2016年09月27日
ブリュックネルとの遭遇(九月廿四日)
毎週土曜日に、オロモウツのホルニー広場で、生産者直売という名目の朝のマーケットが開かれる。実際には生産者ではない転売業者も参入できていて本当の生産者直売をやっている人たちの間には不満がたまっているらしいが、そのマーケットに買い物に出かけていたうちのが帰ってくるなり、「誰を見かけたと思う」と聞いてきた。職場の偉いさんとかあれこれ名前を挙げたけど、どれもはずれ。答は、カレル・ブリュックネルということで、思わず「ツォジェ」とチェコ語で声を上げてしまった。
これが十年前であれば、カレル・ブリュックネルといえば、日本でも結構有名で、知っている人も、ヨーロッパサッカーのファンを中心にいたと思うのだけど、監督を引退して久しい今となっては、チェコ国外、とくに遠く離れた日本なんかでは忘れられた人になっているだろう。チェコではたまにメディアに登場して、相変わらずの皮肉な戦術狂ぶりを見せてくれるけれども、普段は悠々自適の生活をしているらしい。
知らない人のために、ちょっとだけ説明をしておくと、カレル・ブリュックネルは、サッカーのチェコ代表で史上最高の監督である。2002年の日韓ワールドカップの予選で敗退した後に、監督を引き受けたブリュックネルは、自ら鍛え上げてヨーロッパ選手権で優勝させたU21代表の選手たちをA代表にも積極的に登用し、ネドベドなどの世代と融合させることで、最強のチェコ代表を作り上げたのだ。
ヨーロッパ選手権でも、ワールドカップでも優勝や準優勝などの成績は残せなかったが、予選を危なげなく勝ち抜いていただけでも、あの時期の代表は別格だった。任期の終盤は長期政権の弊害か、選手選考のマンネリや、コンディショニングコーチを置かないことなどを批判されることが多くなったが、残した成績だけでなく、試合を見ていて楽しく、試合後の記者会見を聞いても楽しいという点でも、最高の監督だった。
そのブリュックネルは、オロモウツの人なのである。出身は違うかもしれないけれども、オロモウツの人なのだ。90年代にはシグマ・オロモウツの監督として国内リーグで好成績を残すだけでなく、ヨーロッパのカップ戦でもかなりいいところまで進出したらしい。さすがにこの辺はチェコに来る前なので、詳しいことは知らない。
チェコ代表監督時代にもシグマのスタジアム内にブリュックネルの事務所みたいなものが置かれていてそこで仕事をすることも多かったというし、オロモウツでのサッカーの試合の中継で客席で観戦している姿が映し出されることもある。だから、ブリュックネルはオロモウツの人でオロモウツに住んでいるのだ。
マーケットでのブリュックネルは、特に目立つこともなく、買い物をするお爺さんという姿が様になっていたらしい。そう言えば、もう何年前になるだろうか、オロモウツの南の郊外にできたオリンピアというショッピングセンターの駐車場で、買い物袋を提げて買い物帰りのお爺さんといいたくなる姿を、一度見かけたことがある。ということは、うちのは二度目のブリュックネルとの遭遇ということになる。うらやましい。
そうしたら、ベランダ園芸用の土を求めて出かけたオビという園芸用品のお店にいたのだ。我々が店内に入ったら、白髪の老人の後姿がレジに並んでいるのが見えた。うちのがあの人だよというので、こっそりと顔が見えるように場所を移動して、久しぶりにブリュックネルの渋さにあふれる尊顔を拝することができた。やはりこの爺さんかっこいいなあ。こんな爺になれたらいいなあなどと考えてしまった。
その後、行く予定だったスーパーテスコでも遭遇するかもなんて笑っていたのだけど、残念ながらそんなこともなく、ブリュックネルがどんな車に乗っているのか興味があったんだけどと言ったら、うちのは、シュコダのオクタビアじゃないかななんて言っていた。シュコダはチェコのスポーツ関係者に自動車を提供することがあるから、ありえなくはない。サッカー選手御用達のドイツの高級車とか、サッカー代表のスポンサーのヒュンダイの車とかよりは、ブリュックネルに似合っているし。
オロモウツで見かけたサッカー関係の有名人は、ブリュックネルだけではない。有名人と言ってもチェコレベルでの有名人だけど、うちのは、スーパーマーケットで自転車を停めようとしている元オロモウツなどの監督のペトル・ウリチニーにこれでいいのかねなんて質問されたことがあるらしいし、テニスをしにいったら隣のコートにいたのもウリチニーだったと言っていたかな。
キャリアの最後にスラビア・プラハで活躍し、チャンピオンズリーグに出場させたマルティン・バニアクは、同じレストランで食事しているのに居合わせたことがあるし、トラムの中から街を歩いている姿を見かけたこともある。
この二人も、オロモウツの出身かどうかは知らないけれども、個人的にはオロモウツの人としてカテゴリーしているので、ついつい応援してしまう。二人とも、ウリチニーは監督を、バニアクは選手を引退してしまって、今は応援のしがいがないが、今後バニアクが監督になったらどこのチームであっても応援してしまうだろうなあ。
9月25日11時30分。
これは、当然オロモウツの話になるよね。9月26日追記。
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