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2021年04月18日

外務大臣任命?(四月十五日)



 ザオラーレク氏が、突きつけた条件は、ハマーチェク内務大臣兼暫定外務大臣にも、ゼマン大統領にも飲めるものではなかったようで、ザオラーレク氏の任命を諦めて、別な候補者を選定して代務大臣の地位にすえることにしたようだ。首相で内閣全体に責任があるはずのバビシュ氏は、外務大臣は社会民主党の担当だから、その決定を尊重するとほとんど他人事のような対応である。連立といいながらそれぞれの党が、好き勝手に振舞っているのが、バビシュ政権の最大の問題である。

 さて、新たに外務大臣に任命されたのは、クルハーネク氏。ニュースで使われた写真が、PCゲームに登場するキャラクターを思わせるもので、見た目で仕事をするわけではないとは言っても、期待よりは不安のほうが大きくなる。これまでは、内務省で次官(に相当すると思われる役職)を務めていたというから、ハマーチェク氏は部下を抜擢して大臣に就任させたわけだ。
 内務省の次官だから、ずっと内務省でキャリアを積んできたのかというとそんなことはなく、チェコでは政権交代や、大臣のクビの据え代えが起こると、新しい大臣が外から連れて来た人材を次官に据えることが多い。同じ省内でずっと仕事をして次官になる人もいるのだろうけど、そんな人でも政党に所属していることが多い。官僚なんだから特定の政党を支持することを表明するのもまずいのではないかと思うのだが、時に野党所属の時間まで登場するような気がする。

 このクルハーネク氏も、内務省で仕事を続けて次官にまで昇ってきたのではなく、ハマーチェク氏が内務大臣に就任してから、就任させた人物だということになる。その前は何をしていたかと言うと、いろいろある中で特筆すべき経歴は、最初に中国からチェコへの投資を担当していたが、社長が政治的な理由で粛清され、チェコから消えた中国の投資会社のチェコ支社で仕事をしていたことである。だから、中華帝国の忠臣であるゼマン大統領も、文句を言わずに任命に同意したのか。
 バビシュ首相も、以前のペトシーチェク氏より仕事がしやすいなどと述べていたけれども、その評価が外務大臣としての能力の高さを意味するわけではない。そもそも、内務省で仕事をしていて、突然、党内政治上の都合で外務大臣に就任させられた人物に多くを期待するのが間違いなのだ。ゼマン大統領は、ロシア、中国に対する外務省の対応が変わることを期待しているだろうけれども、EUの枠内でという制約がある以上、簡単ではあるまい。

 それで、新任の大臣を支援するためなのか、自分の業績にするためなのかはわからないが、ハマーチェク内務大臣が、モスクワを訪問して、ロシアのワクチンの購入の交渉をまとめてくると言い出した。ハマーチェク氏は、一度は外務大臣を兼任するとは言ったものの、任命はされていないはずだし、非常事態宣言が終了した結果、対策本部長の権限もないはずである。そんな内務大臣が外国に出かけてワクチンの購入交渉をするというのは、どういうことなのだろうか。それとも、クルハーネク氏はまだ大臣に任命されていないのか。
 ゼマン大統領が何も言わないのはわかる。かねてから主張し続けているロシアのワクチンの導入に向けてハマーチェク氏が動くのだから、歓迎はしても批判はするまい。不思議なのは、バビシュ首相が控えめに反対していることで、ロシアのワクチンが成功するなら自分の功績にしたがると思うのだが、失敗に終わると見ているのだろうか。

 ロシアのワクチンに関して、チェコの人たちがどのように考えているのかについては、さまざまな情報が錯綜していてどれが正しいのかわからない。バビシュ首相が商工会からはロシアのワクチンを従業員に接種したいという声が上がっていると言ったかと思うと、商工会の会長が即座に否定したし、ニュースで紹介された世論調査では、数パーセントの人しかロシアのワクチンを信用しないと答えていたのに、ロシアのワクチンの接種を受けるためにセルビアに向かうチェコ人が多いなんてニュースも見かけた。
 就任したばかりのアレンベルグル厚生大臣が、ロシアのワクチンを求める人もいると語ったのは事実ではあるのだろうけど、その数がどのぐらいなのかが問題である。本人が求めたからといって、EUでもチェコ国内の機関でも安全性が完全に確認できていないものを接種してもいいのかというのは、また別問題のはずなのだけど。一体に、この新大臣、言動がいい加減で、大丈夫かといいたくなることが多い。「わたしは政治家じゃないから、そんなこと理解できない」なんて台詞は、大臣が言っちゃあいけねえよなあ。
2021年4月16日24時30分。











2021年04月16日

混乱は終わらない(四月十三日)



 事前の根回しなしに、いきなり外務大臣への就任を求められた社会民主党のザオラーレク文化大臣だが、よほど腹に据えかねたのか、就任のための条件を突きつけた。一つはゼマン大統領の下でロシア関係を担当している特任外交担当官の解任で、もう一つは、文化大臣の後任として、ハマーチェク氏がビルケ氏ではなく、文化行政に携わった経験のある別の候補者を選定して就任させることである。
 この二つは、前者はゼマン大統領が拒否するだろうし、後者はハマーチェク氏の旧態依然の党内運営を考えると実現は難しそうだから、おそらく二つが同時に叶えられることはないだろう。そうなるとザオラーレク氏が文化大臣に留任するのか、新たな造反者として解任して、事前の約束どおりビルケ氏に大臣のポストを与えるのかが注目される。

 ここで、ザオラーレク氏を排除したら、ハマーチェク氏は完全に裸の王様になってしまって、社会民主党の消滅が現実化しかねないと危惧する。だから、おそらくは、対立候補として出馬したペトシーチェク氏の場合とは違って、ハマーチェク氏が何らかの形で譲歩して、ザオラーレク氏を外務大臣に据えるか、文化大臣に留任させるかするだろう。ただ、かつてのソボトカ首相もそうだったけど、社会民主党の党首というのは、追い詰められるとわけのわからないことをしがちである。

 最近の世論調査の結果を見ていると、社会民主党の支持率の低下が著しい。前回の2017年の下院の総選挙の際には、約7パーセントの得票率に終わり50もあった議席を15にまで減らしたのだが、その後もバビシュ氏のANOと連立を組んだことで支持を減らして、世論調査では議席獲得の境目である5パーセントを越えるのは希になっていた。
 それで、秋の総選挙では緑の党と組むなんてことを言い出したのだが、保守的というか、考えの古い人が多いと思われる社会民主党の支持者の中には、これを嫌って支持をやめた人もかなりいるはずだ。最新の、党大会の前に行われたと思われる世論調査の結果をチェコテレビが紹介していたが、3パーセントちょっとという結果になっていた。これは、オカムラ党や共産党よりも少ないのはもちろん、バーツラフ・クラウス若が市民民主党をおんでて結成した挙句に逃げ出したトリコローラよりも少ないのである。
 そこに今回の党大会後の外務大臣の解任を巡る大混乱が重なったわけだから、さらに支持を減らしているに違いない。緑の党との関係が切れたことによるプラスでは相殺し切れないだろう。社会民主党の政治家の中には、前回の選挙で支持の低下は底を打ったと考えていた人たちもいたようだが、この秋の下院選挙ではさらに支持を減らして、議席を失う可能性が現実味を帯びてきた。これは、ANOと連立を組んだからというよりは、支持を壊滅的に減らしてなお、変われなかった社会民主党が歴史的な役割を終えたと考えたほうがよさそうだ。

 同じく、90年代以来の大政党である市民民主党は、ネチャス内閣末期の迷走、創設者のバーツラフ・クラウス元大統領との確執によって支持を減らし、2013年の総選挙で、36も議席を減らして16議席しか獲得できなかったときに、壊滅的な惨敗で解党の危機だといわれていた。そのとき党外から非党員として選挙に当選したペトル・フィアラ氏を迎え入れて党首に立てることで、危機を乗り越えることに成功した。党内政治とは関係ないところから党首に選ばれたフィアラ氏の存在が市民民主党の変革の象徴となったのである。今後も、かつての支配的な地位を取り戻すことは難しいだろうが、議席を失うところまで追い詰められることもあるまい。
 それに対して社会民主党は、2017年の下院総選挙で、2013年の市民民主党と同レベルの壊滅的な惨敗を喫しておきながら、変わることができなかった。相変わらず党人政治家たちの間での権力争いが続き、党内政治によって党首や大臣が決められるという90年代以来の因習を排除できなかった。それが、多くの支持者に見放され歴史的役割を終えつつあるという所以である。

 下院の議席を一度は失ったものの次の選挙で議席を獲得した政党にはキリスト教民主同盟がある。この党は、二大政党ほどではないとは言え、1990年代から下院の議席を獲得し続けてきたのだが、2010年の総選挙で得票率が5パーセントに届かず議席を失った後、2013年の総選挙で再度議席を獲得した。ただ2010年の総選挙で議席を獲得できなかったのは、前年の2009年に、カロウセク氏とその一派が、キリスト教民主同盟を脱退して、TOP09党を結成してブームを引き起こしたことが原因になっている。だから、化けの皮がはがれてブームの熱狂が終わった後、一度TOP09党に流れた支持者が、戻ってきたと考えられる。
 社会民主党の支持者が、一番多く流れたのは左傾化するANOだと考えられているから、バビシュ氏が政治の世界にとどまっている間は、社会民主党に支持者が戻ることはあるまい。そうなると、国政政党としての社会民主党の命脈はほぼ絶たれたと言っていい。そして2003年の大統領選挙で身内の裏切りで大惨敗したゼマン大統領の復讐劇も、これにて完結ということになる。
2021年4月14日24時30分。











2021年04月15日

混乱は続く(四月十二日)



 週末、屋外で20人までは集まって活動できるという子供たちのスポーツに関る人たちにとって待ちに待った規制の緩和が撤回されたことに、サッカー協会で要職に就くチェコサッカー界の伝説の一人カレル・ポボルスキーがぶちきれたというニュースが流れた。授業を自宅で受けることで子供たちが運動を全くしなくなっていることに危機感を抱いている人も多く、関係者が厚生省と必死の交渉の結果、引き出した規制緩和を、鶴の一声でぶち壊しにしたのだから、怒りをぶちまけたポボルスキーの気持ちもよくわかる。子供たちが運動不足に陥ることは、チェコのスポーツ界にとってだけでなく、チェコ社会にとっても大きな問題のはずである。

 それで、かどうかは知らないが、アレンベルグル厚生大臣がポボルスキーに手紙を書いて、どんな条件でなら子供たちに練習させてもいいかを説明したらしい。そこで情報が錯綜して、2人なのか、12人なのか、20人なのかわからんなんて記事の見出しも見かけたけど、2人ずつ12人というのが正解だった。つまり12人の子供たちを2人ずつ6つのグループに分けて、それぞれのグループの間に10メートルの距離を置けば、同時に練習してもいいのだとか。
 ということは、指導者も入れれば、同時に12人を超えてもいいと言うことで、細かい指導をするときには、一時的に一箇所にあつまるのが3人になってもいいと言うことか。この規制を考えた人はスポーツのことを知らないに違いない。これならフリニチカが局長を務めるスポーツ庁が中心になって準備していたらしいマニュアルを基にしたほうがましそうである。前任者の決定を覆すことで自分の色を出したかったのだろうが、失敗だったとしかいいようがない。

 失敗といえば、社会民主党のハマーチェク党首も、失態をさらした。党首選で造反したペトシーチェク氏の外務大臣解任を決めて、大統領に(恐らくバビシュ首相を通じて)解任を求めたところまでは問題なかった。大統領は喜々として解任の手続きを取ってくれたのだが、後任の外務大臣として予定していた文化大臣のザオラーレク氏が首を縦に振らなかったのだ。以前外務大臣を務めた経験のあるザオラーレク氏だが、突然のことで引き受ける準備ができていないと答えたのだとか。事前に根回ししておけよ。
 さらにひどいのは、ザオラーレク氏に外務大臣就任を打診する前に、文化大臣の後任候補には声をかけていたことである。下院議員とナーホットの市長を務めるというビルケ氏はすでに大臣に就任する気は十分で、大臣としての抱負なんかを記者会見で語ったらしい。この人、アイスホッケーの選手から政界に転じた人で、ザオラーレク氏の前任のスタニェク氏と同じく、文化関係の仕事はしたことがないと言うのだけど、自信満々で文化大臣としての仕事をこなせると思っているようである。文化省と関係のある業界からは反対の声が上がっているけれども、聞き入れられることはあるまい。

 とりあえず、現時点ではハマーチェク氏が外務大臣を兼任、つまりは内務と外務を兼任するというとんでもないことになるようだけど、文化大臣がどうなるのかは、最終的にはザオラーレク氏が外務大臣を引き受ける形でけりがつくような気はするけれども、よくわからない。この人事は、野党も批判しているが、社会民主党が適材適所で大臣を選んでいるのではなく、主要ではない省の大臣には、日本の自民党と同じで年功序列で大臣待ちの議員がいてその中から順番に就任させているということを示している。ということは現在の社会民主党は文化大臣のポストをあまり重視していないということである。以前は、ドスタール氏とか、ヤンダーク氏とか業界出身の政治家を就任させていたんだけどねえ。

 最近の社会民主党は、こんなことを繰り返しているから、支持を失い続け、秋の下院選挙で議席を獲得できなさそうなところにまで追い詰められているのである。ヨーロッパの病理である緑の党と組んで選挙に出るという、頭がいかれたとしか思えないアイデアも絶望的な状況を反映している。今回の件で、緑の党側が社会民主党とは一緒にやれないと交渉を打ち切ったことだけが、社会民主党にとってよかったことである。
2021年4月13日24時。







2021年04月14日

社会民主党党大会(四月十一日)



 昨年末に予定されていたが非常事態宣言のせいで延期されていた、社会民主党の党大会が、延期したかいもなく、オンラインで開催された。党大会では指導部の選挙が行なわれることになっており、ハマーチェク内務大臣が党首の地位を守れるかどうかに注目が集まっていた。結果次第では、現在のANOと社会民主党の連立内閣が、この総選挙まで半年という時期になって解消される可能性もでてくるのである。
 党首選に出馬したのは、ハマーチェク氏と、ゼマン大統領が解任を求めている外務大臣のぺトシーチェク氏、それに元文部大臣のバラホバー氏の三人だったかな。ソボトカ内閣で文部大臣を務めスポーツ界の補助金をめぐる汚職疑惑へのかかわりも噂されたバラホバー氏が立候補したのは意外だったが、当選のチャンスがあるとは思えず、ハマーチェク氏とペトシーチェク氏の一騎打ちだと見られていた。

 特に注目して追いかけていたわけではないけれども、このままでは社会民主党が秋の総選挙で議席を失う可能性が高いと考えたペトシーチェク氏がハマーチェク氏に対して反旗を翻したというのがこの党首選が行われた事情のようだ。大抵、党内に対立が存在しないときには、党首選は、事前の調整、地方支部の推薦の結果などから、信任投票に終わるものである。だから、ペトシーチェク氏にも勝ち目はあるだろうと思っていたのだけど、結果は、あっさりハマーチェク氏の再選だった。
 これは、今でも社会民主党員の中にゼマン大統領を支持している人が多いことを示しているのだろう。そんなゼマン派の社会民主党員にとって、ゼマン大統領から解任を求められている外務大臣を支持することは不可能だったはずだ。ゼマン大統領自身は社会民主党の解体を狙っているようにも見えるから、皮肉ではある。

 党首選で負けたペトシーチェク氏は、副党首選には出馬せず、党の指導部を離れることを決めた。そして同時に、外務大臣に関してハマーチェクしに進退伺いを出したらしい。党首選に出馬したということは、ハマーチェク氏の連立維持策に反対だということだろうから、政府を離れるというのはわからなくもない。ただ、総選挙まで半年となった今の時点で大臣を解任する意味があるのかと言う疑問は残る。厚生大臣の更迭もそうだけど、混乱を拡大するだけに終わりそうである。
 ハマーチェク氏は、最初は慰留するようなことを言っていたと思うのだが、結局ペトシーチェク氏の解任を決めた。これでバビシュ内閣はまた一人大臣を失うことになった。うちのによるとバビシュ内閣で、まともな大臣と言えるのは、文部大臣のプラガ氏と、このペトシーチェク氏の二人だけだというが、そのうち一人は辞任し、もう一人には解任の噂がある。

 この結果をもろ手を挙げて喜んでいるのは、三月に外務大臣と厚生大臣の解任をバビシュ首相に求めたゼマン大統領である。厚生大臣はロシア、中国製のワクチンの導入をかたくなに拒んでいたことが理由だったが、外務大臣は原子力発電所の建設に関して、ロシアと中国の業者を入札から廃止すべきだと主張したことが原因になっている。ただし外務大臣の主張は、チェコの情報部のリスク評価に基づくものなので、外務大臣が批判されるのはおかしいのだが、プーチン大統領と親密で、中華共産帝国の中心であるゼマン大統領にとって、ロシアと中国に不利になるような発言をする人間は全て敵なのである。その点では、共産党も立場を同じくしている。

 市民民主党などの野党は、成立時に信任を受けた内閣のうち、過半数の大臣が姿を消している事実と、信任に票を投じた共産党が、内閣支持をやめたことを理由に、バビシュ内閣は改めて下院で信任投票を受けるべきだと主張しているが、法律や憲法に規定されていない以上、バビシュ首相がそれに応じるとは思えない。今更信任決議が否決されたとしても、ゼマン大統領が信任のない暫定内閣でそのまま選挙まで続けるように支持するに決まっているから意味はない。
 いや、本気でバビシュ内閣を倒すことを望んでいるなら野党側が不信任案を提出して決議にかければいいのだ。それをしないのは、感染症対策で国中がてんてこ舞いの中、政府が倒れて混乱が大きくなった原因を作ったと非難されるのを恐れているからだろう。
2021年4月12日20時。










2021年04月13日

厚生大臣は代っても(四月十日)



 イースターの終わりと共に、寒さも終わると期待したのだけど、イースターと共にやってきた寒波は、イースター後も居残り、オロモウツでもしばしば雪を降らせた。その寒波が去って暖かくなったと喜んでいたら、来週また降雪を伴う寒波がやってくるようだ。オロモウツでは、とりあえず雪ではなく雨で、最低気温もマイナスには行かないという予報だけど、天気予報が外れることも多いのは、チェコも日本と変わらない。

 変わらないといえば、感染症対策を巡る混乱も、厚生大臣が代ったとはいえ、全く変わらない。来週の月曜日から予定されていた規制の緩和を突如変更すると言い出して、あちこちから不満の声が上がっている。少学校での授業の再開と共に、一度に集まれる人の数も、屋外が20人、屋内が10人に緩和されることになっており、特にスポーツ界では、アマチュアのスポーツ、子供たちのスポーツ活動がやっと再開できると喜んでいるところだったのだ。
 それが、専門家の意見とかで、現状と同じ屋内でも屋外でも2人までという規制を継続させると言い出したのは、金曜日の夜だっただろうか。すでに最下位の準備も進んでいただろうに、全く以て迷惑な話である。そもそも2人までという規制が、本当に存在していたのかどうかもよくわからない。教会でのイースターのミサは、人数を制限した上で行われていたが、それは決して2人などという数字ではなく、20人だったか、40人だったか、教会の規模によって決められていたはずだ。

 さらに問題なのは、この規制の緩和と密接に結びついているはずの学校での授業の再開については、ブラジル型の変異種が確認されたことを理由に延期されたウースティー地方のデチーン地区を除けば、予定通り実施するといっていることである。しかし2人までという規制が学校での授業にも適用されるのかどうかがはっきりせず、適用される場合には、先制と生徒が1対1でなければ授業ができないことになり、実質的な規制緩和の先送りになる。子供たちが自分で行う感染の検査に関しても、同じ部屋で同時には行なえなくなるから、かかる手間ははるかに大きくなる。
 新大臣は、ニュース番組でインタビューを受けて、あれこれ説明をしていたが、そのわかりにくさは、わかりにくいといわれたブラトニー氏以上で、話を聞いても小学校の教室で2人以上の生徒達が同時に授業を受けていいのかどうか、全く理解できなかった。恐らく規制の例外扱いとなって授業は行われるのだろうけど、新大臣心配である。

 スポーツに関しても、アマチュアのスポーツの禁止は続くのかというアナウンサーの質問に、テニスは二人でプレーするからできるだろうとか、団体スポーツでもグループに分かれて練習はできるとか言っていたけど、ダブルスはどうするんだとか、コーチと1対1で練習、つまりはメンバーの数だけのグループに分かれろということかとか、いちゃもんをつけたいところが山ほどあった。
 バビシュ首相はブラトニー氏の解任の理由を、コミュニケーションが取れていないことだと言っていたが、その点では新大臣のほうがひどそうである。対策の内容はともかく、記者会見やインタビューでわかりやすく伝えるという意味では、最初のボイテフ大臣が一番ましだったんじゃないかと言いたくなるほどである。ボイテフ大臣の場合には、横からバビシュ首相が口を挟むことで、全体的に意味不明になることはあったけど、今回の新大臣ほどひどい説明にはならなかったと記憶する。

 とまれ、月曜日からは小学校だけでなく、文房具店、子供物の服、靴を販売するお店の営業も再開される。小学校では子供たちが週に二回の検査を義務付けられることになり、一般の企業などで週に一回の検査を行わなければならないのは変わらない。オクレス間の移動の禁止も、非常事態宣言の修了と共に解除されることになっている。ただ、規制が強化されても、緩和されても、維持されても、規制をまともに守っている人があまり多くないという現実は変わらない。
2021年4月11日18時。









2021年04月10日

またまた厚生大臣更迭(四月七日)



 すでに三月中には噂に上っていた厚生大臣の交替だが、四月に入って一週間、感染症対策の重大なポイントとされたイースターが終了すると共に、実行に移された。三月下旬のインタビューでバビシュ首相は「三月中の大臣の交代はない」と語っていたのだけどね。もう一人、更迭を噂されていた文部大臣のほうは、結局解任されずに留任となった。

 バビシュ首相による公式の解任理由としては、ブラトニー大臣の厚生省内のマネージメントがうまく行っていないこと、コミュニケーションが取れていないことが挙げられているが、信じている人は誰もいない。これが解任の理由になるのであれば、政府内の大臣とのコミュニケーションがまともに取れていないバビシュ首相が真っ先に解任されるべきである。何せ、首相と大臣と言う関係なのに、厚生大臣と文部大臣が話し合って決めた規制の緩和について、手紙で不満を告げるという体たらくである。直接あって話せよというのが普通の反応であろう。
 では、実際の解任理由は何かというと、ブラトニー厚生大臣が、ゼマン大統領周辺からのロシアと中国製のワクチンの使用を認めろという圧力を受けながら、かたくなにEUで認可されていないワクチンの使用は絶対に許可しないと頑張っていることである。すでに、三月半ばの時点で、ゼマン大統領は、ワクチン不認可を理由にバビシュ首相に大臣の更迭を求めていた。どこのワクチンでもいいから接種を進めることが大切だというのだが、もんだいはロシアや中国を信用できるかと言うところにある。ゼマン大統領は国民の大半と反対で、全面的に信用するのだろうけどさ。

 辞任を余儀なくされたマトビチ首相が、独断でロシアのワクチンを輸入したスロバキアでは、EUとは別枠でワクチンの認証プロセスが進んでいるのだが、その途中経過で、納入されたワクチンの組成が書類に記されているものとは違うことが明らかになって物議をかもしている。ロシア側からは使わないなら返品しろなどという声も上がっているようで、もう意味不明である。
 こんな、正体不明なワクチンをチェコにも導入することが、正直いいことだとは思えないし、世論調査でロシアのワクチンを信用すると答えた人の割合は5パーセント、中国は1パーセントしかなかったというニュースもある。そうなると、足元を見られてぼったくり価格で輸入しても、接種を拒否する人が続出して、大半は廃棄処分になるのが関の山である。その場合の責任は大統領が取るなんてことはないだろうなあ。チェコだし、ゼマン大統領だし。

 そもそも、下院の総選挙で新しい内閣が半年後には成立することが決まっている現時点で、大臣を代える必然性が理解できない。ブラトニー氏自身は、解任は政治的な理由で、自分は大臣として専門家の意見を元に判断してきたことを恥じるつもりはないと語っていた。ただ、クリスマス前に規制を大きく緩和して、感染拡大につながったことについては失敗を認めている。あのときは、イギリス型の変異種がチェコに蔓延しつつあることがわかっていなかったといういいわけはつけているけど。
 それでも、問題はあれこれあったけれども、自分のなした仕事に対して責任を持とうとする姿勢は、悪くない。バビシュ首相が、全てを他人のせいにして、今回の感染症対策、ワクチン政策の失敗もブラトニー氏の責任にして、自分は悪くないと開き直るのにくらべればはるかにましである。一年前には全ては首相である自分の責任だと断言して喝采を浴びていたが、それを忘れたかのような最近の責任転嫁ぶりには、支持者の中からも見限る人が出てきたようで、世論調査でのANO支持率は、下がり続けている。それでも20パーセントは越えているのかな。

 後任として即座に任命されたのは、プラハのビノフラディにある大学病院の院長を勤めるアレンベルグル氏。就任の際には特に表明はしなかったけれども、恐らくゼマン大統領、バビシュ首相との間でロシアのワクチンを導入する方向で話がついているのだろうと言われている。現場の医師の中にロシアのワクチンを求める人がいるというのは意外であった。

 ところで、ブラトニー氏の解任は、文部大臣とともに、来週の月曜日からの学校での授業の再開と、そのルールについて記者会見をしている裏側で進められていた。そんな部下の背中で陰謀をめぐらすようなやり方も批判されていて、バビシュ政権が末期症状を起していると見る人も多い。今のバビシュ政権以上に評価がひくくなるのは難しそうだから、秋の総選挙で誕生すると見られる新政権にとっては比較のハードルが下がり続けているといってもいい。まともな政権であることを望むのは高望み過ぎるので、チェコに害をもたらさない新政権が誕生することを願っておこう。期待薄だけどさ。
2021年4月8日23時










2021年04月08日

非常事態宣言の終わり(四月五日)



 イースターの時期に規制を緩和すると、感染の拡大が起こるのは明らかだとして、規制緩和を拒否してきたチェコ政府だが、イースター開けの規制のあり方を巡って、駆け引きが始まった。一つは、学校への子供たちの登校の再開で、現在の非常事態宣言が切れる四月十二日月曜日からという方向で調整が進んでいるようだ。

 問題は、どのような条件で学校での授業の再開を認めるかで、文部省と厚生省の間で行われている調整にバビシュ首相が不満をたれて、実現するかどうかが怪しくなっている。当初の予定では、義務教育九年のうち、前半の五学年だけを対象に通学を再開し、一学年おきに隔週で通学させるということになっていた。つまり、今週、一年、三年、五年の子供たちが学校に出たら、来週は二年、四年の子供たちが学校で授業を受けるという形なのかな。隔週の振り分けは違うかもしれないし、各学年日とクラスしかないような小さな学校は、五年生まで全員一度に登校できるようだ。
 これに対して、バビシュ首相が、通学する子供たちは定期的に検査を受けることになっているのだから、隔週にする意味がわからないと言い出した。実は、この検査に関しても教育現場からは問題が指摘されている。検体の採取から自分でやる簡易検査キットを使うことになっているのだが、小学校の低学年の子供たちが、特に最初のうちは自分ひとりでできるかどうか心配だというのである。教員が指導、補助するにしてもクラスの子供たちの数を考えると、時間がかかりすぎるし対応し切れるとも思えない。

 それで、案として上がっているのが、保護者が、どうせ学校まで子供を送ってくるのだから、自分の子供の検査の補助を行うというものである。特例として検査のために保護者が教室に入るのを認めるなんて話も出ていた。問題は、子供たちには検査を受けて陰性であることを確認する義務があるけれども、保護者が感染していないことを確認するすべがないことである。もちろん、職場で検査を受けさせられたとか、すでにワクチンの接種を受けたとかいう保護者はいるだろうが、大半は子供が在宅授業のため、自分も仕事を休んで子供の面倒を見ている人たちである。陰性の検査結果を有しているとは思えない。
 また検査自体も、現時点で義務付けられているのはアンチゲン方式の簡易検査キットを使うことで、その精度に疑問がもたれている。どうせ、安全のためと称して検査を導入するなら、手間はかかるけれども精度の高いPCR検査を実施したほうがいいのではないかという意見もある。ブラトニー厚生大臣は、今は検査のキャパシティの問題でできないけれども、いずれは切り替えたいというようなことを言っていた。簡易検査キットを納入する予定の会社と縁のある政治家が異を唱えそうだけど。

 そして、現状では、非常事態宣言の延長が下院で認められる見込みがないことから、バビシュ首相は、延長を求めない方針を固めたようである。R指数が1以下となり、新規の感染者の数も、平日で七、八千、休日で千から二千と、一番多かったころと比べると半数以下に減っていることも、非常事態宣言を終わらせる理由になっているのだろうが、これまで閣外支援をしてきた共産党が、バビシュ政権への対応を見直そうとしていて、支持が得られなさそうなのも原因となっている。二度も、非常事態宣言の延長を求めて否決されるというのは、秋の選挙に向けては避けたいはずである。
 非常事態宣言が終結しても、規制の多くは継続されることだろう。ただ、オクレス間の移動の禁止だけは、非常事態宣言なしには不可能だというから、これは撤回されると見られている。ただ、これまでも警察の能力の限界でそれほど厳密に移動を阻止できていたわけではなく、実質的にはほとんど変わるまいと予測しておく。週一の検査の義務付けも残るだろうから、こちらの在宅勤務は続く。

 最後に、この件に関するチェコ人の冗談を紹介しておこう。バビシュ首相の非常事態宣言の「延長」はなしだと断言したのだが、それに対して、「nájezdy」にならないか心配だとコメントした人がいて、うちのは大笑いしていた。説明を受けるまでわからなかったのだけど、非常事態の「延長」も、スポーツの試合の「延長」も同じ言葉を使うことから、延長はなくても、アイスホッケーで延長でも決着がつかなかったときに行われる「nájezdy」、つまりはサッカーのPK戦みたいなものになると困るねということだったようだ。流石はアイスホッケー大国チェコである。
2021年4月6日18時30分。












2021年03月13日

ゼマン大統領がまた(三月十日)



 大統領も二期目に入って、次の選挙を気にする必要がなくなったせいか、一期目以上に問題発言を繰り返して、チェコの社会を混乱させ、分断を助長しているゼマン大統領が、また物議を醸すような発言をして批判を受けている。ブラトニー厚生大臣と、チェコ国内で使用する医薬品の認可や管理を担当している役所である医薬品管理局(と訳しておく)の局長を解任するように、バビシュ首相に求めたのである。
 その理由は、ゼマン大統領が推し進めるロシアと中国製の未認可ワクチン、とくにロシアのワクチンの導入を拒否していることである。ブラトニー氏は、自分が厚生大臣である間は、絶対にEUで認可されていないワクチンを接種させることはないとまで断言している。医薬管理局の局長は、仮にチェコ国内で、EUの認可の前に、特別に認可することが可能だとしても、現在ロシアから提供されているワクチンの情報だけでは、認可のしようがないというようなことを言っている。
 スロバキアの認可担当の役所の長官も同様のことを言っていたし、これがおそらくヨーロッパ中のワクチン専門家たちの意見の一致するところではないかと思う。少なくともロシアのワクチンに関してはEUの認可を求める手続きが取られたという話なので、情報の不足というのが本当に足りないだけなのか、何か隠されていることがあるのか明らかになるだろう。

 ゼマン大統領はこの意見に対して、西側のものはすばらしくて、東側のものは駄目という思い込みから認可できないといっているのではないかと非難した上で、大切なのはワクチンが手に入って接種できるということであって、どのワクチンかは二の次だとのたまう。そして、ワクチンの接種が遅れることで死者の数が増えたら、その責任はロシアのワクチンの導入を拒否した厚生大臣と管理局長にあると付け加えた。

 どれだけあるかも確認されていない副作用、中国のものは生産者が認めているだけで数十に登るとか言ってたけど、その副作用で亡くなる人が出た場合の責任はゼマン大統領が取るというのだろうか。感染症で亡くなる人が出るのと、その感染症に対する未認可ワクチンを接種して副作用で亡くなる人が出るのと、どちらが政治の責任が重いかと言えば後者に決まっている。
 それに現在のチェコの最大の問題は、政府が言うようなワクチンの不足ではなく、ワクチン接種のためのシステムが、チェコ語で言うところのグラーシュで、非常に非効率的で混乱を極めているところにある。供給されたワクチンの全てがそのまま接種にまわされるのではなく、一時的に保管されているうちに行方不明になるものもあるように思える。そうなると、ロシアのワクチンを導入しようが中国のワクチンを導入しようが、種類が増えて混乱が大きくなることはあっても、ワクチン接種が効率的になって、一日辺りの接種数が大幅に増えるなんてことは想像しづらい。

 ゼマン大統領は、この二人に加えて、外務大臣のペトシーチェク氏の解任も求めている。この人事は、連立政府内の協定によって、バビシュ首相が決められることではなく、社会民主党の内部で、最終的にはハマーチェク党首が決定することになるようだが、現時点では解任に応じるとは思えない。党内でハマーチェク下ろしの動きもあると言われているから、社会民主党の内紛をあおるための発言だったのかもしれない。
 ゼマン大統領が解任を求めている理由は、これもロシア、中国がらみで、外務大臣が原子力発電所の増設に関する入札に、ロシア企業と中国企業を除外するように求めていることである。外務大臣としては、ロシア企業や中国企業がチェコに入ってくるとそれを隠れ蓑にスパイ活動する工作員が増えることを危惧しているのかもしれないし、ロシアや中国にチェコの原子力技術が漏れる可能性を危惧しているのかもしれない。個人的にも、チェコのエネルギー政策の柱である原子力発電所の建設にロシア、中国という得体の知れない、何をしでかすかわからない国の業者が関るのは避けるべきだとは思う。それが国の安全保障というものである。
 ゼマン大統領は、それなりの技術があれば、安いほうがいいと考えているのか、ロシアや中国と関る危険性を完全に無視している。いや、逆にロシアや中国と関ることをメリットだとしか考えていないようである。だからつねに、EUの枠内であっても、ロシア、中国の肩を持つ発言を繰り返すのである。ロシアはまだしも中国は、絶対にやめておいたほうがいいと思うのだけどね。軒先を貸して母屋を奪われることになりかねないわけだしさ。
2021年3月11日24時。




スロバキアの厚生大臣は、マトビチ氏とは違う党の人だと思っていたのだが、そうではなく、マトビチ氏のロシアワクチン導入に積極的に関っていたらしい。それで連立を組む他の政党から、マトビチ氏以上に強く辞任を求められていた。そして、マトビチ氏がかばいきれなくなったのか、トカゲの尻尾きりだったのか、辞任したというニュースが入ってきた。スロバキアでもロシアのワクチンをそのまま使うのではなく、独自の検証を行なう予定だというのだが、それならEUで認可されたワクチンの入荷を待つのと大差ない結果になるような気もする。











2021年03月07日

冗談は止まらない(三月四日)



 スロバキアがマトビチ首相のほぼ独断でロシアのワクチンの輸入に踏み切ったことで、国内のロシアシンパが、チェコでもロシアのワクチンをと騒ぎ出すのは予想通りだった。その筆頭は、汎スラブ主義を唱えて、EUの汎ゲルマン主義に対抗している(つもりのように、見ようと思えば見える)ゼマン大統領で、スプートニクVの導入にも、大統領広報官のオフチャーチェク氏を通じて積極的な発言をしている。
 一時は、世論に日よって慎重な姿勢に転じたバビシュ首相も、ロシアのワクチン導入の検討をほのめかすなど、また態度を変えようとしている。厚生大臣のブラトニー氏だけは、衣料の専門家としてEUで承認を受けていないワクチンをチェコ国民に接種するわけにはいかないと、強硬に反対する姿勢を崩していないのが救いである。

 その一方で、恐らくチェコなどEUの承認がないと使用できないという国の要求に応じてだろうが。ロシアがこれまで拒否してきたワクチンの承認申請を行ったという話もあるから、承認された場合にはチェコでもロシアワクチンの接種が始まることが予想されている。ただ、スロバキアの承認機関の人は、ニュースで、ロシアからワクチンと共に送られてきた書類には、承認するために必要な情報が欠けていて、承認するもしないも決めようがないとぼやいていた。
 旧ソ連の後継国家にふさわしく、秘密主義なのだろうけど、治験の経過や結果などの詳しい情報がないとEUでも承認しようがないだろう。場合によってはEUの機関で治験を行うということになりかねない。そうなると、バビシュ首相やゼマン大統領が望んでいる早期の承認はできなくなる。もっともロシア側がそんな扱いに賛成するとも思えないけど。結局はもうしばらく様子見ということになりそうである。

 ここまでならまだ想定の範囲だったのだが、ゼマン大統領はさらに自分のつてで中国からのワクチンの供給(当然ぼったくり価格であろう)が可能になったと言い出した。問題は中国のワクチンについてはロシアのもの以上に情報が提供されないことと、ワクチン製造を担当している会社が、過去に問題のあるワクチンの生産や、データの改竄などさまざまな不祥事を起こしていることである。ただでさえ中国製でサンプル出荷以外は信用に乏しいというのに、こんな会社の製品では信用して接種を受けられるとは思えない。そもそも不祥事を繰り返しながらワクチン生産を続けられている時点で怪しい。
 ワクチンも、薬ではないとはいえ、これなら効くと信頼して接種を受けたほうが、大丈夫かなという不安と共に受けるよりも効果が高いんじゃないかとも思う。だから、わざわざ中国に借りを作ってまで、同時に高い金を払ってまで、中国製の怪しいワクチンを導入するより、EUで承認されたワクチンが増産されて供給されるのを待つほうが、最終的にはいい結果をもたらすだろう。ゼマン大統領としては中華共産帝国皇帝への忠誠を示す必要があったのだろうけど、かつての見返りの大きかった朝貢貿易と違って、見返りなどゼロに等しいのだから、臣従はやめてしまえばいいのに。

 それから、政府では企業に対して従業員の感染検査を定期的に行うことを義務付けた。一人一回の検査に60コルナ、月に四回分政府から補助金を出すという。野党によればこの60コルナという設定がいやらしいらしく、この値段では市場に出ているもっとも精度の高い検査キットは購入できず、資金に余裕のないところでは低品質のものを購入することになりそうだと言う。そうなのである。補助金で購入されるのは中国製の検査キットなるという目論見があるのだろう。マスクにしても検査キットにしても、政府がチェコ国内製のものよりも、中国製のものを優先しているのが理解できない。
 一部の企業ではすでに去年の秋から自主的に従業員の定期検査を行っていたらしい。サッカーなどのプロスポーツで行われている定期的な検査が、感染した人の洗い出しと感染の拡大の防止にある程度効果があることは明らかだった。それなのに、政府は医療関係者の定期検査を導入しなかったのである。医療が逼迫している最大の原因は、医療関係者から感染者が出て多くの人が隔離されて現場を離れなければならなかったことなのだから、医療関係者の定期検査を実施していればここまでひどいことにはならなかったんじゃないかとも思う。ワクチンの接種が進んだ結果、これまでになく欠勤を余儀なくされる医療関係者の数が減っているらしいしさ。

 とまれ、逆に言えば、ロシアや中国のワクチンに期待せざるを得ないところまでチェコの状況が悪化しているということでもある。いやはや、困ったもんである。
2021年3月5日24時。











2021年03月02日

規制の再強化(二月廿七日)



 イギリスではEU脱退を主導し何とか合意にこぎつけたジョンソン首相が、感染症対策を指揮しているが、うちののはなしでは、こんな冗談を放ったらしい。
 記者会見で、どうしてイギリスでは、ニュージーランドのような効果的な対策が取れないのかと質問されて、「ニュージーランドにはイギリスにはない利点がある。だからあんな対策を取れるんだ」と言い、さらにどんな利点かと問われて「ニュージーランドは島国だろ」と言い放ったのだとか。一瞬考えた後、笑いが止まらなくなった。流石イギリス、首相の冗談も切れがいい。
 チェコの政治家の記者会見は、笑えない冗談ばかりで、いや笑うしかない現実ばかりで、嫌になる。この日も、非常事態宣言の発令が認められた政府が喜々として新たな規制の話し合いの結果を発表していた。一年前の突然の規制とは違って、事前に小出しに情報を出して、抵抗を少なくしようとする姑息さを身につけたのは、改善点と評価するべきなのだろうか。

 とまれ、最大の問題は、文部省が教育を守るために再開させ、継続することを求めていた小学校1、2年生の通学を禁止したことだろうか。同時に幼稚園保育園などの児童を預かる施設も閉鎖された。小学校の低学年は、アンチゲンの簡易検査キットを導入し、陰性の子供だけ通学を許可することで、他の学年の授業再開につなげる計画だったはずなのだが、検査キットの購入を巡るスキャンダルを隠蔽するためにまとめて閉鎖することに決めたと見てよかろう。
 事実、文部省では簡易検査キットの導入に関して、最初はチェコで生産している企業と協力して計画を進めていたのが、いつの間にか解消され、中国製を利用することに変わったという話もある。それが、学校への検査キットの導入が進まず、実験や業者選びがぎりぎりになった理由だというのである。チェコの産業を守るとか言うのであれば、この手の事業には、チェコ製を選ぶのが休業に対する補助金も不要になるし、一番いいはずだが、中国製でないと都合が悪い人が政府の上のほうにいたようだ。
 その中国製の検査キットも、サンプルとして納入されるものは精度が高くても、実際に購入すると不良品の率が高いというから、そんな検査では何の役にも立たないと思うのだが、一年前の現場の叫びを忘れたと見える。あのときは、あまりの制度の低さにこれなら検査しないほうがましだという声があちこちから上がっていた。これでは、感染状況が改善されても学校が再開されるまでには時間がかかりそうである。

 それから、移動の自由の制限で、自分が住むオクレスの外に出ることが原則として禁じられることになった。例外としては仕事や病院などに行く場合が挙げられているが、何らかの証明書が必要になる。オクレスはかつて存在した行政単位で、地方(クライ)が存在する現在では地理的な意味しか持たないのだが、道路際に境目の表示が出ているから、警察などが検問を敷いて規制を守らせやすいという面があるのだろう。
 同時に、散歩や運動などに関しては、居住する市町村の境界を越えてはいけないことになった。こちらは道路際には、隣の自治体の境界表示はないから、どこまで行けるのかを確認するのは大変そうだ。チェコでは道路際に表示があるのは、市街地が始まるところと終わるところであって、実際の隣の自治体との境界は特別な地図で確認しないとわからないのである。
 また、夜間の犬などの散歩に関しては、自宅から500メートル以上離れてはいけないというルールが追加された。このルールも理解できないものの一つで、日中も自宅にいることを強く求めているのだから、夜間の犬の散歩なんか禁止してしまえばいいはずだ。在宅勤務であれば、犬の散歩ぐらい昼間行けるだろうに。

 憲法裁判所に、意味不明だと批判された例外的に営業が許可される小売店の業種についても、大きく見直しがなされ、批判の対象になっていた銃砲店や、子供に着せる服、履かせる靴がないと言う親たちの批判に応じて許可された子供向けの服や靴の販売も禁止された。学校が完全閉鎖になったから服も靴も新しいのは必要ないと単純に考えたのだろうか。それに対して、営業禁止の対象になると予想されていた花屋に関しては、継続して営業が認められることになった。生活必需品ではないと思うのだが、アグロフェルト社傘下に花屋を経営している企業があるからだとも言われている。

 マスクの規制も強化されるというけれども、説明がややこしくて実際に何が求められているのかよくわからなかった。まあ買い物にも行かず。人とも会わない生活をしていれば今まで通りで問題あるまい。買い物に行くときだけ、レスピレーターを引っ張り出すのは、規制が強化される前からしていたことだしさ。
2021年2月28日23時








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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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