMES