2016年12月10日
レジのオンライン接続開始(十二月七日)
実際に開始されたのは、今月の一日だから、すでに一週間ほどたったということになる。ニュースなどで導入の混乱振りが報道されていたので、簡単に紹介しておく。このシステムは、財務大臣のバビシュが税収増加の切り札として導入を図り、さまざまな反対と問題を乗り越えて、当初の予定からは一年ほど遅れながらも、ようやく運用が開始されたものである。
チェコ語の略称でEETとなるこのシステムを簡単に言うと、国で把握しづらい個人事業主の収入を把握するために導入するもので、店のレジをオンライン接続し、レジに入力した会計データは、そのまま政府が管理するために設置したサーバーに送られ、それに対して管理サーバーからそれぞれのレシートに管理番号が与えられレジに返送される。その番号がレジで発行されるレシートに印刷されることになるのだという。
これによって、誰には把握できないにしても、いつ、何を、いくつ販売したかについてはデータが財務省の管理下に集積されることになり、少なくとも割合の決まっている消費税に関しては取りっぱぐれがなくなるということらしい。この政策を批判する人たちは、ビッグブラザーの悪夢が現実化したようなものだと言っている。確かに、ここまでやるかという気がしないでもない。
一方のバビシュ側は、これまで特に市民民主党の政権下で、企業優先、事業主優先の経済政策が取られ、税金に関しても過剰な優遇を受けてきた上に、脱税する可能性もあったのだから、このシステムの導入で、初めて税制が全国民にとって平等なものになるとかなんとか主張している。そして、チェコに先んじて導入したスロバキアで大きな成果を上げているから、チェコでも税収が増えるに違いないという。なんだか、取らぬタヌキの皮算用になりそうな気もしないでもない。
今回、十二月一日に他の業種に先んじて、飲食業とホテル業に関してこのシステムの運用が開始された。それに伴って、かなりの混乱が各地で起こっていたようである。うちのの話では、この日、あちこちの店(飲食店ではない)で、カード払い用のターミナルが不調で、現金払いしかできなくなっていたらしい。これがシステムの開始と関係があるという証拠はないのだけどね。
この日のニュースでは、システムの開始を機に廃業を選んだ長い歴史を誇る小さな村の小さな飲み屋を紹介していた。廃業を決めた店主は、ハプスブルク家の支配も、ナチスの占領も、共産党政権も生き延びてきたけれども、これは生き延びられないというようなことを言っていた。売り上げの増加にも、作業の効率化にも全く寄与しないシステムを、税金を払うためだけに導入するのは、小さな店にとっては負担が大きすぎるのだろう。
飲み屋にビールを供給しているビール醸造業の業界団体によると、かなりの数の小さな飲食店が、この十二月一日を機に店をたたんだという。売り上げを完全に国で把握できるシステムの導入によって、飲食店一軒当たりの税収は増えるのかもしれない。しかし、その税金を納める店舗の数が減ってしまったのでは、本当に財務省の目論見どおりに税収が増えるのか、疑念を抱いてしまう。それに、ここの店舗でシステムの導入にかかるお金は、事業主の負担であることも納得がいかない。税制上の控除の対象にはなるのだろうけど、国の都合で導入を押し付けておいて、導入に関しては自分たちで忌日までに適当にやっておけというのは、国側の怠慢であるような印象をぬぐえない。国側が積極的にシステムの導入の支援を行なっていれれば、経費はかかっただろうけど、ここまで導入が予定から遅れることはなかっただろう。
ただ、このシステムを導入することにどれだけの意味があったかについては、ニュースでインタビューに答えていたあるレストランの店主の声が、如実に物語っている。チェコでもすでに大半の人がカードで支払うようになっており、隠せる売り上げなんてほとんどないのに、管理が二重になって手間が増えるだけだと。これは、十二月一日にカードでの支払いができなくなったことへの説明でもあるのかもしれない。
ニュースでは多くの飲食店で、システムの導入と同時に値上げを断行したことを伝えていた。せいぜい十パーセント程度の値上げのようだったが、これが一般の人たちの消費活動を抑制するようなことになりはすまいか。財務省が思い描いた税収増加というのは、絵に描いた餅に終わりそうな感じである。
チェコ人というのは、面白いものでこのシステムの導入に関して、飲食店やホテルの対応は、大きく二つのグループに分かれたようだ。一つは当初の開始予定の今年の一月の時点で、準備万端、いつ実際にスタートしても問題のないようにしていた人たちで、この人たちは、システムが導入されることよりも、延期に次ぐ延期で実際に導入されるのかどうかはっきりしないことを強く批判していた。これで導入中止なんてことになったら、無駄な投資を強いられたことになるわけだから、当然といえば当然か。
もう一つは、今回十二月一日からの使用開始が決定した後も、またまた延期されることを期待して、ぎりぎりまで何もしていなかった人々で、十一月の終わりになってシステムに対応したレジや、レジ用のソフトを慌てて購入していたらしい。もちろんこの手の機械は購入するだけでは駄目で、ちゃんと設定する必要があるので、機械だけでなく技術者も引っ張りだこになっていたようだ。この手のお店の中には、レジのシステムが間に合わず十二月の初頭は休業を余儀なくされたところもあったらしい。
とにかく、一度導入した以上は、十年ぐらいは継続して運用してほしいものだ。画期的だった病院での診察料三十コルナも、医療制度の財政が健全化する前に、政権交代で廃止されてしまったし。
12月7日23時30分。
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