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2016年04月12日
チェコ−オーストリア(四月九日)
昼食後にテレビを見ていたら、オーストリア代表とチェコ代表のハンドボールの試合が始まった。世界選手権出場をかけたマケドニアとのプレイオフに向けた調整のための親善試合で、木曜日にはオーストリアで試合をし、今日は南ボヘミアのトシェボーニュで試合が行われた。木曜日の試合では戦前の予想に反して、チェコが一点差で勝ったらしい。
チェコもオーストリアも、ヨーロッパの中では典型的な中堅国である。ヨーロッパ選手権や世界選手権には出場できたりできなかったりで、出場できても四チームからなる一次リーグで敗退か、運がよければ二次リーグまでいけるかという感じのチームである。だから、今日の試合も大接戦になるだろうと思っていたら、その通りだった。
チェコ代表のGKには長きにわたって、シュトフルとガリアというドイツリーグで活躍する大ベテラン二人組が君臨してきた。一つの試合で二人とも調子が悪いということは滅多になく、チェコ代表がしばしばドイツ、フランスなどの強豪チームに善戦したり勝ってしまったりするのは、この二人のどちらかが大当たりをしたときに限るのである。
それが、この試合では、久しぶりに若手の登用ということでムルクバが出場していた。シュトフルが病気だというのもあったらしいが、やはり親善試合で若手に出場経験を与えておく必要があると監督達が考えたものだろう。ムルクバは前半はオーストリアのGKの活躍の陰に隠れてそれほど目立たなかったが、後半に入ると調子を上げて、チェコが最終的に三点差で勝利した立役者になった。後半オーストリアに9点しか取らせなかったのは、ディフェンスがよかったからではなく、完全にキーパーの功績だった。
両サイドは、現在監督のヤン・フィリップ、代表マネージャーのカレル・ノツァルがいたころが懐かしいなあ。ユルカもフルストカも悪い選手じゃないのだけれど、いまひとつ安定感に欠ける。結局サイドで今日一番の活躍をしたのはベテランのソボルだったし。
ポストはオロモウツ出身でフランスリーグで活躍したユジーチェクの引退後は、いろいろな選手をとっかえひっかえしてきたが、ようやく代役と呼べそうな選手が出てきた。プルゼニュからポーランドのチームに移籍したレオシュ・ペトロフスキーは、最初にチェコリーグの試合で見たときには、太りすぎと言うとよくないので、上半身の重さを下半身が支えきれていないような不安定感があった。いくらスピードよりも体重を生かした動かないプレーが必要なポストプレーヤーでも、代表に呼ばれた試合を見る限り、もう少し体重を落とすか、下半身を強化したほうがいいだろうと思われた。それが、今日のプレーを見る限り、重量感はそのままに、動きにメリハリがついてきた感じで、これが強いチーム相手にもできれば、しばらくポストはこいつ中心でいけそうだ。試合開始当初はボールが手についておらずミスを繰り返したのに、後半に出てきたときにはきっちり修正していたのも評価できる。
センターに関しては、現在大砲が二枚欠けている。イーハとホラークがいないと、チェコの攻撃力はがた落ちする。ベテランとしてチームを支えてほしいのはステフリークなんだけど、この人のプレーはいまいち迫力に欠ける。この試合ももう代えちゃえよと思いながら見ていたのだが、左利きのセンターの選手がステフリークしかい斐ない現状では、プレイオフやその先のことを考えるとステフリークに復調してもらうしかないんだよなあ。フランスリーグでも、怪我などの影響であまり活躍できていないと言うし。
意外とと言うと申し訳ないのだが、よかったのが国内のプルゼニュでプレーするシュクバジルだった。イーハやホラークなどの巨体ではないけど、遠目からのロングシュートは迫力十分で、ペトロフスキーのポストプレーが有効になったのも、この人の活躍があったからだ。木曜日の試合で大量に点を取ったのできついマークにあって、そんなに点は取れなかったけど。あとは、密接にマークされたときの突破力がどうかというところかな。本来は、若くしてバルセロナに買われていったカサルが、イーハ不在時のセンター陣を引っ張らなければいけないのだろうけど、十代での代表デビューから数年、思いっきり伸び悩んでいるからなあ。
対戦相手のオーストリアの選手については、ヨーロッパのハンドボールを追いかけているわけではないので知らない選手ばかりだった。ただ、チェコ人じゃないのと思ってしまうような名前がいくつか出てきて、両国の複雑な歴史を思い起こさせた。バニーチェクは、表記がドイツ語化していて、耳で聞くのと目で見るのが一致しなかったが、イェリネクという名字は、見ても聞いても完全にイェリーネクだった。チェコでイェリーネクといえば、スリボビツェなどの蒸留酒を作っている会社である。バウエルとベーブルは、チェコでもよく見かける名字だけど、こちらは、ドイツ語からチェコに入った名字だと考えたほうがよさそうだ。
試合のほうは、チェコが三点差で勝ったとしか言えないが、一番よかったのは、両チームともGKだったかな。サイドからのシュートがGKの軸足に当たるとか、速攻からのシュートが連続で止められるというのは、攻めていた側からするとげんなりするのだけど、この試合はそんなシーンをGKたちが連続で演出していた。
ただ、この親善試合の本来の目的、マケドニアとの試合に向けての準備と言う点ではどうだったのだろう。オーストリアのハンドボールは、北ヨーロッパの強豪チームのような正統できれいなハンドボールだった。正確には、その手のチームには必ずいるイーハ的なスーパーエースは欠けていたけど。そうしたら、監督はアイスランドの人だった。
しかし、対戦相手のマケドニアは、典型的なバルカンハンドボールのチームである。見ていていらいらするような、ルールぎりぎりの汚いプレーを仕掛けてくるからなあ。スウェーデン辺りに負けると、大敗でも惜敗でも、相手が強かったというすっきりした気持ちで負けを受け入れられることが多いんだけど、マケドニアとかセルビアとか、勝っても後味の悪い試合になることが多いし、負けると何でこんな相手に負けたんだというイラつきしか残らない。
現有戦力でもオーストリアレベルの相手には互角以上に戦えることがわかったから、イーハとホラークが復帰して、マケドニアを粉砕してくれることを期待しよう。でも、プレーオフっていつなんだろ?
4月10日23時。
この試合でもう一つ印象的だったのは、何度もタオルでボールを拭いていたことだ。松脂をべたべたに付けすぎてプレーしにくくなっていたらしい。4月11日追記。
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