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2018年08月05日

九日目、あるいは今年のクラスは当たり〈LŠSS2018〉(八月二日)



 八日目、つまり八月朔日の水曜日は南モラビアから撤収のために欠席。前日夕方電車で南に向かったのだが、同じ電車でも冷房の効きのいいところと、悪いところがあったのは、意図的なものなのか単なる故障なのか判断が微妙なところである。日本だと弱冷房車とか表示があるものだが、そんなものはなかったし、それでも冷房の入るような車両が、多くの路線に配備されるようになったことは喜ぶべきことである。
 水曜日は、本当はオロモウツ帰還が間に合えば、最後の部分だけでの出るつもりだったのだが、疲れが出たのかちょっと寝過ごしてしまって、オロモウツについたときには12時ごろで、授業に間に合う時間ではなかった。一つ下の9番のクラスと合同で授業をやるといっていたから、できれば出ておきたかったのだがしかたがない。この暑さでは、体調管理をしっかりしないと欠席数が当初の予定以上に膨れ上がってしまいかねない。
 後で話を聞いたら、この日は、クラスの集合写真の撮影も行われたらしい。前半の二週間だけで帰ってしまう人もいるから、こういう儀式は二週目に行なう必要があるのだ。見せてもらった写真には、ホワイトボードに男の絵が描かれていて日本の旗を手にしている人がいるから、一応そこにいたことにしてもらえたようだ。他にもラジオが来たとかテレビが来たとか言う話もあって、すべて事情があって欠席していた日に行われたのは素晴らしい。今更テレビやらラジオやらに取り上げられて喜ぶような若さは持ち合わせていないのである。そんなのは若き、将来有望な、前途に限りなき未来が待っている若者に任せるに限る。

 早めに学校について、最初の間食、チェコ語でスバチナをしていたら、ウクライナのリュバがちょっと疲れた顔でやってきて、「今日うちの先生突如プラハに行かなければならなくなったらしくて、代わりの先生が来るってよ」と教えてくれた。代講をするのは先生の教え子だという話もしてくれたかな。代講の先生がくるのはうちだけではなく、隣のクラスもだったから、先生の個人的な事情ではなく、学校全体にかかわる問題が発生したのかもしれない。
 授業では第八課に入って、課のテーマはチャリティー。PCで教科書に附属する音声を再生しようとしてあれこれ問題が起こって、結局自分たちで読むことになった。最初の音声の再生自体はうまく行ったのだが、それが終わると、何の関係もないどこから来たのかもわからない音楽の再生が始まってしまって、とめられなくなってしまったのだ。代講の先生は技術には弱くてと何度も謝っていたけれども、気にすることはない。いつもの先生もうまく使えないことが多くて、最後にはいまや懐かしいCDラジカセをクラスに持ち込んでいたのだから。設備が新しくなってデジタル化されるのが、常に先生や学生のためにはならないといういい実例である。困ったときに頼れるのはかつての誰にでも簡単に仕える設備なのである。

 二つのグループに分かれて、チャリティー活動の計画を立てるというロールプレーも行なわれた。この日は、ポーランドから来た三人娘のうちの一人がお休みで、学生の数は9人。わがグループは4人編成で、ドイツ1、ポーランド1、ウクライナ1、日本1という民族構成になった。暑さであまりアイデアが出ず、結局バイエルン、チェコ語でバボルスコの山の中出身だというアナのアイデアで、ギリシャに森をというプロジェクトを計画することになった。最近ギリシャで山火事が起こって大変なことになっているというニュースがあったらしい。サマースクールが始まってから、ニュースあんまり見てないから知らなかったや。
 計画の本体は苗木を育てて植林するというもの。当初はお金を寄付した人が、木の養親になるなんて話もしていたのだけど、報告の際には忘れてしまった。それからお金集めとしては、チェコ国内のギリシャレストランに募金箱おいて募金活動をするとか、ギリシャ系の歌手とか、ギリシャにバカンスに行く歌手を探してチャリティーコンサートを開いて、テレビで中継して入場料だけではなく、寄付用のSMS、いわゆるDMSを送ってもらえるようにするとか、ドキュメント番組を作成してテレビで放送するとか、少しずつ話が具体化していった。三人寄れば文殊の知恵ではないけれども、一人では思いつかないようなことも、他人の意見がヒントになって思いつけた。最後に代表でプロジェクトの発表役を押し付けられたのは、まあ女性の方が数が多かったから男に回ってくるのは仕方がなかった、のかな。

 もう一つの、ドイツ、イタリア、スロバキア、ポーランドグループは、癌の放射線治療で髪の毛を失った人のために鬘を製作して贈るというプロジェクトを考え出してきた。夏休みの時期に各地で行われるさまざまなフェスティバルに出向いて、無料で髪を切りその髪で鬘を作ろうというのである。特別なバスを仕立てて、ボランティアの美容師を目指して勉強している学生たちをあちこちに運ぶなんてことも言っていたかな。これも、多分一人では出てこないアイデアだよなあ。
 こういうのも、一人で勉強するのではなく、学校に通って勉強する利点だといえよう。そしてその利点は学生たちの積極的な姿勢なしには、出現しないものでもある。今年のクラスは、その意味でも大当たりである。三回目のサマースクールのあの最高のクラスには及ばないかもしれないけれども、それを除けばこれまでに経験してきた語学の授業におけるクラスとしては頭一つも二つも抜けている。ウクライナのリュバ先生とポーランドのカロリーナの二人が二週間でコースを終えるらしいのだが、来週以降も今のクラスの雰囲気が継続することを願おう。

 そうそうこの日は休憩時間が終わった後、授業を再開する前に、事務局の人がやってきてリュバ先生にプレゼントを渡していた。ちょうどこの日が誕生日で、サマースクールの事務局から誕生日プレゼントが贈られたのである。これで次の日の出来事につながっていくなんてことは、このときには考えてもいなかった。
2018年8月4日17時。










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