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2018年10月21日

サッカーチェコ代表ちょっと復活(十月十七日)



 日本代表が、日本での親善試合とはいえ、ウルグアイとものすごい試合をしたらしい。ワールドカップのベルギー戦も負けたけど、凄くいい試合だったし、ワールドカップ後の最初の二試合も見事な勝利を収めているから、日本代表は現在のところ、完全に上昇気流に乗ったというか、好循環が始まっているといってよさそうだ。ワールドカップにも出られず、その前後の試合もぼろぼろで見ていられないという状態が続いていたチェコ代表を応援する身としては、遠くからうらやましいと思うしかなかったのだけど、監督が交代してちょっとばかり状況が変わった。

 余計な大会を新設しやがってという怨み節もあちこちから聞こえてくるネイションずリーグの10月の2試合、ともに敵地でのスロバキア戦と、ウクライナ戦を見て、日本代表のファンをうらやましく思う気持ちは少しだけ小さくなった。進監督シルハビーの選んだ代表は、ヤロリーム時代とそこまで大きくメンバーが変わったわけではないけれども、少なくともチームとして戦えつつあったし。特に守備の連携はまだまだだったけど、ミスをカバーしようとする姿勢は見られた。ようはチェコ代表がまた強さを取り戻しそうな予感がある分、日本代表のファンを羨む必要がなくなったのである。
 先週の土曜日にスロバキア代表との試合が行なわれたのは、チェコの国境からも遠くないトルナバの町。チェコ人監督のラータルに率いられたトルナバのチームはヨーロッパリーグの予選を勝ち抜いて、本選のグループステージでも頑張っているのかな。それが開催地として選ばれた理由だということはないだろうけど、チェコとスロバキアのサッカー界のクラブレベルの密接な関係を象徴する町ではある。ちょっと前まではルジョンベルクで監督がチェコ人ということが多かったんだけどね。

 それはともかく、このスロバキアでのチェコ代表の試合、一月前のウクライナ、ロシアとの試合とは内容的には雲泥の差だった。ただし、メンバーは初選出の選手はおらず、最近呼ばれていなかった選手が何人か久しぶりに招集され、先発していた。一番重要だったのは、中国に移籍して結果を残せなかった後、アメリカに移籍して最多アシストを記録するなど大活躍しているドチカルの復帰だろうか。守備面ではトルコに移籍して話題に上りにくくなっていたMFのパベルカとチェルーストカも復帰してどちらもいい仕事をしていた。
 この三人と、これも久しぶりの攻撃の選手ビドラ以外は、九月とまったく同じメンバーで、見違えるようなチームになったのは、監督が交代してそれまでの停滞感を払拭できたからだろう。ワールドカップの予選で敗退が決まった時点で監督が交代していたらと思わずにいられない。教育省の助成金のスキャンダルに巻き込まれて、もしくはスキャンダルの主役として、前サッカー協会長のペルタが辞任を余儀なくされてたのが痛いよなあ。問題ありありの人物だけど、こういうところでの決断力はある人だったのだ。

 肝心の試合のほうは、チェコが2−1で勝った。得点はどちらもドチカルのパスからで、1点目は見事なウリチカパスをクルメンチークに通し、2点目はサイドからゴール前に飛び込んだシクの頭にどんぴしゃで合わせた。他にもチャンスは作れていたし、九月の絶望的な状況からは、かなりよくなり今後に期待が持てそうだった。
 問題が大きいのは守備の方で、九月よりはましだったとはいえ、マークの受け渡しとか、カウンターへの対応とか、改善の余地は大きい。中盤が機能しているときはまだましだったけど、ハムシークをはじめとするスロバキアの選手に振り回されることが多かったからなあ。チェコが勝てたのは、スロバキアの選手たちが決定的なチャンスを少なくとも二回は外してくれたおかげである。
 個々の選手の能力を比較すると、多分現時点ではスロバキアの方がずっと上なのだろう。スロバキアの選手たちがテンポよくボールを回している時間は、幸いにしてそれほど長くなかったが、チェコは手も足も出ない感じだった。九月までの代表だったら、クルメンチークのゴールの後に、スロバキアがギアを上げて来て、ハムシークのゴールで同点に追いつかれた後、そのまま逆転されて負けていただろうから、押し込まれ続けていたのを何とか押し返して勝ち越し点をきめたのだからすばらしい。相手のペースが落ちたのも大きいけど、以前はそこまで頑張り切れていなかった。

 そして、昨日火曜日にはウクライナで試合が行われた。九月のチェコでの試合で後半だけ見たウクライナなら、今の、監督交代後のチェコなら勝てるのではないかと期待したのだけど、現実は甘くなかった。ホームのウクライナは、チェコでのウクライナよりはるかに出来がよく、スロバキアのようにミスもしてくれなかった。それでも、内容から言えば引き分けでもおかしくない試合だったから、チェコ代表は頑張ったのである。
 スロバキアとの試合で、中盤の守備のかなめソウチェクがネイションズリーグ二枚目のイエローをもらって出場停止を食らったのが痛かった。代わりに出たバラークの出来が、今季イタリアであまり出場機会が得られていないこともあってあまりよくなかったし、そのバラークのミスから、その後の守備の選手たちの対応もお粗末だったけど、唯一の失点を食らって0−1で負けたわけだから。決めたウクライナの選手(よその国の選手は名前が覚えられない)もうまかったけど。

 チェコ側もシュート自体は結構打って、それなりに枠に飛ばしていたんだけど、ウクライナのキーパーが調子がよくて、ことごとく止められてしまった。ちょっと運がなかったかな。運と言えば、このネイションズリーグのウクライナは、ものすごく運がある。ウヘルスケー・フラディシュテの試合では、終了直前に決勝点を挙げたし、スロバキアでの試合では、ちょっと怪しいPKで勝利を決めている。今回のチェコとの試合も引き分けでもおかしくなかったのに、きっちり勝てているし。
 チェコに勝った時点で、チェコ・スロバキア・ウクライナからなるグループでの優勝は決定だけど、この後も(どんなプログラムが続くのかは知らないが)いいところまで行くのではなかろうか。実質上の監督がシェフチェンコってのもちょっとうらやましい。チェコもネドビェドとかポボルスキーあたりがやってくれんかななんて期待してしまう。シルハビーも期待できそうな監督ではあるんだけど、やっぱインパクトが違うからさ。

 ところで、スロバキア代表の監督が、チェコとの試合の後、突如辞任を発表した。ネイションズリーグで勝てる試合を二試合続けて落としたのが原因だと思っていたら、そんなことはなかった。事実はチェコとの試合の後、若手を中心とする一部の選手たちが宿舎を抜け出して飲みに出かけ、泥酔して朝帰りをしたところに一睡もできなかった監督が出くわして、監督としての仕事に空しさを感じたらしい。勝つつもりでいた試合に負けて自棄座を飲みたくなる気持ちはわかるけど、この辺がチェコよりもいい選手がそろっていながら、成績が振るわない理由なのかもしれない。勝っていたら特に文句も言われないのだろうけどさ。スポーツの世界なんて、どんなにきれいごとを並べたところで、勝てば官軍、もしくは勝てばすべてが許される世界なんだからさ。
2018年10月18日23時5分。









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