2016年11月11日
モラビアサッカー界の異変1――ボヘミアの情勢(十一月八日)
チェコのサッカーリーグの一部は十六チームで構成されている。本題に入る前に、ここ十年ほどのボヘミアとモラビアの一部リーグにおける勢力図を概観しておく。
チェコの都市で一部リーグのチームが二チーム以上存在しているのはプラハだけである。かつて、オストラバのバニークとビートコビツェの二チームが一部にいたとか、オロモウツのシグマが一部で、HFKが二部で上位にいてもう少しで、二チーム一部が達成されそうになったということはあったが、現在のチェコにはプラハ以外にプロのサッカーチームを二つ抱える条件を、観客の面でも経済的な面でも満たせる町は存在しない。
そのプラハからは、大体4〜5チームが一部に属している。スパルタとスラビアは二部に転落したことはないし(いや、共産主義の時代にはあるかも知れんけど最近の話ね)、九十年代の初めに消滅したチェコスロバキアの最強チームドゥクラ・プラハは、2000年ごろに再建され、2011年に一部に復帰して以来二部に落ちたことはない。ドゥクラが強かったのは軍隊のチームで、有力選手は兵役としてドゥクラに移籍したからだなんて話もある。
今シーズンはこの三つにこちらも再建されたボヘミアンズ1905が加わって四つである。ボヘミアンズは、再建後、一部に復帰してからも二部に落ちたことがあるはずだ。それに、かつてはビクトリア・ジシコフが一部に定着していたし、倒産したボヘミアンズ・プラハ関係者から名前の使用権を購入したボヘミアンズ・プラハ(偽)も一部にあがったことがあるから、プラハのチームが全部で5つになることもある。
ボヘミア地方では、まず西ボヘミアには、ここ数年スパルタと覇権争いをしているプルゼニュしか一部のチームはない。昔はネドベドが少年時代に所属していたらしいヘプのチームが一部にいたというけれども、これもまだチェコスロバキアの時代で、このチームも軍隊チームだったかな。
北ボヘミアでは、最近成績が下降気味だけど、かつては安定して上位にいてヨーロッパのカップ戦でも活躍したことのあるテプリツェと、こちらも上位争いの常連だけどヨーロッパではまったくだめだったヤブロネツ、それに三回の優勝とヨーロッパのカップ戦での活躍を誇るリベレツ、この三チームは、ずっと一部にいるし二部に落ちそうな気配はない。
他にはモストとウースティー・ナッド・ラベムも、一部にあがったことがあるが、スタジアムが老朽化していたため、一部リーグ用の基準を満たすための改築工事でよそホームの試合を行うことになるなどの負担も大きく、一部に定着することはできなかった。モストはギリシャからチェコに戻ってきたバニアクが、スラビアに移籍する前に所属していたので結構応援していたのだけどね。
中央ボヘミア地方では、シュコダ自動車のお膝元ムラダー・ボレスラフが十年ちょっと前に一部に昇格して以来しっかり定着し、近年は上位争いを続けている。ボレスラフはヤブロネツと同じでヨーロッパリーグの予選ではなかなか勝てないのが残念なところである。
もう一つのプシーブラムは、かつては上位に顔を出すこともあったが、近年は下のほうで何とか残留というのを繰り返している。二部に落ちたこともあったなあ。サッカーよりはアイスホッケーの盛んなクラドノも一瞬だけ一部にいたか。あのヤロミール・ヤーグルがオーナーを務めるアイスホッケーのチームも二部に落ちてあがってこられない状態が続いていているし、サッカーのチームは二部にもいないから、斜陽の炭鉱の町ということになるのだろうか。
東ボヘミアでは、フラデツ・クラーロベーが、一部と二部を行ったりきたりしているぐらいで、特に有力なチームはない。そのフラデツもかつての全盛期には、二部にいたBチームが昇格を勝ち取り、近くの町を本拠地にして別チームにして一部に参戦させたことがあったらしいけれども、もう昔の話だ。
南ボヘミアは現在一部リーグの空白地区となっている。かつてはポボルスキーがオーナーを務めたチェスケー・ブデヨビツェが、一部と二部を行ったりきたりしていたのだが、最近は二部に定着してしまった。国営ビール会社ブドバルのお膝元だからスポンサーにと思わなくもないのだが、輸出中心の企業が国内チームのスポンサーになってもしかたのない面があるのだろう。
これがボヘミア地方の概観で、プラハを除くボヘミア地方からは、例年6〜7チームというところで、今年はフラデツが復帰した分増えて7チームである。
ボヘミア地方のサッカーチームに関して書く際に、忘れてはいけないのが、かつて長きにわたって一部にがんばり続けていたフメル・ブルシャニというチームである。このブルシャニは、たしかボヘミアの小さな村である。人口も五百は超えていたと思うが千人には満たない。そんな小さな村に、一部リーグのチームがあって、人口の何倍もの数の観客を収容できるスタジアムもあったのだ。
ただし、これをチェコではそんな小さな村に、大きなスタジアムがあるなんてすごいと解釈しておしまいにしてはいけない。このチームはかつてのサッカー協会の会長で金融犯罪で摘発されそうになって国外に逃亡したらしいフバロフスキー氏とその関係者が、権力と経済力で維持していたチームなのである。その後、一部チームに求められるスタジアムの基準が厳しくなり改修工事や、そのためのホームゲームの一時移転などで、支えきれなくなったのか、資金が尽きたのかプロのチームとしては消滅してしまった。
本当のホームのブルシャニでの試合でもそれほどたくさん観客を集めていたわけではないが、間借りしていたスタジアムでの試合では、観客が百人ちょっとという記録を作っていたような記憶がある。このチーム、現在ではアマチュアのチームとして再建されて下部リーグで活動しているようだが、現役を引退したかつての代表選手たちが趣味でプレーするために所属したりしているのかな。
同じような村のチームがモラビアにもあって、という話をしようとしたらすでに一日の分量を越えてしまったので、続きは分割して翌日ということにしよう。本題にはまったく入っていないのだけど、タイトルはそのままにする。
11月8日23時。
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