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2019年02月26日
名字の話女性形(二月廿四日)
ちょっと時間がおしているので、簡単に書けて短くまとめられそうな話を探していたら、昨日のバーバという名字が男性の名字で、その女性形はバーボバーになるという話を書いたので思い出した。まだ名字の女性形について、正確には男性形の名字から女性形の名字の作り方を書いていなかった。先に例外的なことから書いておくと、チェコの名字の中にも男性形と女性形が同じものもないわけではないのだ。
最初は、一番多い例だが、男性の名詞が子音、短母音「a」か「o」で終わる場合は、女性形の末尾は「-ová」になる。子音で終わる男性名詞にはそのままつけ、母音で終わるものには、末尾の母音を取り去ってからつける。だから、日本人の名字の場合でも「a」で終わるもには、このルールが適用されることがある。タナカさんの、奥さんと娘さんはタナコバーさんになってしまうのである。
日本人の名字を扱う上で気をつけなければならないのは、長母音「ó」で終わるものである。かなで書くと「オウ」だけど、発音は「オー」に等しく、ヘボン式のローマ字でも最近は長音記号をつけないことが多いから、ローマ字で書くと「o」になる。その結果、サトーさんがサトさんになり、その奥さんたちはサトバーさんになってしまうのである。
これで気づいた人がいるかもしれないけど、サトバーさん、「サト婆さん」に聞こえない? チェコ語の名字の中には、いくつか女性形にすると女性の名前に「婆さん」をつけたように聞こえるものがあるのである。耳で聞いて一番びっくりしたのが、つづりも男性形もよくわからないのだけど、「美穂子婆さん」で、チェコ語だと「Michoková」になるのかなあ。男性形は「Michok」か「Michoka」か。ただし、三つともワードの校正機能で赤線が引かれているから、本来はチェコ語の名字ではないのかも知れない。
そうなると、ちょっと母音の長短はあるけど、ハナークさんの奥さんが「花子婆さん」になるというのが一番いい例だろうか。本当は「Hanáková」だから、「ハナーコ婆さん」なんだけど、ちょっと短くするぐらいは許されるだろう。これは自分で気づいたのではなくて、ある日系企業のかたがたが使っていた冗談である。何でも本人にまで伝わってしまって使えなくなったのだとか。探せば他にも日本人の名前になりそうな「婆さん」がいるとは思うのだけど、誰か探してみない?
閑話休題
二つ目は、形容詞硬変化形の名詞で、男性形の語尾は「-ý」だが、女性形は「-á」となる。格変化も名詞でありながら形容詞と同じになる。オロモウツの大学に名前が冠されているパラツキーの奥さんはパラツカーさんだったわけだ。コメンスカーとか、ロシツカーとか聞きなれていないせいか、どれも違和感があるのだけど、去年のオリンピックで金メダルを取ったレデツカーはさすがに耳に馴染んできたなあ。
三つ目は形容詞軟変化型の名字で、これは男性形と女性形が同じになる。ただし、格変化は男性と女性で異なるので注意が必要である。よく聞くこの形の名字としてはクレイチーがある。ただこれは仕立て屋を意味する名詞になってしまっているから、女性の名字としては女性の仕立て屋を意味するクレイチョバーという形を使うことも多い。でも、男性の形が長母音「í」で終わっている場合には、女性も例外的に同じ形になると考えて問題ないはずである。
最後の一番特別なのが名詞の、特に人名の複数二格が名字になっている場合である。この場合は男性形と女性形が同じであるだけでなく、格変化も全く同じである。男性形も女性形も格変化させようがないからさ。一番有名なのは作曲家のマルティヌーだろうか。これはマルティンの複数二格が名字になったものである。他にもヤンからヤヌー、ヤネクからヤンクーなんて名字ができあがる。
チェコの女性の名詞というのは「オバー」で終わるのが原則だけど、例外もあるのだということで、今日はお仕舞い。
2019年2月25日23時30分。