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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2022年09月19日

メロディー


玉置浩二『CAFE JAPAN』十一曲目「メロディー」です。先行シングルで……このアルバムからはぜんぶ先行なんですけども(「STAR」「メロディー」「田園」の順)、アルバムより数か月前に発表されていました。筑紫哲也のニュース番組でエンディングに使われていたことはすでに何度か言及しましたが、この翌年キョンキョンと小林薫さんと共演した「メロディー」なるドラマにも挿入歌として使われたようです。なおカップリングは「愛を伝えて」でした。

この曲は、おそらくですが玉置ソロで「田園」の次に有名曲なんじゃないかなと思います。ちょうど玉置ソロが注目を集めていた時期ですし、それ以前の郷愁ソングの流れがちょうど大きな実を結ぶタイミングでしたし、昔からのリスナーが郷愁を感じるくらいの年齢に差し掛かっていましたし、それなのに社会は激変して地方のふるさとがギタギタにされていく時代でしたし……この曲が多くの人の涙を誘うにピタッとうまくハマった感じです。

とまあ、こんなふうにこの曲が有名である原因らしきものを説明することはできるわけですが、それらはしょせん外的な条件であって、それ以上に曲そのものが持つパワーが大きいのだと思うのです。

その日、わたくしはシンガーの後ろでギターを弾いていました。オーバードライブを踏み込み、この「メロディー」のソロを弾きあげ、そのあとフロントピックアップからハーフトーンに切り替えてジャガーンとサビの伴奏を入れていたのです。なるべく矢萩さんが弾いた通りに弾こうと正確さを心がけていたところでした。

ふと、歌が途切れ始めました。ん?と思ってシンガーをみると横を向き目をこすっていました。ゴミでも入ったのかと思いましたがそうではありません、みると聴衆がみんな涙涙……泣いているのです。「く、く、く……」とマイクが嗚咽を拾います。そうです、シンガーは泣けて歌えなくなっていたのでした。その日はシンガーが皆に別れを告げる日で、「メロディー」はステージの最後にセッティングされた曲でした。誰もが感極まってはいたのだと思います。これはえらい場に紛れ込んでしまった……せめてこのまま正確に弾き上げなければ!でも指にはそれ以上の力がこもります。ピックをもつ右手もすこしオーバーになっていきました。この場をもっとドラマチックに盛り上げたいという誘惑が手つきをおかしくしていきました。そうやってどんどんテンションが上がる中なんとか歌い切ったシンガー、たった五分弱の曲で背中から湯気を噴き出すわたくし、終演後はぐったりです。片づけを終え椅子に座って足をだらんと延ばし、この曲「メロディー」は、こんなに大きな力を持つ曲だったのか!と放心していました。玉置さんの曲を聴き込んで弾き込んで何十年も経ちなお知らなかったこの力、とうてい弾き切れるもんじゃない……と痛感し、もうこの曲を軽い気持ちで引き受けるのはよそう、やるなら数か月前から万全の準備をしようと決心したのでした。

閑話休題。かようにこの曲は多くの人たちを泣かせてきたこと間違いなしの超傑作郷愁全開バラードなのであります。そしてわたくしのような安全地帯バカにとっても、クレジットに矢萩さん六土さん田中さんの名を見つけて大号泣の安全地帯復活の兆しを感じた曲ナンバーワンの思い出ソングでもあるのです。このギターソロを聴いたとき、あれこれ矢萩さんじゃ?と思いました。それでクレジットを確認してギターだけでなくベースもドラムも安全地帯!と知ったときの興奮たるや!武沢さんがいないことにももちろん気がついてやや悲しくなりましたけども、事情を知るよしもなかったわたくし、近いうちの安全地帯復活を信じることができたのでした。

「あんなにも〜」と静かな暖かいボーカルに続きボロボロン……とアコギのアルペジオが始まります。始まったばかりなのにもう名バラード確定の雰囲気です。きみがいたこの町にあの歌がまだ聞こえている、大好きだったきみが歌う大好きな歌が。玉置さんワールドにありがちなのですが、この「きみ」は恋人的な存在のようにも描かれるし、友達的な存在にも描かれます。おそらくなのですが、玉置さんにとってはどっちも大切だし同じように仲良くするのでしょう。家庭と家庭の境目がいまよりも薄かった(と語られることの多い)昭和中期、大切な家族も、大切な友達も、そして大切な恋人も、みんなみんな「この町」にあって混然一体としており、そのなかでみんな同じように楽しませて愛する玉置さんならではの表現なのだとわたくしには思えるのです。ですから「あの歌」は友達の歌であり恋人の歌であり、そして家族の歌でもあるのでしょう。

短いBメロ、ベースが加わってさらにセンチメンタルな雰囲気の中歌われる遠い昔のこと、いつもやさしい、少しさみしい、それはふるさとである「この町」であり、ふるさとの人々のことなのでしょう。とすれば、やさしいのはともかくさみしいって何でしょうね?この歌から醸し出される何ともいえないさみしさは、これは誰もがふるさとを振り返って感じるさみしさのことだと考えてその内容を求めると見つけられないものなんじゃないかな、と思われます。つまり、わたしたちがそれぞれ抱くふるさとでの「さみしさ」をそれぞれに感じるような、共通の意味がないもの、「さみしい」という共通の言葉だけがそこにあり、それによって共感が生まれるんだけど実はみんな違うことを思い浮かべている……人間は全部が全部そうなんだといえばそうなんですけども。わたしが食べているチョコアイスの味わいは、相手にとってのバニラアイスの味わいであるとしても何の矛盾も生じない……このような中途半端な懐疑論にうっかり陥ると夜も眠れなくなりますので、若い人は特にネットワークゲームでもして仲間とメッセージを交わし合うなどして自己の存在と共感の成立とを信じ続けていられるよう精神を落ち着ける工夫をするなど、注意が必要です(笑)。

あくまでわたくしの場合ですけども、北海道ってみんなせいぜい四代前から住んでいますから先祖代々の土地ってものがないんですよ。だからか、わりとあっさり移住します。札幌のような大きい街は特に流動性が高く、かくいうわたくしも北海道におりません。地元に残っている友人はもう数人しか浮かばないし、その友人だって今でもいるのか……。うん、さみしい、さみしいです。べつに一堂に会したいわけでも何でもありませんけども、失われたという感覚が強くあります。埋めることはできないしその必要もとくにはないんですけども、玉置さんの歌は容赦なくほじくりだしてきますね、埋めようのない隙間を。このアルバム全体でしばしば想起させられてきたふるさと、家族、いま送っている日々の大変さ、それを生きていくんだという決意、いつかもっと素晴らしい未来が来るんだという希望、それらを一気に包み込む少年の頃の「この町」での「きみ」との日々の思い出を歌うこの曲をラストにアルバムは終わる……うーむ完璧だ!この曲単体しか知らない人はもったいないことをしています!この曲はアルバム全体を聴くことなしにその真価を味わうことはできません。これを余計なお世話だと思う人には全く無駄で野暮な話をしているわけですが。

さて歌はサビ、田中さんのドラムも加わり、怒涛のさみしさの中歌われる「あの頃」、なにもなかったあの頃、いやもちろん何かはあったんですよ、でも思えば何もなかった……やさしいとかさみしいとかの感触だけの思い出だけが残り、実際にあったモノやコトは「あった」と同時に終わっていて「なにもない」に変わってゆくのです。そんな思惟を巡らせるまでもなく伝え聞く昭和中期は「たいしたもの」はなかったのです。いま思えば物質的には貧しかったのですがそれは現代からみればそうであるだけで、貧しいなんて感覚はありませんでした。だから「楽しくやった」し希望に満ち溢れていました。べつに昭和後期や平成初期のような経済的繁栄を願っていたわけじゃないんです。このままの日々が続けばそれでいいと思っていました。「なにもなく」、つまり無事に平穏に、みんなと、きみと、この日々を続けて行けるものと思っていたのです。それが幸せってものなんですけども、人間ですから、今が幸せなんだという実感はありません。幸せというものはこれから来るものだと思っています。「泣きながら〜…(中略)…(実はいまがそうだからバリバリに直視しているんだけどこれから起こると思っている)幸せを(遠い目して実は目の前にあるものを)みつめてた」わけなのです。

思うところ色々あってさすがに長くなりましたが実はまだ歌は一番でした(笑)。ちょっと急ぎ足で「あの頃」の姿を追っていきたいと思います。

「この店」に寄せ書きなんてあったでしょうか。これはわたくしありませんでした。旅先で見かけることがあったくらいです。その店に足しげく通いすっかり常連になった仲間たちが町を離れることになり、記念に残した寄せ書き的なものでしょう。ラーメン屋に芸能人やスポーツ選手が書いたものが掲げられているのとは趣が違います。芸能的な意味でいうと無名の少年少女たちの寄せ書きです。もちろんその隅のほうに「たまきこうじ」とか「たけざわゆたか」とか書かれていたら無名でも何でもありませんが(笑)、書かれた当時は無名だったのです。そんな、思い出を凝縮して残したような寄せ書きがだんだんと隅に置かれてゆく……時の流れを感じずにはいられません。この仲間たちは部活とか……ありえますね。でも当時部活の帰りに集まって飲食するほどの小遣いをみんな持っていたわけではありません。わたくしもパスします(笑)。『タッチ』の南風みたいな店があってそこでスパゲティとか食ってると黒づくめの男がバイクに乗って紙袋抱えた看板娘を送ってきてみんなジェラシーなんて展開はまったく起こりませんでした。起こっていたのかもしれませんが知りません、パスしてたから(笑)。これはある程度お金が自由に使えるようになってからでしょうから、玉置さんでいうとバンドを始めて以降の若者時代なんじゃないかなと思います(「ピースマーク」は交通標識でいうと安全地帯じゃないですか!)ギターを取り出してみんなで歌って、泣いたり笑ったりしたんだと思います。なぜ泣いたのかは他からはうかがい知れませんが……これは若い人には驚きだと思いますが、ギターを取り出して歌うというのは案外起こっていたのです。ギターや歌本を置いてある店もありました。ステージのある店すらあったのです。そういう店もだんだんカラオケマシンを入れるようになってギタリストの出番はなくなっていったのですが、私が若者だった平成初期頃にはまだ街のそこここにそういう店が残っていたものです。

「あの頃」はカラオケマシンも店になくて、それだって「楽しくやっ」たのです。というかカラオケマシンないほうがいいじゃないですか。自分がギタリストで楽しいからそう思うのはもちろん私の勝手で、ギタリストが来るか来ないかわからない店の人からすればそりゃカラオケマシン入れますよ(笑)。こうして「大切なもの」は失われていったのです。

エレキギターが高らかに鳴り、間奏に入ります。Gのペンタトニックで……と書いてちょっと違和感あったので弾いてみたら半音低くてF♯でした。相変わらずテキトー!おかしいなGで弾いた記憶があったんだけど……たぶんほかの楽器が半音下げ面倒だからGにしたとかそんな事情でしょう。そんなわけで矢萩さんの得意技ペンタトニックの泣きギター(F♯)が炸裂し、曲は最後のサビ(二回)に突入します。

あの頃は何もなくて……と描かれる世界は同じなのですが、矢萩さんのギターが加わってアオリをビシビシ入れてきますから泣きの効果がひときわ高い箇所です。そして歌詞に一か所だけ変化があります。「遠い空流されても」ですね。何が流されるのか……

そして最後のサビ(二回目)です。「きみのこと忘れないよ」……忘れないのは「メロディー」が心に残っているからでしょう。「きみ」が歌った「あの歌」の「メロディー」、その記憶が残っているから、あるいは、「きみ」や「みんな」と過ごした日々の軌跡を旋律、つまり「メロディー」に喩えたのではないかと思うのです。日常があってライフイベントがあって「きみ」や「みんな」と盛り上がったり沈んだりした日々の軌跡「メロディー」、それに「きみ」が歌った実際に存在した「あの歌」の旋律「メロディー」が重なって、セピア色に変色しつつも鮮やかに思い出せるあの歌、あの日々が一体となって僕の心の中でいつでも鮮やかに再生される……「泣かないで」、震えないで、止まらないで、泣くのはメロディーのほうなのか、再生装置であるぼくの「心」のほうなのか……美しい日々にもある日大ショックが起こって(それこそ移住をともなう進学就職レベル)きみの歌もぼくの思い出も震えて、遠くの街にあって空に流れて(折にふれて思いだして)、そしてまた再生するんです。

こう書いてみると、昭和とか平成とかに限らず、誰の胸にもあるやさしさやさみしさを歌っていますね。だから、若い人でも高齢の方でも、それぞれの年代に応じていくつかの歌詞の謎を残しつつも、自分の身に起こったこととして胸に迫ってくる歌なのではないでしょうか。だからこそ売れたし、多くの人が知る名曲となりえたのでしょう。わたしのようなマニアがアルバムの頭から聴け!とか言いまくるかもわかりませんが(笑)、冒頭に書きましたように曲単体でももの凄いパワーがあることをわたくし痛感しておりますもので、曲単体の楽しみ方があってもいいのかもしれませんね(超上から目線)。

さて、このアルバムも終わりました……おおお、今年のうちに『JUNK LAND』に入れるという話をどこかで書いたものですから、達成できそうでちょっとホッとしております。ですが次は安全地帯のライブ盤『ENDLESS』をご紹介しようと思います。収録曲はすでに扱っていますのでアルバム紹介と、曲紹介はせいぜい「小さい秋みつけた」だけですが。では、またお目にかかります!

CAFE JAPAN [ 玉置浩二 ]

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posted by toba2016 at 09:29| Comment(6) | TrackBack(0) | CAFE JAPAN