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2019年01月02日

失われしもの2電子書籍の話(十二月卅一日)



 二つ目は、ネット上のニュースで見つけた電子書籍リーダーの話。超高精電子漫画という画質を誇っている点にはあまり惹かれないのだけど、見開きで読めるのとPCに接続せず、通信機能も有していないという読むことに特化している点にはものすごく惹かれる。こんな電子書籍リーダーで漫画だけではなく、普通の本も読めるようになれば、先の見えない日本の電子書籍にも、出版業界にも未来に希望が出てくると思うのだけどどうだろうか。

 それはともかく、現在の電子書籍は不便極まりないものである。便利だとすれば、外国からも購入でき、郵送されるのを待たずに読めるという点につきる。これは日本に、特に書店がたくさんある都市部に住んでいる人には何のメリットにもならないし、電子書籍の販売サイトによっては日本国内発行のクレジットカードがないと購入できないところもあるから、便利なんて言ったら鬼が笑ってしまう。
 何が不便かって、まずは、販売サイトに会員登録しなければならないこと。国外から買えるという便利さと引き換えだったから、我慢していくつかの販売店で会員登録をして電子書籍を何冊かかったけれども、普通に本屋で本を買える環境にいたら、会員登録してまで本を買おうとは思わなかったはずだ。

 クレジットカードでしか買えないのも不便だった。一時はウェブマネーで買える販売サイトを苦労して探したものだが、パピレスとhontoでチェコ発行のクレジットカードが使えるようになって楽にはなった。でも、店頭でクレジットカードを使う気軽さに比べると便利だとは言いたくない。
 そして、電子書籍の何回目かの夜明けと言われたソニーのリーダー、シャープのガラパゴスが発売されたあとに不便になったことだが、PCや専用の端末で購入した電子書籍を読むために機械の登録が必要になった。登録できるのも一人当たり5台までで、6台目を使うためには登録済みのものと入れ替えなければならないなんて話には、そこまでして電子書籍を読む価値があるのかとさえ思ったものである。

 かつて出版業界で仕事をしていたこともあるから著作権を守ることの大事さは十分理解しているつもりである。同時に出版社が主張する海賊版による著作権侵害の被害想定額が現実離れしたものであることも明白なので、コピーしやすい電子書籍とはいえ、著作権を守るための方法は他にもあるだろうし、こんな購入者に不便を強いるようなやり方しか存在しないのは、出版業界、販売会社の怠慢でしかないなんてことを考えていた。
 それで電子書籍自体を買うこともまれになっていたところに、この全巻一冊という新しい専用端末が存在し、電子書籍は、ネット上の販売サイトではなく、専用の記憶媒体に入れて書店の店頭で販売するということを知ったのである。そこに日本の出版業界の未来を見たとしても不思議はないだろう。この方式が漫画だけでなく、一般の書籍にまで拡大され、専用端末もいくつかの大きさの版型を取り揃えることができたら、再販制の維持はともかく、取次ぎも書店も電子書籍の流通にかかわることができて万々歳だと思うのだけど。

 現在の日本の出版業界には、電子書籍リーダーを開発販売してきた家電メーカーの影響もあって、電子書籍というとネット上で販売し、端末もネットに接続できなければならないというような思い込みがあるように見受けられる。その結果、出版社はコンテンツ、言い換えれば単なるソフトの提供者に成り下がっている。紙の本は、ハードであると同時にソフトでもあるという点が強みだったはずだ。その強みを生かせていないのが今の出版社なのである。だから電子書籍に限らずネット上で販売力を誇るアマゾンなんかにいいようにされてしまうのだ。
 この全巻一冊が日本の出版社の目を覚まさせる一撃になってくれると、日本語出版の将来を憂える海外在住の日本人としては嬉しい。

 またまた結構変わってしまったけど、消えてしまった二回目の概要である。
2019年1月1日1時10分。












posted by olomoučan at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ
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