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2016年07月22日

ビネトゥー(七月十九日)



 チェコ人たちが愛してやまないドイツ映画、いや正確には西ドイツの映画がある。ドイツ映画だけれども舞台はアメリカ西部で、主人公はアメリカインディアンのアパッチ族、演じるのはフランス人の俳優、撮影地はバルカン半島の旧ユーゴスラビア。もう一人の主人公はアメリカ人をアメリカ人の俳優が演じ、イタリア人の俳優も出演するという何とも国際的な映画である。
 映画の名前は、というよりシリーズの名前は「ビネトゥー」。アメリカの西部開拓時代のインディアンと白人の争いを背景に、アパッチ族の若き酋長ビネトゥーと、白人ながら白人の不正を許さない高貴な心を持つ男オールド・シャッターハンドの立場を超えた友情を描いた映画である。

 最初に制作されたのは、1962年の「白銀の湖の財宝(仮訳)」だが、ストーリー的には、1963年に製作された「ビネトゥー」が先になるらしい。この「ビネトゥー」と、翌年の「ビネトゥー――紅の紳士(仮訳)」と翌々年の「ビネトゥー――最後の銃撃(仮訳)」は、ドイツ語の原題では「ビネトゥー」に1から3の数字が付いていて三部作のようだが、作中の時間の流れから言うと「白銀の湖」が「ビネトゥー」の1と2の間に入るようで、その順番で放送されることが多い。。
 「ビネトゥー」の本編を為すのは、以上の四作だが、周囲に同じ時代を舞台にして同じような上京を描いた作品が何作もあって、全部で十作ぐらいになるのだろうか。同一人物が出てくるのか、同じ俳優が出てくるだけなのか、よくわからない。オールド・シャッターハンドではなくて、オールド・ファイアーハンドという人物が主人公の作品や、オールド・シャッターハンド(もしくは俳優)が別名でマヤやアステカの末裔と絡む作品もあったなあ。とまれ、毎年夏休みなどに本編四作だけでなく類似の作品群も再放送が行なわれている。今年も例外ではない。

 チェコに住んでいるのに、わざわざ外国映画を吹き替えで見ても仕方がないという思いもあって、見ないようにしていたのだが、何度も何度も放送されるので、ちらちら見てしまうことは多い。しっかり集中してみているわけではないので、ストーリーは把握できていないし、主人公二人を除くと誰が誰かもわからないのだけど、見覚えのあるシーンだけは増えていく。
 白人だから悪人だというわけではなく、インディアンだから善人で白人の被害者だというわけでもないけれども、全体としては悪辣な白人たちを、ビネトゥーとオールド・シャッターハンドが協力して懲らしめインディアンを救うというのがストーリーの基調になっている。白人=アメリカ人ということで、共産党政権も喜んで受け入れたのだろうか。そして、一般の人々には、白人=ソ連という図式で受け取られたから人気が衰えないのかもしれない。

 チェコでは毎年必ず再放送されるような人気を誇っているのだが、本国ドイツではどうなのだろうか。サマースクールでドイツ人と話したときには、この作品のことなんか知らなかったからなあ。ただ、「ビネトゥー」シリーズのパロディーである「マニトゥーの靴」という作品をドイツのコメディアンのグループが制作していることを考えると、少なくともある程度の人気はあるのだろう。パロディーなんて本家を知っている人が見て初めて意味をなすのだから。とは言え、本編はまともに見たことがないのにパロディーは最初から最後まで通して見た私のような人間もいるだろうけど、それでは、半分ぐらいしか面白さが理解できない。いや、もっと少ないかも。パロディーだけでも、それなりには面白かったけど。

 ところで、この映画はカレル・マイ(チェコ語で聞くと「マーイ」にも聞こえる)というドイツの作家の作品をもとにして制作されている。これに関して恥ずかしい勘違いをしていた。「ビネトゥー」はチェコ人の作家の作品を原作としてドイツで制作されたと思っていたのだ。
 チェコの詩人にカレル・ヒネク・マーハという人物がいる。このマーハの代表作が「マーイ」である。名前が同じカレルで、姓と作品名が「マーイ」ということで、混同してしまって、カレル・ヒネク・マーイというのが「ビネトゥー」の作家の名前だと思っていたのだ。チェコ語に「ビネトゥー」などのマーイ原作の映画をまとめて「マーヨフキ」と呼ぶのも混乱に拍車をかけたかな。

7月20日23時。


 イタリアも制作に名を連ねているこの映画、マカロニウェスタンってことになるのだろうか。7月21日追記。




 購入はできないみたいだけど、紙の本発見。表紙の写真は映画とは関係なさそう。

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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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