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2020年04月20日
自宅監禁日記(四月十七日)
今日もまた一日特筆すべきこともないままに終わってしまった。それでもここまで続けた以上は、非常事態宣言か、外出禁止令が撤回されるまでは、この似非日記は意地でも継続して行こうと思う。運動不足もかなりひどいことになりつつあるので、毎日散歩でもして散歩日記にするのも悪くなさそうだけど、我が引きこもり体質が散歩にでることを拒否してしまう。
散歩と言えば、うちのが午後から買い物がてら散歩に行くと言って出て行った。職場の同僚に誘われての散歩らしいのだが、なかなか帰ってこない。三時間以上かかって戻ってきて一言、十キロ以上歩いた。同僚はそんなに遠くまでは歩かないと言っていたらしいのだが、フローラの公園で待ち合わせた後、公園を抜けて、オロモウツのはずれに当たるジェプチーンを抜けて、ムリーンスキー川沿いをあるいて、ポデブラディの池まで歩いたらしい。
週末前の天気のいい金曜日の午後で、人出がものすごく多かったと言っていた。ジョギングやサイクリングをする人はもちろん、池で泳いでいる人までいたらしい。散歩や散歩やジョギングなどの個人でやる運動は、最初から外出禁止の例外とされていたが、規制が多少緩和されたことで、大手を振って出かけられる雰囲気になってから、ジョギングやサイクリングをする人の数が増えている印象である。泳いでいた人は、室内のプールの使用が解禁されていない水泳選手が練習をしていたのだろうか。
コロナウイルス関係では、病院の運営が通常の状態に戻り始めることが報じられた。コロナウイルス感染症の流行が始まって以来、チェコの各地の病院では、人員の大半をその対策部門に当ててきた。そのため急患も含む外来の患者の受け入れは制限され、手術も緊急不可避のもの以外は延期されていた。それが規制緩和の一環として、外来の患者の受け入れを再開したり、緊急以外の手術を行ったりすることが認められた。
病院関係者の中にも感染して自宅療養をしていたり、感染の可能性があって自宅待機をしていたりする人も増えているので、完全に元の体制に戻るにはまだまだ時間がかかりそうである。ニュースではどこかの病院の院長が、今から通常の運営に戻すのには、コロナウイルス対策の体制を築き上げたとき以上の労力がかかりそうだと述べていた。チェコで犠牲者がそれほど多くないのは医療関係者の努力の賜物としかいいようがない。
厚生省のコロナウイルス関係の情報をまとめたページがまた一段と充実し、全感染者から完治者と志望者を引いた現時点で感染している人の数も表示するようになった。これを見ると最近療養中の患者が減り始めたことがわかる。これもまた病院の運営を通常のものに戻す決定につながっているのだろう。
亡くなった人の年齢別の数も表示されるようになり、55歳以上が90パーセント以上を締めるという結果が明らかになっている。これに持病の数や状態に関するデータが加われば完璧である。これについてはニュースでちょっと紹介されていて、何の持病も泣くコロナウイルス感染症だけが原因で亡くなった人はほとんどいないこと、二つ以上も重い持病を抱えていた人がかなりの数にのぼることなどが紹介されていた。
それで、厚生省の専門家が、亡くなった人の少なくとも半数は、コロナウイルス感染症で亡くなったのではなく、感染による持病の悪化で亡くなったというほうが正しいと言っているのだろう。素人が妄想にに基づいてあれこれ言うのとは違って、専門家がデータに基づいて発言しているだけに説得力がある。日本だと自称専門家の怪しいデータをもとにした怪しい説を紹介するマスコミもあるけれども、チェコでは今のところそんな連中は見かけていない。
病院関係では、出産に父親が立ち会うのが解禁された。これがコロナウイルス対策の一環として禁止されたときには、反対する弁護士が人権侵害だとして憲法裁判所に訴えるとか言い出す騒ぎになったのだが、個人的には健康な人間の外出を禁止するのは人権侵害に当たらず、出産に父親が立ち会えないのが人権侵害になるというのがまったく理解できない。チェコに限らずこっちの人の人権に関する考えかたって日本とは大きくずれているから、ヨーロッパ規準で日本の人権意識が低いとか言われているのを日本のマスコミが取り上げて大騒ぎするのにはうんざりするしかない。ヨーロッパの人が無知から批判するのはわからなくもないけどさ。
2020年4月18日18時。
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2020年04月19日
自宅監禁日記(四月十六日)
いよいよ何も書くことがなくなってきた。何がつらいって、最近一日遅れで記事を書くことが多いのだが、一日前のことさえ何が起こったか覚えていない、いや正確に言えば、ここのニュースや出来事がいつ起こったものなのか、変わり映えのしない生活の中で判然としなくなっていることで、昨日の日付で今日のことを書いてしまわないように、神経を使うところである。
ということで、これまで書き落としてきたことを、時系列なんか無視して思いつくままに書きたてることにする。
非常事態宣言が出て、原則外出禁止が始まってすぐの子とだと記憶するのだが、ダナ・ザートプコヴァーが亡くなった。この名前を聞いて、あああの人がとわかる人は、よほどのチェコ通か、陸上競技の中でも槍投げの大ファンに違いあるまい。夫のエミル・ザートペクの陰に隠れて、外国ではそれほど有名ではないようだが、夫婦で金メダルを獲得したヘルシンキオリンピックはチェコでは今でも語り草である。近年は、最近亡くなったチャースラフスカーとともにチェコのオリンピック運動の象徴のような存在になっていた。
享年97歳。そんな高齢だとは思えない姿を見せていたと思うのだけど、また一人、共産主義の時代を生き抜いた伝説的存在が亡くなってしまった。残念なことである。残念と言えば、本来であればスポーツ界だけでなくチェコ社会を挙げて行われるはずだった葬儀が、関係者だけを集めて故郷のバツェノビツェで行われた。その様子をチェコテレビがスポーツチャンネルで中継したのだけが、救いと言えば救いである。非常事態宣言で結婚式は禁止されたけれども葬儀は禁止されなかったのもよかった。
スポーツ界では、サッカーのリベレツとヤブロネツが面白いプロジェクトを実施していた。アイスホッケーにしてもサッカーにしても突然のリーグの中断で、一部の試合はすでに前売り券が売れていて、チームは払い戻しの手続きをとると言っていたのだが、購入済みのファンたちの多くは、自分の応援するチームが経済的に苦しくなるのをわかっていて、払い戻しはしなくてもいいからチームのために使うように申し出ていた。
そのお金をコロナウイルス対策、とくに最前線で奮闘する医療機関に寄付したチームもあったと思うのだが、さらに一歩進めて自分たちでお金を集めて寄付するという流れを作ったのがこの二チームである。もともと隣接するリベレツとヤブロネツの試合は北ボヘミアダービーとして注目を集めているのだが、対戦予定だった日の試合のチケットをバーチャルチケットとして販売し、その売り上げをリベレツの病院に寄付したのである。実際にどれだけの人がチケットを購入したかは知らないが、万は越えなかったにしても千人単位の購入者はあったはずである。
その後、この同じようなプロジェクトを実施するクラブがいくつか出てきて、そのうちの一つがわれらがシグマ・オロモウツだった。シグマには、スパルタとスラビア、リベレツとヤブロネツのようなライバル関係にあるチームは存在しない。それで、シグマが選んだのが、1992年3月4日にオロモウツで行なわれたレアル・マドリッドとの試合だった。UAFAカップの四回戦でレアルと対戦したシグマは、敗退はしたもののホームでは1−1で引き分けるという大健闘を見せ、創立以来100年の歴史の中でも最高の一戦とみなされている。
シグマ・オロモウツではこの試合のチケットを当時と同じ1枚100コルナで販売し、売り上げをすべてオロモウツの大学病院に寄付する予定である。1人一回あたり8枚までという購入制限はついているが、購入は何回でもできるので、その気になれば何枚でも買うことができる。92年の試合には記録的な1万4千人以上の観客が集まったらしいが、寄付はそれを超えるだろうか。
最初にこのプロジェクトに気づいたときには、入場券を購入した人だけがこの試合をネット上で視聴できるようなサービスをしているのではないかと期待したのだが、そんなことはなかった。ただし特典がないわけではなく、現在公開準備中のシグマ創立百年を記念したドキュメンタリー映画の入場券を半額で購入できるようになるらしい。
このほかにも、医療機関への寄付活動をしているスポーツチームは多い。政府が頼りなくても自分たちで何とかしようとするのが、マスクの件もそうだし、チェコの民族性なのである。共産党政権下で鍛えられたと言うと怒られるかな。
2020年4月17日21時。
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2020年04月18日
自宅監禁日記(四月十五日)
昨日政府が今後の大体の予定を発表したのは、これまでの規制の強化と緩和が突然のものが多く、対応に苦慮させられたという批判が寄せられていたからに違いない。もちろんこの計画にも野党は基準が見えないとか、遅すぎるとか批判を浴びせているが、この手の規制にしろその緩和にしろ、完璧に計画するのは不可能なのだから、批判がでてくるのは仕方がない。
一番批判されるべきは、学校をどうするのかがはっきりしないことだと思うのだが、これに関しては野党側もあまりはっきりとした意見は出していない。それは保護者が完全に二分されていて、自宅に子供がいても問題のない、つまりは仕事を休んで子守をしていても、国から補助金が出ることで経済的に問題のない親は、今学期の授業の再開をやめて9月の新学期からの再開を求めて署名活動をしているのに対して、子供を家で面倒見切れない親たちは学校を即刻再開するように求めて署名活動をしているという状況に日和見しているのだろう。政府がはっきりとした方針を示さないのも同様の理由である。
しわよせは当然現場に押し寄せることになり、授業を再開しても一クラス15人以下という制限がつくから、普段なら1回で住む授業を、2回、3回するか、先生の数を増やすかしなければならなくなる。その上、コロナウイルスを理由に登校せずに自宅で勉強する子供たちの面倒もみなければならないから、下手すると教室での授業に加えて、オンラインでの授業も継続ということになりかねない。さらに安全のために高齢の先生たちの出校は禁止されそうだから、若手の先生たちの負担は増える一方である。チェコは医師だけでなく教師も高齢化が進んでいて問題の一つになっているのだ。
それから実業系の、実際に機械なんかを使って勉強する必要のある学校では、オンラインでできることに限りがあり、学生を卒業させるために実習は必須なのだが、これも再開のめどが立っていない。再開の許可がでたとしても、マスクなどの感染防止装備を着用するという条件が課されるのは確実で、現在の需要過剰の状態では確保することは金銭的にも不可能だという学校が多い。
教育大臣はその辺は国の責任で確保するべきだと述べているが、それが実現するかどうかはわからないし、医療関係者には回せない中国製の不良品を押し付けられることになる可能性も高い。中国に対する配慮なのか難なのかあまり報道されないが、使用期限が切れたものが送られてきたとか、中国が不良在庫を高値でヨーロッパに売りつけている実態が漏れ聞こえてきている。
それ以外にも、ホテルなどの宿泊施設やレストランなどの飲食店は、ほぼ三ヶ月営業停止という事になり、一年の三分の一の収入を失うことになるわけである。これを借金をしてでも持ちこたえられるところはどのぐらいあるのだろうか。営業再開してもすぐに客が戻ってくるとも思えないし、以前と同じような形態で営業できるのかもよくわからない。レストランなんかでは人間距離を確保するために客席の間引きが必要かなんて話もあるのである。
非常事態宣言を出していながらコロナウイルス騒動を終結させるのに三ヶ月かかるというのは、どう評価するべきなのだろう。様々な規制を導入したことで減らせた被害と、経済的な損失の収支を、感情に基づいてではなく、理性にもとづいて客観的に評価しておく必要はあるはずだ。救えた命の数が多かったとしても、結果として困窮に陥って路頭に迷う人が続出するようでは、非常事態宣言を出して厳しい感染対策を行ったのは失敗だったと評価されるべきである。この辺は、チェコより日本の方が心配かな。あっちは宣言だけで規制が何やってるのか不明だしさ。
久しぶりに漫画図書館Z(今でもJコミと言いたくなる)を覗いたら、読める漫画が急に増えていて驚いた。自宅待機の人への配慮ということだろうか。そこには意外な漫画家の名前もいくつも見かけたのだが、何といっても一番の驚きだったのはあの永島慎二の作品が、しかも、一冊、二冊ではなく何冊も読めることである。寡作の漫画家だと思っていただけに、作品が何作もあることにも驚いてしまった。
1990年代の半ばに、古い文学的と言いたくなる漫画作品を集中的に読んでいた時期がある。不条理漫画なんて言い方をされることもあったと思うのだけど、その手の漫画の中で世評が高かったのはつげ義春と永島慎二の二人だったと記憶する。つげ義春の名前を挙げる人のほうが多かったかな。どちらの作品も何冊か復刊されていて読んだのだけど、個人的には難解に過ぎるというか理解しようのないところのあるつげ作品よりも、永島慎二の作品の方が好きだった。
確実に読んだと言えるのは『フーテン』と『漫画家残酷物語』の二作なのだけど、どんな内容だったかさっぱり思い出せない。それで最初に見つけたときには、なつかしさに飛びつきそうになったのだけど、読み始めることはできなかった。かつて感じることができていた感動を、今読み直して再び感じられる自信がなかったのだ。
この前再読した「マスター・キートン」のような作品なら、読みたいときに読めば面白いと思えるからいいのだけど、文学趣味の作品になると読むときの精神状態によって感じ方が違う(ような気がする)。漫画じゃなく小説でもそんな作品があって、一番顕著なのは折口信夫の『死者の書』だろうか。読み始めたら最後まで一気に読み通してしまうときと、なかなか読み進められなくてすぐにやめてしまうときがある。あるというよりはあったが正しいか。とまれその感じ方の違いは、心にゆとりがあるかどうかだと考えている。それで、引きこもり中の精神状態では、永島慎二を読み通せる自信がないのである。これもまた、大したことではないし無理やり感が強いけど、コロナウイルス対策が人間の心に悪影響を与えるという実例である。
2020年4月16日24時。
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2020年04月17日
自宅監禁日記(四月十四日)
イースターの連休を終えて、仕事復帰と言いたいところだが、実際に仕事はしているのだけど、ナマケモノスイッチが入ったままオフにならず、なかなか効率が上がらない。出勤していれば、それが仕事スイッチを入れることになるので、切り替えしやすいのだけど、自宅から外に出ない生活では、そんな切り替え求めようがない。
今回のコロナウイルス騒ぎを機に、ホームオフィスや在宅勤務をすすめようとか、学校の授業のオンライン化を推進しようという声もあるようだが、人にもよると思うけれども効率が挙がらないんじゃないだろうか。それに自宅で仕事というのは、時間制限がしにくいから、延々仕事を続けて残業の山という事にもなりかねない。
学校の授業で言えば、病弱な人向けにオンラインでも授業が受けられるというのはいいだろうけど、それ以外は息がつまって子供の精神衛生上よくないような気もする。学校に出ることでコロナウイルスに感染する恐れと、自宅に監禁されて精神的におかしくなる恐れを比較したら、短期的にはともかく、長期的には後者の方がはるかにまずいと思うんだけどなあ。すべての家庭で親が子供の面倒を見られるというわけではないのだしさ。
ところで、イースターが終わった今日、チェコ政府は今後の規制緩和の予定を発表した。現時点で確定ではなく、今後の感染者数の増減などによって予定が予定に終わる可能性もあるというが、規制が解除されていく順番はこのとおりと考えてよかろう。第一弾は来週の月曜日に始まり、現時点で最後に予定されているのは6月8日からのものである。もちろん、現時点では予定の日程にさえ上がっていないものもあるので、これで完全に普段の生活が戻ってくるということはなさそうだけどさ。
来週の月曜日から許可されるのは、まずジェメスロというから、手工芸品のお店だろうか。次に生産者直売市と自動車販売店(新車、中古とも)。これらは屋外に商品が置かれていることが多いから、感染の危険が少ないと考えられたのだろう。そしてプロのスポーツチームに、集団でのトレーニングが許可される。もちろん、少人数で接触プレーなどは避けたうえでの練習である。当然観客も入れられない。
それから、参加者が10人以下であれば、特別な衛生上の配慮をした上での結婚式の開催も可能になる。この人数で結婚式をあげたいという人はあまりいないだろうから、実質的な禁止は継続されると考えてよさそうだ。また、大学で卒業学年の学生に対して5人以下のグループであれば、授業やテストを行なってもよくなる。念頭に置かれているのは、卒業試験や卒論の審査のようである。
一週間後の4月27日からは、200u以下のお店の営業が解禁される。ただし、ショッピングセンターに入っている店舗は、ショッピングセンターの営業解禁まで待たなければならない。狭い店を先に営業再開させるのは経営が苦しいであろう個人経営の店の救済という意味もあるのだろうか。おっちゃんの店は営業再開しそうだなあ。
次は二週間空いて、5月11日に、1000u以下の中型店舗の営業が許可される。これももちろんショッピングセンターに入っていないところだけである。それから、自動車学校とフィットネスセンターもこの日に営業再開の予定である。チェコの自動車学校は個人授業の形を取っているから集団で授業というのがないので解禁が比較的早いのだろう。フィットネスセンターは、シャワーなどの設備は使用禁止という条件がつく。運動で流した汗はうちに帰ってシャワーで洗い流せということのようだ。
教育関係では高校や専門高校などでの卒業試験のための準備が許可される。これが授業を意味するのか、先生への相談を意味するのか、自習を意味するのかはわからない。放課後に通う音楽学校や、語学学校での個別授業も解禁予定。
さらに二週間後の5月25日には、レストランや飲み屋などのザフラートカ(屋外席)の営業が許可される。屋内での営業の禁止は継続である。また政府が早期解禁を検討していたらしい床屋や美容院なども伝染病学者の主張でこの日まで解禁が遅れることになりそうだ。他にもマッサージやマニキュアなどの美容関係のサービスの営業が許可される予定である。
文化関係では、美術館や博物館の営業が再開され、動物園も屋内施設を除いて営業が許可される。教育関係では、基礎学校のうち日本の小学校に近い第一段階の生徒達の授業が再開される。ただし最大で15人のグループに分けなければならない。また音楽学校や語学学校などでの集団授業も解禁。一グループ5人以下という制約があるようである。
そして現時点の予定で最後、6月8日には、ショッピングセンターも含めてすべてのお店の営業が許可され、レストランや飲み屋などの屋内での営業、ホテルなどの宿泊施設の営業も再開される。50人以内の文化イベントやスポーツイベントが解禁され、劇場の講演も許可される。一講演50人以下で儲けが出るのかは疑問である。お城などの観光施設のシーズン開始もほぼ2ヶ月遅れのこの日に設定されている。学校関係では、この日から、高校の入学試験を行なえることになっているが、大学については言及されていないようである。
以上すべてのめぼしいところだけを取り上げたが、一ヵ月半ほどかけて徐々に規制を緩和していく計画のようだ。ただ、感染症の流行の拡大次第では予定が先送りされる可能性もあるという。問題はどういう状況なら規制解除で、どういう状況なら継続という条件が示されていないところである。あとは非常事態宣言がどこで解除されるかだけど、野党が四月末以降の延長は認めないと主張しているようだから、与党は下院で過半数持ってないし、そこでおしまいかな。とはいえ、それでも規制は続くのである。
2020年4月15日23時。
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2020年04月16日
自宅監禁日記(四月十三日)
いわゆるイースターマンデーで、本来であれば子供たちが、いや子供に限らず、男たちが集団で知り合いの女の子のいる家に押し寄せて、柳の若枝を編んだポムラスカで、健康を祈って女の子を叩き、お礼に子供は御菓子と色付けした卵をもらってリボンをポムラスカに結んでもらい、大人はお菓子の代わりにお酒を飲ませてもらう儀式が行なわれるのだが、外出禁止令が効果を表して、そんなことをしている集団はほとんど見かけられなかったらしい。
日曜日までは天気がよく、暖かい日差しの行楽日和だったために、外出禁止の例外になっている散歩やジョギング、サイクリングなどに出る人も多かったようだが、急速に天候が悪化した今日はサイクリングコースやジョギングコースにも人の影はまばらだったようだ。日曜日までは2人以上の集団や、マスクをしていない集団がいて警察にも出番があったようだが、この日は問題のある高等を取る人はほとんどいなかったらしい。
例年なら恵まれない子供たちへの寄付を募るチャリティー番組の「ポモステ・デテム」が放送されるはずなのだが、これもまた多数の集団が集まるイベントということで開催することができず、いつになるかは未定のまま、延期された。これは中継中に寄付を集めるだけでなく、この一年を通して集まった寄付のお披露目のような意味もあるから、中止にはできないのだろう。毎年、見ているわけではないけどチャンネルは合わせているので、放送されないとどことなく落ち着かない気分になる。
久しぶりに『マスター・キートン』を通読。一度読み始めると最後までやめられないので、できるだけ手を出さないようにしているのだが、イースターの4連休ならかまわないだろう。1980年代後半から90年代半ばにかけての、冷戦終結前後のヨーロッパ社会の一面を見事に描き出しているこの作品を再読して、そこに描き出された当時のヨーロッパ社会の問題の多くが、30年のときを経て、ECのEU化、そのEUの東方への拡大などを経ても、ほとんど未解決のままに終わっていることに驚いてしまう。
今回のコロナウイルス騒ぎで、ヨーロッパでもいろいろな形で民族差別が現れて問題になっている。これは普段は表に出てこない人々の心の奥に眠っている差別意識が、パニックの中で表面化したものだろうけど、個人的には普段から表に出てくる差別主義者の存在よりも、この普通の人の心の奥に巣食う無意識の差別意識の方がたちが悪く、恐ろしいものだと思う。自分にもそんな意識がないとは言い切れないのがまたつらいところだけどさ。
それはともかく、昨日の続きに戻ろう。自分が今のコロナウイルスで大騒ぎをしている東京で大学生だったら、自粛なんかどこ吹く風で毎晩飲み歩くだろうなあ。一つは、大学生時代は権力や権威というものには逆らうものだと思っていたから、酒飲みに酒を飲むことを自粛するような要請が出れば、我ながら短絡的だけれども、反射的に飲みに行ったはずだと思うのだ。この時期毎年花粉症で苦しんでいたから、一年の中で一番飲みに行かなかった時期なのだけど、行くなと言われれば行きたくなるのがひねくれ者たる所以である。
もう一つは、酒飲みの意地というやつである。飲まなくなった今はそんなこと考えもしないけど、病気如きで酒を飲むのをやめるのは酒飲みの風上にも置けないなんてことを考えていた。だから、どんなに花粉症で苦しんでいても、友人に誘われたら断らず、涙と鼻水をたらしながら酒を飲んでいたし、胃に刺すような痛みを感じながら飲み続けたこともあるのだ。言い訳としては、アルコールベースの殺菌剤が使われているのだから、酒でウイルスを殺すぞとか、酒は百薬の長だからとか、酒飲み特有の超絶理論を持ち出していたはずである。
マスコミの取材を受けて、何故飲むのかと聞かれたら、「そこに酒があるからだ」とか言ってそうだし、何故自粛しないのかと批判されたら、「取材と称して繁華街に出てきている時点で同罪だ、取材を自粛しない奴に、酒を自粛しないことを批判する権利はない」とか反論するだろう。酒飲みにとって、酒を飲む自由は報道の自由なんかよりはるかに重要で守り通すべきものである。
我々の世代は、昭和天皇の崩御の際の自粛ブームにうんざりさせられた世代なので、自粛というものにアレルギーがある。マスコミに言わせれば、コロナウイルス騒ぎの中で飲みに出かけるのは当事者意識のない考えなしだけということになるのだろうけど、そんなことを言う連中の方が考えなしである。中には自粛に対する反発と、酒飲みのプライドにかけて飲みに出ている人もいるはずだ。少なくとも我が大学時代の畏友達であればそうしているはずである。健康のために酒やめたなんてのもいかねないけどさ。
2020年4月14日22時。
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2020年04月15日
自宅監禁日記(四月十二日)
イースター三日目の日曜日である。普通の年であれば、モラビアの田舎では、夕方から夜中まで大宴会が行なわれるはずなのだが、今年はすべて禁止である。無宗教の人の多いチェコとはいえ、信者はいるので、どの日かは知らんけどイースターのミサも行われる。今年はオンラインでやるのだとか。信者ならぬ身には、そこまでして行なうべきものとも思えないのだが、宗教というのは厄介なものである。
先日のニュースでは、信者が教会に集まれないからと言って、信者の写真を机の上に並べて参加したことにするなんてことをのたまう教会関係者が登場していた。写真の中にはイタリアでコロナウイルスのために命を落とした神父のものも並べるといっていたけど、それに何の意味を持たせたがっているのか。イタリアとスペインというヨーロッパの中でもカトリックの強い二国で今回の感染症が最大の猛威を振るっていることを考えると、カトリックの教会、教会における儀式が感染の拡大に一役買っていたと考えるのが普通だと思うのだけど、そんな話は出てこない。
政教分離とか、信教の自由とか、すべての宗教は平等だとか言うれども、結局ヨーロッパの社会において、キリスト教、カトリックに対しては特別な配慮がなされている。これをヨーロッパ社会の伝統と言う言葉で片付けるのだから、日本社会の政教分離の度合いについてヨーロッパから批判されるいわれはない。日本で政教分離にうるさい人たちも、念頭にはヨーロッパ社会を置いているのだろうが、左翼のこの人たちの想像する政教分離なんてものはヨーロッパには存在しない。右翼の主張も妄想に基づくものが多いから、その辺は目糞鼻糞なんだけどさ。
とまれ、ネットで日本のコロナウイルス対策についての情報が入ってくると、集めようと思わなくても、関連情報ばかりで目に入ってくるから、うざったいことこの上ないのだけど、自分が今の日本の緊急事態宣言が出た地域にいたら、どんな対応を取っているだろうかと考えてしまうことがある。今はチェコという異国に住まわせてもらっているという遠慮があるので、そこまでやるかと不満に思いつつも、政府の指示には不平も漏らさず唯々諾々と従っている。
日本に住んでいたら遠慮する必要はないから、不満ぶちまけたり自粛の要請を無視したりするのだろうなと考えて、そうでもないかと思い直した。仮に日本でも現在と同じような職場で、同じような職住環境にあるとしたら、自粛なんかしなくても自粛したのと同じ結果になってしまうような気がする。もともと、たまに職場への行き帰りに買い物に寄るぐらいで、自宅と職場を徒歩で往復する毎日で、外で食事を取ったりお酒を飲んだりなんてのは、月に一回あるかないかだったのだ。
日本だったらという条件で増えるとしたら、本屋に立ち寄る回数ぐらいだろうか。マスクも花粉症対策で春先は身につけていたし、職場に出るかどうかは職場の判断次第だと考えると、政府が期待するコロナウイルス対策の自粛生活を自粛していないのにやってしまっていそうで釈然としない。ただ、自分がそんな生活をしているからといって、他者に強要するような醜悪なことはしないと思う。
これは、仮に自分が持病もちで高齢者だったとしても変わらないと思いたい。外出自粛を守らない人だって、何らかの根拠があって判断したのか、よんどころない事情で外出せざるを得ない状況にあるか、どちらかなのだろうから、それを他人が批判したところで何の意味もない。自分が感染したくなければ、他人との接触を絶って引きこもっていればいいだけの話だしさ。自分は仕事か何かのために外出しておきながら、他人が外出しているのを非難するのは筋違いと言うものである。
自分が小学生だったらと想像してみよう。子供のころは学校が嫌いじゃなかったから、強制的に休校になるのには不満を感じたに違いない。それよりも不満なのは家の中にばかりいると体を動かせないことだから、午後からは近所の公園に遊びに出かけることだろう。午後からというのは、小学校時代は親の言うことを聞くいい子だったから、昼過ぎの小学校の授業が終わる時間ぐらいまでは、勉強をしていると思うのである。
中学生になると、屁理屈だけは上手なクソガキになっていたから、ウラでいろいろ画策していそうだなあ。部活仲間と語らってこっそり練習している可能性が高い。普段どおりに放課後なんて時間を決めると発覚しやすいからと、毎日時間や場所を変えるなんて姑息なこともやりそうだなあ。見つかったら見つかったで、屁理屈こねて煙に巻いていたに違いない。問題は、そんなのに付き合ってくれる友達がいるかどうかだけどさ。いなかったら、毎日ジョギングの日々だろうなあ。
高校では世捨て人を目指していたから、授業が休みになること自体には不満は持たなかっただろうが、図書館が使えないことに不満を抱くに違いない。どこぞの高校生が授業再開に反対して署名活動をするとか言っていたけれども、理解に苦しむ。授業再開に反対するよりも、授業再開後に欠席したとしても欠席扱いしないことを求めるのが、あるべき高校生の姿である。学校に行きたくなければ、さぼって家で勉強していても出席扱いされるのが、受験を考える高校生にとっては一番ありがたいはずだ。
それが実現した場合、自分なら、自宅だといろいろあって勉強がはかどらないから、学校には行くけれども授業はサボって図書館で自習するかな。感染への恐怖を言い訳にすれば、大抵のことは何とかなりそうだし、それが駄目でも、普段から図書館に入り浸って司書の先生や、図書館長の先生と仲良くなっていれば見逃してもらえる。それに、自習に行き詰ったら本を選び放題というのも嬉しい。読書優先で勉強が進まない恐れもあるけど、それは教室で授業を受けていても同じである。どうしても読み続けたい本は、授業中でもこっそり読み続けてしまうというのは、活字中毒者ならよくある話である。
田舎の人間なので、学校がないからといって町に遊びに行こうなんて発想は、ガキのころはお金もなかったし、持ち得なかったのだけど、その辺のこだわりは人それぞれなんだから、学校という場を奪われた子供たちが町に出ることを、批判するような人間にはなりたくない。この件の被害者は子供たちであって、我々大人ではないのである。
2020年4月13日23時。
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2020年04月14日
自宅監禁日記(四月十一日)
イースター四連休の二日目、白い土曜日である。祝日になっているわけではないので、普段なら午前中は街中の店も開いていて、買い物に行けるのだが、非常事態宣言下の現在、営業を許可された店でも、食料品を扱うスーパー以外は休みにしているのではないかと推測する。郊外のショッピングセンターは、週末休まない店ばかりだから話は別である。
政府はイースター開けの会議で、今後どのようなスケジュールで規制を緩和していくか話し合う予定のようだが、厚生大臣のアダム・ボイテフ氏が先走って、いやおそらくはバビシュ首相の意向に基づいて、自らの見解を発表していた。細かいことは覚えていないが、最後まで継続されそうなのはマスクの着用で、義務がなくなるのは早くとも6月だろうと語っていた。それから1万人を越えるような大イベントは今年の夏は無理じゃないかなんてことも言っていたかな。
それに対して社会民主党の党首で内務大臣、現在はコロナウイルス対策委員会の長も務めているハマーチェク氏が、まだ内閣で話し合ってもいないことを、しかも状況次第で今後どうなるかわからないことをべらぺらとメディアに喋るのは問題だと非難していた。今回のコロナウイルス対策では、与党側が圧倒的な存在感を示して、野党側はないも同然になっているのだが、連立与党内での主導権の争いが激化しつつあると見るべきであろう。
この争いには、控えめながらゼマン大統領も参戦していて、すでに一週間ほど前の話になるが、対策委員会の長の座を疫学の専門家であるプリムラ氏が、政治家であるハマーチェクしに譲ったときに、今年の秋の勲章授与の際に、プリムラ氏に最高位の勲章を授けることを発表していた。これは出身政党とはいえ対立するグループのいる社会民主党に対して釘を刺すと同時に、コロナウイルス対策に成功した功績はハマーチェク氏ではなく、プリムラ氏にあるのだと印象付ける目的もあるのだろう。
ところで、話は全く変わってしまうが、このウイルスの流行が話題になって以来、いや、犠牲者の大半を高齢者が占めるという事実が明らかになって以来、不思議に思っていることがある。すでに食う年も前になってしまうが、2011年の東日本大震災とその後の福島原子力発電所の爆発が起こった際には、オカルトな言説が世界をにぎわせた。
中には、自信を起したのは米軍の秘密兵器。爆弾だったかな? という言い出した人の知性を疑うようなものもあった。外国で教育を受けたならともかく日本で義務教育を受けた人であれば、地震発生のメカニズムはある程度知っていて、あれだけの地震を起こすためにとてつもない量のエネルギーが必要で、それが人間の手で引き起こせるレベルではないことを理解していて然るべきだと思うのだが、その発言を真に受けている人がかなり存在したことに薄ら寒い思いをした。さらに、その情報を発していた人物が、本当かどうかは知らないが、どこかの地方で議員を務める政治家だという話を聞いて、オカルト話を聞かされたときのような空しさを感じた。
これなどはまだ知性がかけらでもあれば、ありえないと理解できる与太話だから、まだ笑い話で済むけど、日本人なら一度聞いただけでは尤もだと思ってしまいかねない蒙説もあってたちが悪かった。簡単に言えば、東日本大震災は自然への敬虔さ、感謝の気持ち忘れた日本人への天罰だというのだが、うちの親までその手の妄言に感動して、どこぞのだれそれの講演の原稿とやらを送ってきたのには閉口した。ここまで蒙昧な人たちではなかったはずなのだけど、歳を取るとこの手の話を信じたくなるものなのかもしれない。
物質文化と精神文化なんてカテゴリーわけも流行ったし、精神的な豊かさを求めようなんてのもあったなあ。世の中、金では買えない豊かさなんてものがあるのは確かだろうが、経済的に困窮していれば、豊かさも糞もあるわけがない。この手の一件尤もな言説に傾倒してしまうのは、現実と折り合いをつけ切れない恵まれた境遇の十代の若者と、自分の人生を振り返って空しさを感じたがる高齢者だと相場は決まっている。家の親も老いたなあと思ったものである。
この自然に対する感謝を忘れた日本人に下された天罰説が成り立たないのは、日本という範囲で考えても、もっとも自然を大事にしていない都市、東京の被害が最大にならなかった時点でおかしいと言えるし、原子力発電が天罰の理由だと言うなら、東北以上に原子力発電所が多い地域が災害に襲われてしかるべきである。世界的に見れば、中国や欧米の自然観の方が、自然への感謝や敬虔さに欠くのは言うまでもないことで、日本が災害に襲われた理由にはなりえないのである。それを一見知性もあって頭もよさそうな人たちが信じてしまうのが救われない。
それで、この手の精神的な豊かさが好きな人たちの思考をたどって、今回のコロナウイルス騒ぎについて考えると、医療の発展という美名の下に命をもてあそぶ現代文明への警鐘だと言い出す人が出るんじゃないかと予想したのだが、現時点では見かけていない。せいぜいロシアの元陸上選手がドーピング疑惑でロシアを排斥する連中に対する天罰だと言っていたのを見かけたぐらいである。
今後、感染症の流行が終息してから、そんなことを言い出す人が出るかもしれないけど、現時点でいないのは、やはりこの手の精神主義的なオカルト言説を主張する人、信じてしまう人の多くが高齢者で、自分たちが天罰の対象になっているなんて思いもしないからだろうと考えた。東北大震災の天罰説でもそんな蒙説を唱えていたのも、信じて周囲に広げていたのも当事者ではない東北以外の人ばかりだったしさ。
2020年4月12日20時。
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2020年04月13日
自宅監禁日記(四月十日)
イースターの大金曜日ということで、祝日である。チェコでは一番最近増えた祝日だと思うのだが、ドイツの悪影響でチェコでも始まった祝日の営業禁止は、この大金曜日には適用されない。月曜日は適用されるので、たしかオロモウツ地方では、月曜日は地方が薬屋の営業を行なうなんてことを発表していたはずだ。実際にどのような形で行なうのかは知らんけど。
オロモウツの旧市街の普通のお店は、週末は土曜の午前中だけ営業して休みというところが多い。こういうところは祝日もお休みである。それに対して、チェコ的なデパートとも言うべきショッピングセンターの場合には、年中無休と言うところが多く、今はやめていると思うが、スーパーのテスコは一部の店舗で24時間営業をやっていた。
これに対して、こういうお店で働く人たちに休みがないのはおかしいとか、クリスマスなどの祝日に家族と過ごせないのはおかしいなどという理由で、祝日のうち、クリスマスを中心に何日かに関して、法律で休業することが決められたのが確か数年前のことだと記憶する。これにはドイツやオーストリアからの圧力があったと噂されていた。国境地帯に住む人が自国の店が休みの日にチェコに買出しに来て大量の買い物をするのを、ドイツ側が面白く思っていなかったらしいのだ。ドイツのスーパーは週末と祝日は営業禁止のはずである。
この問題に関しては、市民民主党などが営業日と休業日を決めるのは、経営者の判断であって、それを国が押し付けるのはおかしいという主張をしていた。個人的には、チェコのこの手の商業施設の問題は定休日を設けていないところにあると思っていたので、なんでこんな法律を作るかなとあきれたものである。従業員のインタビューでもクリスマスに出社することになってもその分手当を弾んでくれれば歓迎だなんて声もあったし。それぞれの施設で定休日をずらせば、買い物できない消費者もいなくなるしさ。この辺、ヨーロッパの、特にドイツの連中の考えることは理解不能である。
休みになると、体調がよくなくなるというのは今回も発揮され、朝起きると風邪の引き始めのように喉に違和感があり、頭が重かった。多少の疲労も感じていたけど、これはいつものことで、気にしても仕方がない。こういうときには寝るに限るので、PCの画面を見ていられなくなった午後は昼寝の時間に当てた。夜も早く寝て明日の朝も遅くまで寝ていよう。それでも駄目なら月曜日まで繰り返すだけだ。火曜日から仕事が始まっても、職場に出る必要がない分、体力は温存できる。これが自宅監禁労働生活の唯一の利点かもしれない。
日本では、緊急事態宣言は出たものの混乱が続いているようだ。そりゃあ当然の話である。近所の小母ちゃんたちの井戸端会議や、ネット上の掲示板何とかチャンネルとレベルでしかないテレビのワイドショーを中心とするマスコミの大騒ぎに引きづられて宣言を発したのだから、まともに機能するわけがない。宣言を出せば何とかなるというイメージをばら撒いたマスコミがいけないのである。それに乗って具体的なことは何も決めずに宣言を出してしまった政府もアホだけどさ。
チェコのバビシュ政権も、かなり短絡的に非常事態宣言を出したけど、ここまでひどくはなかった。少なくとも最初のいくつかの政策については決定した上で、宣言を出したのは明らかである。当初は規制の対象や範囲が変わることも多く、批判の対象になっていたが、実際に導入したら不備が発覚した結果臨機応変に対応したと評価できなくもない。そのチェコでも非常事態宣言は一ヶ月では撤回できず、四月末までの延長が決まったのである。その上、再延長もほぼ確実視されている。
日本は一月で終息させるつもりのようだけど、大丈夫なのかね。いや、実は日本の場合にはこんな宣言出しても出さなくても結果は変わらないんじゃないかとも思う。そもそもの人と人の接触のしかたが、日本と欧米では大きく異なるのだから、欧米でこうだから、日本もこうなるというのは予測ではなく、思考停止である。
検査検査とうるさいのもなあ。検査の数を増やすなら、チェコも遅ればせながら導入した老人ホームなどの高齢者介護にかかわる人と医療関係者の検査を定期的に行うべきであって、芸人やらマスコミ関係者やらは感染したところで誰も困らないのだから、高齢者以外は肺炎の症状が出るまで放置しておけばいい。学校の先生の検査も行なって学校再開につなげるのも悪くないか。
欧米のメディアが日本のやり方を批判したり、ありえないなんていっているのも、どうせ差別主義から出ているのだから気にする必要はないと思うのだけどね。やつらはろくに対策をしていない後進国である日本の犠牲者が、経済が壊滅的な状態になるのを覚悟の上で厳しい対策をとるしかなかった自国よりも少ないという事実を認められないだけである。日本だけ経済活動が止まらないのも許せないから、緊急事態宣言を押し付けたいという思惑もあるんだろうしさ。
チェコもそうだけど、どの国も、緊急事態宣言を出すなら出すで、解除となる条件を提示するべきであろう。それを決めかねているというのもあるかもしれないけど、ある程度の目安を提示しないと長引いた際のお先真っ暗感はこの上ないものになってしまう。
2020年4月11日20時。
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2020年04月12日
自宅監禁日記(四月九日)
日本大使館からメールが来て、チェコの出入国に関する制限が緩和されたことを知らされた。具体的な内容はリンク先のチェコ内務省のHPで確認するようにということだったのだが、英語のページをチェコ語に切り替えてみてもどこが変わったのかよくわからなかった。というよりは、文字が小さすぎて読む気になれなかったというのが正しい。
基本的に日本語もチェコ語も使えないところには恐ろしくていけないし、長時間飛行機になんか乗りたくないので、チェコから出国するなんて想像したくもない。だから細かい情報は知らなくても何の問題もないのだが、出入国の規制を緩和するのは早すぎないかとも思う。それより学校の再開が先じゃないか。まあ、観光客なんかはまだ入国させないだろうから、そこまで目くじら立てることもないかな。入国したら規定どおり2週間は隔離状態に置かれるだろうし。
そんなことを考えていたら次のメールが来て、プラハの空港からの便は数が減っている上に、予告なしにキャンセルされることも多いから、事前に確認するようにと書かれていた。こちらにはプラハの空港のHPのリンクがついていたので、たまたま時間に余裕があったし確認してみた。出発便も到着便も3本しかなく、現時点でプラハと飛行機で結ばれいるのは、ベラルーシのミンスク、ブルガリアのソフィアと、中国の上海しかないようだ。
独裁政権だという理由でEUから存在を無視されてるベラルーシは、独自のコロナウイルス対策をとっていることで、もしくは対策をとっていないことで有名で、各種スポーツのリーグ戦も観客を入れた通常の状態で続けられているらしい。確認された感染者の数が少ないからこんなことができるのだろうけど、ルカシェンコ大統領がコロナウイルスなんて畑仕事をしていれば感染しないとかのたまっていたというニュースも見た気がする。
中国は感染の危険性が高い国として危険国に指定されて飛行機の定期便も運航を休止していたと思ったのだが、いつの間にか再開していたのだろうか。それにしては上海だけというのが不思議である。それで思い出したのが、中国の上海から定期的にマスクなどの医療品を空輸しているというニュースである。貨物用の飛行機ではなく普通の旅客機の客席にダンボールが詰め込まれていて、消防署の人たちが人海戦術で運び出していた。この定期便に客席が設定されているのではないかと思いついたのだけど、どうだろうか。
ブルガリアの状況は、ベラルーシ以上に入ってこないから、どうしていまだに飛行機が飛んでいるのか想像もつかない。チェコが原則として外国人の入国、チェコ人の出国を禁じている以上、この便を利用できるのは、チェコにいるブルガリア人とブルガリアにいるチェコ人がそれぞれ帰国する場合だけになるはずである。それは他の二国も同じだから、今でも飛行機の便が残っていること事態が不思議といえば不思議である。
話は変わって、昨日ちょっと触れたプルゼニュ地方の知事の話だが、実は検査を受けたのは二回だけではなく、合計4回受けたらしい。知事が困ったのは、その4回の結果が、陰陽陰陽と交互に二回ずつ陰性と陽性の判定が出たことだという。これについて専門家は、検体の採取のやり方に問題があったのかもしれないなんてことを言っていた。
プルゼニュ地方では、ドイツとの国境に近いドマジュリツェで急速に感染者の数が増えているようで、町を封鎖するかどうかの検討が行なわれているようだ。ドイツから国境を潜り抜けて買い物に来るやつらがいるのだろうか。厚生省の発表を信じるなら、確認できない感染の拡大はないと言うことだからそんなことはないのだろうけど、チェコを見下している差別主義者のドイツ人どもがチェコ側の規制を素直に守るとも思えない。
7時のニュースでは、チェコ最初の感染者の1人が取材に応じていた。この人はイタリアで感染して帰国し、ウースティー・ナド・ラベムの病院で感染が確認された後、プラハの病院に移送されて乳井していた。その後、三世代7人で同居している家族の感染も次々に確認され、最終的には本人も含めて5人が陽性の判定を受けた。
陰性のままだった2人は子供で、本人たちも同じ家で同じように生活していたのに2人だけ感染しなかったのは不思議だと笑っていた。入院したのは本人も含めて2人だけで、残りの3人は自宅療養だったらしい。無症状か軽症だったのだろう。本人は病気の経過について、不安が一番大きかったと回想していた。誰も経験したことのない新しい病気で、中国とイタリアであれだけの惨状を作り出した病気にかかったのだから、とてつもない不安を感じるのも不思議はない。その不安が、自分の病状を実際よりも重く感じさせることもあるんだろうなあ。腎臓結石で苦しんだときは、異国の地で乳井するという不安に、命の別状なんかなかったのに、死ぬと思ったからなあ。
8時からはバビシュ首相がテレビで特別演説を行った。ちゃんと聞いていたわけではないけど、ヒステリックな感じがなかったから、誰かが代筆したものを読み上げたのだろう。何故に今と言うと、イースターのせいである。ホームセンターの営業を解禁したのも、金曜日から月曜日のイースター休みを庭仕事に使わせようという思惑があってのことに違いあるまい。
クリスマスが、家族で過ごす宗教行事なら、イースターは親戚や近所の人を訪問する宗教行事である。日曜日の夜の大宴会は禁止されているから開催はされないだろうけど、月曜日に柳の若枝を編んで作ったポムラスカ持って知り合いの家を渡り歩くなってのは、やりかねない。それを防ぐためのバビシュ首相の演説であり、ホームセンターの営業解禁だったのだろう。
2020年4月10日10時。
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2020年04月11日
自宅監禁日記(四月八日)
自宅にこもって、いつも以上に変わり映えのない生活をしていると、日記と称して書くことがほとんどない。毎回ごみ捨てに行くたびに今日はごみ捨てに行ったぞなんて書いくのもつまらないし、何よりそんなことばかり書きたくない。かといって、世の中に目を向けても、世はなべてコロナウイルスで、こちらも書くことは変わり映えのしないことばかりになってしまう。
まあ、日記というのが有名無実なものになっているのは今更と言えば今更だし、そもそもブログの題名にしてからが、偽りありなものだから、ここ十日ほどの日記がもどきにすらなっていないのも仕方がない。愚痴と言い訳と同じことの繰り返しが多いのは、我が文章の宿痾のようなものである。前置きが長いのもそうか。
とまれ、昨日非常事態宣言の延長が決定されたのと前後する形で、移動の制限が一部緩和された。一つはオリンピックの延期が決まったスポーツ界が熱望していたスポーツ施設の閉鎖の一部解除で、屋外の運動施設の使用が許可された。ただし、家族以外は2人以上の集団で行動してはいけないという制限は継続されるため、個人スポーツの施設が対象となる。チームスポーツでも試合ではなく屋外でのトレーニングを個別に行なうのなら何とかなるのかな。屋内の施設は依然として閉鎖である。
ニュースではペトラ・クビトバーが早速テニスコートで練習を始めた様子が流された。人間距離が十分以上に取れていればマスクをはずしてもいいようである。テニスの場合にはコートのそれぞれ反対側に立つわけだから、練習の際にはマスクはつけていなかった。取材のインタビューに応じたときにはマスクしていたけど。いずれにせよ、チェコの社会にスポーツが戻ってきたことはいいことだ。今までも個人のジョギングとか、サイクリングなんかは認められていたけど、これからはマスクも不要になるのかな。
今日買い物に出たうちのの話では、フローラの公園でジョギングをしている人の数が驚くほど多かったという。月曜日はそこまで多くはなかったから、規制の例外になっていたとはいえ、遠慮と言うか自粛している人が多かったのだろう。許可が出たことで、ジョギングマニアたちがぞろぞろと穴倉から這い出してきたというところか。チェコもここ数年ブームだからなあ。
スポーツの解禁は昨日の火曜日からだったが、明日木曜日からは、閉店中のお店のうち、ホームセンターや自転車屋などの営業が許可される。ホームセンターはこれまでも営業していたが、事業者向けにしか販売できないという制限を課されていた。もちろんこの新たに営業を再開する店でも、人間距離を取る必要があるから、場合によっては入店制限が行なわれることになりそうだ。
多少の緩和が行なわれるとはいえ、正直こちらの生活に関係のあるものは一つもない。ということで、これからもしばらくは変わり映えのしない生活と、ブログが続くことになりそうだ。仕事の合間にちょこちょこ書き足しているから、全体の結構はバラバラだし、必要以上に長くなるしで、読む人は大変かもしれないけど、外出禁止の引きこもり生活も大変なんだよということで。
ところで、現在プルゼニュ地方の知事がコロナウイルス感染が確認されて自宅療養と在宅勤務を続けているのだが、面白いことを言っていた。もともと、一緒に仕事をしている地方の役人の感染が確認されたことで、14日間の自宅待機状態にあったらしい。その際に感染の有無を検査で確認した結果、陰性だったので、自宅待機期間が過ぎた後、一度は職場に復帰したのだという。その初日に念のために再度検査を受けたら、今度は陽性の結果が出たため、職場復帰は2日で終わり、再び自宅からのオンライン勤務に戻ることになったと。
この事例は、検査というものがいかに当てにならないかを物語ると同時に、感染しても仕事をするには全く問題のない人が多いという事実を目に見える形で明らかにした。本人は、このウイルスはおそらく今後人類のほとんどが感染することになるのだから、感染することを必要以上に恐れる必要はないんだと強調していた。
厚生大臣のボイテフ氏によれば、現時点でチェコ国内のコロナウイルスの感染経路は完全に把握できたという。確か、非常事態宣言が発せられた理由のひとつが、感染経路が確認できない感染者が増大していて医療機関が対処できなくなる恐れがあるというものだったから、このニュースは非常事態宣言解除に向けての第一歩として捉えてよさそうだ。
また、閉鎖地区を出したオロモウツ地方などで、住民にコロナウイルスに対する抗体ができているかどうかの調査を開始するという。これによって感染しても無症状のまま完治した人の数をある程度把握することができ、いわゆる集団免疫がどの程度形成されているのかを確認するのも目的のようだ。調査の結果次第では、非常事態宣言の解除が早まるなんてことは、言っていなかった。調査はイースター開けの来週から始める予定だという。
チェコではいまだに感染者数は増え続けているが、その数自体はあまり注目を集めなくなった。それは検査数が増えるのにあわせて陽性判定者の割合が下がり続けて5パーセント以下になっており、日々の陽性判定の数自体も増えておらず、一ヶ月の外出禁止を経てようやく終息の兆しが見えてきたからである。重要視されているのは、入院して集中治療室に入るような重症者の数が、病院のキャパシティを越えないかどうかと、感染者に対する高齢者の割合が増えないかどうかである。現時点ではチェコの感染者数は11000人ぐらいで収まるのではないかと予想されている。
2020年4月8日24時。
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