2016年11月14日
モラビアサッカー界の異変4――本編(十一月十一日)
モラビアで近年一部リーグに昇格したことのあるチームとしては、もう一つ南モラビアのワインの町ズノイモがある。ズノイモも2013/3014のシーズンに初めて昇格したときには、一部リーグの基準を満たすためのスタジアムの改修を求められ、前半はブルノでホームゲームを行うことを余儀なくされていた。
以前は、初めての昇格の場合には最初の一年は特例として二部基準のスタジアムでのホームゲームの開催が認められていたのだが、いつからか初年度から基準を満たすことが求められるようになり、昇格と降格を繰り返すチームならともかく、初めて、もしくは久しぶりに一部に昇格したチームにとっては大きすぎる負担となっている。そのためせっかく昇格して、スタジアムも新しくなったのに、一シーズンで、新しいスタジアムを数試合使っただけで二部に逆戻りしてしまうことが多い。ズノイモもその例にもれず、一年で二部に落ちてしまった。一緒に落ちたのがオロモウツだったのが、泣くに泣けないところなのだけど。現在監督を務めているのがオロモウツからドイツに行って長年にわたって活躍したラディム・クチェラなので、少しだけ応援している。
だから、初めて一部に上がるとき、久しぶりに一部に上がるときには、チームの強化と、スタジアムなどの環境の改善を、タイミングを合わせて行う必要があるのだが、言うは易く行うは難しでそんなチームは、これまでなかなか現れなかった。
今シーズン、いや今シーズンが始まるまでにその困難を成し遂げたチームが、シレジア地方のカルビナーである。このチーム、昨シーズンの二部リーグで優勝し、実に二十年ぶりぐらいに一部リーグに昇格したらしいのだが、昇格に合わせてスタジアムの改修が終わり、今シーズンは最初からカルビナーでホームゲームを行っている。
チームのほうも2014年に、ドルノビツェ、ヤブロネツで活躍したヨゼフ・ベーブルを監督に迎え、昇格組とは思えないような成績を残している。第一節ではヤブロネツ相手に、打ち合いややって5-3で負けたのだが、昇格組は得てして一部では点が取れないという問題を抱えているから、この時点でカルビナー侮りがたしと思った人は多そうだ。その後三節で現在一位争いにかかわっているムラダー・ボレスラフにアウェーで勝ったのをはじめ、下位のチームから確実に勝ち点を集めて、現在十三節が終わった時点で、モラビア―シレジアでは二番目の七位につけている。
カルビナーと言えば、ハンドボールの町だったのだけど、最近カルビナーのハンドボールチームの成績はかつてほどではないし、町としてもサッカーに力を入れているということなのだろう。シーズン開幕前に、カルビナーがここまで頑張ることを予想した人はほとんどいないはずである。これが、今シーズンのモラビアサッカー界二番目の驚きである。
では、一番目は何かというと、ズリーンの首位争いである。ズリーンは2000年代の初めに、早世したマレチェク監督に率いられて一部リーグに昇格し、しばらく頑張っていたのだが2009年に二部に落ちてしまった。そして2014/15のシーズン後にオロモウツと共に二部から一部に昇格した。
実は、このシーズンのズリーンの二部での順位は昇格圏外の三位だったのだが、二位に入った北ボヘミアのバルンスドルフが、一部に参加する資金も、スタジアムもスタジアムを改修する費用もないということで、昇格を辞退したため、ズリーンにお鉢が回ってきたのである。かつてはこのような場合に、クラブ間で権利の売買が行われていたのだが、このときには売買ではなく、二位がだめなら三位のチームと上位のチームから順番に声をかけていったようである。
再昇格をはらした昨シーズン、オロモウツは落ちたけど、ズリーンは落ちなかった。落ちなかったと言ってもギリギリで、16チーム中13位に終わった。監督が変わったわけでもないし、多くの有力選手が移籍してきたわけでもないので、ズリーンが上位争いをすると予想した人、期待した人はほとんどいなかったはずだ。去年の時点で、サッカーの内容自体は悪くないと高く評価する専門家はいたけど、それがこんなに早く結果に結びつくとは驚き以外の何物でもなかった。
開幕当初から昨季の優勝チームプルゼニュにアウェーで勝つなど、確実に勝ち点を積み重ね、第十節でテプリツェに負けるまで無敗を続けた。その後もまた負けずに、十三節終了時点で8勝1敗4分の成績で勝ち点28を獲得している。上にいるのは勝ち点4差のプルゼニュだけである。しかもシーズンが始まってから攻撃の中心選手だったポズナルをプルゼニュに移籍させているのである。正直意外も意外で、これが今シーズンのモラビアサッカー界最大の驚きにして異変である。
ボヘミア勢が上位を占めることの多い近年、ズリーンとカルビナーの二チームが、順位表の前半分、ヨーロッパリーグの出場権を争える位置にいるだけでも、十分な驚きなのに、首位争いに食い込むチームがあるのだから、モラビア人としてはズリーンを応援するしかない。2003/04シーズンのバニーク・オストラバ以来のモラビアチームの優勝を期待してしまう。
現実的にはプルゼニュが、トルハークに入り始めたから(独走し始めたから)、優勝は難しいだろうけど、チャンピオンズリーグの予選はむりでも、せめてヨーロッパリーグの予選に出ることができたら、これもモラビアのチームとしては、数年ぶりになるので何とか最後まで頑張ってほしいところである。
冬の移籍期間にチェコ語がペラペラで帰化申請したという話もある旧ユーゴスラビア出身のセルビア人、ブカディン・ブカディノビッチ(名前の響きが楽しい)などの中心選手がよそに買われて行かないといいのだけど。監督も引き抜かれないことを祈っておこう。
予想外に続いてしまったこのシリーズもここでお仕舞。
11月11日23時。
シレジア地方のオパバについて言及するのを忘れていた。11月13日追記。
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