2018年09月11日
チェコ語の語順其の五(九月十日)
承前
昨日の文Gを別な「kvůli tomu(そのせいで)」という表現を使って書き換えてみよう。単純に「昨日はうちに財布を忘れ、そのせいで友達からお金を借りなければならなかった」という文にすると、
IVčera jsem doma zapomněl peněženku
a kvůli tomu jsem si musel půjčit peníze od kamaráda.
「proto」の代わりに「kvůli tomu」が入っただけで、語順には全く変化がない。これをさらに複雑にして、「うちに財布を忘れたせいで」となるように書き換えると、
JKvůli tomu, že jsem doma zapomněl peněženku,
jsem si musel půjčit peníze od kamaráda.
「že」から始まるチャールカによって区切られた部分で、「jsem」が二番目の位置に来ているのは問題ないだろう。「že」も数えるのである。便宜上ここでは「včera」は省略する。
問題は二番目のチャールカの後の部分で、最初に「jsem si」が来ているところである。これは、間に「že jsem doma zapomněl peněženku」が入っても本来の語順が維持されることを示している。つまり、中心となる文においては、「Kvůli tomu」が文頭に来る表現て一番目と数え、「že」以下の部分の直後に二番目に来る言葉を置かなければならないのである。これは関係代名詞などを使って名詞の後ろに修飾節をつなげたときも同様である。
例えば、「十年住んでいたオロモウツに昨日五年ぶりに戻ってきました」という文を作ってみようか。主となる文は「Do Olomouce jsem se vrátil včera po pěti letech」となるだろうか。「včera」は一つ前に動かしてもいいかもしれないが、この文のオロモウツの後ろに「bydlel jsem 10 let」をつなげることになる。オロモウツは女性名詞だから「ve které」でもいいけど、普通は場所を表す「kde」で文をつなげる。
KDo Olomouce, kde jsem bydlel 10 let, jsem se vrátil
včera po pěti letech.
「kde jsem bydlel 10 let」の中での「jsem」の位置、文全体の中での「jsem se」の位置については、Jの文と全く同じである。これを実際に使う使わないは無視してあれこれ語順を入れ替えてみよう。
LVčera jsem se vrátil do Olomouce,
kde jsem bydlel 10 let, po pěti letech.
MVčera jsem se vrátil po pěti letech
do Olomouce, kde jsem bydlel 10 let.
とりあえず「Včera」を文頭に出すと、直後に文全体で二番目に置く必要のある「jsem se」が来る。「五年ぶりに」という部分が新しい重要な情報になる場合には、Lのような語順にすることも可能なのだろうが、長い文でこれをやると、意味が取りにくくなるので、普通はMの語順を使う。つまり連体修飾がつく言葉は文末に持って行くことが多いのである。これは絶対ではなく、チェコ語の文章を読んでいると、あれっと思うことはよくあるのだが、自分でこのLのような語順を使うと、大抵は不自然だからと言って直されてしまう。だからJも「Včera」を文頭につけると次のような語順にすることが多い。
NVčera jsem si musel půjčit peníze od kamaráda
kvůli tomu, že jsem doma zapomněl peněženku.
以上のような原則が問題なく使えるようになると、長々とあれこれつなげた文でも、少なくとも書くときには正しい語順で使えるようになる。正しい語順で使えるようになると、例外的に変な語順になっているのが目について、何でこうなるんだと質問して先生を困らせるようになる。
ODíky tomu, že jsem se ve výuce japonštiny dozvěděl,
že se olympijské hry budou konat za dva roky
v japonském Tokiu, jsem dokázal správně odpovědět
na otázku, kdy a kde se bude konat příští olympiáda,
a vyhrál jsem vědomostní soutěž,
která se vysílá v české televizi.
そして必要があればこんな長い文まで、ちょっと考えれば書けるようになる。ただし、思いつきで書いた文なので正しさまでは保証しないけれども。それから、問題は日本語で書くときと同様に無駄に文が長くなってしまう傾向が出てくることで、書いているときは凄くわかりやすい文を書いているつもりなのに、後で読み返したら自分でも何が言いたいのかわからないなんてこともしばしば起こる。日本語と同じでやはりバランスが大切なのである。
ちなみにOの文は「日本語の授業で二年後に日本の東京でオリンピックが行われることを勉強していたおかげで、次のオリンピックはいつどこで開催されるかという問題に答えることができて、チェコテレビで放送されているクイズ番組で優勝できました」という内容である。
以上で、ぐだぐだと途中でひんぱんに書き振りが変わりながら続いてきたチェコ語の語順についてのお話は一旦終了ということにする。考えてみれば人称代名詞の変化とか、仮定法の作り方とか、これをやる前に書いておくべきことがあるのだから、次にチェコ語について書くときにはその辺かなあ
2018年9月11日10時55分。
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