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2019年01月14日
ややこしいToの話続(正月十二日)
ここからが本題なのだが、「ten/ta/to」の中で、例外なのが中性を指す「to」である。これ、特にあとに来る名詞を意識しない場合に、つまり単に「それ」という場合に、1格でも、4格でも使うことができる。名詞の性、単複を意識しない場合だから、前に出てきた名詞を受けることはできない。
まず簡単4格からいくと、例えば誰かが手に持っている本を、よこせと言うときに「Dej mi to」、見せろと言うときに「Ukaž mi to」という類である。具体的な名詞を使って「Dej mi tu knihu」と言ってもいいけど、「to」を使って済ませることのほうが多い。これは、原則として物をさすときに使う表現なので、人を指す場合には4格では使わない。
それに対して、1格の場合は厄介である。「これは何々だ」という文を作るときに動詞býtと組み合わせて使うのだが、チェコ語の文法の大原則から外れたような使い方をするのだ。チェコ語の勉強を始めたばかりのころに、嫌になるぐらい注意されるのが、実際よく間違えるから注意されるのも仕方がないのだけど、主語と述語の性と数の一致である。
話者が男性のときには「Já jsem Japonec」で、女性のときには「Já jsem Japonka」となるし、過去形にしたら、「Já jsem byl nemocný」「Já jsem byla nemocná」となる。複数の場合も「Oni jsou Češi」(男がいる)、「Ony jsou Češky」(女性のみ)と述語になる名詞の形に注意が必要である。být以外の動詞でも、「Já jsem jel do Prahy」(男)、「Naše dítě jelo do Prahy」(中)、「My jsme jely do Prahy」(女性のみ)と主語の性、単複に合わせて動詞の語尾を変えなければならない。
これを頭の中に叩き込まれたあとにやってしまう間違いが、「Ten je můj kamarád」「Ty jsou Japonci」のように、指示代名詞の「ten」を述語の性と数にあわせてしまうものである。どちらも何も考えずに、「to」を使えばいいらしい。かつて師匠にチェコ語を習っていたときに、一生懸命考えて、「Ti jsou mí kamarádi, kteří …」なんて文を作ったのだけど、「to」でいいと言われてがっかりしたことがある。性も数も完璧だぜと思ったのだけどね。
だから、知り合いを誰かに紹介するときも、弾性であれ女性であれ、単数であれ複数であれ、「to」を使う。例えばH先生に知り合いを紹介するときも、「Pane doktore, to je pan S z Japonska」「Pane doktore, to je paní S z Japonska」「Pane doktore, to jsou japonští komeniologové(コメンスキー研究者)」と言うことになる。動詞býtの形は名詞の単複に合わせる。
これは人の場合に限らない。「To je překvapení(そいつは驚きだねえ)」は、中性だから性と数が一致しているけど、「To je náhoda(そいつは偶然だ)」「To je zázrak(奇跡だ)」とやれば、述語になる名詞が女性でも、男性でも「To」が使われることはわかるだろう。「To jsou výsledky!(なんて結果だ!)」なんて複数にすることもある。
問題は、過去にしたときで、人なら「To byl můj kamarád」と述語の名詞に合わせて性と数を決めればいいと思うのだけど、「To byla náhoda」にするのがいいのか、「To bylo náhoda」がいいのか、正直よくわからない。チェコ人に聞いても、なんだかすっきりしない答えしか返ってこないので、いつまでたっても確信を持って使えるようにならないのである。
実はこれは、「To」を使わない文にも飛び火する問題で、例えば「Karel Gott je největší hvězda v České republice(カレル・ゴットはチェコ最大のスターだ)」と、主語は男性なのに、述語が女性名詞というのは、実は結構存在して、主語と述語の性と数の一致の原則というのは何だったんだといいたくなるのだけど、これを過去にしたときに、「Karel Gott byl největší hvězda」と「Karel Gott byla největší hvězda」なら前者が正しいと思うのだけど、語順を入れ替えた場合に「Největší hvězda byl Karel Gott」でいいのか、まったく自信がない。
以前、これについて、チェコ人の知り合いに相談したら、7格にしてしまえば、と言われた。名前のような一生ついて回るものは、7格にできないけれども、職業や肩書きのような、時期がくれば変わる可能性のある物は、「〜は〜だ」という文の中で7格にすることができるのである。なので、「Největší hvězdou byl Karel Gott」と1格になっている名詞に動詞を合わせればいいはずである。
この話、もう少し続く。
2019年1月12日22時35分。