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2019年12月22日
大学入試改革なんざやめちまえ(十二月十九日)
当初から問題しかないことを指摘され、批判されてきながら、首謀者たちが自らの思い込みのみで推進してきた内容が、実施が近づいて日本中に知れ渡った結果、総スカンを食って、その反感の強さに監督省庁である文部省がビビッて延期を決めたというのが、こちらが理解する今回の大学入試改革とやらをめぐる騒ぎの経緯である。
タイミングよく、改革推進派と反対派の書いた対照的な記事を読んだ。最初に読んだのは、推進派の文章で、「大学入試改革が頓挫か キーマンが明かす「抵抗勢力の正体」」というインタビュー記事。「週刊ポスト」なのか、そのネット版なのか、とにかく小学館の提供する記事である。インタビューを受けているのは、記事の説明がかなり意味不明だけれども、実際に文部省で大学入試改革の旗振り役を担っていたという大学教授。それはともかく東大と慶応大の教授を兼任なんてできるのかね。
もう一つは、反対派の「元外交官が嘆く、英語教育改革の愚 センター試験の「読み」重点は正しい NHKラジオ英語講座で磨ける能力とは」という、こちらは談話をまとめた体裁の、「週刊朝日」の記事である。話し手は世界各地で外交官として活躍した人物で、当然英語には堪能なようである。
後者は題名からして、大学入試の英語について語っているのは明らかだが、前者も大学入試改革と言いながら、大半は英語の問題に割かれている。どちらも、多分に手前味噌的なところがあるのは確かだけど、どちらが説得力があるかと言われると、自らの学習と仕事の経験をもとに、英語の入試を変える必要はないと断言する後者である。
前者も自分の経験と言えば経験と言える部分はあるけれども、「こんなことを言う人もいた」と具体的な人名も人数も出さずに、「だから問題なかったんだ」と言われても何の説得力もない。そもそも、どうして高校生卒業前の人間が日本の大学で勉強するために、英語で話したり書いたりできる必要があるのかが全く説明されていない。それなしに改革と言われても、説得力はない。
実は、前者の記事を読んだ時点で、むかっ腹を立てたのがこの話を書くきっかけなのだが、最近ネタに詰まっていることもあるし、両方の記事、とくに前者にいちゃもんを付けていこうと思う。一読して、仮に「週刊ポスト」の記事を信用できるなら、今回の大学入試改革の中心人物がこのような浅はかな考えしか持っていなかいなのだから、失敗に終わった(願望も含めて断言しておく)のも当然だという印象しかもてなかった。
この記事も一見、大学入試改革推進派の記事のように見えるけれども、これを読んで改革は継続するべきだと思う人などいたのだろうか。むしろ、改革推進派のふりをして、その駄目っぷりを暴露して、廃止に追い込むための記事に読めてしまった。発表している媒体が小学館の週刊誌だから、そんな難しいことは考えずに、ただ面白そうだから推進派の話を載せてみようというところだろうけど、支援のつもりが見事な攻撃になっている。
文中に受験生がかわいそうだとか何とかいう発言があるが、この人にはその原因を作ったのが自分だという反省が全くない。反対派を批判したい気持ちはわかるけれども、責任者なのなら受験者に対するお詫びから入るのが普通じゃないのか。この人もまた、自分の正しさを信じ込める幸せな人なのだろう。そして目的が手段を正当化するという極めて左翼的な思考の持ち主のように見える。誰だ、こんなのに大学受験の改革を任せようと決めたのは。
そもそも題名に「抵抗勢力」なんて言葉を使っている時点で、言葉を選んだのは編集者の仕事かもしれないけれども、記事の内容を読めば、思考法方がこの言葉で象徴されるものであることは明白で、ここにもいまだに小泉政権の成功を忘れられないエピゴーネンが存在したかと、そんなのが大学教育に携わっているのかと暗澹たる気分になる。小泉元首相が残した最大の負の遺産がこの敵を設定して執拗に攻撃することで味方を増やすという政治手法じゃないかと思うのだけど。使いこなせたのは小泉首相しかいなかったわけだし。
とまれ、抵抗勢力に認定されているものの中に、旧民主党勢力である野党とマスコミが入っているのにあれっと思った。今回の大学入試改革というのは、もともと民主党政権の肝いりで始まって、自民党政権になってからも実害はないからと放置されていたものが、予想外に世論の評判が悪いことに気づいた自民党がはしごを外したことで崩壊したのだと認識していたのだが、違ったのだろうか。政治家の動きはともかく、一般の人の話をすると、野党支持者よりも、むしろ与党の自民党支持者の方が、今回の改革に反対しているような印象を受ける。かく言うこちらも、元心情左翼とはいえ、日よってリベラルなどと自称する旧民主党勢力を支持しているつもりは全くない。かといって自民党を支持するところまでは落ちきれないでいるけど。
この中心人物の経歴の説明にも、誇らしげに民主党政権で文部省の高官を務めたことが書かれているし、民主党政権で改革の担当者を始めて、その後の自民党政権でも同じ役割を続けたように読める。そもそも、入試改革自体が、文部省が大蔵省から金を引っ張り出すために適当にでっち上げたものだと考えれば、自民党が始めたものでも民主党が始めたものでも大差ないし、こんな人物が責任者になったのもむべなるかなということになるのか。
以下次号
2019年12月20日22時。