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2016年03月24日

金銭授受(三月廿一日)



 昨年の秋ぐらいに勃発した日本のプロ野球のスキャンダルがなかなか収束しそうにない。野球人が野球賭博に手を出したのは、その筋の人が絡んでいなくても、やはりまずいだろう。最近いろいろなチームで表ざたになりつつある「金銭授受」と、何だかよくわからない言葉で書かれた行為に関しては、どうなんだろう。そこまで責められるようなことではないような気もするし、やっぱりよくないというような気もする。
 日本でのことについてチェコから書いても仕方がないので、チェコのプロスポーツの、とは言ってもほとんどサッカーだけけれども、この手のお金のやり取りについて、いくつか知っていることを書いてみる。

 チェコのサッカーの中継を見ていると、キャリア初のゴールを決めた選手に対して、「このゴールは高くつきそうだ」とか言うことがある。特別な活躍をしたから監督やオーナーから賞金が出るという意味の高くつくではない。ゴールを決めた選手がお金を払うらしいのだ。チェコのサッカーチームには、選手の中に金庫番と呼ばれる選手がいて、選手達からお金を集めてチーム全体のために使っているのだそうだ。具体的にどんな理由でお金を取るのかや、何のためにお金を使うのかはわからないが、何かで罰金を取ったり、チームで宴会をするときなどに使ったりするのだろうか。
 その選手たちの金庫に徴収されるお金の一つが、ゴールを決めた選手が、支払うお金だと言う。特にキャリア初のゴールだったりすると、大目にお金を出すことになるらしい。まあアマチュアゴルファーが、ホールインワンを決めたときに、ご祝儀を配るようなものなのかもしれない。額は金庫番が設定するようだから、選手の年収も考えて若い選手から大金を取ったりはしないと思いたいところである。
 金庫番の選手が移籍するときには、次の金庫番にお金を引き継ぐのが普通だが、金庫番が金庫を持って行ってしまうということがあるらしい。数年前にスパルタの最終ラインに君臨していたイギリス帰りのジェプカが、追い出されるように移籍したときに金庫を持って行ってしまってスパルタの選手たちが困っているという記事が、スポーツ新聞をにぎわせた。急な移籍で引き継ぐ時間がなかったということかもしれないが、ジェプカならやりかねんよなあというのが正直な感想である。

 次は労働規約上どうなんだろうと不思議なのだが、チームの成績が低迷したときに、オーナーが選手に罰金を科すことがある。こんなことがまかり通るのは、もちろんオーナーの権限の強い一部のチームだけで滅多にないことだけど、これまでに何度がそんなニュースを読んだ。飲酒運転で捕まったリンベルスキーにも罰金が科されていたけれどもこれはまた別のお話だろう。
 そして、成績が低迷しているときに、選手たちが自らの発案でお金を出し合ってファンを招待する、つまり入場料を無料にすることもある。負けが続くと観客がてきめんに減るのが、チェコのサッカーなので、少しでも多くのファンに試合を見に来てほしいという意味もあるだろう。オロモウツでも以前何度か行われていて、友人から今日はタダだからサッカー見に行こうなんて誘われたこともある。それが、勝利という結果をもたらしたかどうかについては記憶がない。今年もうちのチームは超低空飛行状態なので、無料試合をやるかもしれない。見には行かないだろうけど。

 チェコテレビのサッカーの中継で、チェコだけの風習だからとっととやめてしまえと言われているのが、レンタル移籍した選手は、レンタル元のチームとの試合には出場できないというローカルルールである。不思議なのは、一律に不可というのではなく、出場する選手もいることだ。両チームの契約によると言うことなのだろうが、何を基準に決めているのだろうか。
 この前スラビアの関係者が話していたによれば、出場できるかどうかはレンタルした選手の給料を誰が出しているかによると言う。すなわち元チームとの契約に基づいた額の給料を、レンタル先が全額負担している場合には、出場できる契約になるが、レンタル先のチームにお金がなく給料の一部をレンタル元のチームが負担しているばあには、出場できない契約になると言うのである。言われてみれば、一部とはいえ給料を出してくれているチームとの試合に出場するのは、同義に反するかもしれないし、八百長の温床になりかねないとも言えそうだ。

 改めてスポーツ選手と賭け事について考えてみると、チェコはギャンブルのお金がスポーツに流れるという回路が出来上がっているので、スポーツ選手が賭け事をすること自体をとやかく言う空気はあまりなさそうである。もちろん自分のスポーツ、特に自チームを賭けの対象にするのはご法度だろうけど、チェコのスポーツ選手が依存するギャンブルというと、カジノなんかのスロットマシーンというイメージになってしまう。シマークやフェニンなどのギャンブルで身を持ち崩して失われた才能を思うと、プロの選手には契約で禁止したほうがいいのかもしれないと思う。日本でも休日にパチンコにいそしむプロ選手ってのはイメージがよくなさそうだし。

 2005年ぐらいにチェコで発覚した審判買収事件の首謀者、ビクトリア・ジシコフのGMだったホルニークは、裁判で十年間サッカーと関わることを禁止するという判決を受けていた。後に禁止期間は短縮され、五年後にサッカー界に復帰し、去年から現チェコサッカー協会会長のペルタがオーナーを務めるヤブロネツのフロントで仕事を始めてしまった。うーん、サッカー協会、大丈夫なのか、こんな会長で。
3月22日16時30分。



 これ、ちょっと欲しいかも。3月23日追記。

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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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