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2021年08月30日

ワクチン接種の顛末3



承前
3ワクチンの種類
 現在チェコで使用できるワクチンは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンの四種類だが、実際に接種されているのはファイザー社のものが圧倒的に多く、80パーセント以上を占めている。これは、副作用の問題もあったけれども、最初にEUの認可を受けて供給されるようになったということが何よりも大きい。一回の接種で済むのならともかく、二回の接種が必要となるワクチンを同一会場で複数使用するのは、理論上は可能でも、実行するのは手間とリスクが大きすぎる。
 最初期のファイザーのワクチンの供給が安定せず、あちこちでワクチン不足を訴える声が上がっていたころに、認可が済んで入ってきたモデルナのワクチンは、一番不足していたモラビアシレジア地方で集中的に使用された。これもまた、一つの会場では出来るだけ同じワクチンだけを接種しようという考えに基づくものだろう。実際は、一回目と二回目で別のワクチンを接種したところで問題はないのかもしれないが、そんな安全性も効果も検証されていない、実験的な接種を受けたがる人はいるまい。

 その結果、特設の接種会場では、一部の例外を除いてファイザーのワクチンが使用されることになり、他のワクチンが使用される機会は限定的になってしまった。確か、開業医での接種に関しては、保存のための温度管理の条件が厳しいファイザーではなく、モデルナかアストラゼネカを使うことが推奨されていたし、最近は高齢者だけを対象にした接種の場合には、アストラゼネカを使用することが求められていたと記憶する。それで、どちらも数パーセントほどの使用率となっている。
 ワクチンの不足が声高に叫ばれていた頃には、チェコ政府も、それこそだぼはぜのように、EU認可済みワクチンなら、どれでも確保に努めていたが、結局確保はしたものの使い切れない分のワクチンを他国に提供する事態になっている。イスラエルやオーストリアには、以前チェコが危機的状況にあったときに譲ってもらった分を返すという形だったが、アフリカなどの国に対しては寄付という形をとっていた。そして、他国に譲ったワクチンは、ファイザー以外のものだったはずである。

 このような事情を考えると、仮にゼマン大統領の推進したロシア製ワクチンが導入されていたとしても、チェコのワクチン接種率を大きく上げることにはならなかっただろうと考えられる。特例的に特設会場での接種に使用されていたとしても、世論調査によるとEUの認可を受けていないロシア製の接種を希望する人はほとんどいなかったのである。強制的にロシア製を摂取するわけにもいくまい。
 その点、一回の接種で済むジョンソン&ジョンソンのワクチンには期待されたのだが、認可が一番遅かったことと、認可の前後にアメリカでの副作用の情報が大きく報道されたことから、接種会場で使用されることにはならなかった。ただし、最近はチェコ各地に設置された事前登録不要の接種会場で、ファイザーのワクチンと共に使用されるようになっている。二度も接種に出向くことはできない、もしくは出向きたくないという人向けに、ジョンソン&ジョンソンが提供されているのである。

 ところで、二回の接種が必要なワクチンの場合、一回目と二回目の間隔は三週間が推奨されているのだが、チェコでは六週間に延長されていた。これは、ワクチンの供給量が安定しない中、一回だけでも接種を済ませた人を増やそうという政策である。政府は間隔が伸びても効果が下がるようなことはないと言っていたが、製薬会社がどのように判断しているのかは不明である。
 そして、七月も半ばになって、新規のワクチン接種希望者が急速に減り始めたことで、一回目と二回目の間隔は、もとの三週間に戻された。間隔が延長されたときもそうだったが、一度確定した二回目の接種の日時が変更されることになり現場では対応に苦慮していたという話も聞く。特に、二度目の変更は夏休みに入ってからのことで、六週間の間隔を利用してバカンスに出かけている人もいたと思われるので、大変だったに違いない。

 接種を受ける人が、自分でワクチンを選べるようにするべきだという意見も聞こえてきていたが、絵に描いた餅で、実現には至っていない。ニュースで紹介された世論調査の結果では、ファイザーを希望する人が圧倒的に多かったから、実現していたとしても接種割合は変わらなかった可能性は高い。そう考えると、大半の人は希望するワクチンの接種ができたと言うこともできるのか。
2021年8月28日






posted by olomoučan at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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