2019年01月15日
魂より魂に伝う花11 蜷川 幸雄00
魂より魂に伝う花11 蜷川 幸雄00
折々に受け取るメッセージ
蜷川 幸雄(1935 - 2016)[Copyright 心に残る名言集・格言 ]
商業演劇へ行ったら、あまりのひどさに驚いたんです。
脇役の俳優たちの横暴さ、自覚のなさに。なんだ、演劇全体が腐ってる、と思いましたね
内面の問題の抱え方とか、勉強の仕方とか。
日常生活のたくさんのことが舞台に表れてくるわけだから、それをちゃんとやれ。
というような指導を演出家がやってくれない限り、俳優は育たないと思っているわけです
演出家の倉橋健さんたちは
「ああ、いいんだよ、緊張したっていいから。終わりまでやったのはよかったね」
とか言ってくれて、やさしいんです
人の目が気になったり、他人の目に対する恐怖心があるから緊張するんだというのは、
すぐわかったんですが
「俳優の研究生みたいなのをやってみようかな」って言ったら、
母親は「ああ、いいよ」と言ったんですね。きょうだいが多かったし、末っ子だったから、
「別にあなたに過大な期待をしているわけじゃないから、自由にやれば」って。
三越劇場にぶどうの会の『蛙昇天』という芝居を見に行ったんですよ。
山本安英さんが、「戦争は嫌です!」
みたいな生々しい台詞を言いながら客席を走り回っているのを見て、
これはおもしろいなあと思った。おもしろいっていうか、
演劇って、衝動的なものをそのまま表せるメディアなんだなと思った
どんなに内面的な嵐があっても、
激しいタッチで絵を描けばそういうものが反映されるかといったら、そうじゃない。
絵は、細かい手作業の積み重ねで成立していくことが多いので、身体とズレるんですよね。
体の中の衝動的なものと、メディアとしての絵の手法がズレる
開成高校の時代から、友人たちと一緒に新劇はよく見てたんですね。演劇がおもしろくって
僕の才能のはかり方では見えなかったものがあったのかもしれないと、反省しているわけだ。
僕もそれはびっくりしたんだよ、あいつらの無表情の奥には何かがあったんだと
僕らがよかったのは、
スタニスラフスキーシステムのように論理的な意味があって行動があるっていう演劇と、
安部公房のように「笑いなんて横隔膜のけいれんだ、情緒なんかいらないんだ」っていう
両極端を学んだので、世界を捉える持ち手が多いんだよね
若い世代に演劇史も学ばせ、
連続した流れの中の演劇人として生きていることを、自覚する機会を与えたい
「なんでもできるわけじゃないけど、あいつにやらせたい」と演出家に思わせる、
王子様じゃない俳優をここでつくって、ばらまきたいね!
何とかしてその人じゃなきゃダメっていう俳優を作りたい
勉強不足の役者が演出家を権力者にしてしまうんだ
次回へ続く
と たのしい演劇の日々
折々に受け取るメッセージ
蜷川 幸雄(1935 - 2016)[Copyright 心に残る名言集・格言 ]
商業演劇へ行ったら、あまりのひどさに驚いたんです。
脇役の俳優たちの横暴さ、自覚のなさに。なんだ、演劇全体が腐ってる、と思いましたね
内面の問題の抱え方とか、勉強の仕方とか。
日常生活のたくさんのことが舞台に表れてくるわけだから、それをちゃんとやれ。
というような指導を演出家がやってくれない限り、俳優は育たないと思っているわけです
演出家の倉橋健さんたちは
「ああ、いいんだよ、緊張したっていいから。終わりまでやったのはよかったね」
とか言ってくれて、やさしいんです
人の目が気になったり、他人の目に対する恐怖心があるから緊張するんだというのは、
すぐわかったんですが
「俳優の研究生みたいなのをやってみようかな」って言ったら、
母親は「ああ、いいよ」と言ったんですね。きょうだいが多かったし、末っ子だったから、
「別にあなたに過大な期待をしているわけじゃないから、自由にやれば」って。
三越劇場にぶどうの会の『蛙昇天』という芝居を見に行ったんですよ。
山本安英さんが、「戦争は嫌です!」
みたいな生々しい台詞を言いながら客席を走り回っているのを見て、
これはおもしろいなあと思った。おもしろいっていうか、
演劇って、衝動的なものをそのまま表せるメディアなんだなと思った
どんなに内面的な嵐があっても、
激しいタッチで絵を描けばそういうものが反映されるかといったら、そうじゃない。
絵は、細かい手作業の積み重ねで成立していくことが多いので、身体とズレるんですよね。
体の中の衝動的なものと、メディアとしての絵の手法がズレる
開成高校の時代から、友人たちと一緒に新劇はよく見てたんですね。演劇がおもしろくって
僕の才能のはかり方では見えなかったものがあったのかもしれないと、反省しているわけだ。
僕もそれはびっくりしたんだよ、あいつらの無表情の奥には何かがあったんだと
僕らがよかったのは、
スタニスラフスキーシステムのように論理的な意味があって行動があるっていう演劇と、
安部公房のように「笑いなんて横隔膜のけいれんだ、情緒なんかいらないんだ」っていう
両極端を学んだので、世界を捉える持ち手が多いんだよね
若い世代に演劇史も学ばせ、
連続した流れの中の演劇人として生きていることを、自覚する機会を与えたい
「なんでもできるわけじゃないけど、あいつにやらせたい」と演出家に思わせる、
王子様じゃない俳優をここでつくって、ばらまきたいね!
何とかしてその人じゃなきゃダメっていう俳優を作りたい
勉強不足の役者が演出家を権力者にしてしまうんだ
次回へ続く
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と たのしい演劇の日々
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