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2017年10月22日
Tyvoleでdopr...な選挙結果
昨日今日と二日かけて行われた下院議員の選挙の結果が即日開票で出た。いやあ、ここまで予想外の結果になるとは思わなかった。チェコの政治、日本の政治以上にひどいのである。細かいコメントは後日に回すとして、結果だけお伝えしておく。
ANO 78議席 29.64% バビシュ党
ODS 25議席 11.32% 市民民主党(旧クラウス党)
Piráti 22議席 10.79% 海賊党
SPD 22議席 10.64% オカムラ党
KSČM 15議席 7.76% 共産党
ČSSD 15議席 7.27% 社会民主党(旧ゼマン党)
KDU 10議席 5.80% キリスト教民主同盟人民党
TOP09 7議席 5.31% カロウセク党
STAN 6議席 5.18% 市長無所属連合
ANOが勝つことは予想していたけれども、ここまで大差がつくとは思っていなかった。オカムラ党と海賊党が躍進したのが最大の誤算。TOP09は最後の最後まで5パーセントの壁を越えられなかったのだか、何とかクリア。
一言で言えば、既存の大政党が自分たちが想像以上に失望されていることに気づかず従来の手法で政治を運営しようとした結果、有権者から見捨てられ自滅した選挙である。しかしなあ、オカムラ党が議席を得るとはなあ。チェコ人ってもう少し見る目はあると思ったのだけど……。
無駄に微妙な結果に終わったので、これからの連立交渉が長引きそうである。最悪のシナリオはANOと組む政党がなくて政府が成立しないことと、ANO、オカムラ、共産党の中道、極右、極左の連立政権である。
あれこれ言いたいことはあるけれども、後日にまわすことにして、細かい結果は、以下のページで確認できる。ほかにもいろいろあるのだけど、最初に目に付いたものをあげておく。
https://zpravy.aktualne.cz/domaci/volby/vysledky-voleb-do-poslanecke-snemovny-2017/r~191f2eecb57c11e7a9d00025900fea04/?redirected=1508615491#
明日の日本の選挙の結果がこれよりはましなものになることを祈りつつ。
2017年10月21日22時。
2017年09月19日
情報公開(九月十六日)
まずは、このページをご覧頂きたい。
https://www.fio.cz/ib2/transparent?a=2501277007
これは、ミロシュ・ゼマン大統領が、来年の大統領選挙に向けて選挙運動を進めていくに当たって開設した公開用の銀行口座の入金の記録である。大統領選挙に立候補する人は、選挙資金の透明性を高めるために、支持者からどれだけの寄付をもらったのかを公開しなければならないことになっているのだそうである。
これを見たとき、最初に思ったのは、そこまでやるかというのと、また無駄なことをというものだった。候補者が本気で不正をやろうと思っているのであれば、銀行の口座への送金という公開が前提でなくても入金の記録が残るようなものを使うわけがあるまい。
これで不正な選挙資金が減るなどと考える人がいたら、おめでたいと言うしかない。日本のロッキード事件を見ても、チェコのラート事件を見ても、不正な金は現金でやり取りするものである。むしろ公開などさせずに、極秘に警察が候補者の銀行口座を監視できるようにしておいて、入金、出金の記録が残る自分名義の銀行口座を不正な資金のやり取りに使用する間抜けがいることを期待した方がよほど不正の摘発には役に立つような気がする。
しかし、こんなのはプライバシーの侵害という理由で認められることはあるまい。銀行の口座のお金の出入りがプライバシーだというのはまだ理解できるが、理解できないのは、スピード違反を摘発するためにレーダーを設置するときに、「ここでは速度計測中」という表示がなければ行けないという法律である。こんな計測していないところではスピード違反してくださいと言わんばかりのルールがチェコだけで決められるはずがないから、EUの指示に基づいているのだろう。
これに限らず、ドイツに牛耳られたEUの定めるルールには、日本人の目からすると冗談でしょうと言いたくなるものが散見される。麻薬の売買は犯罪だけど、個人使用のために所持するのはかまわないとか、東南アジアの麻薬に悩まされている国々にしたらふざけるなと言いたくなるだろうものまである。
こんなヨーロッパ的な価値観で高く評価されようが低く評価されようが気にしてもしょうがないだろうに、日本のマスコミの中にはヨーロッパ的な価値観を、ちゃんと理解しないままに絶対視している向きがあって嫌になる。あらゆる面で日本の方が優れているというつもりはないが、ヨーロッパも、日本で言われるほど優れているわけではないし、日本も日本で言われているほどひどくはないというのがこちらに来て感じることである。
ヨーロッパの社会が日本よりも、それほど優れているのなら、極右の政党が国政で議席を取るところまで支持を増やしたりはするまい。表向きだけは正論で形をきっちり整えている裏側で、軋みを上げているのが今のヨーロッパなのだ。日本は借金で首が回らなくって軋みを上げているみたいだけどさ。
話を戻そう。冒頭に掲げたゼマン大統領の銀行口座の入金情報を見ると「0.01」というのが頻出するのに気づくだろう。そうなのである。1コルナではなく、1ハレーシュ寄付するという嫌がらせをする連中が大量にいるのである。利子がつく際とか、外貨で送金されてコルナに換算して口座に入れる際に、端数がでてハレーシュが必要になるのはわかる。しかし、貨幣も回収されて使用できなくなってしまったハレーシュ単位で、送金できるようにしておく必要はあるのだろうか。
ゼマン大統領への抗議の意味を込めてのハレーシュ送金らしいが、コメントを書き込めるようになっていることもあって、何度も何度も1ハレーシュの寄付をしている人もいる。そこまでしてもゼマン大統領には蛙の面にションベンだろうにさ。むしろ、31ハレーシュとか中途半端な額を寄付して、コメント蘭にいくつかの使い道に分けて寄付したと書かれているのの方が気が利いている。
1ハレーシュ送金するのに手数料は取られているのだろうか。取っているとすれば、銀行大もうけのはずである。外資に買収されたチェコの銀行は、かつては外資がチェコ人たちから手数料を巻き上げるための機関と化しており、ささいなことにも手数料を取っていたものだが、最近チェコ政府の頑張りにより(EUの指令ではない)、外資の母国でのサービスに近づきつつある。そう考えると、手数料は取られていないと考えたほうがいいかな。妙なところでけちなチェコ人が、手数料を払ってまで何度も1ハレーシュの寄付を繰り返すとも思えない。
この選挙用の銀行口座を公開しているのは、ゼマン大統領だけではない。そして1ハレーシュ攻撃にさらされているのもゼマン大統領だけではないらしい。チェコ人も暇人が多いねえ。
いまだ立候補の締め切りもきておらず候補者も確定していないというのに、すでにうんざりした気分にさせられる来年の大統領選挙、あまり盛り上がらずに終わりそうである。いや変な方向に盛り上がって前回以上に後味の悪い選挙になる可能性もあるか。チェコ人ならぬ身には選挙権もないから、傍から眺めて楽しむことにしよう。
9月18日23時。
2017年09月16日
下院総選挙5(九月十三日)
承前
28 Dělnická strana sociální spravedlnosti
こちらは、がちがちの極右、ネオナチ政党である。もともと「Dělnická strana(労働者党)」として活動していたのが、裁判所の解散命令を受けて改組して、名前を多少変更して、つまり「社会的公正さ」という言葉を付け加えただけで、活動を続けているものである。
国政選挙では議席を獲得したことはないが、地方選挙、どこかの町の議会の選挙で議席を獲得したことはあるらしい。この党と連立を組む組まないで地方組織と中央がもめた党があったと記憶している。
ユダヤ人、ロマ人の後は、スラブ人の撲滅も計画していたというナチスを、スラブ人のチェコ人が崇拝し、ドイツのネオナチと手を組むのは全く理解できない。
29 Svoboda a přímá demokracie - Tomio Okamura (SPD)
ウースビットを追い出されたオカムラ氏の政党である。自由直接民主主義党でいいや。ウースビットは候補者を立てていないようだが、この党も、特に党首が意味不明なことばかりやっているので、そろそろチェコ人も飽きるんじゃなかろうか。
チェコの日本大使館ではかなり丁重に扱っているようだが、このオカムラ氏が政治家をやっていることで、日本にメリットがあるかと言われると疑問である。チェコに住む日本人にとってはデメリットしかない。チェコ人がゼマン大統領の言動について恥ずかしいと言うのと同じレベルで恥ずかしさを感じさせられることが多い。これがオカムラとかいう日本の名字ではなく、ノボトニーとかチェコの名字だったら気にもならないのだけどさ。
30 Strana Práv Občanů
略称がオカムラ党と似ているゼマン党である。オカムラ党がSPDなのに対してこちらはSPO、似ているだけではなく最近はなぜか協力関係にあるようである。
この市民権利党(へんな訳だ)は、大統領選挙に破れて政界を引退し隠棲していたゼマン氏が、初めての直接選挙による大統領選挙に向けて政界復帰するのを準備するために、結成された党である。当初は「ゼマノフツィ(ゼマン支持者たち)」なんて呼ばれ方をすることも多かった。不偏不党が原則の大統領になって、直接の関係はなくなったようだが、今でもゼマン党だと思われている。今回の選挙にこの党から立候補したフランティシェク・リンゴ・チェフ氏は、ゼマン支持者の自分がゼマン党から出るのは当然だと語っていた。
31 Národ Sobě
これまた訳しようのない党名である。「民族は自らのために」と直訳しても党名にはならないし、トランプ大統領に倣って「民族ファースト」なんていうのも気持ちが悪い。名称だけでなく、実態も不明だから、どうでもいいか。
以上計31の政党、政治団体が候補者を立てている。
チェコでは下院の選挙には無所属で立候補することはできない。ただし、党員でなくても候補者として立てることは可能なので、各党の候補者名簿の中には、非党員の候補者もいるはずである。当選した後は、非党員のままその党の議員クラブに所属する場合もあるし、入党することもある。でも、こういうのは無所属とは言えんよなあ。
現実問題として、この31の団体のうち、議席を獲得するのが確実なのは、ANO、社会民主党、共産党、市民民主党の4つだろうか。議席を取る可能性が高いのが、キリスト教民主同盟とTOP09の二つで、取ってもおかしくないのが市長無所属同盟といったところか。緑の党や海賊党、オカムラ党やゼマン党は、5パーセントを越える選挙区は出るかもしれないが、チェコ全土で5パーセントという議席を獲得するためのかなり厳しいラインを越えるのは難しそうである。
他の政党は泡沫政党なのだけど、極右のネオナチとつながりのある政党にどれだけの票が流れるかは、チェコ社会の今後を占う上でも注目する必要がある。スロバキアでは、マリアン・コトレバ氏の創設した極右政党我らがスロバキア人民党が昨年の国会の選挙で議席を獲得し、中欧スロバキアのバンスカー・ビストリツァ地方ではコトレバ氏を知事として擁して与党の座を占めているのだ。この流れがチェコに入って来ないとも限らない。
放置しておくと極右に流れかねない右派の層を引き受けられる右側のまともな政党が必要なのだけど、既存の政党で一番右に来るのが市民民主党だからなあ。ということは、将来オカムラ党が右翼の支持者を取りまとめて躍進する可能性もなくはないのか。救いはオカムラ氏の言動が結構支離滅裂で、本物の右翼からすると支持しにくいところか。
あとは、すでに書いたことだけれども、「SPORTOVCI」が議席を獲得して、素人の立場から政治をひっかきまわしてくれないかなあ。政治の世界では常識として、誰も取り上げないような無駄な政治家の特権に疑問をさしはさんだり、何かのインタビューのときに自慢して暴露するとかしてくれんかな。アントニオ猪木的な方向に進んでもらったら困るけどさ。
このスポーツ選手の政界進出から、将来大統領が誕生してくれるといいのだけど。政界の汚濁にまみれた政治家大統領よりは、チェコの大統領の地位を考えると、ど素人で問題発言をしたり問題行動をしたりしたとしても、世界的にも知名度の高いスポーツ選手が大統領のほうがましである。今からじゃあ来年の選挙には間に合わないだろうけどさ。
無駄に長くなってしまった本件はこれでおしまい。
9月15日15時。
2017年09月15日
下院総選挙4(九月十二日)
承前
21 ANO 2011
言わずと知れたバビシュ党である。チェコでは最近法律で選挙に使える資金の上限が決められたが、選挙と関係のない部分での政党の広告費には特に制限はない。なので、ANOのような資金に余裕のある政党、政治家は選挙がないときにも、道路沿いの巨大な広告スペースにポスターを張り出している。もちろん一番目に付くのが、ANOのポスターである。ポスターが多いほうが選挙に勝つというわけではないし、2000年代の初めの選挙が始まると町中のいたるところにポスターが貼られたり、破られたりして景観を破壊していたのに比べるとましにはなっているのだけど。
現在ひんぱんにチェコテレビのニュースで公開される各社の世論調査によれば、このANOの支持率が圧倒的に高い。今年の初めぐらいまでは、社会民主党も10パーセントぐらいの差で追っていたのだが、今では倍ぐらいの差になってしまっている。これはANOがどうしたというより、社会民主党が自滅したというのが正しい。最近はソボトカ首相の退陣が決まっていらい多少支持率の揺れ戻しはあるようだが、ANOが選挙で勝つのを阻止するのはむりだろう。
ゼマン大統領は、選挙で勝った党の党首に組閣の命令を出すと断言しているが、それがそのまま組閣が成功することを意味するわけではない。第二党である社会民主党が三位、四位に入った政党と連立を組んでバビシュ首相の誕生を阻止する可能性もなくはないのだ。ただ、共産党と組むのを嫌がる党は多そうだし、TOP09とキリスト教民主同盟も組むのは難しそうだ。
バビシュ首相で大統領がゼマン氏以外、首相はバビシュ以外でゼマン大統領、どちらの組み合わせがましなのだろうか。
22 Dobrá volba 2016
「良き選挙2016」でいいのかな。単数だから「良き選択2016」のほうがいいか。詳細はもちろん不明である。
23 Sdružení pro republiku - Republikánská strana Československa Miroslava Sládka
「共和国のための連合」でいいかな。規模的には連合よりも「会」のほうがいいかもしれない。副題は「ミロスラフ・スラーデクのチェコスロバキア共和党」。
怪しい名前とは裏腹に1989年のビロード革命の頃に設立された政党で、90年代には国会議員も擁していたようだ。その後はじり貧というやつで、倒産したり、解散したり、あれこれあったものが2016年に再建されたものである。中心人物のミロスラフ・スラーデク氏の名前が冠してあるのは、かつてのメンバーから名称の変更の要求があったのかもしれない。
分離してからすでに25年、今でもチェコスロバキアという名称を使用する政党があることは、それなりに感慨深い。それが何の意味を持ちえないものであったとしても。
24 Křesťanská a demokratická unie - Československá strana lidová
ここにもチェコスロバキアを冠する政党があった。というか正式名称が、キリスト教民主同盟―チェコスロバキア人民党だということを知らなかった。ニュースなどでは前半を「キリスト教民主党」という形で使うことが多いし、後半を使うときでも人民党の部分が使用されるのである。最初は「リドフツィ(人民党員たち)」が、キリスト教関係の政党と同じなのが理解できなかった。「人民」というとどうしても「人民共和国」を思い浮かべてしまうのである。
もともとは二つの政党の連合だったのかもしれないが、現在では完全に一つの党として機能している。TOP09のところでも書いたように、2010年の選挙で失った議席を、2013年に取り返し、今回の選挙で更なる躍進を求めて、TOP09と組んでいた市長無所属連合を引きはがして取り込もうとしたのだが、失敗に終わった。この失敗が選挙結果にどんな影響をもたらすだろうか。
個人的には、シンボルカラーらしい黄色が、どぎつすぎて目が痛くなるので、もう少し柔らかい色にしたほうがいいと思う。この政党のシンボルカラーも、ウクライナのオレンジ革命に触発された社会民主党が大々的に活用するまでは、存在しても、共産党の赤以外はそれほど目にはつかなかったのだけど、最近はちょっとうんざりするぐらい使われていて食傷気味である。
25 Česká strana národně sociální
「チェコ国家社会主義党」と訳すと、ナチスを思い起こすので、チェコ民族社会党と訳しておこうか。ナチスは「国家」と「社会主義」に「労働者」も加わるんだったかな。「社会主義」も「労働者」も左翼の政党に似合いそうなのに、極右の政党が使う論理がいまいち理解できない。ナチスに似ているからと言ってこの党が、極右の政党だとは限らないのだけど。
以前社会民主党を飛び出したパロウベク元首相が設立した政党「LEV21」も、正式名称はナチスっぽい名前だったんだよなあ。パロウベク氏は今年の夏に社会民主党への復党を願い出て拒否されていたからLEV21は消滅したのかもしれない。こっちは多分左翼政党だったはずである。
26 REALISTÉ
直訳して、「現実主義者たち」ではあれなので、現実主義党としておこうか。2016年末に設立された新しい党である。それ以外はよくわからない。
27 SPORTOVCI
こちらも直訳して「スポーツ選手たち」では話にならないので、スポーツ党としよう。実は密かに5パーセントの壁を越えて議席を獲得してくれるのではないかと期待している。問題は、こっそり、ひっそり立候補したので、スポーツ選手たちが選挙に出ることがほとんど知られていないことである。スポーツ出身の下院議員というと、パロウベク氏に引っ張られて社会民主党から出馬して当選したアイスホッケーのシュレーグル氏が有名なのだけど、この人が出馬したときは結構ニュースでも話題になった。それなのに今回の元スポーツ選手たちの出馬は、立候補が締め切られるまで全く話題にならなかった。
候補者名簿を見たわけではないので、実際に誰が立候補しているのかはわからないが、新聞の記事に取り上げられていただけでも、元サッカー代表のペトル・ラダ監督や、元サッカー選手で解説者というよりはサッカーファンの立場からコメントすることが多いビーゼク氏なんかの名前が見られた。他のスポーツからも立候補している人がいるようで、スポーツ界の現在の政治への不満を集約することができたら、結構いいところまで行くんじゃないだろうか。
みんな政治は素人だろうけど、当選したら緑の党や海賊党とは違って、いい意味で政界を混乱に陥れてくれることが期待できる。できればさらに踏み込んで、来年の大統領選挙に誰か立候補してくれんものかね。長野オリンピックの英雄ドミニク・ハシェクとか、元サッカー協会会長のイバン・ハシェクとか人材はいそうなんだけどねえ。
この件、もうちょっとだけ続く。
9月14日21時。
2017年09月14日
下院総選挙3(九月十一日)
承前
13 Blok proti islamizaci - Obrana domova
「反イスラム化ブロック――祖国防衛」党でいいのかな。もともとはチェスケー・ブデヨビツェの南ボヘミア大学の准教授で昆虫学者として知られるマルティン・コンビチカ氏が中心となって設立した政党で、当初は「チェコにイスラムはいらない」という名前の団体だったらしい。
コンビチカ氏は各地で反イスラムのイベントやデモ行進などを組織し、自称日系人政治家のオカムラ氏と協力することが多かった。その後、オカムラ氏は言動に一貫性がないことをとがめられて、党首を務めていたウースビット(黎明)党から追放されてしまうのだが、コンビチカ氏の党はオカムラ氏を排除したウースビットと協力を進めていく。
その協力関係が金銭的な問題で破たんした後、コンビチカ氏は、反イスラム化ブロックから姿を消す。それが本当に無関係になったのか、今でも黒幕として存在しているのかはわからない。今回の候補者を立てた党のリストにウースビットが存在しないこともあって、いろいろと憶測はできそうである。
現時点で反イスラムブロックが議席を獲得するおそれはない。コンビチカ氏にも、その後継者たちにも、潜在的な難民やイスラム教などの異文化に対する反感を、錬金術的に集約して自らへの支持に変えるような能力はなさそうだ。ただ、今後のことを考えると、絶対ないとは言い切れないのが、残念ながらチェコの現状である。
14 Občanská demokratická aliance
市民民主同盟、略してODAは、90年代の終わりに当時のバーツラフ・クラウス首相のスキャンダルが発生したときに、ODSからたもとを分かった政治家たちが結成したグループである。イメージとしては、80年代の日本の新自由クラブというところか。
2000年代の初めには、自由連合、キリスト教民主連合とともに、四党連合という形で選挙に出て当選者を出し連立与党に参画したこともあったが、自由連合が姿を消した後は、このODAもすっかり存在感がなくなっていた。正直な話、今回の選挙に候補者を立てているとは思わなかった。
ODSからクラウス氏が姿を消して久しい現在、ODAは、ODS以上に、その歴史的役割を終えたと言ってもいい。
15 Česká pirátská strana
緑の党の後を追うように、ヨーロッパに広がりつるある海賊党である。下院には議席を持っていないが、上院に党員ではないようだが、海賊党に推薦されて当選した議員がいる。それから西ボヘミアのカルロビ・バリ地方では、地方議会に議席を得て地方政府では与党になっているはずである。
今回の選挙でも、事前の予想では議席が取れるかとれないかぎりぎりになりそうだというのだけど、わけのわからない政策を掲げているから、当選したら国会が混乱しそうだなあ。緑の党と同じで、一回ぐらいは下院に議席を獲得してもいいかもしれない。でも、主張が特殊すぎるから、VV党やANOのように、既存の政党にうんざりしている層の受け皿にはなれないだろう。その点は安心できるのだけどね。
16 OBČANÉ 2011-Spravedlnost pro lidi
「市民2011」と訳しておこうか。副題は「人々に公正さを」。詳細は不明。2013年の下院の選挙ではプラハ選挙区にしか候補者を立てなかったというから、本気で議席を獲得しようと考えていたわけではないようだ。議席獲得には全国で5パーセントの得票率が必要になる。
17 Unie Hrdosti, Aktivity, Vlastenectví, Empatie a Lidskosti 2017
全体としては、訳しようがないので、連合(Unie)の後に二格で続いている言葉をそれぞれ訳しておくと、「誇り」「行動」「愛国心」「感情移入」「人間性」ということになる。団体の結成が2017年ということで、末尾に数字が入っているのだろう。これもよくわからない団体である。
18 Česká národní fronta
「チェコ民族戦線」、いや、「国民戦線」と訳したほうがいいのかな。これもよくわからない政治団体である。
「národní fronta」は、チェコの歴史においては、普通、第二次世界大戦末期に、ロンドンにあったベネシュ大統領の亡命政府と、チェコスロバキア共産党が中心となって結成された政治的な同盟をさす。1948年に共産党が政権を獲得し一党独裁体制を築いたことで、実質的には消滅したが、名目上は、1990年まで存続し、共産主義政権の時代には、選挙の候補者はすべてこの国民戦線から立候補したことになっていた。
チェコ語では他にもベルギーの右派の政党、南ベトナムの民族解放戦線を「národní fronta」という言葉で表すから、この「Česká národní fronta」が、右なのか、左なのかはよくわからない。フランスの国民戦線のことを考えたら、極右の政党なのかな。
19 Referendum o Evropské unii
「EUについて国民投票」党?でいいのか。EU加盟前の2003年に行われた加盟の是非を問う国民投票のやり直しを求めているのだろうか。これもよくわからない。
20 TOP 09
2009年に、キリスト教民主同盟から分裂して成立した政党である。当初は人気者のカレル・シュバルツェンベルク元外相が党首として党を代表していたが、実質的には現在の党首である元財相のカロウセク氏の政党だと言っていい。
カロウセク一派の脱退によって、2010年の下院の選挙で議席を獲得できなかったキリスト教民主同盟が、前回2013年の選挙ぐらいから、支持率を挙げて党勢も回復傾向にあるのに対して、TOP 09は入れ替わるように支持率を落としつつある。大統領選挙に立候補したシュバルツェンベルク氏が党首の座を引いたもの影響しているはずである。
ANOのバビシュ氏とカロウセク氏の争いは、共に経済の専門家を自任しているだけに、激しく時に目くそ鼻くその言い合いと化してみっともないことこの上ない。カロウセク氏の言動に嫌悪感を感じるチェコ人は多く、この人が党を代表している限り、結党直後の勢いを取り戻すことはないだろう。
他に誰が、となったときにすぐに出てくる政治家の名前が存在しないのもこの党の弱点と言えるだろうか。カロウセク氏、シュバルツェンベルク氏以外でTOP09というと、元防衛大臣で在任中の軍用機の購入に関して裁判沙汰になっているパルカノバー氏ぐらいしか思い浮かばないのである。
個人的にも、外国からの郵便物への課税とか、ビザを取るのにチェコの保険が必要とか、外国人いじめの政策を主導したカロウセク氏を許す気はないので、この党も早々に消滅すしてくれることを希望している。シュバルツェンベルク氏が政界から引退した今、存在意義もなくなっていることだしさ。
9月13日16時。
2017年09月13日
下院総選挙2(九月十日)
承前
7 STAROSTOVÉ A NEZÁVISLÍ
七番目は、六月の時点ではキリスト教民主同盟と組んで共同の候補者名簿を作成して選挙に挑むことになっていた市長無所属連合、略してSTANである。世論調査で、二つの党が組んだ場合に必要な10パーセントを越えることができなかったことから、両方の党で見直しを求める声が高まり、結局は別々に候補者名簿を作成することになった。連合の組みかた次第では5パーセントでも議席が獲得できたのだけど、どちらかの党の名簿にもう一方が吸収されるという形になるから、嫌われたようである。
共同での候補者名簿作りが決まったときには、合同で大々的に共通の選挙用のポスターやらビデオクリップやらを作成して発表していたのだが、すべてなかったことにされた。STAN側が、即座に新しい選挙用の素材を発表していたところを見ると、最初から提携を解消することを見越していたということだろうか。
この党は、前回の選挙までは、キリスト教民主同盟から分かれたTOP09と組んでいた、正確にはTOP09の候補者名簿にSTANのメンバーが登録されていたから、今回が単独での候補擁立は初めてということになるのかもしれない。
8 Komunistická strana Čech a Moravy
続いて共産党である。ビロード革命直後は、いわゆる正常化の時代の記憶も新しく、党勢を大幅に落としていたようだが、最近、あの時代を知らない若い人たちの間にも支持を広げて、一時はチェコテレビの世論調査で、社会民主党を抜いて支持率で二位になっていたほどである。
社会民主党は、確かゼマン大統領が党首だった時期にボフミーン宣言とでも呼べるものを出して、共産党との連立はしないことを決定している。もともとは、地方議会でも適用されるはずだったこの宣言は、地方政府レベルではすでになし崩し的に連立を組んでいるので、国政の舞台で、社会民主党、共産党による連立与党が誕生するのも時間の問題かもしれない。というか、現時点では、それ以外にバビシュ首相誕生を阻止する方法はなさそうである。
この党の人たちは、国会の審議の際に、ほかの党の議員が、ビロード革命以前のチェコスロバキアの政治や政治家を罵倒するような発言をすると、必ず訂正を求める発言をする。かれこれ三十年近くたつというのに律儀なことである。
9 Strana zelených
緑の党が、チェコの国会から姿を消したのは幸せなことである。今回もこの党が議席を獲得しないことを願っておこう。議席を獲得するような事態になっても、この党と連立を組むようなことはないと信じたい。トポラーネク内閣で市民民主党と連立を組んだ緑の党は、混乱と迷惑の象徴でしかなかった。
現在プラハ市でもANOなど組んで与党の側に立っているが、連立に際しての合意を無視して好き勝手な発言を繰り返し市政に混乱を引き起こしているようだ。その緑の党を代表する迷惑人物が、ANO選出の防衛大臣ストロプニツキー氏の息子と言うあたり皮肉な話である。
とまれ、日本に緑の党が存在しない(するかもしれないけれども意識する必要がない)ことは、喜ぶべきことである。チェコからもこのドイツあたりからもたらされた病害が消えることを願ってやまない。
10 ROZUMNÍ - stop migraci a diktátu EU - peníze našim občanům, důchodcům, dětem, zdravotně postiženým...
またまた意味不明な政党名であるが、直訳して「常識ある者たち」党とでもしておこうか。後ろにつく副題?は、「難民とEUの独裁にストップ――お金は我が国の市民に、年金生活者に、子供たちに、健康に問題のある人たちに」となる。反移民、反EUで、チェコの税金はチェコ人のために使えということを主張する政党ということになろうか。
この党のホームページに上がっている各選挙区のリーダーをチェックしたが知っている人一人もいなかった。大統領候補としては、党首のペトル・ハニクという人を独自に擁立するようだけど、知らんなあ。ニュースなどでも話題に上ったことはないと思う。署名活動で必要な数を集められるのだろうか。
11 Společnost proti developerské výstavbě v Prokopském údolí
これまた何のために国政選挙に出るんだろうと言いたくなるような政党である。「プロコプ渓谷の開発に反対する会」とは、何ぞや。
プロコプ渓谷というのは、プラハ南西部にブルタバ川の支流が作った渓谷である。この谷間をプラハから西、プルゼニュのほうに向かう鉄道の路線が走っている。プラハ市内では北西にあるシャールカの渓谷と並んで、自然が残っている場所なのかな。そこにマンション建設が進められていて、それに反対する人たちが政治団体を作って選挙に出るということのようだ。
プラハ市議会議員の選挙ならともかく、国政選挙じゃあこの渓谷のことは論点にはなるまい。この党だけではないけれども、こういうのを見るとチェコにも日本と同じで金と暇があって選挙に出るのが趣味という人がいるのだろうと思えてくる。日本みたいに政見放送の時間があれば楽しそうなのだけど、チェコテレビは議席を獲得しそうな政党を優先して討論番組に招待するようだから、この党に出番はあるかな。
12 Strana svobodných občanů
自由市民党と訳しておこうか。2009年にペトル・マフという人が設立した政党で、国政選挙ではまだ当選者を出したことはないが、地方議会、市町村議会の議員は輩出しているようである。特筆すべきは2014年のEU議会の選挙で、主要政党以外では唯一議席を獲得したことだ。EU議会の選挙が軽視され投票率が20パーセントを下回るものであることを考えても、全21議席のうち1議席を獲得したというのは、政党的には快挙と言ってもいい。
この党の主張は、反EUで、チェコのEUからの脱退を主張している。ヨーロッパレベルでは、EU懐疑派の政党、略称ADDE、直接民主主義のヨーロッパ連盟に所属しているようだ。今回の選挙は投票率が20パーセント以下ということはありえないので、この自由市民党が議席を獲得するチャンスはほとんどなかろう。
9月12日23時。
2017年09月12日
下院総選挙1(九月九日)
十月末に行なわれる下院の総選挙の立候補の届出が締め切られ、立候補が受け付けられた政党に与えられる番号の抽選も行なわれ発表された。各政党はこの番号も利用して選挙運動をしていくことになる。番号を使うのは、政党の名前を知らなくても、書けなくても、投票できるようにという配慮のようだが、実際のチェコの選挙の投票のやりかたは、番号すら必要がないのである。参考。
それでは、今回の下院の選挙にどんな政党、政治団体が候補者を立ているのか、紹介しよう。番号と団体名については、チェコの内務省のページを参照した。
1 Občanská demokratická strana
今回、1番に当たったのは、前回の総選挙でネチャス首相の無責任な政権の投げ出しかたが原因の一つとなって惨敗を喫した市民民主党、略称ODSである。チェコテレビの発表する世論調査では有権者の支持が戻りつつあるようで、ANO、社会民主党に注ぐ第三位を共産党と争っているようだ。この手の世論調査がどこまで信用できるかはともかくとして最悪の時期は抜け出したと言うところだろうか。
ODSは、バーツラフ・クラウス前大統領が市民フォーラムを解体して設立した政党であるが、大統領選挙に出馬した際に党籍を離れ、党首に選ばれたトポラーネク首相との折り合いが悪く名誉党首の称号も返上したのだったか。かつて右腕と呼ばれたネチャス氏との関係はいいようだが、クラウス氏と市民民主党の関係が正式に復活することはなかった。
現在の党首は、フィアラ氏。もともとは大学の教授で、2013年の前回の選挙では党員ではなかったものの市民民主党から南モラビア地方選挙区の名簿一位として立候補し当選している。その後入党して党首に選出されたようだが、この人が首相というのはちょっと想像できない。この党自体が、すでに歴史的な役割を果たし終えているから、今更政権獲得なんてことにはならないだろうとは思うのだけど……。
2 Řád národa - Vlastenecká unie
うーん、何と訳そう。「民族騎士団―愛国者同盟」。とりあえず訳してみたけれども、何とも民族主義的な名前である。現在の党首はあまり知られた人物ではないが、もともとは、ODSからVV(公共の福祉党)に移って下院議員になったカロリーナ・ピーク氏が、VV党を脱退して設立したLIDEMという政党だったようだ。VV党が連立与党から離れて、下野したときに一部の議員が与党に残ることを主張して結成した党だっただろうか。何だかかすかに記憶にある。
正式名称はLiberální Demokratéだから、自由民主党ってことになるのか。二つの言葉の最初を組み合わせて、人の複数三格、つまり「人々に」と言う意味の略称にしたわけだ。うまい語呂合わせだと言うべきか、あざといと言うべきか。その後、ビジョン2014を経て現在の名称に変更されている。一時は、ゼマン大統領のお友達で暫定内閣の首班として指名されながら国会で承認を得られなかったルスノク氏が副党首を務めていたこともあるようだ。
3 CESTA ODPOVĚDNÉ SPOLEČNOSTI
「責任ある社会への道」党。でいいのかな。詳細は全く不明。
4 Česká strana sociálně demokratická
現政権与党の社会民主党、略してČSSDである。以前も書いたように、首相のソボトカ氏の退任は決まっており、秋の選挙で勝てば、外相ザオラーレク氏が首相候補となり、負ければ内相のホバネツ氏が党首の座を引き継ぐことになりそうである。この二人のどっちがましかと言われたら、ザオラーレク氏のほうがましかなあ。ホバネツ氏には蝙蝠疑惑があるし、内務省の重要な情報をSNSで垂れ流しているから、あんまり信用したくない。
現実問題として、バビシュ首相の誕生を防げるのはこの社会民主党しかないのだが、夏休み前のソボトカ首相を中心とした混乱ぶりは、あまり期待を抱かせない。当時の支持率で共産党に抜かれた最低の状態からは脱しているが、国会におけるバビシュ氏叩きを有権者がどう判断するかに、この党の選挙結果がかかっていると言っていい。
ビロード革命以後のチェコの政界を主導してきたのが、クラウス氏の市民民主党とゼマン氏の社会民主党で、暫定内閣を除けば、この二党からしか首相は出ていない。クラウス氏もゼマン氏も出身政党から離れて久しいことでもあるし、ここらで新しい首相を輩出する党が出てもおかしくない。それがスロバキア人でかつて秘密警察の手先だったという噂のある人物が最大の候補でなければ、大歓迎なんだけどねえ。
今のČSSDには、バビシュ首相、ゼマン大統領というある意味最悪の組み合わせを阻止するような力はないと断言しておこう。せめてどちらかは外れてほしいと思うけれども。
5 Volte Pravý Blok - stranu za snadnou a rychlou ODVOLATELNOST politiků a státních úředníků PŘÍMO OBČANY, za NÍZKÉ daně, VYROVNANÝ rozpočet, MINIMALIZACI byrokracie, SPRAVEDLIVOU a NEZKORUMPOVANOU policii a justici, REFERENDA a PŘÍMOU demokracii WWW.CIBULKA.NET, kandidující s nejlepším protikriminálním programem PŘÍMÉ demokracie a hlubokého národního, duchovního a mravního obrození VY NEVĚŘÍTE POLITIKŮM A JEJICH NOVINÁŘŮM? NO KONEČNĚ! VĚŘME SAMI SOBĚ!!! - ale i s mnoha d alšími D ŮVODY, p roč bychom měli jít tentokrát VŠICHNI K VOLBÁM, ale - pokud nechceme být ZNOVU obelháni, podvedeni a okradeni - NEVOLIT ŽÁDNOU PARLAMENTNÍ TUNEL - STRANU vládnoucí (post) komunistické RUSKO - ČESKÉ totalitní FÍZLOKRACIE a jejich likvidační protinárodní politiku ČÍM HŮŘE, TÍM LÉPE!!! - jenž žádá o volební podporu VŠECHNY ČESKÉ OBČANY a daňové poplatníky, kteří chtějí změnit dnešní kriminální poměry, jejichž jsme všichni obětí, v jejich pravý opak! V BOJI MEZI DOBREM A ZLEM, PRAVDOU A LŽÍ, NELZE BÝT NEUTRÁLNÍ A PŘESTO ZŮSTAT SLUŠNÝ!!! Proto děkujeme za Vaši podporu!!! Nevěříte-li na pokoru u popravčí káry, zdá-li se vám naše kandidátka málo dokonalá nebo postrádáte-li na ní zástupce své obce nebo města a přitom MÁTE ODVAHU v této válce Lidí Dobra s vládnoucími Lidmi Zla povstat z jimi naordinovaného občanského bezvědomí, kterým nás ničí a dnešní DEMOKRATURU, SKRYTOU TOTALITU a OTROKÁŘSTVÍ VYŠŠÍHO ŘÁDU zásadním způsobem změnit, KANDIDUJTE ZA NÁS!!! Kontakt: Volte Pravý Blok www.cibulka.net, PO BOX 595, 170 00 Praha 7
この五番は、もうわけがわからん。一応「右派ブロックを選んでね」とでも訳せるような名前は付いているが、その後に並んでいるのはそのブロックに参加しているグループの名前なのだろうか。ネット上のアドレスやら私書箱の番号やらも入っていて意味不明である。読む気にもならんし。
6 Radostné Česko
直訳すると「喜びのチェコ」党とでもなるだろうか。チェコ幸福党なんて訳してもいいかもしれない。ちょっと日本の某宗教団体が選挙に出るために作った政党名を彷彿とさせるなあ。もちろん詳しいことは不明である。関係は多分ないと思う。
全部で31もあるので、今回はこの辺で。
9月11日23時。
2017年08月16日
ゼマン大統領を囲む人々2(八月十三日)
ゼマン大統領の大統領府で、悪い意味でよく知られているのは、ミナーシュ氏だけではない。広報官のオフチャーチェク氏も、負けず劣らず大人気である。他人さまのファッションに文句をつけられるほどのセンスがあるわけではないけど、この人が身につける個性的な眼鏡はともかく、ネクタイにはときどき唖然とさせられてしまう。
ハベル大統領とクラウス大統領の広報官は、ここまで印象を残していないと思うのだけど、ハベル大統領に関しては、最後の時期、チェコ語がまだあまりできない状態で、テレビでニュースを毎日見ていたというわけでもないので、有名な広報官がいたのかもしれない。クラウス氏の広報官が、ニュースの中心になったことはないんじゃないかと思う。
オフチャーチェク氏が有名なのは、詭弁とも言うべき方法で、ゼマン大統領の言動を正当化して人を唖然とさせるからである。ちょっと地下鉄サリン事件のときのオウムの広報官を思い起こさせるかもしれない。あの人も、「ああいえばじょうゆう」とかなんとか言われていたよなあ。オフチャーチェク氏はあそこまで饒舌ではないか。
今回のバビシュ氏の件に関しても、大統領の言葉なのか、広報官としての意見なのかいまいちよくわからないのだけど、ゼマン大統領に対する攻撃であると言っている。ちょっと待て、最近バビシュ氏とゼマン大統領が親密な関係なのは、よくわかっているけど、バビシュ氏への攻撃がそのままゼマン氏への攻撃を意味するというのはいくら何でも短絡し過ぎである。
そしたら、ゼマン大統領が、秋の総選挙の後は、何があっても第一党となった政党の党首を首相として指名し組閣させると言い出した。これは、世論調査の結果から現時点ではANOが勝つことが予想されていることを考えると、バビシュ氏を首相に指名すると言っているに等しい。大領領選挙での再選のためにバビシュ氏としっかり手を組むことに決めたらしい。
これに対して、ソボトカ首相は。バビシュ首相の誕生を阻止するためには、選挙で社会民主党が勝つしかなく、社会民主党が勝利してゼマン大統領が歯軋りしながらザオラーレク氏を首相に指名するのを楽しみにしているとか言っていた。なんかピントがずれているような気がするが、ゼマン大統領とソボトカ首相の関係が修復不能なところまできているのは明らかである。大統領が2003年の大統領選挙での裏切りを忘れていないように、首相も前回の総選挙の後、大統領がハシェク氏を首相に指名しようと画策したことを忘れていないのだろう。
市民民主党の批判、いや恨み言は、2013年夏の出来事に直結する。あのときは、ネチャス内閣が総辞職したあと、市民民主党では新たに党首に選出されたニェムツォバー氏に首班指名が降りるように要請したのだが、ゼマン大統領はそれを拒否し、お友達のルスノク氏に暫定内閣を組織するように指名したのだった。
その大統領主導の暫定内閣は、国会で承認を得ることができず、結局解散総選挙という流れをたどったのだが、そのとき大統領が市民民主党の党首に組閣命令を出さなかった理由が、今回のバビシュ氏のように刑事事件として立件される可能性があるからというものだったらしい。犯罪性があるかもしれないと言われていたのは、辞任したネチャス氏であって、新たに党首に就任したニェムツォバー氏ではなかったというのにである。
そんな前例を持ち出しての批判にも、あのときとは状況が違うとか言って自らを正当化するのかゼマン大統領で、それを支援するためにあれこれわけのわからない論理を駆使するのがオフチャーチェク氏なのである。そして、最近の蜜月振りを見るとバビシュ氏もゼマン大統領の取り巻きの一員となったと言ってもいいかもしれない。
とまれ、このまま行くと、刑事事件で起訴された総理大臣なんてことになりかねないのである。起訴されても、国会議員としての資格を失うことはないはずだから、被告として現職の総理大臣が裁判に出るなんてことにもなるのかな。それはいかにもチェコ的でちょっと見てみたい気がする。ただなあ、バビシュ首相に、ゼマン大統領ってのは最悪の組み合わせなんだよなあ。どちらかかったぽでも阻止してくれないものだろうか。
8月15日22時。
2017年08月15日
コウノトリの巣続編(八月十二日)
秋の下院の総選挙も間近に控えているうえに、夏休みであまり機能していない国会に対して、警察が国会議員を刑事事件の捜査の対象にする許可を求めたというニュースが流れた。対象となっているのは、秋の選挙で勝つのが現時点では確実視されているANOの党首で元財相のバビシュ氏と、ANOの副党首でバビシュ氏の片腕とも言うべきファルティーネク氏である。
チェコの国会議員は、日本と同様不逮捕特権を有している。いや、以前は日本のものよりも遥に大きな特権だった。何せ、以前は一度国会議員になってしまえば、一生この特権に守られて警察の捜査の対象にならなかったのだから。現在は任期中という限定がついているはずである。ただ、任期中であっても、所属する議院、下院か上院の賛成があれば、警察は刑事事件として立件することができる。
ただし、数年前に、社会民主党の国会議員兼中央ボヘミア地方の知事だったラート氏が、賄賂として手に入れた多額の現金を所持しているところを警察に拘束された場合には、逃亡を防ぐためか警察は身柄を押さえた上で、国会に捜査の許可を求めていた。ラート氏も警察の留置所から国会の審議に出席して長々と演説をして、自分を捜査の対象にする許可を与えるように求めていた。
それを考えると、チェコの場合には不逮捕特権というよりは、逮捕されても刑事事件として送検されない特権なのかもしれない。いずれにしても、国会の審議で捜査の対象する許可が出れば、場合によっては刑事犯として起訴されることになる点では変らない。ラート氏も政敵の陰謀だから、警察の捜査が自分の無罪を明かしてくれるはずだとか何とかありえないことを主張していたなあ。
それで、今回警察がこの権利を使って、バビシュ氏を捜査の対象にすることを求めたのだが、時期が悪いとしか言いようがない。一つは、すでに選挙戦が始まっているといってもいい秋の総選挙に影響を与える可能性が大きいことである。以前も書いたことがあるが、チェコの警察、検察のいいところは、政治家に対して手心を加えることなく捜査の対象にし、ときに逮捕にまでいたるところである。反対に悪いところは、その政治家への捜査が、しばしば政治的なものになってしまうところである。今回も、ANOを勝たせたくない勢力の手が動いていることが疑われそうなタイミングである。
それから、この許可は、現在では議院の任期ごとに必要となっているらしく、今許可が出たとしても、秋の総選挙の後、バビシュ氏が当選するのは確実なので、改めて許可を取る必要があるらしい。二度手間になることを考えると、選挙の結果が出た後で請求したほうがましだっただろう。選挙までの短い時間で大したことができるとも思えないし。
警察が刑事事件として立件したいといっているのが、以前も書いた半分バビシュ氏の住居として使われているらしい「コウノトリの巣(チャピー・フニーズド)」という農場のような施設に関する疑惑である。2008年にEUの助成金をもらってほとんど廃墟と化していたかつての農場を改装し始めたというこの施設は、名前からして北京オリンピックのメイン会場となった「鳥の巣(プタチー・フニーズド)」を模している。
改修にかかった二億コルナのうち、五千万コルナをEUの助成金でまかなったらしいのだが、その助成金が対象としていたのは、中小企業だけだった。バビシュ氏は、助成金を得るためだけに、身内の名義でペーパーカンパニーを設立し、会計処理が終わった時点で、補助金の対象外だったアグロフェルトに買収させることで、本来は獲得できなかった助成金を詐取したという疑いがもたれている。
疑い自体は以前から存在したのだし、手口も明らかだったのだから、それが犯罪に当たるのかどうかは、自明のことだったのではないのか。疑惑が表に出た時点で警察が動かなかったということは、犯罪とまでは言い切れなかったからではないのだろうか。だから、このタイミングで国会に許可を求めるというのは、何か意味があるはずである。刑事事件として立件するだけの新たな証拠を掴んだのか、選挙前の政策捜査なのかは。時間が明らかにすることになろう。明らかにならないかもしれないけれども。
バビシュ氏は例によって、警察を傘下に収める内務省の大臣のホバネツ氏と、天敵カロウセク氏の仕掛けたバビシュつぶしの陰謀だと主張しているけれども、疑惑自体は自業自得というべきものなのだから、説得力はあまりない。
結局、バビシュ氏側も、反バビシュ氏側も、どちらも信用できないというのが、正直なところである。世論調査の結果で、ANOが一番の地位を維持し続けているのは、どんなにバビシュ氏が批判されても、批判する側も同じ程度には信用できないことで、支持率があまり変化しないのではないかと考えている。
助成金に関する問題があちこちで発覚して逮捕者を大量に出しているのは、EUの助成金のシステムそのものに問題があるからだろう。EUの助成金コーディネーターとか、コンサルタントなんて胡散臭い職業が存在できるほどなのだから。
8月13日22時。
2017年08月14日
ゼマン大統領を囲む人々1(八月十一日)
このテーマで真っ先に挙げなければいけないのは、大統領府の長を務めているミナーシュ氏であろう。チェコの大統領は、アメリカやロシアなどの強い権力持つタイプではなく、どちらかというとドイツに近いもので、政治的な権限はさほど大きくない。国会議員の中から総理大臣になるべき人物を選んで、組閣させることはできるが、慣例として、第一党の党首が指名されるものだし、それ以外の人物が指名されるのは、連立交渉に失敗した場合に限られる。その首相も国会で承認を受けなければいけないわけであるし。
だから、本来大統領が、政局に影響を与えるということはないはずだし、あってはいけないのだけど、現在のチェコの大統領の存在感は、その権限以上に大きいものになっている。それには、初代のハベル大統領がビロード革命の立役者で、二代目のクラウス大統領が、ビロード革命直後からに2000年代初頭のチェコの政治を主導してきた人物であるという事情が関係している。現在のゼマン大統領が、最後のこの手の政治的に大物の大統領になりそうである。
ただ、ゼマン大統領の存在感が大きいのは、前任者二人と比べて、憲法で規定されている大統領の権限を越えるような行動が多いことによる。本人の見解では、国会議員による間接選挙ではなく、国民の直接投票によって選ばれた大統領の権限が、これまでの大統領より大きくなるのは当然だというのだが、それに賛成するチェコ人はそれほど多くない。
来年の選挙に向けて立候補を表明している候補者の顔ぶれを見ても、将来大統領になりたいなんてことを言っている人物たちを見ても、小物感は否めないので、仮に大統領の権限が多少強化されたとしても、ゼマン大統領ほどの存在感を持つ大統領はしばらく出てきそうもない。
そんなゼマン大統領の大統領府で存在感を発揮しているのは、大統領本人だけではない。大統領の面倒を見るのが仕事の大統領府なんてものを、意識することはゼマン大統領が就任するまでは滅多になかった。シュバルツェンベルク氏がハベル大統領の大統領府の長を務めていたことはよく知られているが、それはむしろその後大臣になったり、大統領候補になったりしたことによる。クラウス大統領のときに誰がこの役職を務めていたかなんて知りもしないし。
それが、ゼマン大統領の大統領府の長を務めるミナーシュ氏は、特に悪い意味でよく知られている。最初に問題になったのが、最高軍事機密に触れるための権利を取れなかったという話だっただろうか。NATOのサミットがあった際に、大統領とともに出席したわけだが、その権利がなかったために、会議から排除されたんだったかな。その権利は自国の軍の情報部が、申請者を調査して適切だと認められれば得られるものらしいのだけど、ミナーシュ氏に関しては申請はしたものの、サミットまでに許可が下りず、その後も許可が折りないと言うのが問題になっていたような記憶がある。
この権利が何を規準に認定されるのかというのはいまいちよくわからないのだけど、チェコの歴史を考えると、共産主義の時代に秘密警察の協力者ではなかったことの証明なんかが必要になってくるのだろうかと想像している。この件は、まあミナーシュ氏本人のせいとは言い切れないから、そこまで批判の対象にはなっていなかった。
二年ほど前だっただろうか、ゼマン大統領の言動に不満を抱いたストホベンという名前の行動的芸術家集団が、改修中のプラハ城の屋根に登り、掲揚されていた国旗を取り外して、代わりに巨大な男性用の下着のトランクスを掲揚するという行動を起こしたことがある。ゼマン大統領には、国旗よりも汚れた下着がふさわしいという批判の意味をこめた行動だったらしい。
この事件自体も、警備体制はどうだったんだとか、登るのに利用された工事用の足場の管理はどうなっていたのかなどあれこれ問題を引き起こしていたが、一番強く批判されたのが、この事件が起こったとき、ミナーシュ氏が自分の地元の南モラビアのある村の人たちを、プラハ城の大統領官邸に招待して、普通の人は入れないようなところまで見せて回っていたという事実だった。この遠足に来た一団の存在が、大統領官邸に関係のない見知らぬ芸術家連中が入り込んでも気づけなかった原因のひとつだったらしい。
その後、プラハ城にはテロ対策と称して、入り口で飛行機に乗るときと同様の手荷物検査が行なわれるようになった。導入当初は長い行列が出てきている様子がニュースで伝えられていたから、今でも多くの人がプラハ城見学のために、行列を作っているのだろうと思っていたら、手荷物検査を嫌ってプラハ城に見学に来る人の数が激減しているらしい。城の前に広場も閑散としていて、小遣い稼ぎに楽器を弾いていた連中も稼ぎの悪さに別な場所に移ってしまったという。
プラハ城を見学しようとして人の多さにうんざりして諦めた人には、今がチャンスかもしれない。ゼマン氏以外の大統領が誕生したら廃止されるのは決定的だというし、手荷物検査のわずらわしさを気にしないのであれば、人ごみに酔うなんてこともなくのんびり自分のペースで見学できるはずである。そして、そのことをミナーシュ氏に感謝しなければいけない。
何でもこの手荷物検査の導入は、ゼマン大統領が強い批判にさらされたミナーシュ氏をかばうために導入を決めたものだという。入場者を制限することと、ソトホベンのようなよからぬことを考えてプラハ城のエリアに入ろうとする連中を排除することが目的になっているらしい。その意味で現在、見学者が減っているのは、望む所なのだろう。
それから、ミナーシュ氏がジョギングするからという理由で、一般公開が停止された鹿の堀なんて名前の場所もあるらしい。ミナーシュ氏が危険にさらされるのを防ぐのが目的なのか、ジョギング姿がメディアに登場するのを防ぐのが目的なのか、判断の難しいところである。
8月12日23時。