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2018年09月16日

サマータイムの終焉(九月十三日)



 思わず「フラー」と声をあげそうになったのは、来年からサマータイムが廃止されるというニュースを聞いたときのことである。ここ数年、廃止を求める人の声も高まっており、EUでも廃止を検討しているという話だったから、期待していたのだけど、ついに決定されたようである。各国でサマータイムを使いかどうかを決めるのではなくて、EUで決めるというのには多少違和感も感じたが、一部の国だけ使うとか使わないとか、開始時期がずれるとかなると不便極まりないから仕方がないのだろう。
 かつてのEUの良心がまだ残っていないわけではないのを感じさせたのが、夏時間と冬時間どちらを標準時として採用するかは各国の判断に任せるということで、EU圏内が完全に一つの標準時を使っているわけではないことを考えると、ここで統一してもしかたがないと言うことなのかな。だから、サマータイムの廃止と書いたけれども、正確には標準時である冬時間と一時間時計の針を進める夏時間の交替がなくなるというのが正確で、国によってはサマータイム採用時の時間を標準時とすることになるようである。
 チェコはどうなのだろう。ニュースでは冬時間(現在の標準時)と夏時間を通年使ったときの冬至や夏至の日の日の出の時間なんかを紹介していたが、夏時間を冬も採用すると、日の出の時間が9時ごろになるようで、うちのはこれは堪えられないと言っていた。これがチェコ人の一般的な感情かどうかはともかく、チェコでは現在の標準時、つまり冬時間を通年使うことになるのではないかと期待している。同じ標準時を採用している国の中ではチェコは東のほうにあるわけだし。いや、逆か。東にある国の方がサマータイムの恩恵を受けるのか。

 ニュースではサマータイムの歴史についても紹介していて、もともとは第二次世界大戦中、それから終戦直後に光熱費を削減するための対策の一つとして試験的に導入されたものだという。その後紆余曲折を経て現在の形で定着したのが1979年のことだと言っていたかな。サマータイムというとヨーロッパではずっと昔から使われていたものだと思っていただけに、最初に聞いたときには意外に短い歴史に驚いてしまった。
 また、光熱費の削減というサマータイムによる経済効果は現在ではまったくないに等しく、経済的な面からはサマータイムを維持する理由は全くないらしい。むしろ年に二回、強制的に時間が変えられることによる健康被害の大きさが問題になっているようだ。時間が切り替わった直後は、特にサマータイムが始まった直後は、病院に行くほどではないとはいえ体調がよくないことが多いから、個人的にもこの見解には納得できる。自分の意思で一時間早く起きるのと、時計上の時間の変更で望む望まないにかかわらず強制的に一時間早く起きざるを得ないのとでは、体の対応力に大きな差が出るのである。
 今年はまた十月に冬時間への移行が待っているけれども、これは今までどおりの生活をしていれば自然に早寝早起きになる時間の変更で、時間をかけて体を慣らしていけるからそれほど大きな問題はない。願わくは、来年の春にチェコが時間の変更をせず、冬時間をそのまま使い続けんことを。サマータイムが終わると決まってなお、一時間早起きを強制される方向での時間の推移には堪えられそうにない。

 そういえば、日本では東京オリンピックに向けてサマータイムを導入しようという動きがあるようだが、正直正気を疑う。何十年も続けてきてなれているはずのチェコ人でさえ、時間の変更によって体調を壊す人が出るのである。日本でやったら、しかも一時間ではなく二時間時計を進めようという話もあるというから、チェコ以上に体調を壊す人が続出するに違いない。そんな状態でオリンピックの準備、開催なんてできるのかね。できはするかもしれないけれども終わった後の反動がえらいことになりそうである。
 仮に夏の日の光を活用するためにサマータイムを導入したいというのなら、時計の針を動かすのではなく、始業時間と終業時間を一時間早めてやればいいのだ。最初はどうしても普段どおりの時間まで仕事をしてしまって残業が増えるなどの弊害はあるだろうけれども、何年かたって慣れていけば状況は改善されるはずである。少なくとも何年たっても慣れようのない時計の針を動かすサマータイムよりははるかにましなはずである。

 サマータイムの廃止、より正確には夏時間と冬時間の二つの時間の使用をやめるというのは、近年まれに見る高く評価すべきEUの決定である。二度と再開されないことを願ってやまない。
2019年9月15日23時55分。




 



posted by olomoučan at 06:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



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