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2018年09月19日

デビスカップ入れ替え戦(九月十六日)



 金曜日にチェコテレビの2にチャンネルを合わせていたら、サッカーの中継が始まった。何事かとスポーツにチャンネルを替えたらテニスをやっていた。準決勝が華々しく行われる裏で、チェコは入れ替え戦に臨んでいたのである。相手はどう見てもテニス大国とは言えないハンガリー。プログラムを見ると日曜まで放送予定が入っているけど、金土の三試合で決着がついて、日曜日の消化試合は中継されないんじゃないかなんてことをこのときには考えていた。
 チェコは数年前には二年連続優勝を飾るなど、最強チームの一つだったのだけど、最近は成績がパッとしない。考えてみればあの二年は、ほとんどシュテパーネクとベルディフの二人が限界を超えるような試合を連発してある意味奇蹟的な勝ち上がりを続けていたのだった。その二人のうちシュテパーネクは怪我がちだった選手生活の晩年を終えて引退し、ジョコビチのコーチをやっているのかな。ベルディフもベテランになって試合数の多さに耐えかねたのか、すでにデビスカップ代表を引退することを表明している。今年は怪我が続いてプレーできていないから、引退していなくても出場はしなかっただろうけど。

 そうなのである。チェコの男子テニスは今危機的な状況にあるのである。2000年代の初めに活躍したイジー・ノバークの時代から、シュテパーネク、ベルディフと続いてきたチェコのトッププレイヤーがいなくなってしまった。ランキングで10位以内なんてとんでもない。現在チェコ選手で一番ランキングが高いのは怪我で欠場が続くベルディフの70位代で、二番目がベセリーの90位代なのである。一時はベセリーもロソルも50位以内に入って、ベルディフの後も安泰だと思えていたのに、二人とも順位を上げるどころか下げ続けている。
 だから、デビスカップのチェコ代表が、準決勝ではなく入れ替え戦に出場しているのも仕方がないのだ。いや、入れ替え戦程度で留まっているのはまだましな状況だと言ってもいいかもしれない。他の国でもベルディフのように上位選手が出場を辞退することがあるから、チェコもまだこの辺にいられるのだろう。今回のハンガリーも上位二人の選手が出場を辞退したせいで、ランキング400位以下の選手も出場していたというしさ。

 それが、ふたを開けてみたら、苦戦、苦戦、大苦戦だった。最初の試合でベセリーが優位に試合を進めていながら勝ち切れずに逆転負けを喫したのが一番最初の問題だった。マッチポイントまで握ったはずなのに……。最後はタイブレークのないデビスカップだから、第5セットが延々と続かないかと期待したら、あっさり5−7で落として、ランキング400番台の選手に負けてしまった。シュテパーネクのような粘りがないんだよなあ。
 二試合目はベテランのロソルがあっさりと3−0で勝って、1対1で初日を終えた。これで、ダブルスもチェコが勝つだろうから、最悪でもチェコが敗退することはないだろうと安心したんだけど……。いや土曜日のダブルスも、最初の2セットはロソルとダブルス専門のイェバビーのペアが取って2−0になったところまでは、予定通りだったのだ。それが……、あっさり三セット連取されて2−3で敗戦。ハンガリーチームの選手の一人はダブルスのランキングで400番台だったというから、初日のベセリーの負けに続いてのショックな負けである。

 デビスカップは、来年から大きくフォーマットを変えて、これまでの一年を通して一回戦から決勝まで対戦国のどちらかの国で開催される形ではなく、本大会は一か所に出場チームをすべて集めて、一週間かけて開催することになるらしい。試合も3セット先取から2セット先取で勝ちということに変更されるというから、これまでのドラマ性が、見る人を熱狂させたデビスカップの魅力が失われるような気がする。2セット先取で勝ちなら、今回のハンガリーでの入れ替え戦も、土曜日の段階でチェコの勝ちが決まっていたわけで、あれほど盛り上がることはなかったはずである。
 チェコのテニス関係者は、この変更に不満たらたらで、デビスカップの意味がなくなるとまで言って反対したらしいけれども、負担を減らすことでフェデラーやナダルの参加を取り付けたい主催者には聞き入れられなかったようだ。チェコの元選手の中には、数年後には訪れるフェデラーやナダルの引退後も、主催者たちは同じことを言うのかねと皮肉なコメントを残していた。
 そんな新しい魅力のないデビスカップならチェコは出なくてもいいよね。このままハンガリーに負けてしまってワールドグループから転落しても問題ないよねなどとまで、このダブルスに負けた時点で考えてしまった。チェコが出場できたとしても、これまでの盛り上がりは期待できそうにない。あとでちょっと確認したら、チェコはこの入れ替え戦に負けていても、少なくとも来年の予選ラウンドには進出できたようで、何のための入れ替え戦だったんだろうと不思議に思ってしまった。

 話を戻そう。日曜日、あまり期待もせずにチャンネルをテニスに合わせていたのだが、ベセリーは最初のセットをタイブレークで落としたものの、その後何とか立て直して3−1で勝利。すべてはロソルに託された。ロソルも初日にベセリーに勝った400位以下の選手相手に苦労しながらも3−0で勝って、チェコは残留を決めた。ハンガリーの選手たちは負けたとはいえ、不利な状況でも最後まであきらめずに必死でボールを追いかけ、それがかつてシュテパーネクやベルディフが、デビスカップで格上の選手相手に5セットまで持ち込んで勝ったり負けたりしていたのを思い出させて、正直、思わずハンガリー選手を応援しそうになってしまったほどである。
 こういう感動も新しいフォーマットのデビスカップじゃ、なくなるんだろうなあ。女子のフェドカップが変わらないことを願っておこう。
2018年9月17日17時35分。








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