2016年08月17日
敗北宣言(一)(八月十四日)
いきなりで何のことかわからないかもしれないが、何に負けたかというと、オリンピックに負けてしまったのだ。現在の金まみれのオリンピックなんか、開催の意義を失っているのだから、やめてしまえと広言していながら、先週の土曜日に本格的な競技が始まって以来、ついついテレビの前に座ってしまう。開会式を無視したときには、あんまり見ずにすむかなと思ったのだけど、そもそもこの手のスポーツイベントの開幕と終幕のセレモニーは嫌いなので、見ないのだった。
ハンドボールが最初の中継の一つだったのがいけなかった。女子のノルウェーとブラジルの試合は、ブラジルが開催地の意地を見せて善戦はしても、最後はノルウェーが勝つんだろうと思いつつ見ていたら、ブラジルが勝ってしまった。そうなんだよ。日本のハンドボールがヨーロッパに追いつこうとあがきながら引き離されている間に、南米やアフリカのレベルが上がって、昔はヨーロッパ以外でもやっていますよというアリバイ作りに数あわせとしてオリンピックや世界選手権に参加していたこれらのチームのレベルが上がって、いつの間にかヨーロッパの強豪チームとも互角以上の試合を展開できるようになっているのだよ。
ブラジルチームの選手の多くが、ヨーロッパのチームで活躍しているらしいのも、ヨーロッパのチームと互角以上に戦える理由になっているのだろう。日本もハンドボールのプロ化とか、やっていたけど、それより外国でプレーできる選手を増やしたほうがいいような気がする。でも、難しいんだろうなあ。
試合を見ていて驚いたことが二つ。一つは、キーパーを引っ込めてフィールドプレーヤーを増やすシーンが連発していたことだ。以前はキーパーの代わりであることを示すために、ユニフォームの上から背番号の部分に穴のあいたTシャツを着て、試合の終盤、どうしても点が必要なときにだけなされていたプレーだが、試合の序盤から、退場者が出たときに攻撃の人数が減らないように、Tシャツなんかなしで普通のフィールドプレーヤーと同じように交代していた。そして攻撃が失敗すると、無人のゴールに長ロングシュートを決められるというシーンが何度も発生していた。試合の終盤でキーパーなしでプレーしているときに、こんな事態が起こると、もう絶望ものなのだけど、序盤だから選手たちもそこまでショックを受けているようではなかった。いや最初からそのリスクを覚悟でのプレー選択だということなのだろう。
どうも、最近ルールが改正されてキーパーも、普通のフィールドプレーヤーと同じように自由に交代できることになったために、退場者が出て一人少ないときや、六人のフィールドプレーヤーでは攻撃が手詰まりになったときに、頻繁に使われるようになったらしい。このプレーのおかげでゴールキーパの得点が増えそうなのは楽しくていいかな。別の試合では、超ロングシュートが無情にもぎりぎりで外れるシーンや、必死で戻ってきたキーパーがやっとのことでボールを弾き出すシーンがあったし。
もう一つの驚きは、ゴールポストが、赤白ではなく、緑と白に塗り分けられていたことである。いいのかこれ。ルールでは赤と白と決まっていたんじゃなかったか。一体に今回のオリンピックは緑色が目に刺さる。目に優しい緑色ではなく、無駄に存在を主張する緑色で、何でここまで緑にこだわるのかと思っていたら、今回のオリンピックは環境に配慮したエコロジーなオリンピックを目指しているのだという。
けっである。オコの沙汰である。環境が大切なのだったら、オリンピックのような大規模なイベントなど、最初から開催するべきではないのだ。そうか、オリンピックで緑色を使えばエコロジーだという発想なのか。これって何年か前に話題になった中国の緑化政策と同じじゃないか。岩山に緑のペンキを塗って緑化完了とのたまった中国のお役人のメンタリティと、リオ・オリンピック、ひいてはアイデアを認めたIOCの関係者のメンタリティは同じレベルであるようだ。
その後ハンドボールの中継は、テレビではあんまりないのだけど、チェコテレビがネット上で八つのチャンネルを用意して中継しているものの中で、放送されることがある。気づかなければよかったのだけど、気づいてしまった。全試合中継してくれれば、どうせ次も見られるからと考えて、見ない試合もあるのだろうが、一部の試合しか中継しないせいで、ハンドボールの中継があって、自宅にいるときにはついつい見てしまう。
そんなネット中継で、ついにカタールの試合を見てしまった。驚いたのは普通に強かったこと。これなら普通にプレーしていれば、アジアレベルだったら敵なしだろうに、何で中東の笛なんか必要なんだろうか。
それよりも気になったのは、「イッチ」で終わる名前の選手が多かったことで、カタール代表というよりは、旧ユーゴスラビア代表という感じだった。解説なしの中継だったので、誰がどこの出身で、いつカタールに身売りしたのかってな情報は聞けなかったが、普段はヨーロッパで生活、プレーして代表のときだけカタール人になるということなのだろう。世界に散らばる中国出身の卓球選手もそうだけど、そこまでやるかという思いは消せない。
そんな周辺のことにこだわりさえしなければ、やはりハンドボールの試合を見るのは楽しい。凡戦でも、サッカーの凡戦を見るよりははるかに楽しい。だから、オリンピックに負けたのではなく、ハンドボールに負けたのだということにして、自分を納得させることにする。
8月16日0時。
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