2016年10月21日
上院議員選挙決選投票2(十月十八日)
承前
自治体の首長が現職の大臣を破ったのが、南ボヘミア地方のターボル市を中心とする選挙区で、社会民主党の産業大臣ムラーデク氏が、ANOの推薦を受けたビェトロフスキー氏に、約20パーセントの差をつけられて落選した。ムラーデク氏は議席を失ったことを理由に大臣を辞職するようである。
南ボヘミア地方の知事も、社会民主党の党員で、前回の下院の選挙の後、ハシェク氏と一緒にゼマン大統領との密議に参加していたのだが、その後の対応がハシェク氏に比べればはるかにましだったため、今回の地方議会選挙でも、南ボヘミアでは社会民主党がかろうじて第一党の座を守った。しかし、現職の大臣が落選してしまうところにも、南ボヘミア地方でも社会民主党への支持の低下が反映されている。
ビェトロフスキー氏はムラダー・ボジツェという町の町長で、2014年には南ボヘミア地方で最も優れた町長として表彰を受けたらしい。そういう地方の首長が上院議員と兼職すると、市長や町長としての仕事がおろそかになったりはしないのだろうかと不安に思うのだけど、上院議員なら大丈夫という考えがあるのだろうか。小さな町や村の、町長、村長は、予算や仕事量などの関係で、国会議員でなくても、専業ではない場合もあるからいいのかな。
以上が、政治的な意味にで気になる結果なのだが、何気なく結果を見ていたら、えっ、この人選挙に出ていたの? と言いたくなる人が立候補していただけでなく、決選投票にまで進んでいた。
その筆頭は、何と言ってもヨゼフ・バーニャ氏である。この人、チェコで一番有名な競馬関係者で、騎手兼調教師兼馬主という日本ではできるのかどうかわからない立場にいる人物である。毎年チェコ最大の競馬のレース「ベルカー・バルドゥビツカー」という障害レースが近づくと、騎手として出場するのかしないのかが話題になる。今年は出ないとか言いつつ、結局騎手として出場して、終わると来年はもうないと言うのが決まりごとのようになっている気がする。最多出場と最多優勝の記録を更新中じゃなかったかな。
今年はそんなに話題になっていなかったから、騎手としては完全に引退したということでいいのかなと思っていたら、選挙に出ていたのだ。テレビの談話などで理解する限りでは、そんなにでしゃばりな感じの人物ではなかったので、意外な取り合わせだったのだけど、調べてみたら、すでに2002年から地元の町の町会議員になっていて、2013年の下院議員選挙ではTOP09から立候補したが、惜しくも落選したらしい。
そして今回は、TOP09とは犬猿の仲のANOに鞍替えして、カルロビ・バリ市を中心とする選挙区の上院議員候補として立候補し、カルロビ・バリ地方の議会の選挙にも立候補したらしい。いやあ、驚くべきことに可能らしいのだよ、この手の二重立候補。下院の選挙と、地方議会の選挙は候補者名簿に名前を載せるだけだから、あんまり立候補したという実感はなさそうだけど。
選挙の結果は上院銀選挙では落選、地方議会選挙では当選ということらしい。地元の町の町会議員の職もあるから、議員としてだけでも二足のわらじを履いて、競馬関係者としても少なくとも二足のわらじを履いていることになるんだけど、大丈夫なのかね。とりあえずこの人には政治家として、TOP09とANOの間を引っ掻き回すことを期待しよう。
それから、プルゼニュ市の選挙区でバーツラフ・ハロウペク氏が当選しているのにも、驚いてしまった。日本語に訳すと「愛国市民の会」とちょっとやばそうな名前になってしまう政治団体の候補として、一回目の選挙では0.5パーセントしかなかった差を、20パーセント以上に広げて、社会民主党の候補を退けて当選した。
ハロウペク氏は、プルゼニュ市の市会議員でもあるというけれども、政治に手を出していたとはまったく知らなかった。そもそも、以前ちょっとだけふれた動物の子供が主人公になる子供番組の製作者としてしか知らないのだ。動物の子を主人公とした番組は、人間の勝手で親を失ったり、親が育児を拒否したりした子供たちを育てることを通して、自然保護、動物保護を訴えることも目的にしているのだろうから、政治家としてはその辺に力を入れてもらって、かつて起こった撮影後に子熊たちをどこで生活させるかなんて問題が起こらないようなチェコにしてほしい。そして、子供番組の続きを撮影してもらいたいところである。
イジー・シュレーグルという名前を聞いて、長野オリンピックで優勝したチェコのアイスホッケーチームのメンバーであることに気づく人はどのぐらいいるだろうか。かつて社会民主党のパロウベク首相の勧誘で政界に進出し、社会民主党の下院議員となっていたシュレーグル氏も今回の上院議員の選挙に、モスト市を中心とする選挙区から社会民主党の候補者として立候補していた。
この人、確かに社会民主党から下院議員の選挙に立候補して当選したのだが、その後パロウベク氏が、社会民主党を飛び出して結成したLEV21国家社会主義党というナチスを思わせる名称の党に参加するために社会民主党を脱党し、その後しばらくして下院議員を辞職していたはずである。それが今回再び社会民主党の候補者として立候補したということは、政界での恩人のパロウベク氏と袂をわかったということだろうか。パロウベク氏の党には資金関係のスキャンダルが起こっていたような記憶もあるので、その辺で見限ったのかな。
注目すべき最後の一人が、ワレンシュタインの王国の首都になりかけたイチーン周辺の選挙区で当選したチェルニーン氏。チェルニーン宮殿という名前の建物を聞いたことはないだろうか。ウィーンにもあるのだけど、バロック様式で建てられたプラハのは現在外務省の庁舎として使用されている。わかるよね。お貴族さまの末裔なのだよ。ということで、当然シュバルツェンベルク侯爵の率いたTOP09からの出馬である。
一応トマーシュ・チェルニーンという名前が使われているが、本当の名前は、トマーシュ・ザハリアーシュ・ヨゼフ・マリア・デポルト・ルドルフ・カジミール・ホスティスラフ・チェルニーンというらしい。いろいろと支族のあるチェルニーン家だが、この人の一族は伯爵位を世襲していたという。
現在のチェコには公式には貴族は存在しておらず、爵位を公的に使用するのも禁止されている。それなのに、シュバルツェンベルクの支持者たちは、スノッブにも事あるごとに、「クニージェ、クニージェ」なんて爵位で呼ぶことで、貴族などとは縁のない普通の人々の支持を失って、ゼマン大統領の誕生に手を貸してしまったのである。この人の支持者が同じ愚を繰り返さないことを願っておこう。
10月19日16時30分。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5553281
この記事へのトラックバック