2016年08月14日
いんちきチェコ語講座(八月十一日) 有声子音と無声子音のややこしい関係(二)
念のために、有声子音と無声子音の対応表もどきを改めて掲げておく。
K S Š T Ť P C Č / Ch / F / ×
G Z Ž D Ď B × × / H / V / Ř
無声子音と有声子音が連続する場合、原則として後の子音の属性が優先される。つまり、無声+有声の場合には、全体が有声になり、有声+無声の場合には、全体が無声子音の連続として発音されるのである。気を付けなければならないのは、無声+有声が語末にある場合には、語末の有声子音が無声化するルールに基づいて、全体が無声化することである。ただし、この原則が完全に適用できるのは、最初の/までの八組の対応である。
ややこしいので、細かく例を挙げよう。KとGの場合には、チェコ語の疑問詞の中にkdで始まるものが多いのに気付いている人も多いだろう。kdo(誰)、kdy(いつ)、kde(どこ)、いずれも後にくるDのせいで有声化して「グド」「グディ」「グデ」と読むのである。同じKで始まる疑問詞でも母音が間に入った kudy(どこを通って)は、「クディ」と読む。ちなみにスロバキア語ではこの連濁をきらったのかDの代わりにTが使われていて誰は「クト」になる。Gの後に無声子音が来る例は思いつかない。
Sが有声子音のせいで有声化するものとしては、sběrač(集めるもの)がある。考えてみたら、「スビェ」なんて発音はしにくいから、発音がしやすいように「ズビェ」になったのかもしれない。反対にZが無声になるのは、zpátky(元に)を上げておけば問題なかろう。これも「ズパ」は言いにくいなからあ。
ちなみに、日本語ができるチェコ人が、日本語の「ですが」を発音するときに、「す」の母音Uを省略してしまい、さらにチェコ語の発音ルールを適用して、「でずが」と言うことがある。ローマ字で書くと、desugaがdesgaになって、gのせいでsが「ズ」と読まれてしまうのだ。かなり上手な人でも、気を抜くとやってしまうらしいので、日本語のできる知り合いがいたら確認してみよう。外国語の発音が難しいのは日本人にとってだけではないことがわかって、チェコ語の勉強が少し楽になるかもしれない。
Šの後に有声子音がくる言葉は思い浮かばないが、Žの無声化としては、プラハから作られた形容詞pražskýがある。žは後に来るsとkが無声子音であるために無声化して、「プラシュスキー」と読まれるのである。
Tはもう、fotbal(サッカー)を上げるしかない。これ、「フォトバル」と読んではいけない。tの後にbがあるので、「フォドバル」と読むのが正しい。svatba(結婚)のtba部分も同じで「スバドバ」である。Dの後に無声子音が来る例は、dcera(娘)があるのだけど、最初のDを発音しているのかどうか、日本人の耳には聞き取れない。それから形容詞のnadšený(熱狂的な)の場合には、dšeで「トシェ」ではなく「ッチェ」と発音しているようでもある。こういう文章を書いていると自分の耳の悪さが恨めしくなるなあ。
Ť +有声、Ď+無声の組み合わせは、あるかもしれないけど思い浮かばない。まあ原則はハーチェクなしと同じである。
Pが有声化するのは、見たことも聞いたこともないが、Bが後に来る無声子音で無声化するのは、結構よくあって、「オプサフ」と読むobsah(内容)を挙げておけば十分だろう。それから格変化した場合の例も思いついた。obec(村などの自治体)は、一格では「オベツ」と有声で読まれるが、格変化をしてobceとなると、無声化して「オプツェ」と読まれることになる。Bが後に来る無声子音のせいで無声化するのは、ハプスブルクもそうだから、ドイツ語にも見られる特徴なのかもしれない。あれ、でも、チェコ語で書いたらHabsburkだ。ということは、bsbという子音の連続が有声子音で終わっているから、規則に従えば、「ハブズブルク」と読むはずだぞ。外来語だから気にしなくてもいいの、か、な。
Cが有声化する例はないと書きかけて、leckdoを思い出した。ただこの言葉、lecが接頭辞として強く意識されるせいか、「レズグド」ではなく、「レツグド」と読む人もいるようである。lecと言えば、昔、Lecjaksという名字をどう読むのかで悩んだなあ。これはlecを分けて読む感じで「レツヤクス」だったかな。cjaで「チャ」と読んでよさそうな気もするのだけど。
Čが有声化するのは、昔なかなか覚えられなかった言葉léčba(治療)がある。「レージュバ」と言えなくて、「レーチュバ」と言っていたんだよなあ。ビール通の友人に指摘されるまでは。
ハプスブルクやプラシュスキーの例からもわかる通り、有声、無声がまじりあって三つ以上連続する場合も原則は、同じである。一番後にある子音、別な言い方をすると、母音か有声でも無声でもない子音の前にある子音が有声か無声かで、全体の読み方が決まるのである。
簡単にまとめておくと、有声子音が、無声化するほうが子音単独の場合なども含めて多いので、覚えやすいはずだ。無声子音が有声化するのは、後に有声子音が来たときだけなので、そんな単語が出てきたときには、つづり、意味と合わせて発音も意識して覚えることが大切なのだろう。最近流行りのぺちゃくちゃ喋れればいいや的な語学学習では、チェコ語は身につけられないのである。
例外的な発音のルールのあるHとCh、FとV、Řについては、有声と無声が一緒に出てくる例としては挙げなかった。次回はこの五つの子音の発音のルールについて説明をして、今回の発音シリーズの終わりにする。
8月11日23時。
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