たのしい演劇

俳優　此岸と彼岸を跨ぎ役を生きる10

『演劇と意識：説明と将来の可能性/
Theatre and Consciousness: Explanatory Scope and Future Potential(2005)』
Daniel Meyer-dinkgrafeダニエル・マイヤー・ディンクグラフ





『ドレッサーThe Dresser 1980』　作ロナルド・ハーウッド Harwood(1934- ) より


リア王2幕4場
「必要に理由はない......」と語り始めるや
　突然私は演じる自分から離れていることに気づいた
　私の思考は宙を舞う　そして　その私は高所から演じる私を見下ろしている
　そして言うのだ　「ろくでなし　そら続けろ」
　　その声を私は聴いている　
「そら続けろ　お前はもっと与えたい　控えるな　そら続けろ」
　そう言いつつ　私は私演じるリア王を見ている
　台詞はまるでたった今生まれた様に新鮮だ
　　私は次に何が起こるのか　リア王を待っている運命を知ている　が知らない
　
苦悩はいつも創造の時と共にあった..…

私はリア王　年老いた哀れな男　そして私はそのリア王を演じている
　私は知っている　まだ次がある事を
　だが何を知っている？　至福か　回復か　或いは　苦痛　そして死か
　私は知っていながら　リア王を待つ運命を見えていない
　私は　私の外側にいる　
君解るかね　リア王を演じる私を　私は高所より見ているのだよ






と　たのしい演劇の日々