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2016年03月30日
習近平、来チェコ(三月廿七日)
サッカーのスラビア・プラハが中国資本の手に落ち、ユニフォームに簡体字が記されるようになったという話は既に書いた。ところが、先週の木曜日の代表の試合にもグラウンドの周囲に並べられているスポンサーの看板の中に、スラビアを買収した中国企業の看板も並んでいた。サッカー協会のスポンサーになったのだろうか。今年の夏で一部リーグのスポンサーから離れる賭け企業のシノットの代わりに、スポンサーになってリーグの名前が中国企業になったらいやだなあ。
スパルタのホームのレトナーのスタジアムが、トヨタ・アレーナになったのも大いに違和感があったし、チェコのサッカー代表のスポンサーを韓国企業のヒュンダイが務めているのも、正直気に食わない。でも、かつて「ガンブリヌスリーガ」だったのものが、「CEFCリーガ」に成り下がるのに比べれば、何倍もましというものである。
チェコのサッカー界は、お金のために金満中国に媚を売っているように見えるが、それはサッカー界に限った話ではない。現在プラハのハベル空港からプラハ城に向かう道路に建つ街灯などの柱の上部に、チェコの国旗と中国の国旗が並べて飾りつけられている。月曜日に中国からやってくる習近平国家主席を歓迎するために、スラビアを中国に売り渡したトブルディークを中心として組織されたチェコと中国の協力関係を強化しようという団体が設置したものらしい。
もちろん、共産主義に痛めつけられたチェコには、共産中国と接近しようとする動きに対して反対の意を表する人たちはいる。そんな人たちが、金曜日に卵に灰色のインク(ペンキかも)を詰めたものを、中国国旗に投げつけ汚すという行動に出た。
それに対して、プラハ六区の区長が、プラハの通りに中国の国旗をいくつも並べることを、プラハ市がゼマン大統領に媚びているのだと批判し、国旗に色をつけた犯人の行為に理解を示した。その結果というわけでもあるまいが、土曜日にはさらに多くの中国国旗に色入りの卵が投げつけられた。
これに噛み付いたのが、大統領のスポークスマンであるオフチャーチェク氏である。チェコの中国接近は、政府も力を入れていないわけではないが、明らかにゼマン大統領の主導で行われており、今回の中国国家主席の来チェコを批判することは、大統領批判につながるのだ。オフチャーチェク氏は、いつものよくわからない論理で、プラハ六区の市長が所属するTOP09という名称もあれな政党がこの犯罪行為の責任を負うべきだと主張している。この手の目くそ鼻くそ的な批判の応酬はいつものことで、まともに受け取る気もしなくなっている。
その一方で、ハベル大統領の支持者達は、習近平プラハ滞在中に、ハベル大統領とダライラマが一緒に写っている大きな写真を掲げると言っているらしい。中国側が民間人のやるそんな嫌がらせを気にするとも思えないけれども、何でもかんでもダライラマを出しておけばいいというのも短絡的だよなあ。
中国の国家主席の訪問を歓迎できないというのは理解できないわけではない。共産党に対する忌避感はともかくとして、今回のチェコと中国の接近に関しては、すでになかなか挑発的なことをやらかしてくれている。今回の訪問を前に、北京市とプラハ市が姉妹都市の協定を結んだらしいのだが、その調印が、かつてチェコスロバキア共産党が「勝利の二月」と名づけた1948年2月に、共産党以外の政党に所属する大臣が全員辞表を提出し、共産党が実質的に政権を握った日、二月廿五日に行われたという。この日の選定が、どちら側の主導で行われたにしろ、歴史に対する配慮がかけていると批判されても仕方がないだろう。
また、協定の中に、中国側が「中国は一つである」ことを認めるという条文をねじ込んできたらしい。姉妹都市というものは、基本的に文化的な交流関係を促進するもので、そこに政治を、しかもこんなデリケートな問題を持ち込むのはどうなのだろうか。それが現在の中国だと言えば、その通りなのだが、それを黙って受け入れて署名してしまうプラハもプラハである。
当然、この事実は台湾を怒らせることになった。一つの中国という考え方を北京との協定で認めるということは、台湾が中華人民共和国の一部であることを認めることである。プラハは台湾の台北とも姉妹都市になっているというのに、何を考えているのだろうか。これでは台北との関係を捨てて北京についたと思われても仕方がない。実際に北京の金に擦り寄ったのだろうけど、それは明かさないのが政治というもののはずだ。それに、これで、これまで機会あるごとにチェコの各地の役所に掲揚されてきたチベット国旗も、少なくともプラハの役所での掲揚はできなくなるのだろう。どうでもいいことだと思っていたが、中国にとっては、腐っても役所がやることなので、結構重要なことだったのかもしれない。
振り返れば、トヨタをはじめとした日本からの大量の投資のあとは、ヒュンダイを中心に韓国からの投資を誘致し、今後は中国からの投資を仰ごうというのだから、チェコも政治的にはともかく、経済的にはうまくやっていると言えるのかもしれない。
飛行機の便も、日本への直行便はこれまでに何度も就航するという噂が出たものの、すべて単なる噂に終わったのに対して、中国へは北京、上海、成都と三都市にプラハからの直行便が就航したらしい。チェコ航空とハベル空港が韓国資本に買収されたこととあわせて考えると、日本への直行便はもう諦めるしかなさそうだ。オロモウツからはウィーンの空港が使えるから、どうでもいいっちゃどうでもいいんだけど。
3月28日11時30分。