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2016年02月08日
ふざけんな、チェコ政府(二月五日)
以前、出張か何かでチェコに短期間来た人の前で、チェコ在住の知人と二人で延々チェコの悪口を並べ立ててあきれさせてしまったことがある。
「チェコを愛しているから住んでるんじゃないの? それをそんな罵詈雑言言うなんて」
と言われて、われわれがほぼ異口同音に返したのが、
「チェコを愛しているからこそ、悪いところが見えるんですよ」
「チェコを愛しているからこそ、改善してほしいと思って悪口を言うんですよ」
というものだった。
オロモウツでの生活には十分満足していて、特に不満もないのだが、だからこそ、チェコ政府のシェンゲン圏外の外国人を狙い撃ちにしたとしか思えない政策が、目に付き、耳に障り、気に食わず、ふざけるなと叫びたくなるのかもしれない。ことの大本はEUで、罵倒すべきはEUなのかもしれないが、EUへの悪口は別の機会に並べ立てる予定なので、ここはチェコ政府への不満をぶちまけることにある。
以前は、就労ビザでも、学生ビザでも、最長で一年のものがもらえていた。留学生はたいてい一年の予定で来るし、日系企業に赴任してくる人が半年で帰るというのもあまりないので、大抵は一年のビザを持ってチェコに来て、二年目も残るのであれば、一年目の終わりにビザの延長、もしくは長期滞在許可の申請をするという形になっていた。それが、シェンゲン領域内に入り、シェンゲン圏が拡大したことで、外国人扱いされる外国人が減ったせいか、最初に発給されるビザの期間が半年に短縮されてしまった。
チェコ政府の言い分では、当時ウクライナやベトナムから出稼ぎに来る人が多く、さまざまな問題を起こしているから、最初の半年は、試用期間のようなもので、半年問題を起こさなかったら本格的にチェコでの労働を認めるという形にしたいのだと言っていたが、そんなのは大嘘である。それなら、問題が起こりやすい職種だけ、労働許可を半年で出すようにしておけば、ビザも半年しか出なくなるのだからそれで十分だろう。それを留学生も含めたすべてのシェンゲン圏外からの外国人長期滞留者に適用するのは、何か別な理由があるはずである。労働許可やビザの延長の申請にかかる手数料収入を確保するためかと疑ってしまう。
ビザの期間短縮とどちらが先か記憶が定かではないのだが、ビザを受け取るために、保険が義務付けられた。以前は、日本から来る場合には日本の留学保険にでも加入していれば問題なかったのだが、ビザを申請した期間を通じて、チェコ国内で活動している保険会社の健康保険に加入することが、ビザ受け取りの条件とされたのである。
これについても政府は、病院で治療を受けながら治療費を払わずに帰国する外国人、特にウクライナ人やベトナム人の数が多く、医療機関の負担になっているので、確実に医療費が支払われるように、チェコの健康保険への加入を義務付けるというのだが、どうなのだろうか。保険に入っていれば、診察料がかからないことに慣れているチェコ人と違って、外国人は多少のことで病院に行ったりしない。だから、保険料がそのまま健康保険の収入になることが多くなることを考えると、医療機関よりも経営の厳しい健康保険に対する財政支援の面もあるような気がする。初年度には、年間5.000コルナ程度の保険料の保険でよかったのが、制度が変わって一時期は20.000コルナ弱の保険が求められていたのである。現在は、学生割引や年齢の割引で10.000コルナ弱の保険に入ってくることが多いようである。それでも、チェコの物価を考えるとなかなか高額の健康保険と言うことになる。
日本人が、仕事や留学で問題を起こすことは滅多になく、医療費を支払わずに帰国するなんてこともないのだけれども、日本人だけを新しい制度の対象外にするのは、人種差別になるのでできないなどという話も聞こえてきたが、言い訳なんぞする暇があったら、ビザの期間だけでも一年に戻して欲しいものである。
以上の二点は、それでも、私自身には直接かかわらないので、いいと言えばいいのだが、三点目は、それこそいい加減にしてくれと常々思っていることである。数年前から、日本から送られてくる荷物のほとんどが、税関でとめられ、配達時に税金の支払いを求められるようになった。税金の支払い自体はチェコ郵便が代行する形になるので、委任状を出したり、内容物が何なのかの一覧を書いたりすれば、自分で通関の手続きをする必要はないのだが、知人が送ってくれた著書や、友人が送ってくれたお菓子、ひいては自分が日本から送った私物にまで税金を払えといわれるのは何か間違っている気がする。贈り物などの場合には、所定の手続きを取れば税金を払わずに済ませられることもあるらしいのだが、手続きに何ヶ月もかかることがあるため、税金を払ったほうがましという結論になってしまう。
本来は、インターネットを通じて、特にアメリカのネットショップで商品を購入して郵送させる人が増え、国内の小売業に影響を与えていることと、国内で購入した場合に国庫に収まったはずの消費税が徴収できないことに対する対策として、EU圏外から送られてくる商品を税関でとめて、消費税相当額を徴収するという制度だったのである。だから、課税対象となる最低金額も設定され、贈り物や、旅行先から送る私物などは対象外になるという話だったような気がするのだが、いつの間にか、ほとんどの荷物が税関で止められ、税金の支払いを求められるようになってしまった。
最悪なのは、たまに税関でとめられない荷物があるのだが、その規準がさっぱりわからないことである。内容物を贈り物と書いても、価値を安い値段にしておいても、引っかかるときには引っかかって、どういう規準で算出したのかもわからない、へたすりゃ送料と変わらないぐらいの税金を取られてしまうのである。税金を確実に避ける方法としては、2キロ以下にして手紙扱いで送るというものが存在するのだが、それはそれで面倒である。
結局、政府としては、外国人からお金を取る制度は、選挙に悪影響もないので、気楽に導入できると言う面があるのだろう。今の財務大臣のバビシュと前の大臣のカロウセクは、ことあるごとに対立して批判しあっているが、ある意味同属嫌悪で、目くそはなくその域を出ないのだが、この税金の制度を導入した犯人がカロウセクであるという一点において、バビシュの方がましだと評価できるのである。
自分の意思で外国で生活している以上、その国の法律を遵守して、住ませてもらっているという謙虚な姿勢でいたいとは思うのだが、時に文句を言わないとやっていられないこともあるのである。だからと言って、外国人を平等に扱えと叫んだり、権利拡大を求めて抗議行動をしたりなんて、みっともないことをするつもりはないのだけれど。
2月6日23時30分。
適当なものがないので、チェコからはなれて半村良をさがしてみたら、こんなのが出てきた。出版社名も何も書いていないので、どんな本なのかわからないけど、日本にいたら買っていただろうなあ。2月7日追記。